「小売」と書かれた求人には、スーパーの売場やレジ、コンビニ本部で加盟店を回る仕事、ドラッグストアの登録販売者、家電の販売員、百貨店の売場、ネット通販のサイト運営まで幅があります。どの店も食品や日用品を並べているので、業態の違いは見えにくくなっています。それでも、会社が商品を仕入れて売るのか、自社で企画するのか、売場を貸すのか、加盟店を支える本部なのかで、仕事の相手もお金の入り方も変わります。
この記事では、業態ごとに主に何を売り、どの型で稼ぐかを一枚の地図にします。そのうえで、大きさを測る物差しの違い、業態の境目の読み方、店を始めるときと売るときのルール、稼ぎ方の違い、変化が届く仕事を順に確かめます。会社どうしの売上や店舗数の順位は作りません。
扱う範囲は、店で物を売る小売と、ネット通販です。外食、新車の販売、書店と出版の流通、携帯電話の販売店は扱いません。
店やネット通販の荷物を預かる・運ぶ仕事は「倉庫業の業界地図」「3PLの業界地図」「トラック輸送・宅配・郵便の業界地図」、小売の会社が持つカードや決済の事業は「クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図」で確かめられます。この記事は、次にどの地図を読むかを決めるための全体図です。
薬や調剤を扱う店は「ドラッグストア・調剤薬局の業界地図」、生活拠点型の小型店は「コンビニの業界地図」、生鮮・惣菜と加工拠点は「食品スーパーの業界地図」で詳しく確認できます。
業態と稼ぎ方で、小売の求人の位置を見分ける
小売の会社は、2つの軸で見分けられます。1つは業態で、どんな店で、主に何を売るかです。もう1つは稼ぎ方で、仕入れた商品を売るのか、自社で企画した商品を売るのか、売場を貸すのか、加盟店を支える本部なのか、処方箋の薬を調剤するのかです。下の図は、業態を行に、商品を列に並べ、主な稼ぎ方と次に読む地図を添えたものです。印は目安で、統計の構成比ではありません。
業態ごとに、主に売る商品と稼ぎ方が違う
●は売場や売上の中心になる商品、○は扱う商品、-はほとんど扱わない商品。この記事の整理で、統計の構成比ではなく、会社や店によって違う。稼ぎ方は業態の主な型で、自社ブランド(PB)などを持つ会社がほかの業態にもある。ドラッグストアの食品は、統計で商品販売額の約34.1%(2025年、計算値)。ネット通販の商品ごとの割合は次の図のEC化率を見る。1つのグループが複数の業態を持つことがある(例:イオンはGMS・スーパーマーケット・ディスカウントストア・ドラッグストアを別々の報告セグメントで開示)。
- 百貨店:衣料品・身の回り品から食料品まで、大きな店で幅広く売ります。売場を自社で運営する形と、ブランドなどに任せる形があります。
- 総合スーパー(GMS):食品に加え、衣料品や住まいの品まで1つの店で売ります。ショッピングセンターの核の店になることもあります。
- 食品スーパー:生鮮品・惣菜・加工食品を中心に売るセルフサービスの店です。食品中心のディスカウント(トライアルなど)もこの行に置きます。売場の部門と再編は「食品スーパーの業界地図」で扱います。
- コンビニ:本部が商品と仕組みを用意し、加盟店が店を運営する形(フランチャイズ)で店を広げています。本部と加盟店の分け方は「コンビニの業界地図」で扱います。
- ドラッグストア:医薬品・化粧品・日用品・食品を売り、店に調剤薬局を併設する会社もあります。物販と調剤の組み合わせは「ドラッグストア・調剤薬局の業界地図」で扱います。
- 家電量販店:家電を仕入れて売ります。ヤマダホールディングスは、報告セグメント(事業の区分)を「デンキ」「住建」「金融」「環境」に分けて開示しています(2026年3月期決算短信)。家電の販売に住宅やリユースの事業を組み合わせる例です。
- ホームセンター・家具:日用品と住まいの品、園芸や工具を売ります。
- 衣料品専門店:自社で企画した服を自社の店とネットで売る形(SPAと呼ばれます)と、ほかのブランドの服を仕入れて売る形があります。ファーストリテイリングは、決算短信では衣料品の販売を主な事業とし、国内ユニクロ・海外ユニクロ・ジーユー・グローバルブランドの4つの事業を報告セグメントにしています(2026年8月期決算短信)。
