証券会社の4業務、対面・銀行系・ネットの型、手数料・トレーディング・金融収支を整理。リテール、投資銀行、マーケッツの仕事が分かります。

「証券会社」と書かれた求人には、個人の資産の相談にのるリテール営業、企業の株や社債の発行を手伝う投資銀行の仕事、機関投資家と株や債券を売買するマーケッツの仕事、ネット証券のサービスを企画・運営する仕事、証券システムを作る仕事、口座や決済を管理する仕事まで幅があります。同じ証券会社でも、誰を相手に、何の対価を受け取っているのかで、仕事の中身も成果の測られ方も変わります。

この記事では、金融商品取引法の「第一種金融商品取引業」の登録を受けて株や債券の売買の取次ぎ、引受けなどを行う証券会社を扱います。法律上の業務の区分、会社の型、収益の内訳、部門と仕事、手数料の無料化とNISAによる変化を順に確かめます。個別の銘柄や証券会社の選び方は扱いません。

金融全体の中で証券がどの役割を担うかは「金融の業界地図」で扱います。証券会社が行うFX(外国為替証拠金取引)の収益や部署には触れますが、FXだけを行う会社と暗号資産の交換業者は、この記事では扱いません。

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会社の数字は、会社ごとに会計基準(日本基準・米国基準・IFRS)と連結の範囲が違います。この記事では、会社どうしの大きさの比較や順位は示さず、1社ずつ、その会社の中の構成を見ます。

証券会社は、金融商品取引法の登録を受けて4つの業務を行う

証券会社の仕事は、金融商品取引法で決まっています。金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けなければ行えません(第29条)。免許制ではなく、登録制です。

金融商品取引業は、いくつかの区分に分かれます。株や債券の売買の取次ぎ、引受け、募集の取扱い、有価証券の預託を受けることなどは「第一種金融商品取引業」です(第28条第1項)。投資信託の自己募集などの第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、運用会社が受ける投資運用業は、別の区分です。

証券会社は、4つの業務と信用取引で、顧客ごとに違う対価を受け取る

上は金融商品取引法の第一種金融商品取引業の中心になる4つの業務と、決算での収益の科目。下は業務の相手。

登録:金融商品取引業は内閣総理大臣の登録制(第29条)。株や債券の売買の取次ぎ・引受け・募集の取扱い・預託などは第一種金融商品取引業(第28条第1項)。自己資本規制比率120%以上(第46条の6)。
ブローカー売買の媒介・取次ぎ・代理(第2条第8項第2号・第3号)顧客の売買の注文を取り次ぐ相手:個人、機関投資家委託手数料
ディーラー自己の売買(同第1号)自社の勘定で株・債券・為替などを売買する相手:市場、機関投資家トレーディング損益
アンダーライター有価証券の引受け(同第6号)企業が発行する株や社債を引き受けて投資家に届ける相手:発行する企業引受け・売出し等の手数料
ディストリビューター募集・売出しの取扱い(同第9号)投資信託などの募集・売出しを取り扱う相手:個人、法人募集・売出し等の取扱手数料
信用取引・貸借取引顧客に購入資金や株を貸して売買させる金融収支(金融収益−金融費用)
その他の受入手数料上の4つに当たらない手数料。SBI証券の説明では、投資信託の代行手数料、アドバイザリー業務の手数料などその他の受入手数料
読み方:科目名は日本基準の証券会社の決算短信のもの。米国基準の野村ホールディングスは科目の立て方が違う。運用会社が受ける投資運用業(第28条第4項)は別の区分で、この記事では扱わない。銀行は有価証券関連業を原則として行えず(第33条第1項)、投資信託などの一定の範囲だけ登録金融機関として扱える(第33条の2)。
出典:金融商品取引法(e-Gov、2026年10月31日時点の現行版)第2条第8項・第28条・第29条・第33条・第33条の2・第46条の6、SBI証券「2026年3月期決算短信」。

第一種金融商品取引業の中心になる業務は、次の4つの呼び方で整理できます。

  • ブローカー:顧客の売買の注文を取り次ぐ(第2条第8項第2号・第3号)。対価は委託手数料
  • ディーラー:自社の勘定で売買する(同第1号)。損益はトレーディング損益に入る
  • アンダーライター:企業が発行する株や社債を引き受ける(同第6号)。対価は引受けの手数料
  • ディストリビューター:投資信託などの募集・売出しを取り扱う(同第9号)。対価は募集の取扱手数料

