「金融」と書かれた求人には、銀行の法人営業や窓口、証券会社の営業、保険会社の営業職員や損害サービス、カード会社の加盟店営業や審査、システム部門まで幅があります。どれもお金を扱う仕事ですが、会社が何を引き受けて、どこからお金を受け取っているかは、業態ごとに大きく違います。
金融の会社には共通点もあります。事業を始めるのに、法律の手続きが要ることです。銀行と保険会社は「免許」、証券会社やカード会社、消費者金融は「登録」が要ります。手続きの言葉は法律ごとに決まっていて、何ができるかの範囲も、その法律で決まります。この記事では、会社を6つの役割で地図にし、法律の手続き、大きさの物差し、稼ぎ方、金融グループの形、変化が届く仕事を順に比べます。
扱う範囲は、銀行、信用金庫などの協同組織、証券、資産運用、保険、クレジットカード・信販・消費者金融、送金や電子マネー(資金移動業・前払式支払手段)、リースです。個別の金融商品のおすすめや投資の助言はしません。不動産投資信託(REIT)の運用、銀行向けのシステムを受託するIT企業の仕事は扱いません。IT企業の仕事は「SIer・システム開発の業界地図」で扱います。
信用金庫・信用組合などの協同組織と郵便局の詳しい比較は、本記事の対象外です。協同組織と銀行の違いの概要は、「銀行の業界地図」の最後の章でも扱います。この記事は、次にどの地図を読むかを決めるための全体図です。
銀行・保険・証券・カードの分担は、それぞれ「銀行の業界地図」「保険の業界地図」「証券の業界地図」「クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図」で詳しく確認できます。
預かる・貸す・決済する・仲介する・保障する・運用するで、会社の位置が分かる
金融の仕事は、役割で6つに分けられます。お金を「預かる」、お金を「貸す」、お金を届けて支払いを済ませる「決済する」、株や保険の売り手と買い手をつなぐ「仲介する」、事故や病気のときにお金を払う約束を引き受ける「保障する」、預かったお金を投資して増やす「運用する」です。1つの業態が複数の役割を持つことも、1つのグループが複数の業態を持つこともあります。役割は会社の格付けではなく、大きさも表しません。
金融の業態は、6つの役割のどれを担い、どの法律の手続きで動いているか
- 1つの会社やグループが、複数の行にまたがることがある。たとえば銀行は、保険業法と金融商品取引法の登録を受けて、保険や投資信託も販売する。
- 郵便局の窓口では、日本郵便が銀行の代理と保険の募集を受託している。ゆうちょ銀行は銀行法の免許を受けた銀行で、金融庁の一覧では「その他」の区分。
- 一覧の数は、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」などの各シートの値。シートごとに基準日が違うため、合計しない。
銀行は、預金を預かり、企業や個人にお金を貸し、振込などの決済をします。銀行法では、預金を受け入れて資金を貸すこと、または為替取引(振込や送金)を行うことを「銀行業」と呼びます(銀行法 第2条第2項)。信用金庫・信用組合・労働金庫・農協の信用事業も、預かって貸す役割を持ちますが、根拠となる法律が銀行とは別です。
証券会社は、株や債券の売買の仲介と、企業が株や債券を発行するときの引受け(売り出す株などを買い取ったり、売り切る責任を負ったりする仕事)をします。資産運用会社は、投資信託などで集めたお金を運用します。どちらも金融商品取引法の登録ですが、同じ登録の中で、業務の種別が違います。
保険会社は、保険料を受け取って、事故や病気のときに保険金を払う約束を引き受けます。保険を売る(募集する)のは、保険会社の営業職員のほか、登録を受けた代理店や、登録を受けた銀行です。
クレジットカード会社・信販会社は、買い物の代金を立て替えて、あとで利用者から受け取ります。消費者金融は個人にお金を貸します。資金移動業者は銀行以外で送金を扱い、電子マネーなどの前払式支払手段の発行者は、先にお金を受け取って支払いに使える残高を発行します。リース会社は、企業が使う設備を持って貸し出します。
