IT・通信を受託、製品、基盤、回線、ネットサービス、セキュリティの6層に整理。誰に何を売る会社かを見分け、次に読む業界地図を選べます。

「IT」「通信」と書かれた求人は、顧客企業のシステムを設計・開発する仕事から、携帯電話や光回線の設備を運用する仕事、クラウドの計算資源を貸す会社の法人営業、SNSの広告を売る仕事、企業のネットワークを監視する仕事まで幅があります。同じ「IT業界」でも、お金を払うのが企業なのか個人なのか広告主なのか、売っているのが作業なのか製品なのか回線なのかで、仕事の相手も成果物も変わります。

この記事では、IT・通信を6つの層に分けて地図にします。顧客ごとにシステムを作る「受託」、ソフトを製品として売る「製品」、計算資源やデータセンターを貸す「基盤」、通信回線を提供する「回線」、検索やSNSを無料で使わせて広告などで稼ぐ「ネットサービス」、すべての層にかかわる「セキュリティ」です。そのうえで、大きさを測る物差しの違い、法律の枠、お金の流れ、1社が複数の層にいる例、変化が届く仕事を順に比べます。

扱う範囲は、日本標準産業分類の「情報通信業」のうち、通信業、情報サービス業(ソフトウェア業と情報処理サービス業)、インターネット附随サービス業です。放送・出版・映画などのコンテンツ制作、ゲーム、端末や電子部品の製造、通信工事、ネット通販や決済そのもの、IT人材の派遣は扱いません。

各層の会社比較や仕事の詳しい流れは、層ごとの業界地図で扱います。製品の層は「業務ソフトウェア業界の地図」「B2B SaaS業界の地図」「ERP業界の地図」、回線の仕事は「通信の業界地図」、守る仕事は「サイバーセキュリティの業界地図」で詳しく確認できます。この記事は、次にどの地図を読むかを決めるための全体図です。

6つの層で見ると、求人の会社がどこにいるか分かる

IT・通信の会社は、何を売るかで6つの層に分けられます。層は会社の格付けや、上流・下流の順番ではありません。売るもの、お金を払う人、契約の形の違いです。1つの会社が複数の層にいることも多いため、下の図では会社を主な位置に置き、ほかの層は注に書きました。

IT・通信は、何を売るかで6つの層に分けられる

行は層、各行に売るもの・払う人・お金の取り方・法律の枠・会社の例・詳しく読む地図を置いた。層は上下の序列ではなく、会社の大きさも表していない。1社が複数の層にいる場合は下の注に書いた。

