SIerの元請・下請の商流と、請負・準委任・派遣の違いを整理。求人で顧客との距離、指示者、担当工程、成果物、契約上の責任を確認できます。

「SE募集」「システム開発」と書かれた求人には、顧客の業務を聞いてシステムの構想を描く仕事から、上流の会社が決めた仕様でプログラムを作る仕事、動いているシステムを運用する仕事まで幅があります。同じ開発の仕事でも、顧客と直接契約する会社なのか、その会社から仕事を受ける会社なのかで、決められる範囲と責任が変わります。契約が成果物の完成を約束するものか、作業を引き受けるものかによっても、報酬の受け取り方と、誰から指示を受けるかが変わります。

この記事では、顧客ごとのシステムを受託してつくり、動かすSI(システムインテグレーション)の事業を扱います。SIを担う会社は、SIer(エスアイヤー)とも呼ばれます。仕事が顧客から元請・下請へと流れる形、請負・準委任・派遣の違い、統計で見た元請と下請の売上、多重下請の問題と取引のルール、会社ごとの稼ぎ方、変化が届く仕事を順に確かめます。

IT・通信の分野の中で、SIは「IT・通信の業界地図」の「受託」の層に当たります。製品・基盤・回線・ネットサービス・セキュリティとの違いは、その地図で整理しています。会計や人事などの業務ソフト、ERP(基幹業務システム)の製品と、その導入を支える会社の役割は、「業務ソフトウェア業界の地図」「ERP業界の地図」で扱っています。

あわせて読みたいIT・通信業界の地図|SIer・製品・クラウド・回線・セキュリティIT・通信の層の中でSIの位置を確かめるとき

通信回線の事業は「通信の業界地図」、セキュリティの診断・監視は「サイバーセキュリティの業界地図」で扱います。組込みソフトとゲームの開発は扱いません。人月単価(1人が1か月働く作業の値段)や年収の数字も示しません。

SIは、顧客ごとのシステムを受託してつくり、動かす仕事

SIは、企業や官公庁などの顧客から、その顧客のためのシステムの構想・設計・開発・運用を引き受ける事業です。国の経済構造実態調査では、ソフトウェアの「受注制作サービス」や「受注ソフトウェアに係る保守・運用サービス」として売上が数えられます。この記事では、主にこの2つをSIの売上として読みます。システムの運用の受託の一部は、ほかの項目に入ります。

業務ソフトやSaaSの製品会社は、同じ製品を多くの顧客に提供し、利用料やライセンス料を受け取ります。SIの会社は、顧客ごとの案件で契約を結び、その対価を受け取ります。製品の導入を支える仕事は両者が重なるところで、詳しくは「業務ソフトウェア業界の地図」で扱っています。この記事では、受託の取引の流れと契約、それによって決まる責任に絞ります。

受託開発を始めるために国の許可や登録を求める法律は、見当たりません。倉庫業や運送業のように、事業の種類ごとの業法で始める条件が決まる分野とは違います。SIの取引にかかわるのは、契約の決まりを定める民法、仕事を他の会社に任せるときの取適法(旧・下請法)、派遣との区別を定める厚生労働省の告示です。

仕事は、エンドユーザーから元請・下請へと流れる

SIの仕事は、システムを使う企業や官公庁から始まります。この記事では、公正取引委員会の調査の区分にならい、システムを発注して使う企業や官公庁を「エンドユーザー」、エンドユーザーから直接受注する会社を「元請」、元請やほかの下請から仕事を受ける会社を「下請」と呼びます。同じ調査は、下請をさらに「中間下請」と「最終下請」に分けて、回答を集めています。受けた仕事の一部をさらに別の会社に任せる会社は、上流から受注しつつ下流に発注する、中間の位置に立ちます。

システム開発の仕事は、エンドユーザーから元請・下請へ、契約を重ねて流れる

左は取引の流れと、各段の契約にかかわる法律。右は派遣との境目と、公正取引委員会が指摘した多重下請の問題。何段まで下請が入るかは案件ごとに違い、段数の数字は示していない。

