「EC担当」と書かれた求人でも、仕事の中身は会社によって大きく違います。自社で仕入れた商品の品揃えと在庫を決める仕事、モールに出した自社の店の商品ページと販促を回す仕事、モールを運営する側で出店者に売り方を提案する仕事、注文された商品を出荷する物流センターの仕事、問い合わせに答えるカスタマーサポートまで、どれも「EC」の求人として並びます。
違いを生むのは、誰が売り手になり、在庫・物流・代金の受け取り・集客を誰が引き受けるかです。この記事では、インターネットで商品を売るネット通販(物販のEC)を、直販・D2C・モール出店・場の運営の4つの形に分け、それぞれの負担と収入、ルール、仕事の違いを順に確かめます。
小売の中でECがどこに位置するか、店舗の業態との違いは「小売・ECの業界地図」で扱います。EC物流センターの受託運営は「3PLの業界地図」、営業倉庫の登録と保管は「倉庫業の業界地図」、宅配の運賃や再配達は「トラック輸送・宅配・郵便の業界地図」で扱います。旅行予約などのサービスや、ゲーム・電子書籍などのデジタルコンテンツの販売は扱いません。

ネット通販は、誰が売り手で、誰が場を持つかで4つの形に分かれる
ネット通販の会社は、まず「自分が売り手になるか」と「売る場を自分で持つか」で分けられます。この記事では、次の4つの形で整理します。
- 直販:自社が商品を仕入れて在庫を持ち、自社のサイトで売る
- D2C:メーカーやブランドが、自社で企画した商品を、店や卸を通さずに自社のサイトなどで直接売る
- モール出店:売り手(出店者)が、他社が運営するモールに店を出して売る
- 場の運営:出店者と買い手が取引する場(モール・マーケットプレイス・フリマ)を運営し、手数料などを受け取る
ネット通販の4つの形は、売り手と、在庫・物流・代金・集客の持ち主で分かれる
直販の例が、工場や工事現場で使う工具・消耗品などの間接資材を事業者向けに売るMonotaROです。MonotaROは、商品を仕入れて自社の在庫として持ち、自社の物流センターから出荷しています。2025年12月期の決算説明資料によると、ウェブサイトの取扱商品は2,885万点を超え、そのうち在庫として持つ商品は約68.8万点です(2025年12月期決算説明資料)。主な顧客は製造業や建設・工事業などの事業者です。主に事業者向けの取引のため、後で紹介する経済産業省の消費者向けEC(BtoC-EC)の市場規模の外側にある例です。
場の運営では、売り手は出店者で、運営者は売り手になりません。モールでは、出店者が店単位で出店します。ZOZOが運営するファッションのモールZOZOTOWNには、各ブランドがテナントの形で出店しています。楽天グループの「楽天市場」や、LINEヤフーの「Yahoo!ショッピング」も、出店者が店を出すモールです。メルカリが運営するフリマアプリ「メルカリ」は、個人どうしの取引(CtoC)のための場です。
1社が複数の形を持つこともあります。米国のAmazon.comの年次報告書(全世界の事業の説明)では、自社が仕入れて売る販売と、第三者の出品者が同じストアで商品を売る販売の両方を持ち、出品者の取引では自らは販売者ではないとしています(Form 10-K 2025年12月期)。ZOZOも、ブランドから預かった商品を売る受託販売のほかに、自社で仕入れて在庫を持つ買取・製造販売と、中古品のUSED販売を持っています。
D2Cは、この記事では型の説明にとどめます。メーカーが売り手になるため、在庫と顧客の情報を自社で持てる一方、集客も自社で行う必要があります。D2Cのブランドがモールにも出店すれば、その部分はモール出店の形になります。
ECの大きさは、物販・サービス・デジタルに分けて見る
EC化率は、物販系分野だけで計算されています。物販系分野の商取引のうち、ECで売られた割合で、2024年は9.78%(前年は9.38%)です。サービス系とデジタル系には、EC化率は示されていません。分母の商取引の規模は、総務省の家計調査と内閣府の国民経済計算から推定したもので、商業動態統計の小売販売額ではありません。そのため、EC化率を店舗の販売額の統計と並べて割り算することはできません。
ネットで多く売れている商品と、ネットで買う割合が高い商品は違う
物販系分野を商品の種類ごとに見ると、市場規模が最も大きいのは食品・飲料・酒類の3兆1,163億円ですが、EC化率は4.52%にとどまります。EC化率が高いのは、書籍・映像・音楽ソフトの56.45%、生活家電・AV機器・PC等の43.03%です。衣類・服装雑貨等は2兆7,980億円で、EC化率は23.38%です。ネットで多く売れている商品と、ネットで買う割合が高い商品は、同じではありません。