受託SI・ITコンサル
何を売るか顧客ごとのシステムの構想・設計・開発・運用
誰が払うか企業・官公庁。下請の会社から見ると元請の会社
お金の取り方請負(完成した成果物)、準委任(行った事務・期間、またはその成果)、運用・保守の継続契約
法律の枠事業を始める登録・許可は見当たらない。契約は民法、委託の取引は取適法、派遣との境目は37号告示
会社の例NRI、NTT(NTTデータグループ)、TISI、日立製作所(デジタルシステム&サービス)、大塚商会(機器・ソフトの販売を含む)
詳しく読む地図SIer・システム開発の業界地図
製品業務ソフト・SaaS
何を売るかパッケージソフトのライセンス、SaaSの利用権
誰が払うか利用企業。販売パートナーを通す場合もある
お金の取り方ライセンスの代金と保守料、継続課金の利用料
法律の枠事業を始める登録・許可は見当たらない。回線設備を持たずに提供するSaaSが電気通信事業法の第三号事業に当たれば、原則として適用除外(個社の扱いは事業の中身で違う)
会社の例業務ソフトウェア・ERP・B2B SaaSの各地図で比べている会社
詳しく読む地図業務ソフトウェア、ERP、B2B SaaS
基盤クラウド・データセンター
何を売るか計算資源・データの保存場所(IaaS・PaaS)、GPU、データセンターの場所・電力
誰が払うか企業、SIer、SaaSの会社、官公庁
お金の取り方使った量に応じた料金、ラック・電力の料金
法律の枠統計では電気通信業に分類。登録・届出をしているかは、会社と提供するサービスの中身で違う(この記事では個社を確かめていない)
会社の例さくらインターネット、NTT(データセンター)、KDDI(データセンター)
関連分野詳しい会社比較は本記事の対象外
回線移動・固定の通信
何を売るか携帯電話・光回線などの通信回線、インターネット接続、MVNOへの回線の卸
誰が払うか個人、企業、MVNO
お金の取り方月々の回線料・通信料、卸料金
法律の枠電気通信事業法の登録(第9条)か届出(第16条)。2025年度末は登録342者・届出2万7,466者(回線を持たない事業者を含む全体の数)
会社の例NTTドコモ、NTT東日本・西日本、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル。MVNOのIIJ
詳しく読む地図通信の業界地図
ネットサービス検索・SNS
何を売るか無料のサービスの利用(利用者)と、広告枠(広告主)、有料会員
誰が払うか広告主(企業)と利用者(個人)
お金の取り方広告料(検索・アカウント・ディスプレイ)、ユーザー課金
法律の枠サービスの中身で違う。メッセージなど通信を媒介するサービスは登録・届出の対象。媒介しない検索・投稿のサービスは原則として適用除外(指定を受けた大規模なものは除外の対象外)。情報流通プラットフォーム対処法(大規模事業者の指定)
会社の例LINEヤフー。同法の指定を受けた会社にはGoogle、Meta、TikTok、Xなども
関連分野詳しい会社比較は本記事の対象外
セキュリティすべての層を横断
何を売るか攻撃を防ぐ製品、診断、監視・運用、事故への対応
誰が払うか企業・官公庁。ほかの層の会社も顧客
お金の取り方製品の利用料、診断の代金、監視・運用の委託料
法律の枠事業を始める登録・許可は見当たらない。システムの供給者には、サイバーセキュリティ基本法の努力義務
会社の例ラック(KDDIの連結子会社)、トレンドマイクロ。SIer・通信会社のセキュリティ部門
詳しく読む地図サイバーセキュリティの業界地図
1社が複数の層にいる例
  • NTT:回線(ドコモ・NTT東西)、受託(NTTデータグループ)、基盤(データセンター)
  • KDDI:回線、基盤(データセンター)、セキュリティ(ラック)
  • ソフトバンク:回線、法人向けのクラウド・セキュリティのソリューション
  • IIJ:回線(MVNO)と受託(SI)を1つのセグメントで開示
  • LINEヤフー:ネットサービスのほか、ネット通販・決済(この記事の範囲外)
「事業を始める登録・許可は見当たらない」は、この記事で調べた法律の範囲での記述。法律の枠は、提供するサービスの中身で変わる。会社の位置は主な事業によるもので、売上や規模の大小は表していない。
出典:電気通信事業法・民法・製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律・サイバーセキュリティ基本法(e-Gov)、厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」、総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」「令和8年版情報通信白書」「2025年情報通信業基本調査」、各社の決算短信・有価証券報告書・会社概要(NTT・KDDI・ソフトバンク・IIJ・LINEヤフー・さくらインターネット・大塚商会・ラック)。

受託の会社は、顧客の企業や官公庁ごとに、システムの構想・設計・開発・運用を引き受けます。顧客ごとのシステムを受託してつくり、動かす仕事をSI(システムインテグレーション)と呼び、SIを担う会社をSIer(エスアイヤー)と呼びます。ITコンサルの会社もこの層にいます。お金は、完成したシステムへの報酬(請負)か、行った事務や期間、またはその成果への報酬(準委任)として受け取り、完成後の運用・保守を続けて請け負うこともあります。元請・下請の関係や会社の型は「SIer・システム開発の業界地図」で扱います。

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製品の会社は、業務ソフトをパッケージ(使う権利を売るライセンス)やSaaS(インターネット経由で使う、継続課金のソフト)として売ります。業務の領域、製品会社と導入支援会社・販売パートナーの関係、継続収益の読み方は、業務ソフトウェア・ERP・B2B SaaSの各地図で整理しています。この記事では、製品の層を受託や基盤と並べて、位置を確かめるだけにします。

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基盤の会社は、計算資源やデータの保存場所(IaaS・PaaSと呼ばれるクラウドサービス)、生成AIの計算に使うGPU、データセンターの場所や電力を貸します。SaaSとは、「業務のアプリを売るか、アプリを動かす土台を売るか」で分かれます。さくらインターネットは、クラウド、GPU、ハウジング(顧客のサーバーを置く場所を貸すサービス)などを提供しています。

回線の会社は、携帯電話や光回線などの通信回線を個人や企業に提供し、月々の料金を受け取ります。携帯電話の回線設備を持つ会社(MNO)は、携帯電話の無線の設備を持たず、回線を借りて通信サービスを売る会社(MVNO)にも回線を卸しています。2025年末時点で、移動通信の契約数は固定通信の約19.5倍です(令和8年版情報通信白書 電気通信分野の動向)。会社ごとの違いは「通信の業界地図」で扱います。

