守る仕事を予防・検知・対応に分け、製品会社、診断、SOC、事故対応を整理。事業に関わる制度と、事業者の努力義務・基幹インフラ側の届出も確認できます。

「セキュリティ」と書かれた求人には、セキュリティ製品の開発、システムの弱点を探す診断、攻撃の兆しを24時間見張る監視の運用、被害を受けた会社に駆けつける事故対応、製品やサービスを売る営業まで幅があります。事業会社の中で、自社のシステムを守る担当者の求人もあります。同じ「セキュリティ」でも、製品を作る会社なのか、サービスを提供する会社なのか、守られる側の会社なのかで、仕事の相手も成果物も変わります。

この記事では、企業や組織の情報システムとネットワークを守るサイバーセキュリティの仕事を扱います。守る仕事の工程と、それぞれの工程で誰が何の対価を受け取るのか、市場の大きさと内訳、どんな会社が担っているのか、法律が誰に何を求めているのか、脅威と制度の変化がどの業務に影響するかを順に確かめます。

IT・通信の分野全体の中でセキュリティがどこに位置するかは、「IT・通信の業界地図」で扱っています。この記事は、その中のセキュリティだけを深めます。回線を持つ会社の稼ぎ方は「通信の業界地図」、SIerの元請と下請の関係は「SIer・システム開発の業界地図」で扱います。

あわせて読みたいIT・通信業界の地図|SIer・製品・クラウド・回線・セキュリティIT・通信の層の中でセキュリティの位置を確かめるとき

個人向けセキュリティソフトの製品比較、能動的サイバー防御法のうち通信情報の取得などのまだ施行されていない部分と、安全保障政策の論点も扱いません。

守る仕事は、予防・検知・対応の工程で分かれる

サイバーセキュリティ基本法の第2条は、サイバーセキュリティを、電子的な情報の漏えい・滅失・毀損を防ぎ、情報システムとネットワークの安全性と信頼性を確保する措置がとられ、適切に維持されている状態と定めています。この状態を保つための製品とサービスを売る会社と、それを使って自社を守る会社がいます。

守る仕事は、工程で分けると分かりやすくなります。攻撃を受ける前に弱点を見つけて塞ぐ「予防」、攻撃の兆しを見つける「検知」、被害が起きたあとに原因を調べて立て直す「対応」です。このほかに、社員の教育や保険などの「周辺」の仕事があります。

守る仕事は予防・検知・対応の工程に分かれ、工程ごとに対価の受け取り方が違う

上は製品とサービスの割合、中央は工程ごとのJNSAの区分と2023年度の金額(実績の推定値)、下はサービスの内訳。金額は業界団体の推計で、公的な統計ではない。

国内情報セキュリティ市場 1兆6,665億円(2023年度)の内訳
製品(ツール)9,942億円・59.7%、サービス6,724億円・40.3%。2024年度は見込みで1兆7,995億円。
製品(ツール):予防と検知の両方に使うエンドポイント保護・管理/ネットワーク防御・検知(境界線防御)/コンテンツセキュリティ対策/アイデンティティ・アクセス管理(4区分の合計9,942億円)
予防コンサルティング/診断2,888億円脆弱性診断 719億円、規格認証 368億円など対価の例:案件ごとの作業(診断・計画・認証支援)
検知SOC(監視)・インテリジェンス情報提供1,974億円・327億円顧客のシステムの記録を見張り、攻撃の兆しを知らせる対価の例:継続して運用を任される契約
対応インシデント対応・フォレンジック427億円被害を受けた機器を調べ、原因と範囲を確かめる対価の例:被害が起きたときの依頼
周辺電子証明書・教育・資格取得支援・保険1,108億円リテラシー教育 469億円、保険 172億円など対価の例:研修・証明書・保険料
サービス6,724億円の中分類の割合(計算値)
コンサルティング/診断 42.9%、マネージド・運用 40.6%(SOC・インシデント対応・フォレンジック・インテリジェンス)、周辺 16.5%。
読み方:JNSAの中分類では、SOC・インシデント対応・フォレンジック・インテリジェンス情報提供はまとめて「マネージド・運用」(2,727億円)。工程への当てはめと対価の例は編集部の整理で、契約の形は会社・案件ごとに違う。
出典:日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)「国内情報セキュリティ市場 2024年度調査報告」(2025年6月30日)。2023年度は実績の推定値、2024年度は見込み。1兆6,665億円はJNSAの公表値。内訳は百万円単位の値を億円に四捨五入したため、足し合わせても合計と一致しないことがある。サービスの中分類の割合は本記事で計算。