このほか、顧客に株の購入資金や株を貸して売買させる信用取引からは、金利などの金融収益が生まれます。個人の注文は、証券会社を通じて取引所などの市場に出されます。取引所や清算機関の事業そのものは、この記事では扱いません。

登録を受けた後も、財務の基準があります。第一種金融商品取引業者は、財務の健全さを示す自己資本規制比率を届け出て、120%を下回ってはなりません(第46条の6)。

銀行は、原則として株などの有価証券関連業を行えません(第33条第1項)。国債や投資信託などの一定の範囲だけは、登録金融機関として登録を受けて扱えます(第33条第2項・第33条の2)。このため、銀行のグループは証券会社を別の会社として持っています。

証券会社がいくつあるかは、数え方に注意が要ります。

出典数えているもの値読むときの注意
金融商品取引業者登録一覧(金融庁、2026年9月30日付)区分ごとの登録業者の数第一種295、第二種1,227、投資助言・代理業1,010、投資運用業463、全業者1,957第一種にはFXや店頭デリバティブの業者なども入り、証券会社の数ではない。1社が複数の登録を受けるので、内訳の合計と全業者数は一致しない
令和6年経済センサス‐基礎調査 第8-2表「金融商品取引業、商品先物取引業」の従業者数109,660人証券会社のほか、運用会社、投資助言業、商品先物取引業を含み、証券会社だけの人数は分けられない。雇用者のいない個人経営の事業所は除く

この記事で取り上げる野村證券、大和証券、SMBC日興証券、SBI証券、楽天証券、松井証券は、いずれも登録一覧で第一種金融商品取引業と有価証券関連業の欄に印があります。商品先物の取引も、経済センサスでは証券と同じ分類に入ります。SBI証券と楽天証券は、会社の表示で商品先物取引業者でもあります。この記事では、商品先物の制度には立ち入りません。

会社の型:大手総合・銀行系・ネット証券と、資本のつながり

証券会社は、大きく次の型に分けて見ると、求人の違いが分かりやすくなります。

型この記事の例主な顧客特徴
大手総合野村ホールディングス(野村證券)、大和証券グループ本社(大和証券)個人、事業法人、機関投資家リテール・投資銀行・マーケッツ・資産運用の部門を1つのグループに持つ
銀行系SMBC日興証券(三井住友フィナンシャルグループ)個人、事業法人、機関投資家銀行のグループの中の証券会社。銀行は有価証券関連業を原則として行えないため、別の会社になる
ネット証券SBI証券、楽天証券、松井証券主に個人インターネットでの取引が中心。SBI証券と松井証券では、信用取引などの金融収支も大きい
外資系投資銀行(この記事では会社を挙げない)事業法人、機関投資家決算と職種をこの記事では確かめていないため、型として触れるだけにする

大手総合の2社は、部門の分け方が似ています。野村ホールディングスの事業の区分は、ウェルス・マネジメント、インベストメント・マネジメント、ホールセール、バンキングの4つです(2026年3月期決算短信)。大和証券グループ本社は、ウェルスマネジメント、アセットマネジメント、グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキングの3つです(2026年3月期決算短信)。大和のグループには銀行業もあり、連結の貸借対照表に「銀行業における預金」があります。

銀行系の例のSMBC日興証券は、上場していませんが、自社で決算短信を公表しています。証券事業の中間持株会社「SMBC日興証券ホールディングス」は2026年10月1日に設立され、SMBC日興証券は同社の100%子会社となりました(SMBC日興証券の会社概要・グループ会社一覧)。中間持株会社はグループ会社の経営戦略の策定・推進と経営管理を担います。SMBC日興証券とSMBC日興ジェフリーズ証券を合併するものではありません。SMBC日興ジェフリーズ証券は、米国のJefferiesとの日本株事業の合弁会社で、2027年1月の営業開始を予定しています。登録一覧には、みずほ証券も第一種・有価証券関連業として載っています。