免許・認可・許可・登録・届出は、法律ごとに言葉が違う
金融の会社が事業を始める手続きは、業態ごとに法律で決まっています。「金融はすべて免許」ではありません。法律の言葉で分けると、免許・認可・許可・登録・届出・承認があり、同じ会社でも、業務によって別の法律の手続きを受けています。この章では、求人を比べるときに知っておきたい違いだけを並べます。
銀行は、内閣総理大臣の免許を受けなければ銀行業を営めません(銀行法第4条第1項)。銀行ができる業務は、預金・貸付け・為替の固有業務と、債務の保証や両替、ファイナンス・リースなどの付随業務として法律に並んでいます(第10条)。銀行は、銀行法と他の法律で認められた業務のほかは営めません(第12条、他業禁止)。銀行を子会社に持つ持株会社になるには、原則として内閣総理大臣の認可が要ります(第52条の17)。銀行の代わりに預金や貸付けの契約を結ぶ銀行代理業は、許可制です(第52条の36)。信託銀行は、銀行の免許に加えて、信託業務を営むための認可を受けています(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律 第1条)。

保険会社は、内閣総理大臣の免許を受けなければ保険業を行えません(保険業法第3条第1項)。生命保険業の免許と損害保険業の免許を、同じ会社が両方受けることはできません(第3条第3項)。そのため生命保険会社と損害保険会社は、別の会社になっています。保険金額が少なく期間の短い保険だけを引き受ける少額短期保険業は、免許ではなく登録です(第272条)。生命保険の募集人や損害保険代理店などは、内閣総理大臣の登録を受けます(第276条)。
証券会社と資産運用会社は、どちらも金融商品取引法の登録です(第29条)。登録は1つの制度で、その中で、株の売買の仲介や引受けは第一種金融商品取引業、お客さまのお金を運用するのは投資運用業という、業務の種別が分かれています(第28条)。
カード・信販・消費者金融は、法律が分かれます。クレジットカードの立替払い(包括信用購入あっせん)と、カードを使わない商品ごとのクレジット(個別信用購入あっせん)は、どちらも経済産業省の登録簿への登録です(割賦販売法 第31条・第35条の3の23)。加盟店とカードの取扱いの契約を結ぶ会社にも、別の登録があります(第35条の17の2)。お金を貸す貸金業は、営業所が2つ以上の都道府県にあれば内閣総理大臣、1つの都道府県だけなら都道府県知事の登録です(貸金業法 第3条第1項)。銀行のように、他の法律に貸付けの規定がある会社の貸付けは、貸金業から除かれます(第2条第1項第2号)。銀行のカードローンは、貸金業ではなく銀行の貸付けで、「銀行の業界地図」で扱います。そのローンを保証する会社の事業は、「クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図」で扱います。

送金と電子マネーは、資金決済法の手続きです。資金移動業は登録を受ければ、銀行法の免許がなくても為替取引ができます(資金決済法 第37条)。高い額の送金を扱う第一種資金移動業は、さらに業務実施計画の認可が要ります(第40条の2)。電子マネーなどの前払式支払手段は、発行した会社以外の店でも使える第三者型が登録(第7条)、発行した会社の店だけで使える自家型が、未使用の残高が一定の額を超えたときの届出です(第5条)。
協同組織は、それぞれの法律の手続きです。信用金庫は内閣総理大臣の免許(信用金庫法 第4条)、労働金庫は内閣総理大臣と厚生労働大臣の免許(労働金庫法 第6条)です。信用組合は設立に行政庁の認可が要り(中小企業等協同組合法 第27条の2)、農協が信用事業を行うには、信用事業規程について行政庁の承認を受けます(農業協同組合法 第11条第1項)。