個人どうしの取引(CtoC-EC)は、BtoC-ECとは別に推計されています。フリマやオークションなどの2024年の市場規模は2兆5,269億円です。経済産業省は、この中には実際には事業者が売る取引も含まれると注記しています。
在庫・物流・代金・集客を誰が持つかで、手間と収入が変わる
4つの形の違いは、在庫・物流・代金の受け取り・集客の4つを、誰が引き受けるかに表れます。引き受ける側は手間とリスクを負い、その分の収入を得ます。
在庫を持つのは、売り手です。直販とD2Cでは自社が、モール出店では出店者が在庫を持ちます。ZOZOの受託販売はその間の形で、ブランドの商品をZOZOの物流拠点に「受託在庫」として預かって売ります。有価証券報告書は、受託販売では基本的な品揃えの計画(マーチャンダイジング)をブランド側が行い、ZOZOは在庫のリスクを負わないと説明しています(第28期 有価証券報告書)。2026年3月期は、ZOZOの商品取扱高全体のうち73.9%を受託販売が占めています(会社の開示)。
物流は、売り手が自社で持つ、モールの運営者に任せる、3PL(物流をまとめて請け負う会社)に任せる、の3つの道があります。自社で持つMonotaROでは、2025年12月末の連結の従業員3,612人(正社員とアルバイト・派遣の合計)のうち、1,871人が物流センターで働いています(本記事の計算で約52%)。同社の2025年の物流関連コストは、単体の売上高に対して6.2%でした(2025年12月期決算説明資料)。運営者に任せる例がAmazonで、年次報告書では、出品者の注文の保管・出荷を代行するフルフィルメントの料金を、出品者から受け取る収入に含めています。3PLに任せる場合の受託の範囲は「3PLの業界地図」で扱っています。
送料は、表示が「送料無料」でも、運ぶ費用がなくなるわけではありません。売り手が商品の価格に含めるか、販促の費用として負担するか、買い手が払うかを、売り手やモールが決めています。ZOZOは、ZOZOTOWNに付随する事業として送料収入と決済手数料収入を持ち、1万2千円以上の購入で送料を無料にする施策も行っています。宅配の運賃や再配達の仕組みは「トラック輸送・宅配・郵便の業界地図」で扱います。
代金を誰が受け取るかも、形によって違います。直販やD2Cでは、売り手がカード会社や決済代行と契約して代金を受け取ります。場の運営者が、買い手の代金をいったん受け取る形もあります。メルカリは、出品者が商品を売った後の売上金を一時的に預かっており、決算書では「預り金」として計上しています(第13期 有価証券報告書)。決済代行の役割と手数料の分け方は「クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図」で扱っています。
集客は、自社サイトなら売り手が広告や会員向けの販促で行います。モールでは、モール自体に買い手が集まる一方、出店者はモールの中の広告にお金を払って目立たせることもあります。Amazonは年次報告書で、出品者や仕入れ先などにスポンサー広告などの広告を売っていると書いています。
場を運営する会社は、代金ではなく手数料・広告・物流代行で稼ぐ
モール・マーケットプレイス・フリマを運営する会社の収入は、場で動いた代金そのものではありません。出店料などの固定の料金、販売手数料、広告料、物流代行料、決済に関わる手数料などを、運営者ごとに組み合わせて受け取ります。
モールで払われた代金のうち、運営者の売上になるのは手数料などの部分
そのため、場の大きさを示す数字と、運営会社の売上は別のものです。場で動いた取引の合計は、会社ごとに「流通総額」「取扱高」「GMV」などと呼ばれます。出店者や出品者の売上を合計した数字で、楽天の国内EC流通総額のように消費税を含むものもあります。楽天グループの国内EC流通総額は、楽天市場の取引に加え、トラベルの宿泊、日用品の直販、フリマのラクマなどの流通額を、一部を除いて消費税込みで合計した数字で、楽天の売上収益ではありません(2025年度第4四半期 決算説明資料)。何を含めるかは会社ごとに違うため、流通総額どうしや、流通総額と売上を並べて比べることはできません。
運営会社が何を売上にしているかは、会社の開示で確かめられます。
- ZOZOは、受託販売の売上として、商品取扱高に手数料率を掛けた受託販売手数料だけを計上しています。ZOZOは有価証券報告書で、重視する経営指標を商品取扱高としています。
- Amazonは、出品者の取引では販売者ではなく、固定の料金、売上に対する割合、商品1点ごとの料金などを組み合わせた手数料と、関連するフルフィルメント・配送の料金を収入にしています。自社が仕入れて売る販売は、商品の代金を売上にします。
