キャリアを棚卸しするときは、最初から職務経歴書らしい文章にまとめなくて構いません。まず在籍先と期間を並べ、部署ごとに担当した仕事、具体的な行動、確認できた結果、その根拠を取り出します。応募先へ見せる経験を選ぶのは、その後です。

「営業を5年」だけでは、途中の担当変更や支援業務が抜けることがあります。一方、部署の仕事とプロジェクトを別々に並べるだけでは、同じ仕事を2つの実績として数えかねません。この記事では1つの職歴の中に担当期間と案件を位置付け、あとで確かめられる経験台帳を作ります。

最初に会社と担当期間の骨組みを作る

厚生労働省のマイジョブ・カードでは、職務経歴を順番に記入して可視化する方法が案内されています。時期が正確に分からなくても、まず記入を進められます。手元のメモでも同じように、会社単位の在籍と、その中での担当変更を分けると整理しやすくなります。

最初の一巡では、次の順番で書き出してください。

  1. 会社名、在籍期間、雇用形態を書く。
  2. 部署・職種・役割が変わった時期を、その会社の下に並べる。
  3. 兼務や期間限定の案件を、該当する担当期間へ添える。
  4. 月が不明な箇所には「2022年春ごろ・要確認」と残す。

ここでは、分からない月を推測で埋めません。異動の前後で仕事が重なっていたなら、無理に1日で切り替わった形にせず「4〜6月は引継ぎのため兼務」と記録します。在籍期間を足し合わせる作業と、仕事の量を振り返る作業を混ぜないことが大切です。

異動と案件を二重に数えない記録例

以下は説明用の架空例です。A社に2020年4月から2025年3月まで在籍し、営業部から営業企画部へ異動した人を考えます。

会社:A社/2020年4月〜2025年3月、正社員。営業部:2020年4月〜2023年3月、既存顧客への提案と受注後の連絡。営業企画部:2023年4月〜2025年3月、営業資料の更新、問い合わせ内容の整理。2023年4〜6月は営業部の引継ぎも担当。

その人が2022年10月から2023年6月まで受注管理システムの切替に参加したなら、会社を1つ増やすように案件を並べず、同じ職歴の中に案件記録を作ります。

案件P01:受注管理システム切替/2022年10月〜2023年6月。営業部在籍中から参加し、異動後も継続。本人は営業側の入力項目の確認と問い合わせの取りまとめを担当。切替対象システムを決めたのは部長、設定作業は情報システム担当。

営業部の担当欄には「通常業務に加えP01に参加」、営業企画部には「P01を6月まで継続」と書きます。詳しい経緯はP01に一度だけ残せば、期間が部署をまたいでも同じ案件だと分かります。「営業5年、企画2年、導入1年」と足して経験年数を増やすことも防げます。

日々の仕事は1日の流れと周囲との受け渡しから拾う

大きな案件だけを思い出そうとすると、毎月の確認や問い合わせ対応が抜けます。通常の1日、月末、繁忙期、引継ぎ時という4つの場面を振り返り、それぞれ何を受け取り、何を確かめ、誰へ渡していたかを書き出します。

営業部なら「提案」だけで終えず、顧客の要望を聞く、社内に納期を確認する、見積の条件をそろえる、受注後の変更を連絡すると分けます。営業企画部なら、資料更新の依頼元、誤りを確認する相手、公開の承認者まで思い出します。

各仕事に次の欄を設けると、単なる作業名の一覧から一歩進んだ整理ができます。

  1. 目的:誰の何を進める仕事だったか。
  2. 対象・量:扱う顧客、書類、頻度。数が不明ならそのまま書く。
  3. 担当範囲:自分で判断できたことと、確認が必要だったこと。
  4. 行動・結果:実際にしたこと、その後に確かめられた変化。
  5. 根拠:日報、予定、集計表などの記録名と確認できる期間。

「難しい仕事だった」と感じた場合も、専門用語で飾る前に、関係部署が多かった、締切が重なった、前例がなかったなど、難しさの中身へ戻します。難しかったことと、自分が解決したことは別々に残してください。

結果は会社・チーム・本人を分けて残す

架空例のP01で、新システムが予定日に稼働したとしても、それを本人だけの成果にはしません。「案件全体の結果:予定日に稼働」「本人の行動:営業側の確認事項を取りまとめ、設定担当へ渡した」と分けます。入力時間の短縮を測っていなければ、短縮率は書かず「測定なし」と残します。

失敗した出来事も材料になります。たとえば引継ぎ先への連絡漏れがあったなら、何が抜けたのか、誰にどんな影響が出たのか、自分が修正した範囲、その後に確かめたことを記録します。「確認項目を追加した」と「再発しなくなった」は同じ事実ではありません。後者を確認していないなら、行動までで止めます。

この段階で無理に強みを名付けたり、すべてを成功談にしたりする必要はありません。応募先に合う材料を選ぶとき、成功と失敗の両方について説明できる土台が残れば十分です。

記録がない箇所には、確認先と限界を書く

数字を思い出せない場合は、まず期間と単位を確かめます。「月20件くらい」という記憶を、記録なしで年間240件へ換算するのは避けましょう。繁忙月の件数と通常月の件数も分けて考えます。

手元で適切に参照できる日報や予定から、担当期間や業務の種類だけ確認できる場合もあります。会社の資料や顧客情報を転職準備のために持ち出す必要はありません。記録名と確かめたい項目だけをメモし、使ってよい情報の範囲で確認します。

件数:未確認。担当していた事実は当時の業務分担から確認できる。月別の件数・削減時間は記録がなく算出しない。異動月は2023年4月と確認済み。

棚卸しは空欄をすべて埋めれば完了するものではありません。各在籍期間に主な仕事が置かれ、案件の重複がなく、自分の行動と周囲の役割が分かり、不明点が不明なまま識別されていれば、次へ進めます。

集めた材料を応募書類の順番と文章へ整える段階では、職務経歴書の全体構成と項目別の記入例を参考にしてください。経験台帳には応募に使わない仕事も残し、提出用の文書だけを目的に合わせて選び直せます。