業界団体の日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は、市場を製品(ツール)とサービスに分けています(国内情報セキュリティ市場 2024年度調査報告)。製品は、パソコンなどの端末を守るエンドポイント保護・管理、社内と外のネットワークの境目で攻撃を防ぐ・見つけるネットワーク防御、メールやWebの中身を調べるコンテンツセキュリティ、誰に何の利用を許すかを管理するアイデンティティ・アクセス管理の4つです。製品は、予防と検知の両方に使われます。

サービスは3つの中分類に分かれます。1つ目はコンサルティング/診断で、システムの弱点を探す脆弱性診断や、セキュリティの規格の認証を取る支援が入ります。2つ目はマネージド・運用で、顧客のシステムの記録を見張って攻撃の兆しを知らせるSOC(セキュリティ・オペレーション・センター)、被害を受けた機器を調べて何が起きたかを確かめるインシデント対応・フォレンジック、攻撃の手口などの情報を届けるインテリジェンス情報提供が入ります。3つ目は周辺で、電子証明書、社員向けのリテラシー教育、資格取得の支援、保険です。

対価の受け取り方も、工程で違います。製品は利用料やその更新、診断やコンサルティングは案件ごとの作業、監視は継続して運用を任される契約、事故対応は被害が起きたときの依頼が中心になります。ただし、契約の形は会社や案件ごとに違います。

市場は業界団体の推計で約1.7兆円。製品が約6割、サービスが約4割

この記事では、JNSAの推計を市場の物差しにします。JNSAの会員による業界団体の推計で、公的な統計ではありません。「IT・通信の業界地図」で触れている総務省の統計とは数え方が違うため、この記事では総務省の統計の数字を使わず、JNSAの推計と足したり比べたりもしません。

JNSAの2024年度調査(2025年6月)によると、2023年度の国内情報セキュリティ市場は、実績の推定値で1兆6,665億円です。前の年度の1兆4,628億円から13.8%増えました。JNSAの公開資料一覧で2026年10月31日時点に確認できる最新の実績は2023年度で、2024年度は見込みの1兆7,995億円です。この記事の「2023年度」の数字は、2024年度の市場の大きさではありません。

2023年度の1兆6,665億円のうち、製品が9,942億円(59.7%)、サービスが6,724億円(40.3%)です。サービスの内訳は、コンサルティング/診断が2,888億円、マネージド・運用が2,727億円、周辺が1,108億円です。

中分類2023年度主な小分類(JNSAが示すもの)
コンサルティング/診断2,888億円脆弱性診断 719億円、規格認証 368億円
マネージド・運用2,727億円SOC 1,974億円、インシデント対応・フォレンジック 427億円、インテリジェンス情報提供 327億円
周辺1,108億円リテラシー教育 469億円、保険 172億円

1兆6,665億円はJNSAの公表値です。内訳は百万円単位の値を億円に四捨五入したため、足し合わせても合計と一致しないことがあります。

マネージド・運用の約7割(計算値で72.4%)は、SOCが占めています。インシデント対応・フォレンジックは427億円で、SOCより小さな市場です。事故が起きたときの調査より、日ごろの監視を任せる契約のほうが、金額の上では大きくなっています。

JNSAは、EDR(端末の不審な動きを見つけて止める製品)について、大手企業ではほぼ導入が一巡したとしています。そのうえで、EDRを作る会社や、セキュリティに強いIT企業に運用を任せるMSS(マネージド・セキュリティ・サービス)の需要に合わせて、導入や乗り換えが増えていると説明しています。JNSAの説明からは、製品を買って終わりではなく、製品の運用をサービスとして任せる流れが読み取れます。

