退職を伝えた後に昇給や異動を提案されたら、当初の退職理由がその内容で変わるかを確かめます。金額だけでなく、任される仕事や働く環境も比べましょう。
提案が魅力的でも、実行する人や時期が決まっていなければ希望どおりになるとは限りません。現職に残る条件と転職先へ移る場合の条件を同じ基準で並べます。
この記事では昇給のみの提案と異動が具体化した提案の架空例を使い、返答前の確認とその後の連絡を整理します。
最初に退職で変えたかったことへ戻る
今の会社から条件を変えて残るよう求める提案は、カウンターオファーと呼ばれることがあります。提案を比べる前に、退職を考えた理由と転職先を選んだ理由を見直します。
「給与」「仕事内容」「上司との働き方」を同じ不満としてまとめず、実際に困っていた場面を書きましょう。たとえば「受注入力が中心で、希望する業務改善に関われなかった」なら、給与が増えても担当する仕事が変わらない限り、その理由は残ります。
転職を決めた経緯が分かる自分のメモや、企業から説明された条件も読み返します。今の提案だけに目を向けず、両方で何を得られ、何が変わらないかを比べるためです。
昇給のみの提案と異動を伴う提案を比べる例
次の候補者と条件はすべて架空です。候補者は受注入力を担当しており、業務改善へ継続して関わりたいと考えて転職先の内定を承諾しました。現職へ退職の意思を伝えた後、上司から引き止めの話がありました。退職日について何が合意されているかは別途確認する設定です。
| 比べること | 提案A:昇給のみ | 提案B:異動を伴う | 承諾した転職先 |
|---|---|---|---|
| 仕事 | 現在の受注入力を継続 | 営業企画へ異動し、受注管理の改善を担当する案 | 最初は受注処理を覚え、その後に改善案を出す予定 |
| 報酬 | 月給を2万円増やす提案 | 現在の月給を維持 | 提示書面で確認済みの額 |
| 決定状況 | 上司の口頭提案。決裁は未確認 | 人事と異動先責任者から12月1日付の案を受領。本人の返答後に最終決定 | 承諾済み。担当する業務の詳細は面談記録を確認できる |
| 残る不明点 | 昇給の決定者と適用日 | 異動後の業務配分、評価者、元業務を兼務する期間 | 改善業務へ移る時期と通常業務の配分 |
提案Aは給与の不満には関係しても、業務改善に関わりたいという理由への回答にはなっていません。候補者が仕事内容を優先するなら、月給が増えるという理由だけで残ると決めることはできません。
提案Bでは異動する部署と時期が具体化しています。ただし、この段階では実現済みではありません。候補者は「元の業務をいつまで兼務するか」「改善に使う時間を誰が確保するか」「評価する責任者は誰か」を人事と異動先へ尋ねます。
自分の比較では、退職理由と提案の変更点を実際の内容に置き換えます。転職先にも未確認事項があれば同じように残し、現職だけに厳しい基準を設けないようにしてください。
誰が、いつ、どの条件で実行するかを確かめる
口頭の「何とかする」という説明は、決裁や配置が完了したという意味とは限りません。何が決まっていて、何が誰の判断を待っているかを確認します。
- 昇給や異動を決める人は誰か。正式な承認は済んでいるか
- 適用日はいつか。対象となる期間や見直しの条件はあるか
- 新しい仕事に必要な人員や権限を誰が用意するか
- 旧業務が残る場合、何をいつまで引き継ぐか
確認した内容はメールや正式な通知などで残します。書面があっても将来の継続が保証されるとは限らないため、一時的な応援や試行的な異動なのかも確かめましょう。職務や配置の実行に必要な条件が整っていない場合は、その不確かさも判断に含めます。
退職を申し出て初めて改善の提案が出た場合は、それまで相談していたことへの対応と何が変わったかも確認します。今後も同じ不満が出たときに誰へ相談できるかが分からなければ、現在の条件変更だけでは解決しない問題が残るかもしれません。
即答を求められたら確認事項と返答日を相談する
架空例の提案Bへ候補者が返す言葉の例です。
ご提案ありがとうございます。退職を考えた理由が業務改善に関われないことだったため、異動後の担当と兼務期間を確認して判断したいです。人事と異動先の責任者に確認する機会をいただけますでしょうか。転職先への入社を承諾している点も含めて整理し、11月6日までに返答できるかご相談したいです。
この例は相手から11月6日まで待つという回答を得たものではありません。相談した日付と認められた期限は分けて記録します。退職の申し出を取り下げたことや、転職先への辞退が済んだことにもなりません。
残る場合と転職する場合の連絡を分ける
リクルートエージェントの転職活動の流れでも、在職中は内定承諾後に退職を伝え、退職日と入社日を調整する順序を案内しています。引き止めで判断を変える場合も、今どの相手と何を合意しているかを分けて確認します。
現職に残りたいと判断した場合は変更条件を確認したうえで退職申出をどう扱うか相談します。既に何を伝え、どんな返答を得たかによって確認事項は変わります。「残ります」と伝えれば退職手続きがすべて元に戻るとは決めつけないでください。
転職先へ入社を承諾済みなら、そちらとの合意や進んでいる手続きも確認して連絡する必要があります。現職に残る話と転職先への辞退は別々の相手とのやり取りです。自分だけで両方が終わったと判断せず、返答と残る手続きを記録します。
転職を続ける場合は「ご提案を検討しましたが、今回の退職意思は変わりません。希望日と引き継ぎについて改めて相談させてください」のように、結論と次の調整を伝えられます。感謝のために曖昧な返答を続けるより、相手が次の手続きを判断できる内容にします。
条件を同じ項目で比較する作業は正式な内定条件と現職を比べて承諾・辞退を考える方法でも確認できます。引き止めの判断では、当初の理由が解消するかとその提案を実行できる条件が整うかの両方を確かめて返答しましょう。