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ネットサービスの会社は、検索・SNS・ニュースなどを利用者に無料で使わせ、広告主から広告料を受け取ります。有料会員の会費など、利用者から受け取るお金もあります。お金を払う人と、サービスを使う人が別々にいるのが、この層の特徴です。

セキュリティは、ほかの層を横断する層です。攻撃を防ぐ製品、システムの弱点を調べる診断、監視、事故が起きたときの対応を、企業や官公庁に売ります。ほかの層の会社も、セキュリティの顧客です。セキュリティを専門にする会社のほか、SIerや通信会社のセキュリティ部門もこの仕事を担います。詳しくは「サイバーセキュリティの業界地図」で扱います。

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IT・通信の規模の見え方は、物差しによって変わる

IT・通信の大きさを示す数字は、何を数えるかで大きく変わります。売上には、会社全体の売上(企業売上)と、その業種の部分だけの売上(業種売上)があります。国の統計のほかに、付加価値(GDP)、民間の調査会社や業界団体の推計、働く人の数もあります。範囲も年も数え方も違うため、足し合わせて「IT業界は○兆円」とすることはできません。

IT・通信の規模の見え方は、物差しによって変わる

左右に並べた数字は、範囲・年・数え方が違う。足し合わせたり、大小で比べたりはできない。それぞれ何を数えた数字かを示した。

通信:同じ調査でも、会社全体の売上と業種の部分の売上で約5兆円違う
国の統計電気通信業の企業売上約21.3兆円2024年度。電気通信業を営む会社の全事業の売上。通信以外の事業も入る
国の統計電気通信業の当該業種売上約16.2兆円2024年度。同じ会社の、電気通信業の部分だけの売上
受託・製品:会社の売上の中に、二重に数えた分がある
国の統計情報サービス業の会社の売上43兆5,014億円2024年。情報サービス業に分類された会社の全事業の売上(ゲームの配信なども含む)
国の統計うち受注制作のソフトウェア元請16.9兆円/下請4.3兆円2024年。元請の売上に下請への支払いが含まれ、同じ仕事を二重に数えている。足して市場規模にしない
クラウド:国の調査と民間の推計で、対象も方法も違う
国の統計IaaS・PaaSの売上1,437億円2024年度。国内の会社の回答(電気通信業の内訳)
国の統計ASP・SaaSの売上1兆7,211億円2024年度。国内の会社の回答(インターネット附随サービス業の内訳)
民間の推計パブリッククラウドサービス市場4兆4,930億円2025年。IDC Japanの推計を情報通信白書が引用。IaaS・PaaSとSaaSを分けない
セキュリティ:サービスの売上と、製品を含む市場の推計
国の統計情報ネットワーク・セキュリティサービス業の売上2,830億円2024年度。国内の会社の回答(インターネット附随サービス業の内訳)
団体の推計国内の情報セキュリティ市場1兆6,665億円2023年度の実績の推定。JNSAの推計で、製品(ツール)とサービスを含む
売上以外の物差し
国の推計情報通信産業の名目GDP(付加価値)71.7兆円2024年。放送や情報通信関連の製造業・建設業なども含む9部門
国の推計民間企業の情報化投資25.7兆円2024年、2020年価格。うちソフトウェア20.2兆円。クラウドの利用料は含まない
国の統計情報通信業の就業者302万人2025年平均。放送・出版・映像などの制作で働く人も含む
出典:総務省「2025年情報通信業基本調査(2024年度実績)結果の概要」、総務省・経済産業省「2025年経済構造実態調査 二次集計 産業横断調査(企業等に関する集計)結果の概要」、総務省「令和8年版情報通信白書」第Ⅱ部第1章第1節・第8節(パブリッククラウドはIDC Japanの推計の引用)、日本ネットワークセキュリティ協会「国内情報セキュリティ市場 2024年度調査報告」、総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年平均結果の概要」。情報通信業基本調査は年度、経済構造実態調査は暦年の値で、調査も異なる。基本調査のサービス別の売上には未回答の会社があり、内訳の合計は総数と一致しない。

同じ調査の中でも、物差しで数字が変わります。総務省の2025年情報通信業基本調査によると、2024年度に電気通信業を営む会社の企業売上は約21.3兆円です。このうち電気通信業の部分の売上(当該業種売上)は約16.2兆円で、約5兆円の差があります。企業売上には、通信会社が手がける通信以外の事業の売上も入るためです。

受託と製品の会社が多い情報サービス業は、この基本調査の対象に入っていません。総務省と経済産業省の2025年経済構造実態調査の二次集計では、2024年の情報サービス業の会社の売上は43兆5,014億円です。これは情報サービス業に分類された会社の全事業の売上で、ゲームの配信なども含みます。内訳では、顧客から注文を受けて作るソフトウェア(受注制作。機械に組み込むソフトを除く)の売上が、元請で16兆8,783億円(38.8%)、下請で4兆2,589億円(9.8%)です。元請の売上の中には下請に払った分が含まれ、同じ仕事を二重に数えています。2つを足して市場の大きさにすることはできません。