担い手は、製品メーカー・販売店・SIer・サービス専業に分かれる

JNSAは、市場を推計するために1,040社を調べ、751社を分析の対象にしています。751社は、業態でA〜Hの8つに分けられています。

担い手は8つの業態に分かれ、半分以上の会社が製品とサービスの両方を扱う

上はJNSAの分析対象751社の業態別の社数、中央は製品・サービスの扱い方、下は会社の例の置き場所。会社の大きさは描いていない。

業態別の社数(分析対象751社)
A 海外メーカーまたはその日本法人143社
B 国内のセキュリティ製品メーカー129社
C 販売店・商社58社
D システム構築もできる二次・三次販売店149社
E 大手SIer52社
F コンサルティング会社36社
G セキュリティサービスの提供事業者163社
H その他(サイバー保険など)21社
帯の右端は170社。社数の比較で、売上の大きさではない。オレンジの帯(G)は、社数が最も多い業態を示す。
製品とサービスの扱い方(751社)
製品だけ189社(25.2%)、サービスだけ149社(19.8%)、両方413社(55.0%)。割合は本記事で計算。751社の売上の単純合計のうち、セキュリティの事業は2.9%。
製品(海外):業態A海外メーカー・日本法人143社。日本での売上はこの図の比較対象外
製品(国内):業態Bトレンドマイクロ日本の売上は全体の約32%(2025年12月期、計算値)
販売:業態C・D販売店・商社、二次・三次販売店207社。製品を仕入れて導入や構築とあわせて売る
SIer・コンサル系:業態E・F野村総合研究所(NRI)IT基盤サービスの事業区分の中で提供。セキュリティだけの売上は非開示
サービス提供:業態Gラック(KDDIの連結子会社)監視・診断・フォレンジック・機器検証。売上628億円はSIなどを含む
JNSAの区分にない置き方通信会社の法人事業NTT(ドコモなど)・ソフトバンク・IIJ。回線やネットワークとあわせて売る。セキュリティだけの売上は非開示
読み方:JNSAは個々の会社がどの業態に入るかを示していない。会社の例の置き場所は本記事の当てはめ。1社が複数の業態にまたがることがある。
出典:JNSA「国内情報セキュリティ市場 2024年度調査報告」(2025年6月30日。調査対象1,040社、分析対象751社)、トレンドマイクロ「2025年12月期決算短信」、野村総合研究所「2026年3月期決算短信」、ラック「会社概要」、KDDI「2026年3月期決算短信」、NTT「2025年度決算短信」、ソフトバンク「有価証券報告書 第40期」、インターネットイニシアティブ「2026年3月期決算短信」。

社数が多い順に、セキュリティサービスを提供する事業者の163社(21.7%)、システムの構築などもできる二次・三次の販売店の149社(19.8%)、海外メーカーまたはその日本法人の143社(19.0%)です。国内のセキュリティ製品メーカーは129社、販売店・商社は58社、大手SIerは52社、コンサルティング会社は36社、サイバー保険などのその他は21社です。

751社のうち、製品だけを扱う会社は189社、サービスだけを扱う会社は149社で、製品とサービスの両方を扱う会社が413社と半分を超えます。また、751社の売上を単純に合計すると72兆1,168億円になり、そのうちセキュリティの事業は2.9%です。分析の対象には、SIerや販売店のように、セキュリティ以外の事業が売上の大半を占める会社が多く入っています。

求人の会社がどの業態に当たるかは、JNSAは示していません。図の会社の例は、この記事の当てはめです。JNSAの業態には「通信会社」の区分がありません。この記事では、回線とあわせてセキュリティを売る通信会社を、別の担い手として置きました。

海外メーカーは、社数では5社に1社ほどを占めます。この社数は会社数の割合であり、海外製品と国内製品の売上割合を示すものではありません。

会社の例:セキュリティの売上を分けて示す会社は少ない

この記事では、セキュリティの会社の大きさを比べません。製品メーカーの多くは地域別の売上しか示さず、サービスを提供する会社の多くは、親会社の大きな事業区分の中に入っているためです。ここでは、会社が何を開示しているかを1社ずつ確かめます。会社どうしの大きさは比べていません。