発注して使うエンドユーザーシステムを使う企業・官公庁
↓契約:請負(完成を約束)か準委任(事務の処理を約束)。どちらにするかは契約ごと
直接受注する元請顧客と、何をつくるか・期限・代金を直接決める
↓契約:請負・準委任など。再委託:受けた開発の一部を任せる取引は、取適法の「情報成果物作成委託」(プログラムを含む)。資本金・従業員数の組み合わせで対象が決まる
下請(中間)中間下請上流から受注し、一部を下流へ発注する立場
↓契約:請負・準委任など。再委託:同じく取適法の対象になりうる
下請(最終)最終下請任された部分を、上流の会社が決めた内容でつくる立場
派遣との境目(37号告示)請負の形でも、受注した会社が自ら作業の指示・労働時間の管理・配置を行い、資金と法律上の責任を負い、自社の設備や専門技術で処理しなければ、労働者派遣事業とされる。形を整えていても、法を免れるための偽装なら派遣事業とされる。実態が派遣になっている状態を、いわゆる偽装請負と呼ぶ
公正取引委員会が指摘した問題(2022年)
  • 下流へのしわ寄せ:上流からの買いたたき・減額・支払遅延が下流へ連鎖する
  • 成果物のあいまいさ:共通の認識をつくりにくく、不当な変更ややり直しを招く
  • 中抜きと、契約内容の不明確さ
読み方:元請・中間下請・最終下請は、公正取引委員会の調査が回答を分けた区分。取適法は旧・下請法で、e-Govの現行版は2026年1月1日施行。委託する側の義務や禁止行為はこの図では扱っていない。
出典:民法 第632条・第633条・第648条・第648条の2・第656条、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第2条・同法第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令(e-Gov)、厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)第2条・第3条、公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(概要)」(2022年6月)。

取引の位置によって、仕事の決まり方が違います。元請は、顧客と直接、何を、いつまでに、いくらで作るかを決めます。下請は、上流の会社が顧客と決めた内容をもとに、任された部分をつくります。顧客との取り決めや仕様の変更は、上流の会社を通じて受け取ります。

1つの案件に何段の下請が入るかは、案件ごとに違います。段数を示す公的な統計はなく、この記事でも段数の数字は示しません。

請負・準委任・派遣で、約束するものと指示する人が変わる

会社どうしの契約の形も、仕事の中身を左右します。民法では、請負と準委任は別の契約です。

契約の形何を約束するか報酬の受け取り方作業の指示をする人
請負仕事を完成させること(第632条)仕事の結果に対して支払われる。目的物を引き渡すときに支払う(第633条)受注した会社が自ら指示する(37号告示の基準)
準委任法律行為でない事務を処理すること(第656条。委任の規定を準用)特約がなければ請求できない。事務を行った後に請求し、期間で決めたときは期間が過ぎた後。途中で終わったときは、行った割合に応じて請求できる(第648条)。事務の成果に対して払うと決め、成果の引渡しが要るときは、引渡しと同時に支払う(第648条の2)契約の内容による。派遣との区別は下の段落を参照
労働者派遣(37号告示が請負と区別するもの)受注した会社が、作業の指示や労働時間の管理を自ら行わない形。37号告示は、こうした形を労働者派遣事業とする(第2条)本記事の対象外受注した会社ではなく、仕事を頼む側

請負では、成果物を完成させることが約束の中心です。準委任では、決めた事務を行うことが約束で、完成そのものは約束の中身ではありません。ただし準委任でも、事務の成果に対して報酬を払うと決めることはできます。どの工程でどちらの形にするかは、契約ごとに確かめる必要があります。

派遣との境目は、厚生労働省の労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号、いわゆる37号告示)が示しています。請負の形の契約でも、次の条件をすべて満たさなければ、労働者派遣事業を行っているものとされます(第2条)。

  • 受注した会社が、仕事の進め方の指示や評価、始業・終業や休憩・休日・残業の指示と管理、服務規律や配置の決定を自ら行う
  • 資金を自ら調達し、事業主としての法律上の責任を負う
  • 自社の機械・設備・材料、または自社の企画や専門的な技術・経験で仕事を処理する

第2条の条件を満たさない場合も、形を整えていても法律の規定を免れるために故意に偽装したもので、本当の目的が労働者派遣にある場合も(第3条)、派遣事業とされます。請負の形をとりながら実態が派遣になっている状態は、一般に「偽装請負」と呼ばれます。告示は請負の形の契約について書かれています。準委任の契約でも、作業の指示を誰から受けるかが大事です。