クラウドでは、範囲の違いがさらに大きく出ます。基本調査で、IaaS・PaaSとして回答された売上は、2024年度に1,437億円です。SaaSは別の項目(インターネット附随サービス業のASP・SaaS)に入り、1兆7,211億円です。一方、情報通信白書が引用する民間調査会社IDC Japanの推計では、2025年の日本のパブリッククラウドサービス市場は4兆4,930億円です(令和8年版情報通信白書 データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向)。基本調査は国内の会社の回答の集計で、国外から提供されるサービスの分がどこまで入るかは資料から分かりません。民間の推計は、白書の注によると「特別の規制や制限を設けずに幅広いユーザーに対して提供されるIT関連機能に特化したクラウドサービス」を対象にしており、基本調査のようにIaaS・PaaSとSaaSを分けた数字ではありません。対象のサービスの範囲も推計の方法も違います。どちらが正しいかではなく、何を数えた数字かを確かめる必要があります。

セキュリティも同じです。基本調査の「情報ネットワーク・セキュリティサービス業」の売上は、2024年度に2,830億円です。業界団体の日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は、製品とサービスの両方を含めた国内の情報セキュリティ市場を、2023年度の実績の推定で1兆6,665億円としています(国内情報セキュリティ市場 2024年度調査報告)。

付加価値(売上から原材料などの仕入れを差し引いた、新しく生み出した価値)で測ると、2024年の情報通信産業の名目GDPは71.7兆円で、全産業の11.5%です(令和8年版情報通信白書 ICT産業の動向)。ただし、白書の情報通信産業は、通信・放送・情報サービス・インターネット附随サービス・映像音声文字情報制作に、情報通信関連の製造業・サービス業・建設業と研究を加えた9部門です。この記事で扱う範囲より広く、売上の数字と並べることもできません。

同じ白書によると、2024年の民間企業の情報化投資は、2020年の価格で25.7兆円です。このうち、受託開発とパッケージソフトを合わせたソフトウェアが20.2兆円を占めます。白書は、クラウドサービスの利用はサービスの購入にあたり、情報化投資には含まれないと注記しています。クラウドへの支払いは、この数字には表れません。

働く人の数では、総務省の労働力調査で、2025年平均の情報通信業の就業者は302万人で、前の年より10万人増えました。この数字には放送や出版・映像などの制作で働く人も入っており、この記事の6つの層だけの人数ではありません。

求人や会社案内で「市場規模○兆円」「シェア○%」という数字を見たら、売上か付加価値か推計か、会社全体の売上かその業種の部分か、いつの数字か、国内の会社だけか国外の会社も含むかを確かめます。

法律の枠は、回線は登録・届出、受託は契約と取引のルール

IT・通信の層は、事業を始めるための手続きと、守るルールが違います。回線の層には事業を始める手続きを定めた法律がありますが、受託や製品の層では、契約の形と取引のルールが仕事の進め方を決めます。

層主な法律決まっていることルールの種類
回線電気通信事業法 第9条・第16条電気通信事業は原則として総務大臣の登録が要る。設置する回線設備の規模などが省令の基準を超えない場合は届出事業を始める手続き
回線設備を持たず、通信を媒介しないサービス(基盤・製品・ネットサービスの一部)電気通信事業法 第164条回線設備を設置せず、他人の通信の媒介以外のサービスを提供する事業(第三号事業)には、原則として法を適用しない。ただし、検閲の禁止・通信の秘密の保護や、利用者の情報を外部に送るときの通知など、一部の規定は適用される。ドメイン名のサービスと、総務大臣が指定した会社の大規模な検索・投稿のサービスは、この適用除外から外れる適用除外と、その例外
ネットサービス情報流通プラットフォーム対処法SNSなどでの権利侵害への対応を定める。国が指定した大規模な事業者には、削除などの措置を速く、透明に行う義務がある指定を受けた会社の義務
受託民法 第632条・第648条・第648条の2・第656条請負は、仕事の完成に対して報酬を払う契約。準委任は、法律行為でない事務を任せる契約で、報酬は事務を行った後か、決めた期間の後に請求する。事務によって得られる成果に対して報酬を払うと約束する形もある契約の類型
受託取適法(旧下請法)第2条情報成果物の作成や役務の委託を、委託する側と受ける側の資本金か従業員数の基準で対象にする。プログラムの作成と情報処理の委託では、資本金3億円か従業員300人を超える会社が、それ以下の相手に委託する場合などが対象(そのほかの情報成果物・役務では5千万円・100人の基準)対象となる取引の定め
受託労働者派遣事業と請負の区分の基準(37号告示)請負の形の契約でも、受けた会社が自ら作業の指示や労働時間の管理を行い、独立して仕事を処理していなければ、労働者派遣事業として扱われる区分の基準
すべての層サイバーセキュリティ基本法 第7条第2項情報システムなどを供給する事業者は、利用者の安全に配慮した設計・開発や、維持管理に必要な情報の継続的な提供に努める努力義務