- ネット通販(EC):ここでは、インターネットで注文を受けて売る形を1つの行にまとめました。自社で仕入れて売る会社と、売り手と買い手をつなぐ場(モール)を運営する会社では、在庫・物流・決済の持ち方が違います。詳しくは「EC業界地図」で扱います。
1つのグループが、いくつもの業態を持つこともあります。イオンは、総合スーパー(GMS)、スーパーマーケット(コンビニと小型スーパーを含む)、ディスカウントストア、ドラッグストアと調剤薬局、ショッピングセンターの開発と賃貸、クレジットカードと銀行を、別々の報告セグメントとして開示しています(2026年2月期決算短信)。求人を見るときは、グループの名前だけでなく、募集する会社がどの業態の店を運営しているかを確かめます。
大きさは、物差しによって違う数字になる
小売の大きさを示す数字は、何を数えるかで変わります。国の統計でも、業種で数えるか業態で数えるか、店の販売額かネット通販の取引額かで、範囲も年も違います。足し合わせて「小売の市場は○兆円」としたり、割り算で業態の割合を出したりはできません。
業態の大きさは、どの物差しで見るかで違う数字になる
2025年1月分で水準の調整をしたため、2024年以前の金額とはそのまま比べない(前年比は統計の公表値)
物販系分野のEC化率 9.78%(前年9.38%)
サービス系・デジタル系を含む全体は26.1兆円。EC化率は物販系分野だけで求める。分母は家計の消費の統計などからの推計で、商業動態統計の販売額ではない
業態で数える物差しは、同じ統計の業態別の販売額です。2025年の販売額は、百貨店が6兆2,124億円、スーパーが16兆8,026億円、コンビニが13兆3,212億円、ドラッグストアが9兆4,129億円、家電大型専門店が4兆9,214億円、ホームセンターが3兆3,917億円でした。ただし、業態ごとに調査の対象の決め方が違います。
- 百貨店とスーパー:従業者50人以上の事業所が対象です。スーパーは、売場面積の50%以上でセルフサービスの方式をとり、売場面積が1,500㎡以上の事業所です。
- コンビニ:500店舗以上のチェーンの本部が対象で、加盟店の売上を含む店の売上です。
- ドラッグストア:50店舗以上か、年間販売額100億円以上の企業が対象です。
- 家電大型専門店:売場面積500㎡以上の店を10店舗以上持つ企業が対象です。
- ホームセンター:10店舗以上か、年間販売額200億円以上の企業が対象です。
このため、小さな店や小さなチェーンは入らない業態があります。たとえば統計の「スーパー」は、総合スーパーと食品スーパーの両方を含みますが、売場1,500㎡以上などの条件を満たす店だけで、小さな食品スーパーは入りません。業態どうしで重なりや抜けもあります。業態別の販売額を合計したり、小売業計に対する割合を出したりはしません。
ネット通販の物差しは、経済産業省の電子商取引に関する市場調査です。最新は2024年(暦年)の値です。2025年の値の調査は、2026年10月31日の時点で経済産業省の調査の一覧に載っていません。物販系分野(物を売るネット通販)の消費者向けの市場は15兆2,194億円で、前年より3.70%増えました。物販系分野のEC化率(物を買う取引のうちネット通販の割合)は9.78%です。消費者向けのネット通販の全体は26.1兆円ですが、旅行の予約などのサービス系や、音楽・動画などのデジタル系を含み、これらにはEC化率がありません。
EC化率の分母は、家計の消費の統計などから推計した市場の大きさで、商業動態統計の販売額ではありません(報告書)。年も分母も違うため、ネット通販の金額を商業動態統計の販売額で割って割合を作ることはしません。