リースは、呼び名だけから事業全体に一律の免許・登録が必要かどうかを決められません。リース会社が貸付けを業として行う部分は、貸金業法にもとづく登録の対象です(金融庁の登録案内)。一方、銀行自身が一定のファイナンス・リースを行うことは、銀行法第10条第2項第18号の付随業務です。銀行グループのリース会社にも銀行法と施行規則による業務範囲の規制があります。金融庁が2026年6月12日に公表した改正のうち、銀行等グループのリース会社に係るファイナンス・リースの収入依存度規制の撤廃は2027年4月1日施行予定で、2026年10月31日時点の現行制度としては扱いません。
どの業態にも共通する決まりもあります。金融サービス提供法の第2条は、銀行業・金融商品取引業・保険業などの業務を行う者とその役員・使用人に、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を行うことを義務づけています。
大きさは、業態ごとに数えるものが違う
金融の大きさを示す数字は、業態ごとに数えているものが違います。銀行は預金や貸出金の残高、保険は保険料、カードは利用された金額、証券は口座の数や買付けの額です。単位が同じ「円」でも、残高と1年間の額、受け取った額と使われた額は別のものです。足し合わせて「金融の市場は○兆円」とすることも、大小を比べることもできません。
同じ物差しで業態を並べられるのは、働く人の数です。総務省・経済産業省の令和6年経済センサス‐基礎調査では、2024年6月の「金融業、保険業」の従業者は142万9,048人です。
同じ物差しで並べられるのは、働く人の数。保険業には代理店も入る
民営の事業所の従業者で、雇用者のいない個人経営の事業所などは入らない。協同組織金融業に農協の信用事業が入るかどうかは確かめていない。棒は保険業の人数を65%の長さとして、同じ比率で描いた。
この数字は、民営の事業所で働く人の数で、雇用者のいない個人経営の事業所などは入りません。「保険業」には保険会社のほか、保険の代理店と保険サービス業が入ります。「金融商品取引業、商品先物取引業」には、証券会社のほか資産運用会社なども入ります。協同組織金融業に農協の信用事業が入るかどうかは、この記事では確かめていません。リース業は「物品賃貸業」という別の大分類で、ここには入りません。
ほかの物差しは、それぞれの業態の中だけで読みます。
- 銀行:全国銀行協会の2025年度決算では、全国銀行107行の2025年度末の預金は1,084兆6,812億円、貸出金は758兆2,825億円です。各行の単体の値で、海外の店も含みます。「全国銀行」は都市銀行・地方銀行・地方銀行Ⅱ・信託銀行などの107行で、ネット銀行・ゆうちょ銀行・セブン銀行などは入りません。同じ協会の月ごとの預金・貸出金速報は、国内の店だけの概算で、対象の行数も違います。決算の残高と速報の値は混ぜません。
- 銀行で働く人:同じ決算資料の107行の職員数は26万4,295人(2025年度末)です。経済センサスの銀行業37万1,399人とは、対象も時点も違います。
- 生命保険:生命保険協会の生命保険の動向(2025年版)では、協会加盟41社の2024年度の収入保険料は36兆8,037億円です。
- 損害保険:日本損害保険協会の種目別統計表では、2025年度の正味収入保険料は9兆9,726億円です。生命保険の「収入保険料」とは定義も年度も違うため、足したり比べたりしません。
- 証券:金融庁のNISA口座の利用状況調査では、2026年6月末のNISAの口座は3,048万850口座、2026年1〜6月の買付額は約13.8兆円です。買付額は半年分で、銀行など証券会社以外の口座も含みます。
- カード:日本クレジット協会の2025年の市場規模統計では、クレジットカードで買い物に使われた額(信用供与額)は134兆5,861億円で、協会の推計を一部含みます。カード会社の収入ではなく、利用された額です。
- 消費者金融:金融庁の貸金業関係資料集では、2025年3月末の貸金業者の消費者向けの貸付残高は8兆4,874億円です。銀行のカードローンは入りません。
資産運用会社とリース会社の業界全体の大きさは、この記事では確かめていません。求人や会社案内で「預かり資産○兆円」「取扱高○兆円」という数字を見たら、残高か1年間の額か、どの会社の範囲か、いつの数字かを確かめます。