電気通信事業を営む会社は、登録か届出のどちらかをします。2025年度末の電気通信事業者は2万7,808者で、そのうち登録は342者です(令和8年版情報通信白書)。届出の事業者には、回線設備を持たずにインターネット接続などを提供する会社も含まれ、回線の層の会社だけの数ではありません。事業用の通信設備を持つ事業者は、設備が小規模な場合などを除き、設備の工事・維持・運用を監督する電気通信主任技術者を、資格者証を持つ人から選んで届け出ます(第45条)。

基盤・製品・ネットサービスの層の会社が、回線設備を持たずに通信の媒介以外のサービスを提供する場合は、第三号事業として原則として法が適用されません。データセンターやIaaS・PaaSは、統計(基本調査)では電気通信業に分類されています。データセンターやクラウドの会社が登録・届出をしているかは、会社と提供するサービスの中身で違います。この記事では個社ごとに確かめていません。ネットサービスでも、メッセージのように他人の通信を媒介するサービスは第三号事業に当たらず、登録・届出の対象になります。

ネットサービスの層では、2025年4月に改正法が施行され、法律の名前が変わりました(略して情報流通プラットフォーム対処法)。同じ月に、Google、LINEヤフー、Meta、TikTok、Xの5社が大規模な事業者に指定され、5月にはドワンゴ、Pinterest、サイバーエージェント、湘南西武ホームの4社が指定されています。

受託の層には、運送業の許可や通信の登録のような、事業を始める手続きを定めた法律は、この記事で調べた範囲では見当たりません。その代わりに、民法の契約の類型、取適法、37号告示が、責任と報酬の決まり方、発注のルール、派遣との境目を決めます。e-Gov法令検索の収録情報によると、取適法は、2026年1月1日に施行された改正法(下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律)で今の名前になりました。取適法の対象になる取引の範囲と、多重下請について公正取引委員会が指摘した問題は、「SIer・システム開発の業界地図」で扱います。

求人でよく見る「SES」は、法律上の契約の名前ではありません。請負・準委任なのか派遣なのかは、契約の名前ではなく、37号告示の基準(誰が作業を指示し、労働時間を管理するかなど)で、実態に即して判断されます。厚生労働省は、準委任の契約でも同じ基準で判断すると示しています(37号告示に関する疑義応答集(第3集))。

お金の流れは、払う人と課金の単位が層ごとに違う

6つの層は、誰から、何に対してお金を受け取るかで分けると違いが見えます。下の図は、払う人から各層への流れに、課金の単位を書いたものです。矢印の太さは、金額の大きさを表していません。

各層は、払う人も、課金の単位も違う

左が払う人、中央が課金の単位、右が受け取る層。矢印の太さや箱の大きさは、金額を表していない。下段は、この記事で決算などを確かめた例。

企業・官公庁元請から下請へも同じ形で流れる
完成した成果物(請負)/行った事務・期間、またはその成果(準委任)完成後の運用・保守は継続契約
受託元請 → 下請
決まり:請負の報酬は完成した物の引渡しと同時(民法第633条)、準委任は事務を行った後か期間の後に請求(第648条)。成果に対して払う約束もできる(第648条の2)
利用企業販売パートナーを通す場合もある
製品のライセンスと保守料/利用者数・機能ごとの継続課金
製品
詳しく:製品会社・導入支援会社・販売パートナーの役割と継続収益は、業務ソフトウェア・ERP・B2B SaaSの各地図
企業・SIer・SaaSの会社・官公庁
使った計算資源の量/ラック・電力
基盤
例:さくらインターネット(2026年4〜9月):売上高228億円のうち、GPUインフラ101億円(258.9%増)、クラウド81億円(7.5%増)、ハウジング・専用サーバー14億円(13.6%減)
個人・企業MVNOは回線を持つ会社へ
月々の回線料・通信料/卸料金
回線
統計(2024年度):電気通信業の当該業種売上のうち、データ伝送55.4%、音声伝送23.7%
広告主(企業)利用者(個人)は有料会員など
広告の掲載・成果/月額の会費などのユーザー課金
ネットサービス
例:LINEヤフー(2026年4〜6月):メディア事業の売上収益1,820億円。アカウント広告13.3%増、ディスプレイ広告・検索広告は減少、ユーザー課金など12.5%増
企業・官公庁ほかの層の会社も含む
製品の利用料/診断の代金/監視・運用の委託料
セキュリティ
推計(JNSA、2023年度):国内の情報セキュリティ市場のうち、製品(ツール)59.7%、サービス40.3%
出典:民法(e-Gov)、総務省「2025年情報通信業基本調査(2024年度実績)結果の概要」、さくらインターネット「2027年3月期第2四半期(中間期)決算短信」、LINEヤフー「2027年3月期第1四半期決算短信」、日本ネットワークセキュリティ協会「国内情報セキュリティ市場 2024年度調査報告」。会社の例は1社の一定期間の値で、層全体の傾向や会社どうしの大きさを表すものではない。さくらインターネットの金額は千円単位の開示を億円未満で四捨五入した。