物販系分野のEC化率は、商品によって大きく違います。2024年は、書籍・映像・音楽ソフトが56.45%、生活家電・AV機器・PC等が43.03%、生活雑貨・家具・インテリアが32.58%、衣類・服装雑貨等が23.38%、化粧品・医薬品が8.82%、食品・飲料・酒類が4.52%でした。家電や家具ではネット通販で買われる割合が高く、食品では店での買い物が中心です。
働く人の数では、総務省の労働力調査で、2025年平均の「卸売業,小売業」の就業者は1029万人で、前の年より16万人減りました。卸売業と小売業を合わせた数で、小売業だけの人数ではありません。
求人や会社案内で「市場規模○兆円」「売上○兆円」という数字を見たら、業種の集計か業態の集計か、ネット通販なら物販系かどうか、いつの年の数字かを確かめます。
業態の境目:食品はどの業態でも売られている
食品は、ほとんどの業態で売られています。商業動態統計の2025年の値で見ると、スーパーの販売額16兆8,026億円のうち飲食料品は13兆6,428億円、百貨店の販売額6兆2,124億円のうち飲食料品は1兆6,124億円です。ドラッグストアでも、商品販売額9兆4,129億円のうち食品が3兆2,081億円で、計算すると約34.1%です。コンビニも食品が中心の業態です。食品を売る仕事は、業態の名前だけでは見分けられません。
総合スーパーと食品スーパーは、統計では、どちらも条件を満たせば同じ「スーパー」に入ります。スーパーの定義は、セルフサービスの売場の割合と売場面積で決まり、総合スーパー(GMS)と食品スーパーを分けた値はありません。売場が1,500㎡より小さい店は入らないため、食品スーパー全体の大きさでもありません。この記事の地図では、総合スーパーの食品売場は総合スーパーの行に置き、食品スーパーの行には入れません。業界団体の統計など、別の数え方は「食品スーパーの業界地図」で扱います。

会社の開示では、この2つが分かれていることがあります。イオンは、総合スーパー(GMS)事業と、スーパーマーケット事業、ディスカウントストア事業を別の報告セグメントにしています。1社の区分の例で、統計の「スーパー」と同じ範囲ではありません。
ディスカウントストアは、この記事では2つに分けて置きます。衣料品や住まいの品まで広く扱う総合ディスカウントストアは総合スーパーの行に、食品中心のディスカウント(トライアルなど)は食品スーパーの行に置きます。
ドラッグストアの食品は、統計では約34.1%(計算値)ですが、会社によって構成は大きく違います。どの商品で利益を出しているかは、決算短信に商品ごとの利益率が出ていないため、この記事では書きません。会社ごとの構成と調剤の大きさは「ドラッグストア・調剤薬局の業界地図」で扱います。

店を始めるときと売るときのルール
小売には、業態に関係なくかかるルールと、特定の業態だけにかかるルールがあります。義務か、努力義務(努めなければならない)か、国が「できる」と定めた規定かを分けて並べると、次のとおりです。
| ルール | かかる相手 | 義務の種類 | 中身 | 詳しく読む地図 |
|---|---|---|---|---|
| 大規模小売店舗立地法 第5条 | 店舗面積の合計が1,000㎡を超える建物を新しく設ける者 | 届出の義務。許可の制度ではない | 店の名前・所在地、店舗面積の合計、施設の配置や運営の方法を都道府県に届け出る。届出から8か月を過ぎないと新設できない | 本記事の対象外 |
| 中小小売商業振興法 第11条・第12条 | 主に中小の小売業者を加盟させ、商標を使わせて加盟金などを集める本部 | 契約前の書面の交付と説明は義務。従わない本部に国は勧告でき、従わなければ公表できる | 加盟金、商品の販売条件、経営の指導、契約の期間・更新・解除などを書面で渡して説明する | コンビニの業界地図 |
| 医薬品医療機器等法 第4条・第26条・第36条の9 | 医薬品を売る店 | 許可(店舗ごと) | 市販薬を売る店は店舗販売業の許可を受ける。第一類医薬品は薬剤師が、第二類・第三類は薬剤師か登録販売者が売る。調剤には薬局の許可が要る | ドラッグストア・調剤薬局の業界地図 |