- LINEヤフーは、ネットオークションのYahoo!オークションで、落札金額に応じた落札システム利用料を出品者から受け取り、収益にしています(第31期 有価証券報告書)。
- メルカリは、売り手と買い手の間で商品の受け取りと評価が終わった時点で、取引の金額に一定の料率を掛けた取引手数料を収益にしています。2025年6月期の有価証券報告書は、取引手数料を商品代金の10%と説明しています。国内の配送は配送会社への取り次ぎとして、配送料を差し引いた純額を収益にしています。
場の運営者は、出店者の数と買い手の数の両方を増やすほど、取引が増えて手数料が増えます。運営会社の仕事に、出店者を集めて売り方を提案する営業と、買い手を集める広告・販促の両方があるのはこのためです。手数料率や規約は運営会社ごとに違い、改定もあるため、出店を比べるときは各社の最新の規約で確かめます。
メーカーや店舗を持つ小売のECは、自社の在庫と顧客を使う
メーカーや、店舗を持つ小売のECは、もともと持っている在庫・ブランド・顧客をネットでも使う形です。D2Cでは、メーカーが自社の商品と顧客の情報を持ち、店や卸を通さずに売ります。店舗を持つ小売では、店とネットで在庫を分けるか共有するか、ネットで注文した商品を店で受け取れるようにするかで、店舗の仕事と物流の仕事が変わります。
店舗とECの境目は、会社の数え方でも変わります。Amazonの年次報告書は、ネットで注文して実店舗で受け取る売上を、実店舗ではなくオンラインストアの売上に数えています。ZOZOは、ZOZOTOWNからブランドの実店舗へ客を送る仕組み「ZOZOMO」を持っています。店舗とネットの両方で売る会社では、求人票の「EC担当」が、ネットの売上だけを見るのか、店舗との連携まで受け持つのかを確かめる必要があります。
店舗を持つ小売のEC化の進み方や、業態ごとの違いは「小売・ECの業界地図」で扱っています。
ECに届くルール:特定商取引法と2つのプラットフォーム法
ネット通販には、売り手に向けたルールと、場の運営者に向けたルールがあります。義務か努力義務か、誰が対象かが法律ごとに違います。
| 法律 | 対象 | 求めること | 義務の強さ |
|---|---|---|---|
| 特定商取引法(通信販売) | ネット通販の売り手(直販・D2C・出店者)。フリマの個人の出品者は、通常は販売業者に当たらない | 広告に販売価格(送料を含む)、支払いと引渡しの時期、返品のルールなどを表示する。誇大な広告をしない | 義務 |
| 取引デジタルプラットフォーム消費者保護法 | モールやフリマなど、事業者(販売業者)が消費者に売る場の運営者 | 買い手が売り手と連絡できる措置、表示への苦情の調査、売り手に所在などの情報を求めること | 努力義務 |
| デジタルプラットフォーム取引透明化法 | 国が指定した大規模なモールの運営者 | 出店者への取引条件の開示、出店者との相互理解のための措置、毎年度の報告 | 指定された運営者の義務 |
特定商取引法では、ネット通販の売り手は、広告に販売価格(送料を含む)、代金の支払いの時期と方法、商品の引渡しの時期、申込みの撤回や契約の解除(返品)に関するルールなどを表示しなければなりません(第11条)。返品のルールを表示していない場合、買い手は商品を受け取った日から8日以内なら、申込みの撤回や契約の解除ができ、返品の費用は買い手が負担します。返品を受けない、などのルールを表示していれば、そのルールが優先します。ネット通販では、広告と、申込みの最終確認の画面などの両方に表示しておく必要があります(第15条の3)。これは訪問販売などのクーリング・オフとは別の、通信販売の返品の仕組みです。消費者庁の特定商取引法ガイドは、申込みの最終確認の画面での表示や、承諾していない人への電子メール広告の原則禁止なども説明しています。
取引デジタルプラットフォーム消費者保護法(正式名は「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」)は、モールやフリマのように、消費者が売り手に申込みをできる場の運営者を対象にします。対象になるのは、事業者(販売業者)が売り手になる取引です。運営者は、買い手が売り手と円滑に連絡できるようにする措置、商品の表示に関する苦情の調査、必要に応じて売り手に所在などの情報を求めることに「努めなければならない」とされています(第3条)。売り手の確認を運営者に義務づける法律ではありません。一方で、重要な表示が著しく事実と違い、売り手を特定できないときなどには、国が運営者に出品の停止などを求めることができます(第4条)。買い手は、返金や損害賠償など、一定の金額を超えるお金を売り手に請求するために必要な場合に限り、運営者に売り手の氏名や住所などの開示を求めることができます(第5条)。