求職者にとっては、契約の名前より、誰から仕事の指示を受けるかが大事です。顧客の事務所で働く場合でも、作業の指示を自社の上司から受けるのか、顧客の担当者から受けるのかを確かめます。

受託開発の売上には、元請と下請で同じ案件が重なって入る

統計で見ると、元請としての受託開発の売上は、情報サービス業の売上の内訳で最も大きな項目です。2025年経済構造実態調査の二次集計(総務省・経済産業省、2026年7月公表)によると、2024年の1年間に、情報サービス業に分類された法人企業の売上高は43兆5,014億円でした。

情報サービス業の売上の内訳では、元請の受託開発が最も大きい。ただし下請の分と重なりうる

上は2024年の情報サービス業(法人企業)の売上高43兆5,014億円を、事業の種類で分けた割合。下は、元請と下請の売上に同じ案件が重なって入る仕組み。元請と下請を足して市場の大きさにはしない。

情報サービス業の売上高の内訳(2024年、43兆5,014億円=100%)
受注制作(組込みを除く)・元請:16兆8,783億円、38.8%受注制作(組込みを除く)・下請:4兆2,589億円、9.8%ゲームソフト(配信用):3兆4,726億円、8.0%情報処理サービス:2兆8,385億円、6.5%受注ソフトウェアの保守・運用:2兆4,222億円、5.6%その他の事業:31.3%
元請と下請の売上には、同じ案件の一部が重なって入りうる
エンドユーザー元請に代金を払う
→↓
元請の売上受け取った代金の全体。下請に払う分も入る
→↓
下請の売上上流の会社から受け取った分。上流の売上と重なる。中間下請と最終下請の間でも同じ
元請と下請の売上を足しても、受託開発の市場の大きさにはならない。どれだけ重なっているかはこの表からは分からず、2つの売上の比も、下請に出した割合や下請の段数を表すものではない。
出典:総務省・経済産業省「2025年経済構造実態調査 二次集計結果 産業横断調査(企業等に関する集計)結果の概要」(2026年7月29日公表)付表2。数値は2024年1年間、法人企業が対象。情報サービス業に分類された企業の全事業の売上で、事業の種類の割合は売上高43兆5,014億円に対するもの。金額は億円未満を四捨五入。

これを事業の種類で分けると、ソフトウェアの受注制作サービス(組込みソフトを除く)のうち、元請としての売上が16兆8,783億円で38.8%、下請としての売上が4兆2,589億円で9.8%です。受注ソフトウェアの保守・運用サービスは2兆4,222億円(5.6%)です。このほか、配信用のゲームソフトが3兆4,726億円(8.0%)、情報処理サービスが2兆8,385億円(6.5%)あります。この表は情報サービス業に分類された企業の全事業の売上なので、ゲームの配信なども入っています。

元請と下請の売上を足して、受託開発の市場の大きさとすることはできません。元請がエンドユーザーから受け取る代金の中には、下請に支払う分が含まれています。下請が受け取るその代金は、下請の売上としてもう一度数えられます。同じ案件の一部が、元請と下請の両方の売上に入りうるのです。中間下請と最終下請の間でも、同じことが起きます。どれだけ重なっているかは、この表からは分かりません。

元請の売上と下請の売上の比も、多重下請の広がりを測る物差しにはなりません。この統計は、企業が答えた売上を、元請・下請という取引の立場ごとに集計したものです。何段の下請が入っているか、下請に出した割合がどれくらいかは、この表からは分かりません。

多重下請は、しわ寄せと契約のあいまいさを生みやすい

公正取引委員会は、2022年6月にソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書を公表しました。資本金3億円以下のソフトウェア業2万1000社を対象にアンケート調査を行い、関係する事業者や団体からも話を聞いています。

報告書の概要は、主な問題として次の点を挙げています。

  • 下流へのしわ寄せ:多重下請の取引の流れの中で、エンドユーザーや上流の発注者からの買いたたき・減額・支払遅延が、下流へ連鎖する
  • 成果物のあいまいさ:ソフトウェアは、つくるものについての共通の認識をつくりにくい。それが、不当な内容の変更ややり直しを招く
  • 中抜きと契約の不明確さ:多くの事業者が、不必要な「中抜き」事業者の存在を感じている。エンドユーザー・元請・下請の間の契約内容が、必ずしも明確でない