| 特定商取引法 第11条・第15条の3 | 通信販売をする事業者 | 広告の表示は義務 | 価格・送料、支払いと引渡しの時期、返品の条件などを広告に表示する。返品の条件の表示がなければ、商品を受け取ってから8日以内は申込みの撤回や契約の解除ができる(費用は買った人の負担) | EC業界地図 |
| 取引デジタルプラットフォーム消費者保護法 第3条 | 消費者がほかの売り手から買える場(モールなど)を運営する事業者 | 努力義務 | 売り手と消費者が連絡を取れるようにする、表示への苦情を調べる、売り手に所在などの情報を求める | EC業界地図 |
大型店のルールは、店舗面積の合計が1,000㎡を超える建物が対象です(大規模小売店舗立地法施行令 第2条)。都道府県は、条例で区域を決めて、1,000㎡より大きい基準の面積を定めることができます(法第3条第2項)。出店の可否を国や都道府県が許可する制度ではなく、届け出て8か月待つ制度です。百貨店や総合スーパーの店舗開発の仕事に関わります。
フランチャイズの本部は、加盟しようとする人と契約する前に、書面を渡して説明しなければなりません。書面には、本部の直近3年の決算書、加盟店の店舗数の推移、立地が似た加盟店の直近3年の収支なども入ります(中小小売商業振興法施行規則 第10条・第11条)。この義務は、主に中小の小売業者を相手にする本部が対象です。すべてのフランチャイズ契約に同じようにかかるとは限りません。
医薬品の区分と、薬剤師・登録販売者が売れる範囲は、「ドラッグストア・調剤薬局の業界地図」で条文をもとに確かめています。
通信販売の8日間の決まりは、訪問販売などのクーリング・オフとは別のものです。広告に返品の条件(返品特約)を表示していれば、その条件が優先します。モールの運営者の決まりは、上の表のとおり努力義務で、出店する売り手の確認がすべて義務になっているわけではありません。モールと出店者の取引の決まりも含めて、「EC業界地図」で扱います。

仕入れて売る・自社で企画する・場所を貸す・本部・調剤:業態で違う稼ぎ方
小売の会社の収入は、大きく5つの型に分けられます。1つの会社がいくつもの型を持つこともあります。下の図は、型ごとにお金の入り方と、主な業態、会社の開示に出ている例を並べたものです。会社の大きさは比べていません。
業態ごとに、お金の入り方は5つの型に分かれる
- 金融:イオンの総合金融事業(クレジットカード・銀行など)、三越伊勢丹ホールディングスの「クレジット・金融・友の会業」、ヤマダホールディングスの「金融」(住宅の資金や保険などの提案)。カード会社の稼ぎ方は「クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図」
- 同じ売場でも売上の数え方が違う:三越伊勢丹ホールディングスの2026年3月期の売上高は5,456億円、会計のルール(収益認識に関する会計基準など)を適用しなかった場合の総額売上高は1兆2,995億円
仕入れて売る型では、メーカーや卸から仕入れた商品を売り、売上から仕入れの原価を引いた粗利(売上総利益)が収入の元になります。粗利の幅と、在庫をどれだけ早く売り切れるかが利益を左右します。食品スーパー、家電量販店、ドラッグストアの物販など、多くの業態の基本の形です。
自社で企画して売る型では、商品を自社で企画し、つくる工場を手配して、自社の店やネットで売ります。衣料品専門店のSPAのほか、スーパーなどの自社ブランド(PB)の商品もこの型の一部です。生産する量を自社で決めるため、売れ残りのリスクがより大きくなります。イオンは、PBのトップバリュについて、商品の戦略・計画から調達、製造、物流、店舗の運営までを含むサプライチェーンを築いてきたと書いています(2026年2月期決算短信)。家電量販店でも、ヤマダホールディングスがデンキセグメントの戦略に「PB・SPAヤマダオリジナル商品の積極的開発」を挙げています(2026年3月期決算短信)。これは1社の方針の例で、家電量販店に共通する稼ぎ方を示すものではありません。