受託では、企業や官公庁が元請の会社に払い、元請が仕事の一部を下請の会社に任せて払います。請負なら完成した成果物に対して、準委任なら行った事務や期間に対して報酬が決まります。民法では、請負の報酬は完成した物の引渡しと同時に支払うと定め(第633条)、準委任では事務を行った後か、決めた期間の後に請求すると定めています(第648条)。準委任でも、事務によって得られる成果に対して報酬を払うと約束することができ、成果の引渡しが要るときは引渡しと同時に支払います(第648条の2)。

製品では、利用企業がライセンスの代金と保守料、またはSaaSの利用料を払います。販売パートナーを通して買う場合もあります。継続課金の指標の読み方は「B2B SaaS業界の地図」で扱っています。

あわせて読みたいB2B SaaS業界の地図|顧客業務・継続収益・仕事の流れSaaSの継続課金と利用定着までの仕事を確かめる

基盤では、使った計算資源の量に応じた料金や、データセンターのラック(サーバーを収める棚)と電力の料金を受け取ります。さくらインターネットの2027年3月期の中間期(2026年4〜9月)は、売上高228億円のうち、GPUインフラが101億円で、生成AI向けの大型案件により前年同期より258.9%増えました。クラウドは81億円(7.5%増)、ハウジング・専用サーバーの物理基盤は14億円(13.6%減)です(2027年3月期第2四半期決算短信)。さくらインターネット1社の半年の値で、基盤の層全体の傾向を表すものではありません。

回線では、個人や企業が月々の回線料・通信料を払い、MVNOは回線を持つ会社に卸料金を払います。基本調査では、2024年度の電気通信業の当該業種売上のうち、データ通信(データ伝送)が55.4%、音声通話(音声伝送)が23.7%です。

ネットサービスでは、広告主が広告の掲載や成果に対して払い、利用者は有料会員の会費などを払います。LINEヤフーの2026年4〜6月のメディア事業の売上収益は1,820億円でした。そのうち、LINE公式アカウントの広告(アカウント広告)は前年同期より13.3%増え、ディスプレイ広告と検索広告は減り、ユーザー課金などは12.5%増えています(2027年3月期第1四半期決算短信)。

セキュリティでは、企業や官公庁が、製品の利用料、診断の代金、監視・運用の委託料を払います。JNSAの推計では、2023年度の国内の情報セキュリティ市場のうち、製品(ツール)が59.7%、サービスが40.3%です。

1つの会社が、複数の層にいる

通信会社やネットサービスの大手には、複数の層にまたがる会社があります。会社名だけでは、応募する部門がどの層の仕事をしているかは分かりません。

NTTは、2026年3月期に事業を3つの主な区分(セグメント)で開示しています。NTTドコモなどの総合ICT事業(営業収益6兆4,581億円)は携帯電話の回線のほか、法人向けにシステム開発やソリューションも手がけます。NTT東日本・西日本などの地域通信事業(3兆2,102億円)は光回線と固定電話の事業です。NTTデータグループなどのグローバル・ソリューション事業(5兆46億円)は、コンサルティング、システム開発、データセンターなどを担います(2025年度決算短信)。セグメントの営業収益にはグループ内の取引が含まれ、地域通信事業では6,550億円がほかのセグメントとの取引です。グローバル・ソリューション事業は海外とデータセンターを含むため、国内のSIだけの大きさではありません。NTTは、グループのデータセンターの総受電容量を約2,000MWと開示しています。