ネット証券も、グループの形はさまざまです。SBI証券は、上場するSBIホールディングスのグループ会社です。SBIホールディングスの事業の区分では、証券は銀行・保険と同じ「金融サービス事業」に入り、証券だけの数字は出ていません(2026年3月期決算短信(訂正後))。この記事では、SBI証券自身の決算短信を使います。

楽天証券は楽天グループの会社で、2022年10月からみずほ証券と資本業務提携を結んでいます。2023年11月には、楽天証券ホールディングスが持つ楽天証券の株式の約29.01%を、みずほ証券に追加で譲ることで合意しました。譲渡後の楽天証券ホールディングスの出資比率は51%とされました(楽天グループの公表資料)。2026年10月1日には、グループの再編で、楽天証券ホールディングスは楽天銀行の連結子会社になりました(楽天グループの公表資料)。再編後の株主の構成は、この記事では扱いません。

松井証券は、オンライン専業の証券会社です。同社は決算短信で自らを独立系と説明し、中途採用サイトでは社員を200人としています(中途採用サイト)。

収益の内訳:手数料・トレーディング・金融収支の割合は、会社で大きく違う

日本基準の証券会社の決算では、収益は主に3つに分かれます。

  • 受入手数料:委託手数料、引受け・売出し等の手数料、募集・売出し等の取扱手数料、その他の受入手数料の4つに分かれる
  • トレーディング損益:自社の勘定での売買などから生まれる損益
  • 金融収支:信用取引の金利などの金融収益から、金融費用を引いたもの。銀行業を持つグループの連結では、銀行の利息も入りうる

同じ証券会社でも、稼ぎ方の中身は会社で大きく違う

日本基準の4社について、受入手数料の4区分・トレーディング損益・金融収支の6項目の合計を100%とした割合(2026年3月期、本記事の計算)。会社どうしの金額の大きさは比べていない。

日本基準の4社:収益の6項目の構成
委託手数料引受け・売出し等募集・売出し等の取扱その他の受入手数料トレーディング損益金融収支
大和証券グループ本社大手総合・連結委託16.2%、引受け5.9%、募集3.9%、その他の受入手数料44.7%、トレーディング15.6%、金融収支13.7%
SMBC日興証券銀行系・連結委託17.6%、引受け9.9%、募集10.8%、その他の受入手数料42.5%、トレーディング11.0%、金融収支8.2%
SBI証券ネット・連結委託12.9%、引受け2.5%、募集3.1%、その他の受入手数料23.9%、トレーディング22.3%、金融収支35.2%
松井証券ネット・非連結委託50.5%、委託以外の受入手数料(引受け・募集・その他の合計。この帯だけ「その他」の色で示す)2.4%、トレーディング11.9%、金融収支35.3%
野村ホールディングス(米国基準):事業の区分の構成
ホールセールウェルス・マネジメントインベストメント・マネジメントバンキング
野村ホールディングス大手総合・経営管理上の数値ホールセール59.2%、ウェルス・マネジメント24.9%、インベストメント・マネジメント13.2%、バンキング2.7%(4区分の合計を100%とした割合)
読み方:金融収支は金融収益から金融費用を引いた値(SBI証券は会社公表値、ほかは本記事で計算)。6項目の合計は各社の純営業収益と一致しない(大和はその他の営業収益などを含まない)。大和は、グループの銀行業の利息も金融収支に含む連結の数字。その他の受入手数料の中身は、大和の決算短信では分からない(連結の受入手数料のうち120,436百万円はアセットマネジメント部門のもの)。SMBC日興では投資信託の手数料が主に募集の取扱手数料とその他の受入手数料の両方に入る。松井証券は非連結の数字。野村は「受入手数料」の科目がない米国基準のため、上の4社とは並べず、色も別の凡例にしている。
出典:大和証券グループ本社・SMBC日興証券・SBI証券「2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」、松井証券「2026年3月期決算短信〔日本基準〕(非連結)」、野村ホールディングス「2026年3月期決算短信〔米国基準〕(連結)」のセグメント情報。割合は本記事で計算。

図は、日本基準で同じ科目を開示している4社について、受入手数料の4区分、トレーディング損益、金融収支の6項目の合計を100%として、それぞれの割合を本記事で計算したものです(2026年3月期)。6項目の合計は、各社の純営業収益と同じではありません。会社どうしの金額の大きさは比べていません。