そのうえで公正取引委員会は、エンドユーザーと元請に契約内容の明確化を求め、業界全体で取引の流れをスリムにする取り組みを期待し、独占禁止法と下請法の執行を強めるとしました。このほか、独占禁止法や下請法の知識が十分でない事業者が多いことも指摘しています。これは2022年時点の調査と提言です。

下請法は、現在は取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)という名前になっています。e-Gov法令検索に収録された現行の版は、2026年1月1日に施行されたものです。

取適法の「情報成果物作成委託」は、事業として作成を請け負う情報成果物の作成の全部または一部を、他の事業者に委託することなどを指します。情報成果物には、プログラムが含まれます(第2条第3項・第7項)。事業として提供する役務(サービス)の全部または一部を他の事業者に任せる「役務提供委託」もあります(第2条第4項)。元請が、受けた開発の一部を下請に任せる取引は、情報成果物作成委託に当たります。

対象になるかは、委託する側と受ける側の会社の大きさの組み合わせで決まります。プログラムの作成を任せる場合は、資本金3億円を超える法人が3億円以下の事業者に委託する場合などに加えて、常時使用する従業員が300人を超える法人が、300人以下の事業者に委託する場合も対象になります(第2条第8項第1号・第5号、第9項)。政令が、この基準の対象になる情報成果物をプログラム、役務を運送・倉庫での保管・情報処理と定めているためです。それ以外の情報成果物や役務の委託では、資本金5千万円・従業員100人などの基準になります(第2条第8項第3号・第6号)。委託する側の義務や禁止される行為は第3条以下で定められており、この記事ではその内容までは扱いません。

同じSIでも、工程と事業の組み合わせで稼ぎ方が違う

SIの会社は、どの工程を受けるか、受託のほかに何を売るかで、稼ぎ方が違います。下の図は、事業ごとの開示がある3社について、その会社の中での違いを示したものです。決算の期、会計の基準、利益の段階が会社ごとに違うため、会社どうしの大きさや利益率は比べていません。

SIの会社は、工程の組み合わせと、受託以外に何を売るかで稼ぎ方が違う

3社それぞれの、会社の中での違い。決算の期・会計の基準・利益の段階が違うため、会社どうしの大きさや利益率は比べていない。

事業で利益率が違う例:野村総合研究所(NRI)2026年3月期、事業ごとの営業利益率(会社の決算説明会資料の表示値)
コンサルティング売上収益687億円28.0%
金融ITソリューション売上収益4,052億円。海外を含む全体18.3%
産業ITソリューション(国内)売上収益1,919億円。全体は減損で営業損失15.2%
帯の右端は30%。金融ITは事業全体、産業ITは国内分で、範囲はそろっていない。IT基盤サービス(17.4%)はセグメント間の取引を含みうるため並べていない。
販売・保守と一体で稼ぐ例:大塚商会2026年1〜9月(12月期の第3四半期累計)。2つの事業の合計を100%とした割合(この記事の計算値)
外部売上高システムインテグレーション事業69.9%(7,649億円。ハードウエア・ソフトウエアの販売を含む)、サービス&サポート事業30.1%(3,294億円。保守・サプライ・サポート)
セグメント利益システムインテグレーション事業73.0%(585億円)、サービス&サポート事業27.0%(216億円)。全社の調整を差し引く前の合計を100%とした
通信グループの中のSI:NTT(NTTデータグループ)2025年度(2026年3月期)決算短信の事業の区分
  • 2025年9月にNTTデータグループの完全子会社化を完了
  • NTTデータグループなどは「グローバル・ソリューション事業」に入る。コンサルティング、ITソリューション、システム・ソフトウェア開発、メンテナンス・サポート、データセンター事業などを含み、海外の事業も入る
  • このため、この事業の数字は国内のSIの大きさとしては読めない。NTTドコモなどの総合ICT事業の法人事業にもシステム開発事業がある
出典:野村総合研究所「2026年3月期 決算説明会資料」(2026年4月24日)、大塚商会「2026年12月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年10月30日)・「有価証券報告書(第65期、2025年12月期)」(事業の内容)、NTT「2025年度 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年5月8日)。NRIはIFRS、大塚商会は日本基準。大塚商会の割合は本記事で計算し、億円未満は四捨五入。