稼ぎ方は、金利・手数料・保険料・運用益・運用報酬で分かれる
業態によって、収入の中心が違います。銀行は貸したお金の利息と預金に払う利息の差、証券は売買や引受けの手数料、保険は保険料とその運用、運用会社は運用の報酬、カード会社は加盟店からの手数料や分割払いなどの手数料・利息です。下の図は、業態ごとの収入の柱と、何に左右されやすいかを並べたものです。例の金額は会社や統計ごとに期・会計基準・定義が違い、業態どうしで比べられません。
業態ごとに、収入の柱と、収入を左右するものが違う
銀行の収入は、資金利益と役務取引等利益に分けて見ます。資金利益は、貸出や債券で得た利息から、預金などに払った利息を差し引いた利益です。役務取引等利益は、振込や投資信託・保険の販売などの手数料から、払った手数料を差し引いた利益です。全国銀行107行の2025年度は、資金利益が10兆7,539億円(前の年度より17.8%増)、役務取引等利益が3兆5,123億円(12.9%増)でした(全国銀行協会、単体)。銀行の型による違い(メガバンク・地方銀行・信託銀行・ネット銀行)は「銀行の業界地図」で扱います。
銀行でも、稼ぎ方が預金と貸出の差ではない会社があります。セブン銀行は、2026年3月期の連結経常収益2,200億円のうち、提携する金融機関などから受け取るATM受入手数料が1,592億円です(有価証券報告書)。これは1社の例で、銀行の一般的な形ではありません。
保険会社は、保険料を受け取り、保険金を払い、その間に預かるお金を運用します。生命保険協会は、保険の収支と、利息や配当金などの運用の収支からなる基礎的な利益を「基礎利益」として示しています。協会加盟41社の2024年度は4兆3,163億円です。生命保険・損害保険の会社ごとの違いは「保険の業界地図」で扱います。

証券会社は、株の売買の委託手数料、株や債券の引受けの手数料、投資信託などの募集の手数料、自分の売買の損益(トレーディング損益)、信用取引などの金利で稼ぎます。三井住友フィナンシャルグループのSMBC日興証券は、2026年3月期(日本基準・連結)の受入手数料が3,235億円、トレーディング損益が443億円です(決算短信)。対面証券とネット証券の違いは「証券の業界地図」で扱います。

資産運用会社は、預かって運用するお金の残高に応じた報酬で稼ぎます。野村ホールディングスは、米国基準の2026年3月期に、アセットマネジメント業務手数料4,686億円を計上しています(決算短信)。
カード・信販・消費者金融は、加盟店から受け取る手数料、分割払い・リボ払いの手数料、キャッシングや貸付けの利息、銀行などのローンを保証する保証料で稼ぎます。消費者金融のアコムは、2026年3月期(連結・日本基準)に営業貸付金利息2,073億円と信用保証収益710億円を計上しています(データブック)。加盟店手数料の率は、この記事では確かめていません。会社ごとの組み合わせは「クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図」で扱います。
リース会社は、設備を持って企業に貸し、リース料を受け取ります。
金融グループは、銀行を中心に証券・カード・信託・運用を持つ
大きな金融グループは、持株会社の下に、銀行・信託銀行・証券会社・カード会社などを子会社として持っています。法律の手続きや、銀行に認められた業務の範囲が違うため、業態を別の会社に分けていることが多いのです。信託のように、銀行の中で認可を受けて営む業務もあります。一方で、グループの事業の部門は、会社ごとではなく、個人・法人・海外といったお客さまの種類と、市場の業務で分けています。下の図は、メガバンク3グループの主な会社と、事業の部門の名前を並べたものです。3グループの大きさは比べていません。
メガバンクグループは、業態の多くを別の会社に分け、事業の部門はお客さまの種類と市場の業務で分けている
- 三菱UFJ銀行 銀行の免許
- 三菱UFJ信託銀行 銀行の免許と信託兼営の認可