大和証券グループ本社(連結)では、受入手数料478,481百万円のうち、その他の受入手数料が302,348百万円です。受入手数料だけを分母にして本記事で計算すると約63%です。図の帯の44.7%は6項目の合計に対する割合で、分母が違います。決算短信の科目からは、その他の受入手数料の中身までは分かりません。大和の金融収支は、グループの銀行業の利息も含む連結の数字です。委託手数料は109,684百万円、トレーディング損益は105,855百万円です。同社は、ウェルスマネジメント部門の増益の要因として、株式などのエクイティの収益の増加と、ラップ口座サービスの契約額・純増額が高い水準を維持したことを挙げています。

SMBC日興証券(連結)では、受入手数料323,549百万円のうち、その他の受入手数料が170,259百万円、委託手数料が70,489百万円です(2026年3月期決算短信)。商品別の内訳では、受益証券(投資信託)の手数料が94,847百万円で、株券の92,102百万円と並びます。投資信託の手数料は、販売のときの募集・売出し等の取扱手数料(41,479百万円)と、その他の受入手数料(51,378百万円)の両方に入っています(このほかの科目にも少し入ります)。

SBI証券(連結)では、受入手数料107,492百万円に対して、金融収支が89,196百万円、トレーディング損益が56,557百万円です(2026年3月期決算短信)。同社の説明では、金融収益は信用取引と有価証券の貸借取引の増加、国内の金利の上昇で増え、トレーディング損益はFXの収益と外国債券の販売に関わる収益などです。その他の受入手数料60,534百万円には、投資信託の代行手数料やアドバイザリー業務の手数料などが入ります。

松井証券(非連結)では、受入手数料25,963百万円のうち委託手数料が24,805百万円で、金融収支が17,306百万円、トレーディング損益が5,819百万円(主にFX)です(2026年3月期決算短信)。同社は、主な事業を個人投資家向けの株式などの委託売買とし、委託手数料と信用取引の金融収益が業績に大きく影響すると説明しています。

野村ホールディングスは米国の会計基準で決算をしており、日本基準の「受入手数料」という科目がありません。そのため、上の4社と同じ図には並べず、事業の区分の構成を別に示しました。4つの区分の収益合計(金融費用控除後、経営管理上の数値)1兆9,626億円のうち、ホールセールが約59%、ウェルス・マネジメントが約25%、インベストメント・マネジメントが約13%、バンキングが約3%です(本記事の計算)。

顧客と仕事:リテール・投資銀行・マーケッツ・ミドルバック・システム

証券会社の部門は、主に誰を相手にするかで分かれます。採用ページで確かめた部門・職種の表記を、仕事の型ごとにまとめます。

仕事の型主な相手主な仕事の例採用ページの表記の例
リテール(ウェルスマネジメント)個人、企業のオーナーなどの法人資産運用・管理の提案、相続・事業承継の相談野村證券「ウェルス・マネジメント部門」、大和証券「リテール部門」、SBI証券「ウェルス・マネジメント」、楽天証券「IFAフロントオフィス業務」(IFAとの連携とみられる)
ネット証券の運営個人サービスの企画、マーケティング、問い合わせへの対応SBI証券「デジタル・リテール」、楽天証券「ネット事業マーケティング推進」「カスタマーサービス業務(福岡)」
投資銀行株や社債を発行する企業株式・債券の引受け、新規上場(IPO)などの発行体営業、助言野村證券「インベストメント・バンキング」、大和証券「グローバル・インベストメント・バンキング部門」「法人部門(カバレッジ業務)」、SBI証券「インベストメント・バンキング」、楽天証券「株式引受業務 フロント業務」
マーケッツ(市場)機関投資家、事業法人株・債券・為替などの売買、ディーリング野村證券「グローバル・マーケッツ」、大和証券「グローバル・マーケッツ部門」、SBI証券「グローバル・マーケッツ」、楽天証券「FX・CFDディーリング部担当」(個人向けのFX・CFDとみられる)「債券事業」
ミドルバック・管理社内、顧客の口座決済、口座管理、リスク管理、コンプライアンス野村證券「オペレーション」「リスク・マネジメント」、SBI証券「ミドルバック、コーポレート」、楽天証券「証券バックオフィス業務(口座管理_福岡)」「リスク・コンプライアンス部」、松井証券「コンプライアンス担当」
システム・IT社内の各部門証券システムの企画・設計・開発・運用野村證券「IT・デジタル」、SBI証券「システム」、松井証券「システム企画担当」「DX担当」