場所を貸す型では、ショッピングセンターや店の中の区画を、ほかの店に貸して賃料を得ます。イオンは、ショッピングセンターの開発と賃貸を、ディベロッパー事業という別の報告セグメントにしています。2026年2月期の営業収益は5,224億円で、このうち909億円はグループ内の取引です。グループの店が賃料などを払う側にもなるため、1社の中の事業どうしの利益は比べません。三越伊勢丹ホールディングスも、不動産賃貸やテナントの管理を行う「不動産業」を報告セグメントの1つにしています(2026年3月期決算短信)。
本部として加盟店を支える型は、コンビニの本部の形です。セブン‐イレブン・ジャパンの2026年2月期は、自営店と加盟店の売上を合わせた「チェーン全店売上」が5兆4,693億円でした。一方、親会社の連結の営業収入に含まれる、セブン‐イレブン・ジャパンの加盟店からの収入は8,289億円で、その対象となった加盟店の売上高は5兆4,199億円です(セブン&アイ・ホールディングス 2026年2月期決算短信)。加盟店から本部が受け取るのは、店の売上総利益をもとにしたロイヤルティで、加盟店の売上そのものは本部の収益になりません。本部と加盟店の分け方は「コンビニの業界地図」で扱います。

調剤の型では、薬局が医師の処方箋にもとづいて薬を調剤し、その費用を保険と患者から受け取ります。国が決めた報酬の基準で収入が決まる点が、ほかの型と違います。商業動態統計のドラッグストアの「調剤医薬品」は、2025年に9,781億円でした。対象のドラッグストア企業が調剤した分だけで、調剤の市場全体ではありません。収入の内訳と報酬の改定は「ドラッグストア・調剤薬局の業界地図」で扱います。
5つの型のほかに、金融の事業を持つ小売の会社もあります。イオンはクレジットカード事業や銀行業などの総合金融事業を、三越伊勢丹ホールディングスはクレジットカードや友の会などの「クレジット・金融・友の会業」を、ヤマダホールディングスは住宅の資金や保険などを提案する「金融」を報告セグメントに置いています。カード会社の稼ぎ方は「クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図」で確かめられます。
同じ売場の売上でも、会社の決算に出る数字は数え方で変わります。三越伊勢丹ホールディングスの2026年3月期の売上高は5,456億円です。一方、会計のルール(収益認識に関する会計基準など)を適用しなかった場合の「総額売上高」は1兆2,995億円で、会社が決算説明資料で示しています(決算説明資料)。コンビニのチェーン全店売上と本部の営業収益の違いと同じく、「売上」がどの数え方かを確かめないと、会社の大きさを読み違えます。
働く人の減少・物流のルール・再編・ネット通販は、どの仕事に届くか
小売では、働く人の数、物流のルール、会社の再編、ネット通販の広がりが、それぞれ違う仕事に届いています。下の図は、主な変化と、それが届く仕事、詳しく読む地図を並べたものです。採用数の増減や、仕事がなくなるかどうかは予測していません。
働く人の減少・物流のルール・再編・ネット通販は、違う仕事に届く
働く人の数では、「卸売業,小売業」の就業者が2025年に16万人減りました。卸売業を含む数のため、小売業でどれだけ減ったかは、この数字からは分かりません。売場・レジ・品出しの人の確保と省人化の動きは、「食品スーパーの業界地図」で売場の部門ごとに扱います。
物流のルールでは、物流効率化法により、荷主と物流事業者に、2025年4月から物流の効率化の努力義務がかかっています。コンビニのような本部は、法律の上で「連鎖化事業者」と呼ばれます。商標を使わせて販売の方法を決め、加盟店が荷物を受け取る日時を指示できる本部のことで、荷待ちの時間を短くすることなどに努めなければなりません(第61条)。2026年4月からは、前の年度に扱った貨物の重量が9万トン以上の荷主と本部は国に届け出て、特定荷主・特定連鎖化事業者に指定されます。指定されると、中長期の計画の作成と提出、毎年度の定期の報告、物流統括管理者(物流の責任者)の選任が義務になります(本部〈特定連鎖化事業者〉は第64条〜第67条、国土交通省)。個別の指定先は、本記事の対象外です。本部の物流や商品の部門、店に届ける時間の調整、センターの運営を引き受ける会社の仕事に関わります。運送の仕組みは「トラック輸送・宅配・郵便の業界地図」、センターの運営は「3PLの業界地図」で扱います。