デジタルプラットフォーム取引透明化法(正式名は「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」)は、運営者と出店者の取引を対象にする法律で、消費者保護の法律とは別です。取引条件の開示や国への報告の義務を負うのは、国が指定した「特定デジタルプラットフォーム提供者」だけです(指定の前に、規模の大きい運営者には国への届出の義務があります)。総合物販のオンラインモールでは、出店者の売上と運営者自身の直販の売上を合わせた国内の売上額が、年度(4月〜翌年3月)で3,000億円以上であることが、指定の基準です(政令)。指定された運営者は、出店を断る基準や検索順位を決める主な要素などを出店者に開示し、取引条件を変えるときは事前に内容と理由を示し、毎年度、国に報告書を出さなければなりません(第5条・第7条・第9条)。経済産業省は、規制の大枠を法律で決め、詳しい取り組みは事業者の自主性に任せる「共同規制」の法律だと説明しています(法律のポイント)。経済産業省が2025年12月に公表した評価では、総合物販オンラインモールの分野の報告書を、アマゾンジャパン、楽天グループ、LINEヤフーの3社が出しています(評価のページ)。中小のモールや出店者が、この法律の開示や報告の義務を負うわけではありません。
直販・出店者・運営者・物流・サポートで、EC担当の仕事は違う
同じ「EC」の求人でも、どの形の会社のどの立場かで、仕事の相手と成果物が変わります。
同じ「EC」でも、立場によって仕事の相手が変わる
| 立場 | 主な相手 | 主な仕事の例 | 確かめた職種名の例(2026年10月31日時点) |
|---|---|---|---|
| 直販・D2Cの会社 | 仕入れ先、自社の顧客 | 品揃えと仕入れ、在庫の量、自社サイトの販促、プライベートブランドの開発 | MonotaRO「マーチャンダイズ(MD)/プライベートブランド開発」、Amazon「Vendor Manager」 |
| 出店者(メーカー・小売) | モールの運営者、買い手 | 商品ページの登録、モールの中の広告と販促、売上の分析、問い合わせへの対応 | 会社ごとに名前が違い、この記事では特定の職種名を確かめていない |
| 場の運営者 | 出店者、買い手 | 出店者の獲得と売り方の提案、広告の審査、規約と取引条件の運用 | 楽天グループ「ECコンサルタント」(営業・コンサルタントの例)、Amazon「Account Manager, Amazon Business Marketplace」(事業者向けのマーケットプレイス) |
| 物流 | 倉庫の作業者、配送会社 | 入荷・保管・出荷の運営、在庫の管理、物流の企画 | MonotaRO「ロジスティクス」、ZOZO「ZOZOBASEスタッフ(契約社員・アルバイト)」、楽天グループ「物流・SCM・その他」 |
| カスタマーサポート | 買い手、出店者 | 注文・配送・返品の問い合わせへの対応、運用の改善 | MonotaRO「カスタマーサポート」、ZOZO「カスタマーサポートスタッフ(契約社員)」、メルカリ「カスタマーサービス」 |
職種名は、各社の採用ページの職種の区分や募集の名前で、表の行の仕事の例と1対1で対応するわけではありません。個別の求人の内容は会社と時期によって違います。楽天グループの採用ページでは「ECコンサルタント」は職種区分「営業・コンサルタント」の例の1つとして挙がり、「カスタマーサポート・運用管理」の区分には広告審査も含まれています(楽天グループ 中途採用 ビジネス職)。MonotaROは、MD・カスタマーサポート・ロジスティクスを別の職種として募集しています(MonotaRO 採用情報)。ZOZOは、物流拠点ZOZOBASEのスタッフとカスタマーサポートのスタッフを、契約社員・アルバイトで募集しています(ZOZO アルバイト採用)。
求人票では、次の3点を確かめます。
- 会社の形:自社が売り手の直販・D2Cか、モールの出店者か、場の運営者か。運営者なら、相手は買い手よりも出店者が中心になる
- 在庫と物流:在庫を自社で持つか、物流を自社で持つか、モールや3PLに任せているか。物流を自社で持つ会社では、物流センターの仕事の比重が大きくなる
- 担当の範囲:商品ページと販促だけか、仕入れと在庫まで受け持つか、店舗との連携まで受け持つか
物流センターの運営を請け負う会社の側から見た仕事は「3PLの業界地図」、決済の仕組みの側から見た仕事は「クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図」で確かめられます。