KDDIは、報告セグメントをパーソナルとビジネスの2つに分けています。ビジネスでは、通信に加えて、IoT関連のサービスやデータセンターなどの領域が伸びたと説明しています。セキュリティの診断や監視を手がけるラックは、KDDIの連結子会社です(2026年3月期決算短信)。

ソフトバンクのエンタープライズ事業は、法人向けのモバイル・固定の回線に加えて、ソリューションなどの売上が4,950億円あり、その増加はクラウドやセキュリティのソリューションなどによるものです(有価証券報告書 第40期)。

LINEヤフーは、ネットサービスのメディア事業のほか、コマース事業と、PayPayを含む戦略事業を持っています。ネット通販と決済は、この記事の範囲の外です。

求人を見るときは、会社名ではなく、募集する部門がどの層のどの事業に属するかを確かめます。上場をやめた子会社の事業の数字は、NTTデータグループのように、親会社の決算のセグメントで確かめることになります。

生成AI・クラウド・取引のルール・再編は、どの層の仕事に届くか

IT・通信では、技術の変化と制度の変化が、層ごとに違う仕事に届いています。下の図は、主な変化と、それが届く層と仕事を結んだものです。採用数の増減や、仕事がなくなるかどうかは予測していません。

技術と制度の変化は、層ごとに違う仕事へ届く

左は主な変化と時期、右はそれが届く層と仕事。採用数の増減や、仕事がなくなるかどうかは予測していない。

2026年3月期〜生成AIの利用の広がり(NRIのAIコンサルティング案件、さくらインターネットのGPUインフラの大型案件)
受託・基盤:AIの導入や業務の構想を支えるコンサルティング、GPUの基盤の設計・運用
令和7年調査(2026年5月公表)クラウドを利用する企業が8割を上回る。古いシステムの作り直し、ガバメントクラウドの採択
受託・基盤・製品:既存のシステムをクラウドへ移す設計、クラウドの基盤の構築・運用、保守から作り直しへの切り替え
2025年コンピュータサービスなどの海外への支払い超過(いわゆるデジタル赤字)約6.6兆円
基盤・製品・ネットサービス:自社で製品を作る仕事と、国外を含む他社の製品・クラウドを導入・運用する仕事の違いを確かめる
2025年9月公表NTT東西が、メタルの固定電話から光・モバイルへの段階的な移行の計画を公表(2026年4月から一部地域で先行移行の予定)
回線:設備の移行の設計と運用、固定電話を使う顧客の移行への対応
2024年度の調査報告EDRの導入が大手企業でほぼ一巡し、運用を外部に任せる需要が広がる(JNSA)
セキュリティ:監視・運用の委託を受ける仕事、製品の導入と乗り換えの支援
2022年の調査・2026年1月公取委が多重下請の問題と契約の不明確さを指摘。下請法が取適法に改正
受託:発注・契約・検収を担うプロジェクトの管理と営業
2025年9月・2026年3月NTTデータグループがNTTの完全子会社に、SCSKが上場廃止。TISの社名はTISIに
受託:応募先の数字が親会社のどのセグメントに入るか、どの決算で開示されるかを確かめる
出典:野村総合研究所「2026年3月期 決算説明会資料」、さくらインターネット「2027年3月期第2四半期(中間期)決算短信」、総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」「令和8年版情報通信白書」第Ⅱ部第1章第1節・第2章第2節、日本ネットワークセキュリティ協会「国内情報セキュリティ市場 2024年度調査報告」、公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(概要)」(2022年)、e-Gov 取適法、NTT「2025年度決算短信」、SCSK「IRライブラリ」、TISI「新卒採用」。

生成AIの広がりは、受託の層ではNRI、基盤の層ではさくらインターネットの決算に表れています。野村総合研究所(NRI)は、2026年3月期のコンサルティング事業が、AIコンサルティング案件と、古いシステムを作り直すレガシー・モダナイゼーション案件の活況で増収増益になったと説明しています(2026年3月期決算説明会資料)。基盤の層では、さくらインターネットのGPUインフラの売上が大きく増えました。

クラウドの利用は、企業の間で定着しています。総務省の令和7年通信利用動向調査では、クラウドサービスを利用する企業は8割を上回り、増え続けています。利用する理由では、「システムの拡張性が高いから」が前の年から最も増えました。既存のシステムをクラウドへ移す設計や、クラウドの基盤の構築・運用は、受託と基盤の層の仕事です。さくらインターネットは、ガバメントクラウド(国や自治体が使うクラウド)への正式な採択などをきっかけに、新しい顧客の獲得を進めていると説明しています。