再編では、グループの形が変わっています。イオンは、2025年12月にツルハホールディングスとウエルシアホールディングスの経営統合が発効したあと、2026年1月にツルハを連結子会社にしました。イオンは統合後の店で、調達、商品開発、人材、データ活用などの分野の相乗効果を進めるとしています。セブン&アイ・ホールディングスでは、イトーヨーカ堂やヨークベニマルなど、ヨーク・ホールディングスの傘下の子会社が、2025年9月1日に連結の範囲から外れました。グループが変わると、本部の仕入れや商品開発、人事の仕組みが変わることがあります。
ネット通販では、物販系分野の市場が2024年に3.70%増え、EC化率は9.38%から9.78%になりました。店を持つ会社がネットでも売るのか、モールに出店するのか、自社でサイトを持つのかで、サイトの運営、問い合わせへの対応、物流センターの仕事の中身が変わります。形ごとの違いは「EC業界地図」で扱います。
職種の名前は、会社によって違います。たとえばセブン‐イレブン・ジャパンの新卒の募集職種は「総合職(オペレーション・フィールド・カウンセラー OFC)」で、加盟店に経営のカウンセリングを行う職種と説明されています(採用ページ)。この記事では、ほかの会社の採用職種名は確かめていません。図の「店長」「バイヤー」などは仕事の中身を示す言葉で、どの会社の職種名でもありません。
求人票では、業態・稼ぎ方・数字の物差しを確かめる
同じ「小売」の求人でも、業態と稼ぎ方によって、主な相手と、成果の測り方が違います。
| 業態 | 主な稼ぎ方 | 求人票で確かめること | 次に読む地図 |
|---|---|---|---|
| 百貨店・総合スーパー | 仕入れて売る、場所を貸す、自社ブランド | 売場を自社で運営するのか、テナントやブランドの管理か | 本記事の対象外 |
| 食品スーパー | 仕入れて売る、自社ブランド | 担当する部門(生鮮・惣菜・レジなど)と、店で加工するか | 食品スーパーの業界地図 |
| コンビニ | 本部として加盟店を支える | 本部の社員か、加盟店で働くのか | コンビニの業界地図 |
| ドラッグストア | 仕入れて売る、調剤 | 調剤薬局を併設する店か、資格(薬剤師・登録販売者)が要るか | ドラッグストア・調剤薬局の業界地図 |
| 家電量販店 | 仕入れて売る(自社企画の商品は会社による) | 販売のほか、設置や住宅の仕事があるか | 本記事の対象外 |
| ホームセンター・家具 | 仕入れて売る | 扱う商品の範囲と、法人向けの販売があるか | 本記事の対象外 |
| 衣料品専門店 | 自社で企画して売る、仕入れて売る | 自社の企画か、ほかのブランドの販売か | 本記事の対象外 |
| ネット通販 | 自社で売る、場を運営する | 自社の在庫を売るのか、出店者を支えるのか | EC業界地図 |
求人票では、次の3点を確かめます。
- 業態と職場:応募先は、どの業態の店か、本部か、物流センターか。グループの会社なら、募集する会社がどの業態を運営しているか
- 稼ぎ方:会社は、仕入れて売るのか、自社で企画するのか、場所を貸すのか、加盟店を支える本部なのか、調剤をするのか
- 数字の物差し:会社案内の「売上」は、店の売上か会社の収益か、総額か会計のルールに沿った額か。市場の数字なら、どの統計のどの年の値か
この3点が分かったら、次はその業態の業界地図で、会社ごとの違いと仕事の流れを確かめます。
消費者へ商品を売る小売と、事業者へ供給する商社・卸売では、売り先・在庫・物流の役割が異なります。 商社・卸売業界の地図
店を運営する小売と、商業施設や物流施設を開発して貸す不動産事業では、家賃を払う側と受け取る側が分かれます。 デベロッパー業界の地図