野村総合研究所(NRI)は、2026年3月期の決算説明会資料で、事業ごとの営業利益率を示しています。コンサルティングは28.0%で、金融ITソリューションの18.3%、産業ITソリューションの国内分の15.2%を上回ります。金融ITソリューションは海外を含む事業全体、産業ITソリューションは国内分の値で、範囲はそろっていません。売上収益は、コンサルティングが687億円、金融ITソリューションが4,052億円で、コンサルティングは小さい事業です。NRIでは、コンサルティング事業の利益率が、システムの開発・運用を担うほかの事業より高くなっています。これはNRIの例で、ほかの会社でも同じとは限りません。IT基盤サービス(17.4%)は、セグメントの間の取引を含みうるため、図では並べていません。

NRIの産業ITソリューション全体は、豪州・北米の事業ののれんなどの減損で、746億円の営業損失でした。国内分だけを見ると、営業利益率は15.2%です。NRIは、AIコンサルティングの案件とレガシー・モダナイゼーション(古いシステムの刷新)の案件が活況で、コンサルティングが増収増益になったと説明しています。NRIはキャリア採用で「コンサルタント、システムエンジニア等」を募集しています(採用情報)。

通信会社のグループの中にSIの会社がある例もあります。NTTは、2025年9月にNTTデータグループの完全子会社化を完了しました。NTTの2025年度決算短信では、NTTデータグループなどはグローバル・ソリューション事業に入ります。この事業には、コンサルティング、ITソリューション、システム・ソフトウェア開発、メンテナンス・サポートに加えて、データセンター事業や海外の事業も含まれます。このため、この事業の数字を国内のSIの大きさとして読むことはできません。NTTでは、NTTドコモなどの総合ICT事業の法人事業にも、システム開発事業があります。

大塚商会は、ハードウエアやソフトウエアの販売と一体でSIを手がけています。同社の有価証券報告書(2025年12月期)は、システムインテグレーション事業の内容を、コンサルティング、ハードウエア・ソフトウエアの販売、受託ソフトウエアの開発、機器の搬入設置・ネットワーク工事などとしています。2026年12月期第3四半期決算短信では、2026年1〜9月のこの事業の外部売上高は7,649億円で、パッケージソフトが高い伸びを示しました。保守やサプライ品の供給、電話でのサポートなどのサービス&サポート事業は、外部売上高3,294億円です。名前は同じ「システムインテグレーション」でも、大塚商会ではハードウエアとソフトウエアの販売が売上に入っており、受託開発が中心の会社とは売上の中身が違います。

業界では、SIerを親会社や成り立ちで「メーカー系」「通信系」「独立系」「商社系」などと呼ぶことがあります。これは業界の通称で、法律や統計の区分ではありません。どの会社がどれに当たるかは、有価証券報告書の関係会社や大株主の記載で確かめる必要があります。この記事で取り上げた会社では、NTTデータグループがNTTの完全子会社であることを、NTTの決算短信で確かめられます。

大手のSIerには、上場をやめた会社もあります。NTTの完全子会社になったNTTデータグループのほか、SCSKも2026年3月12日に上場を廃止しました。SCSKの決算短信は、2026年3月期第3四半期以降は開示されていません(SCSK IRライブラリ)。NTTデータグループの事業は、親会社NTTの決算短信のグローバル・ソリューション事業で確かめられます。

生成AI・取引のルール・再編は、どの仕事に届くか

SIの仕事には、技術の変化と、取引のルールの変化の両方が届いています。下の図は、主な変化と、それが届く仕事を結んだものです。採用数の増減や、業界の将来の姿は予測していません。