- 三菱UFJ証券ホールディングス(証券持株会社) 連結子会社(議決権100%)。傘下の証券会社が金融商品取引法の登録
- 三菱UFJニコス(カード) 連結子会社(100%)。割賦販売法の登録
- アコム(消費者金融) 連結子会社(議決権40.18%)。貸金業法の登録
- 三菱UFJアセットマネジメント(運用) 連結子会社(100%)
- 三菱HCキャピタル(リース) 持分法適用関連会社(20.06%)
- 三井住友銀行 銀行の免許
- SMBC日興証券 金融商品取引法の登録。2026年10月1日設立のSMBC日興証券ホールディングスの100%子会社
- 三井住友カード 2019年4月に完全子会社
- SMBCコンシューマーファイナンス(消費者金融) 2024年10月に三井住友カードの完全子会社
- 三井住友ファイナンス&リース 2007年10月に発足。現在の資本関係は確かめていない
- みずほ銀行 銀行の免許。2026年4月1日にIT・リサーチのみずほリサーチ&テクノロジーズを合併
- みずほ信託銀行 銀行の免許と信託兼営の認可
- みずほ証券 金融商品取引法の登録
- 日本郵政:ゆうちょ銀行(預かる)、かんぽ生命保険(保障する)、日本郵便(郵便局の窓口で銀行の代理と保険の募集を受託)
- 楽天:2026年10月1日に、楽天カードと楽天証券ホールディングスが楽天銀行の連結子会社になった
- ドコモSMTBネット銀行(旧 住信SBIネット銀行):NTTドコモの連結子会社になり、2026年8月3日に商号を変えた
三井住友フィナンシャルグループは、三井住友カードを2019年4月に完全子会社にし、消費者金融のSMBCコンシューマーファイナンス(旧プロミス)は2024年10月に三井住友カードの完全子会社になりました(有価証券報告書)。同社の2026年3月期の部門ごとの数字(社内管理会計)では、リテール事業部門の連結粗利益は1兆5,556億円で4つの事業部門の中で最も大きい一方、経費を差し引いた連結業務純益は、ホールセール事業部門の9,971億円がリテール事業部門の4,277億円を上回ります。同じ会社の中でも、個人向けと法人向けで、稼ぎ方と経費のかかり方が違う例です。
みずほフィナンシャルグループは、銀行・信託・証券を、お客さまの種類ごとの5つのカンパニーで一体に運営しています。2026年4月1日には、みずほ銀行が、ITやリサーチを担うみずほリサーチ&テクノロジーズを合併しました(有価証券報告書)。
銀行を持つグループは、メガバンクだけではありません。日本郵政グループでは、ゆうちょ銀行が預金を、かんぽ生命保険が保険を引き受け、日本郵便の郵便局の窓口が、銀行の代理と保険の募集を受託して手数料を受け取ります。日本郵便株式会社法は、ゆうちょ銀行のための銀行代理業と、かんぽ生命保険のための保険募集を、日本郵便の業務と定めています(日本郵便株式会社法 第2条・第4条、2026年3月期 決算説明資料)。ゆうちょ銀行には、郵政民営化法で預け入れの限度額が定められています(郵政民営化法 第107条)。楽天グループでは、2026年10月1日に楽天カードと楽天証券ホールディングスが楽天銀行の連結子会社になりました(楽天グループのお知らせ)。
協同組織は、株式会社ではなく、会員や組合員が出資する組織です。信用金庫の会員になれるのは、地区の中に住所や事業所がある人や事業者などで、常時使用する従業員が300人を超える事業者は除かれます(法人は、資本金などの基準もあわせて超える場合。信用金庫法第10条第1項)。労働金庫の会員は、地区の中の労働組合や消費生活協同組合などです(労働金庫法第11条)。どこでも誰とでも取引できる銀行と違い、営業する地区と取引の相手が法律で決まっている点が、仕事の違いにつながります。金融庁の一覧では、信用金庫は254金庫と連合会1つ、信用組合は143組合と連合会1つです(2026年10月27日現在)。協同組織の詳しい比較は、本記事の対象外です。銀行との違いの概要は、「銀行の業界地図」の最後の章でも扱います。
金利・再編・ネット化・キャッシュレスは、どの仕事に届くか