海外のサービスへの支払いは、受け取りを大きく上回っています。白書によると、コンピュータサービス、著作権等の使用料、専門経営コンサルティングサービスの収支(いわゆるデジタル赤字)は、2025年に約6.6兆円の支払い超過でした。この区分にはデジタル以外のサービスも含まれます。求職者にとっては、応募先が自社で製品やサービスを作っているのか、国外を含む他社の製品やクラウドを導入・運用しているのかが、仕事の中身を分けるポイントになります。

回線の層では、設備の世代交代が進んでいます。白書によると、NTT東日本・西日本は2025年9月に、銅線(メタル)の固定電話から光回線や携帯電話への段階的な移行の計画を公表しました。2026年4月から一部の地域で先行して移行し、2028年ごろから地域ごとに段階的にサービスを終える予定です。理由には、利用の減少、設備の老朽化、メタル設備の技術者の確保が難しいことが挙げられています(令和8年版情報通信白書 電気通信事業政策の動向)。

セキュリティの層では、運用を外部に任せる動きがあります。JNSAの調査報告は、攻撃を検知して対応するためのEDRという製品が大手企業でほぼ導入し終わり、EDRの運用をセキュリティに強いIT企業などに任せる需要に合わせた導入や乗り換えが増えていると記しています。

受託の層では、取引のルールが見直されています。公正取引委員会は2022年のソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査で、多重下請の構造のもとで、発注者からの買いたたきや減額、支払いの遅れが下流の会社へ連鎖する問題や、エンドユーザー・元請・下請の間の契約内容が必ずしも明確でないことを指摘しました。不必要な「中抜き」の事業者がいると感じる事業者が多いことも挙げ、契約内容の明確化を求めています。発注・契約・検収(納品物の確認)を担うプロジェクトの管理や営業の仕事に関わる変化です。

大手のSIerでは、再編が続いています。NTTデータグループは2025年9月にNTTの完全子会社になり、SCSKは2026年3月12日に上場を廃止しました(SCSK IRライブラリ)。TISの採用ページの会社名は「TISI株式会社」になっています(TISI新卒採用)。応募するときは、会社の数字がどの決算から出ているか、親会社のどのセグメントに入るかを確かめます。

求人票では、層・払う人・契約の形を確かめる

同じ「IT・通信」の求人でも、層によって主な相手と成果物が違います。

層お金を払う人仕事の例次に読む地図
受託企業・官公庁、元請の会社業務とシステムの構想、設計・開発・テスト、運用・保守、プロジェクトの管理SIer・システム開発の業界地図
製品利用企業、販売パートナー製品の開発、導入の支援、利用定着の支援、販売業務ソフトウェア業界の地図、ERP業界の地図、B2B SaaS業界の地図
基盤企業、SIer、SaaSの会社、官公庁計算資源やGPUの基盤の設計・運用、データセンターの設備の運営、法人営業本記事の対象外
回線個人、企業、MVNO回線設備の設計・運用、工事の監督、法人向けのネットワーク構築、販売通信の業界地図
ネットサービス広告主、利用者サービスの開発・運営、広告の販売、投稿への対応本記事の対象外
セキュリティ企業・官公庁(ほかの層の会社も含む)製品の開発・販売、診断、監視・運用、事故への対応サイバーセキュリティの業界地図

職種の名前は会社によって違います。NRIはキャリア採用で「コンサルタント、システムエンジニア等」を随時募集しています(NRI 採用情報)。セキュリティのラックは、採用ページで職種としてシステムエンジニア、営業、プロジェクトマネージャー、ホワイトハッカー、セキュリティエンジニアなどを挙げています(ラック 採用情報)。NTT東日本の新卒採用は、幅広い分野・地域で働く入口と、グループ会社でエンジニアとして働く入口の2つに分かれています(NTT東日本 採用情報)。求人票では、職種名よりも、担当する層と顧客、成果物を確かめます。

求人票では、次の4点を確かめます。

  • 層:応募先の会社、または募集する部門は、受託・製品・基盤・回線・ネットサービス・セキュリティのどれか。1社が複数の層にいる場合は、どの事業の部門か
  • 払う人:お金を払うのは企業か個人か広告主か、それとも元請の会社か
  • 契約の形:受託なら請負か準委任か、派遣か。作業の指示を誰から受けるか
  • 製品の出どころ:自社で製品やサービスを作るのか、他社の製品やクラウドを導入・運用するのか

この4点が分かったら、次はその層の業界地図で、会社ごとの違いと仕事の流れを確かめます。製品の層は、業務ソフトウェア・ERP・B2B SaaSの各地図で、製品会社・導入支援会社・利用企業の役割をすでに整理しています。