生成AI・取引のルール・再編は、コンサル・SE・営業・プロジェクト管理の仕事に届く

左はこの記事で原本を確かめた変化、右はそれが届く仕事。採用数の増減や、業界の将来の姿は予測していない。

2026年3月期(NRIの例)AIコンサルティングとレガシー・モダナイゼーションの案件NRIはコンサルティングの増収増益の理由に挙げた
→↓
コンサル・SE:業務のどこにAIを使うか、古いシステムをどの順に新しくするかの計画
2022年6月(提言)公正取引委員会の実態調査エンドユーザーと元請に契約内容の明確化を求めた
→↓
営業・プロジェクト管理:つくるもの、作業の範囲、変更するときの決め方を契約で明らかにする
e-Govの現行版は2026年1月1日施行下請法から取適法へプログラムの作成の再委託は情報成果物作成委託。資本金に加え従業員数(プログラムは300人)でも対象が決まる
→↓
営業・プロジェクト管理:任せる取引が法律の対象に当たるかの確認
2025年9月・2026年3月NTTデータグループの完全子会社化、SCSKの上場廃止
→↓
求職者の企業研究:決算短信がない会社や親会社の中に入った会社の数字を、親会社の開示や会社の資料で確かめる
出典:野村総合研究所「2026年3月期 決算説明会資料」、公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(概要)」(2022年6月)、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第2条(e-Gov)、NTT「2025年度 決算短信」、SCSK「IRライブラリ」。

生成AIと古いシステムの刷新は、構想を描く仕事に届いています。NRIでは、AIコンサルティングとレガシー・モダナイゼーションの案件が、2026年3月期のコンサルティングの増収増益の理由に挙げられています。コンサルタントやSEには、顧客の業務のどこにAIを使うか、古いシステムをどの順に新しくするかを計画する仕事が加わります。

取引のルールは、契約を決める仕事に届きます。公正取引委員会は2022年の報告書で、エンドユーザーと元請に契約内容の明確化を求めました。2026年1月1日に施行された取適法では、資本金に加えて従業員の数でも、法律の対象になる取引が決まるようになりました(それまでの下請法の条文には、従業員の基準はありませんでした)。営業やプロジェクト管理の担当には、つくるものと作業の範囲、変更するときの決め方を契約で明らかにし、任せる取引が法律の対象に当たるかを確かめる仕事があります。

再編は、求職者の企業研究に届きます。SCSKのように上場をやめた会社では、決算短信が開示されなくなることがあります。NTTデータグループの数字は、親会社NTTの決算短信では、データセンターや海外の事業とまとめてグローバル・ソリューション事業として示されています。応募先の稼ぎ方は、親会社の開示や会社の説明資料で確かめます。

求人票では、取引の位置・契約の形・担当工程を確かめる

SIの仕事は、取引の位置と契約の形によって、相手と成果物が変わります。

仕事主な相手主な成果物の例取引・契約との関係
構想・コンサルティング顧客の経営・業務部門課題の整理、システムの構想、刷新の計画顧客と直接、何をつくるかを決める立場か。NRIではほかの事業より利益率が高い
設計・開発顧客または上流の会社、チームの開発者設計書、プログラム、テストの結果仕様を決める側か、決まった仕様でつくる側か。請負なら完成が約束
プロジェクト管理顧客、任せる先の会社、チーム計画、進み具合と品質の管理、任せる先との取り決め何社が関わる体制か。任せる取引が取適法の対象かの確認
運用・保守システムの利用部門障害への対応、改修、運用の手順請負か準委任か。期間で報酬を決める契約か。作業の指示を誰から受けるか
営業顧客の情報システム部門・購買部門提案、見積もり、契約成果物と作業範囲、変更の決め方を契約にどう書くか

職種の名前は会社によって違います。たとえばNRIは、キャリア採用で「コンサルタント、システムエンジニア等」を募集しています。情報サービス産業協会(JISA)が2020年経済構造実態調査をもとにまとめた情報サービス産業の職種別従業員数では、システムエンジニアが45万2,665人で46.1%、プログラマが18万8,636人で19.2%でした。2020年の値です。

求人票では、次の4点を確かめます。

  • 取引の位置:応募先は、主に顧客と直接契約する元請か、ほかの会社から仕事を受ける下請か。配属される案件ではどの位置か
  • 契約の形:請負・準委任・派遣のどれで働くのか。顧客の事務所で働く場合、作業の指示を誰から受けるのか
  • 担当工程と成果物:構想・設計・開発・テスト・運用のどこを担い、何を納めるのか
  • 顧客の業種:金融・製造・官公庁など、どの業種のシステムをつくるのか

IT・通信の分野の中でSIがどこにあるか、製品・基盤・回線の会社との違いは、「IT・通信の業界地図」で確かめられます。業務ソフトやERPの導入の工程と成果物は、「業務ソフトウェア業界の地図」「ERP業界の地図」で整理しています。