金融では、金利の上昇、銀行やグループの再編、ネットでの取引の広がり、キャッシュレスの広がりが、業態ごとに違う仕事に届いています。下の表は、主な変化と、それが届く業態と仕事、詳しく読む地図を並べたものです。採用数の増減や、仕事がなくなるかどうかは予測していません。
| 変化 | 時期 | 届く業態と仕事 | 詳しく読む地図 |
|---|---|---|---|
| 政策金利の1.25%程度への引き上げ | 2026年9月決定 | 銀行・協同組織:預金と貸出の金利、法人営業と個人営業、市場の仕事 | 銀行の業界地図 |
| 全国銀行の資金利益の増加 | 2025年度決算 | 銀行:貸出の営業と審査、預金の獲得 | 銀行の業界地図 |
| 地方銀行の合併と、合併などを支える制度の延長 | 2026年1月・5月の合併、2026年6月の改正法施行 | 地方銀行:店舗と事務の統合、システムの統合 | 銀行の業界地図 |
| ネット銀行の再編、IT子会社の銀行への合併 | 2025年10月〜2026年10月 | 銀行・グループ:ITとデジタルの仕事、グループ内の連携 | 銀行の業界地図、証券の業界地図 |
| NISAの口座の増加と、ネット証券の手数料無料化 | 2026年6月末の調査、2023年9月〜 | 証券・資産運用:資産の相談、商品の企画、手数料以外の収入 | 本記事の対象外 |
| 保険業法の改正と、損害保険の代理店の減少 | 2026年6月施行の版、2025年度の統計 | 保険:代理店の管理と営業、募集の体制 | 保険の業界地図 |
| カードの利用額の増加と不正利用 | 2025年 | カード:加盟店の管理、審査、不正の監視 | クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図 |
| 郵便局の窓口の受託手数料の減少 | 2026年3月期 | 郵便局:銀行の代理と保険の募集の窓口 | 銀行の業界地図(協同組織との違い) |
金利では、日本銀行が2026年9月18日に、短期の政策金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)の誘導目標を1.0%程度から1.25%程度に引き上げ、9月24日から適用しました。10月30日の会合では1.25%程度を維持しています(日本銀行 2026年9月18日の公表文、10月30日の公表文)。全国銀行107行の2025年度決算では、国内の貸付金の利息が7兆2,402億円で33.0%増え、預金の利息を含む資金の調達の費用も3兆414億円で170.4%増えました。貸出金と預金の利回りの差(預貸金利鞘)は0.36%で、前の年度より0.07ポイント広がっています。金利が動くと、貸出の条件を決める法人営業や審査、預金を集める個人営業、債券を運用する市場の仕事に直接かかわります。
再編では、八十二銀行と長野銀行が2026年1月1日に合併して八十二長野銀行に、福井銀行と福邦銀行が2026年5月2日に合併しました(全国銀行協会の資料による)。2026年6月25日に施行された改正の金融機能強化法では、合併などを含む計画の認定を、2031年3月31日まで主務大臣に申請することが「できる」とされています(金融機能の強化のための特別措置に関する法律 第34条の10第1項)。申請できる期間を延ばした規定で、地方銀行に統合を義務づけるものではありません。
ネット銀行とITでは、住信SBIネット銀行がNTTドコモの連結子会社になって上場をやめ、2026年8月3日にドコモSMTBネット銀行へ商号を変えました。同行は2025年10月1日の発表で、ドコモの連結子会社化や非上場化を受けて組織を改めたと説明しています(同行の発表)。通信会社のグループがネット銀行を持つ例です。みずほ銀行のIT子会社の合併は、銀行の中でITの仕事をする人が増える形の変化です。
保険では、保険業法の現行の条文に、大規模な乗合の損害保険代理店(特定大規模乗合損害保険代理店)に体制の整備を求める規定(第294条の4)などがあります。第294条の4は、令和7年法律第54号による改正で、2026年6月1日に施行された規定です。損害保険の代理店の数は、2025年度に12万4,024店で、前の年度より11.5%減りました(日本損害保険協会)。詳しくは「保険の業界地図」で扱います。