出典は、野村證券の総合採用サイト、大和証券グループのキャリア採用サイト、SBI証券の採用情報、楽天証券の求人一覧、松井証券の中途採用サイトです。SMBC日興証券の採用ページは、この記事では確かめていません。表の仕事の型、主な相手、主な仕事の例は、採用ページの表記をもとにした編集部の整理で、各部署の相手までは採用ページで確かめていません。たとえば楽天証券の「FX・CFDディーリング部担当」は個人向けのFX・CFDの取引に、「IFAフロントオフィス業務」はIFA(金融商品仲介業者)との連携にかかわる部署とみられます。

リテールの仕事は、会社によって進め方が違います。大和証券のキャリア採用サイトは、リテール部門が個人と法人の資産運用・管理、相続・事業承継を扱い、資産管理型のビジネスモデルへの移行を進めていると説明しています。SBI証券のウェルス・マネジメントは、富裕層と事業法人を相手に、子会社のSBIマネープラザ、地域金融機関、IFA(金融商品仲介業者)と連携します。

マーケッツの顧客は、大和証券の説明では、国内外の銀行・生命保険・損害保険・年金などの機関投資家と、事業法人・学校法人・医療法人・富裕層です。大和証券の社員紹介には、金融市場調査部やエクイティ・セールストレーディング部などの部署名もあります。リサーチの仕事の中身は、この記事では採用ページで確かめていません。

この記事で見たネット証券の求人では、対面の営業より、サービスの企画・運営とシステム、口座や決済の管理の仕事が目立ちます。松井証券の中途採用の求人は、システム企画、コンプライアンス、経理、DXの担当で、対面の営業職の募集はありません。SBI証券は、証券システムの内製化を進め、設計・開発・運用を社内で担うとしています。

手数料の無料化とNISA:売買のたびの手数料のほかに、何で稼ぐのか

松井証券は決算短信で、2023年にSBI証券と楽天証券の2社が株式の売買委託手数料の無料化に踏みきり、各社は信用取引、FX、投資信託、ホールセール、資産運用、暗号資産関連などで収益源を多様にしていると説明しています。同社によると、個人の株式などの委託売買代金のうち、オンライン証券会社の顧客の比率は9割を超えます。

SBI証券は、2023年9月30日の発注分から国内株の売買手数料を無料にしています(SBI証券の公表資料)。条件は、インターネットコースでのインターネット取引と、取引報告書などの電子交付です(案内ページ、2026年10月31日確認)。楽天証券は「ゼロコース」で国内株の手数料を0円にしており、SOR(Rクロスを含む)の利用に同意することが条件です(手数料のページ、2026年10月31日確認)。

国内株の売買手数料が無料になっても、ネット証券の稼ぎ方は残る

左は無料化の条件、中央は無料化の後のSBI証券の収益、右はNISAの広がり。対面の証券会社の動きは下段に、会社の説明がある範囲だけを示す。

1 無料化の条件
SBI証券2023年9月30日の発注分から国内株(現物・信用)の売買手数料が無料条件:インターネットコースでのインターネット取引と、取引報告書などの電子交付(2026年10月31日確認)
楽天証券「ゼロコース」で国内株(現物・信用)の手数料が0円条件:SOR(Rクロスを含む)の利用への同意。開始日はこの記事では扱わない
松井証券の決算短信は、2023年にこの2社が無料化に踏みきり、各社が信用取引・FX・投資信託などで収益源を多様にしていると説明
2 SBI証券の2026年3月期
委託手数料32,745百万円主にインターネットと対面による株式取引(会社の説明)
金融収支89,196百万円信用取引・有価証券の貸借取引の増加、国内の金利の上昇
トレーディング損益56,557百万円FXの収益、外国債券の販売に関わる収益など
その他の受入手数料60,534百万円投資信託の代行手数料、アドバイザリー業務の手数料など
3 NISAの広がり
NISA口座数(2026年6月末)30,480,850口座2025年12月末から8.1%増。銀行なども含む全金融機関の合計
2026年1〜6月の買付額約13.8兆円半年分。商品別の割合は下の帯
投資信託61.9%、上場株式34.5%、ETF3.3%、REIT0.3%。証券会社経由の口座数は、この調査では分からない
対面の証券会社では:大和証券は、リテール部門で資産管理型のビジネスモデルへの移行を進めていると採用サイトで説明し、2026年3月期の決算短信ではラップ口座サービスの契約額・純増額が高い水準を維持したことをウェルスマネジメント部門の増益の要因に挙げている。どの会社にも当てはまる流れとしては示していない。
出典:SBI証券「国内株式信用口座100万口座達成のお知らせ」(2023年9月8日)・「ゼロ革命」案内ページ・「2026年3月期決算短信」、楽天証券「現物取引手数料(国内株式)」、松井証券「2026年3月期決算短信」、金融庁「NISA口座の利用状況調査(2026年6月末時点)」(2026年10月2日公表)、大和証券グループ本社「2026年3月期決算短信」・キャリア採用サイト。

無料化の後も、委託手数料がなくなったわけではありません。SBI証券の2026年3月期の委託手数料は32,745百万円で、同社は主にインターネットと対面による株式取引からだと説明しています。無料の対象はインターネットコースでのインターネット取引で、対面の取引などは対象に入りません。一方で、金融収支やトレーディング損益、投資信託の代行手数料などを含むその他の受入手数料が、収益の大きな部分を占めています。

NISA(少額投資非課税制度)も広がっています。金融庁のNISA口座の利用状況調査によると、2026年6月末のNISA口座数は30,480,850口座で、2025年12月末から8.1%増えました。2026年1〜6月の半年間のNISAでの買付額は約13.8兆円で、そのうち投資信託が61.9%、上場株式が34.5%です。この調査は銀行なども含むすべての金融機関の数字で、証券会社を通じた口座の数は分かりません。

対面の証券会社でも、売買のたびの手数料以外の稼ぎ方を広げる動きがあります。大和証券は、リテール部門で資産管理型のビジネスモデルへの移行を進めていると採用サイトで説明し、決算短信ではラップ口座サービスの契約額・純増額が高い水準を維持したことを、ウェルスマネジメント部門の増益の要因に挙げています。

顧客への向き合い方の規律もあります。金融サービス提供法の第2条は、金融商品取引業などを行う者とその役員・使用人に、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を行うことを義務づけています。銀行や保険会社にも同じ規定がかかります。金融庁の顧客本位の業務運営に関する原則は、法律ではなく、金融事業者が採択して取り組む原則です。採択した会社は、取組方針を公表します。この原則は、法律の誠実公正義務とは別のものです。

これらの変化が届く仕事は、次のように整理できます。

変化関わりのある仕事確かめられること
国内株の売買手数料の無料化(SBI証券・楽天証券、条件付き)ネット証券のマーケティング、システム、FX・債券などのディーリング無料化の後も、SBI証券では金融収支・トレーディング損益・その他の受入手数料が大きい
NISAの広がりネット証券の口座管理・問い合わせ対応、リテールの資産運用の提案口座数は2026年6月末で30,480,850。買付額の6割強が投資信託
資産管理型への移行、ラップ口座対面のリテール営業大和証券が採用サイトと決算短信で説明している
誠実公正義務金融商品取引業の業務にかかわる仕事全般、コンプライアンス金融サービス提供法第2条(e-Govの現行の条文)の義務規定

求人票では、会社の型・部門・稼ぎ方を確かめる

証券会社の仕事は、会社の型と部門によって、相手と成果の測られ方が変わります。求人票では、次の3点を確かめます。

  • 会社の型:大手総合か、銀行系か、ネット証券か。銀行系なら、銀行との連携の仕事があるか
  • 部門:リテール、投資銀行、マーケッツ、ミドルバック、システムのどこか。リテールなら、対面の営業か、ネットのサービスの運営か、IFAとの連携か
  • 稼ぎ方:その部門の収益が、委託手数料、引受けの手数料、投資信託などの販売、トレーディング、信用取引の金利のどれと結びつくか

会社の決算短信で、受入手数料の内訳とトレーディング損益・金融収支を見ると、その会社が何で稼いでいるかが分かります。ただし、会計基準と連結の範囲が会社ごとに違うため、会社どうしを金額で比べるときは注意が要ります。