キャッシュレスでは、クレジットカードの信用供与額が2025年に前の年より15.1%増えました。同じ年のカードの不正利用の被害額は510.5億円で、そのうち93.1%がカード番号の盗用です(日本クレジット協会、40社の集計)。加盟店の管理や不正の監視の仕事にかかわる変化です。
郵便局では、日本郵政の2026年3月期の決算説明資料で、郵便局窓口事業の営業利益の増減を説明する中で、受け取る手数料のうち、保険の手数料が216億円、銀行の手数料が50億円減ったとしています。郵便局の窓口の収入が、銀行と保険の会社から受け取る手数料に左右されることを示す例です。
求人票では、業態・法律の手続き・稼ぎ方を確かめる
同じ「金融」の求人でも、業態によって、法律の手続き、主な収入、仕事の相手が違います。
| 業態 | 法律の手続き | 主な収入 | 次に読む地図 |
|---|---|---|---|
| 銀行 | 銀行法の免許(保険・投資信託の販売は別の法律の登録) | 資金利益(利息の差)、役務取引等利益(手数料) | 銀行の業界地図 |
| 信用金庫・信用組合・労働金庫 | 信用金庫法・労働金庫法の免許、信用組合は設立の認可 | 利息の差と手数料。取引の相手は会員・組合員が中心 | 銀行の業界地図(最後の章で銀行との違い) |
| 保険会社 | 保険業法の免許(生保と損保は別の免許)、少額短期保険は登録 | 保険料と、預かったお金の運用 | 保険の業界地図 |
| 保険代理店 | 保険業法の登録 | 保険会社から受け取る手数料 | 保険の業界地図 |
| 証券会社 | 金融商品取引法の登録(第一種金融商品取引業) | 委託・引受け・募集の手数料、トレーディング損益、金利 | 証券の業界地図 |
| 資産運用会社 | 金融商品取引法の登録(投資運用業) | 運用の報酬 | 本記事の対象外 |
| カード・信販 | 割賦販売法の登録(経済産業省の登録簿) | 加盟店からの手数料、分割・リボ払いの手数料、保証料 | クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図 |
| 消費者金融 | 貸金業法の登録(内閣総理大臣または都道府県知事) | 貸付けの利息、保証料 | クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図 |
| 送金・電子マネー | 資金決済法の登録(自家型の電子マネーは届出) | 送金や決済の手数料など | クレジットカード・信販・消費者金融の業界地図 |
| リース会社 | 一般のリースという呼称だけで一律の免許を断定しない。貸付けを営む部分は貸金業法の登録、銀行・銀行グループのファイナンス・リースは銀行法上の規制 | リース料 | 本記事の対象外 |
職種の名前は、会社によって違います。たとえば三菱UFJ銀行のキャリア採用は、代表的な職種の例として「法人営業・RM(リレーションシップ・マネージャー)」「IT・システム」などを挙げています(MUFGキャリア採用サイト)。保険・証券・カードの会社の職種名は、それぞれの地図で、確認できた採用ページをもとに扱います。
求人票では、次の4点を確かめます。
- 業態:応募先は、銀行・協同組織・証券・資産運用・保険・カードや消費者金融・送金・リースのどれか。グループの会社なら、どの子会社のどの部門の募集か
- 法律の手続き:その会社は、どの法律の免許・登録などで事業をしているか。銀行で保険や投資信託を売る仕事なら、別の法律の登録にもとづく仕事になる
- 稼ぎ方:収入の中心は、利息の差か、手数料か、保険料と運用か、運用の報酬か。金利や市場の動きが収入にどう効くか
- お客さま:個人か、中小企業か、大企業か、海外か。グループでは、部門がお客さまの種類で分かれていることが多い
この4点が分かったら、次はその業態の業界地図で、会社ごとの違いと仕事の流れを確かめます。