トレンドマイクロは、国内のセキュリティ製品メーカーです。2025年12月期の売上高2,760億円のうち、日本の売上は878億円で、計算値で約32%です(2025年12月期決算短信)。トレンドマイクロの場合、日本では法人向けが伸び、自社の「Trend Vision One」を背景に、AIを使った次世代のSOCに関わるセキュリティが大きく伸びたと決算短信で説明しています。個人向けでは、携帯電話ショップでの販売が伸び続けています。製品メーカーでも、監視の仕組みや携帯電話の販売店の店頭とつながる事業があることが分かります。

ラックは、監視・診断・事故対応を手がけるセキュリティサービスの会社で、KDDIの連結子会社です(KDDI 2026年3月期決算短信)。会社概要では、2025年度の連結売上高は628億円、2026年3月31日時点の連結従業員数は2,467名です(会社概要)。この売上には、システムインテグレーションや情報システム関連の商品の販売も入っており、セキュリティだけの金額ではありません。ラックは、後で説明する情報セキュリティサービス基準の審査登録を、脆弱性診断(ペネトレーションテストを含む)、デジタルフォレンジック、セキュリティ監視運用、機器検証の4つで受けていると掲載しています。

野村総合研究所(NRI)は、データセンターの運営やIT基盤の構築を行う「IT基盤サービス」の事業区分の中で、さまざまな業種の顧客に情報セキュリティサービスを提供しています(2026年3月期決算短信)。セキュリティだけの売上は開示されていません。SIerやコンサルティング会社がセキュリティの子会社や部門を持つ例です。

通信会社は、回線やネットワークとあわせてセキュリティを売っています。NTTは、ドコモなどの総合ICT事業の法人事業で、ネットワークの機能とセキュリティの機能をまとめたNaaS(ネットワークをサービスとして提供する形)の「docomo business RINK」を提供しています(NTT 2025年度決算短信)。ソフトバンクは、法人向けのエンタープライズ事業のうち「ソリューション等」の売上4,950億円が増えた理由に、クラウドやセキュリティのソリューションなどを挙げています(有価証券報告書 第40期)。IIJは、アウトソーシングサービスの売上676億円が、セキュリティ関連サービスなどで14.3%伸びたとしています(2026年3月期決算短信)。3社とも、セキュリティだけの売上は開示していません。

同じ「セキュリティの会社」でも、製品を作る会社、サービスを専門にする会社、SIerやコンサルティング会社の一部門、通信会社の法人事業の一部と、置かれ方が違います。求人票では、募集する部門が会社のどの事業に属するかを確かめます。

法律は事業者に努力義務を、基幹インフラ側に届出・報告を求める

通信の事業(電気通信事業法の登録・届出)と違い、この記事で扱うサイバーセキュリティ事業には、事業そのものを一律に対象とする共通の許可・登録制度はありません。法律が求めているのは、主に守る側の事業者と、システムを供給する側の取り組みです。義務の強さは、法律と対象によって違います。

法律・仕組み対象求めていること強さ
サイバーセキュリティ基本法 第7条第1項サイバー関連事業者その他の事業者自主的・積極的にサイバーセキュリティを確保し、国の施策に協力する努力義務
サイバーセキュリティ基本法 第6条重要社会基盤事業者自主的・積極的にサイバーセキュリティを確保し、国の施策に協力する努力義務
サイバーセキュリティ基本法 第7条第2項情報システムなどの供給者利用者の安全に配慮した設計・開発、維持管理に必要な情報を継続して提供することなど努力義務
能動的サイバー防御法 第4条特別社会基盤事業者(国が指定した基幹インフラ事業者の一部)特定重要電子計算機を導入したときに、製品名・製造者名などを、その事業を所管する大臣に届け出る義務
能動的サイバー防御法 第5条特別社会基盤事業者(同上)特定重要電子計算機への侵害などを知ったときに、その事業を所管する大臣と内閣総理大臣に報告する義務
能動的サイバー防御法 第42条内閣総理大臣、供給する事業を所管する大臣(国)脆弱性を知ったときに、製品や情報処理の役務の供給者に情報を提供し、周知できる。供給者に被害を防ぐ措置を要請できる(第2項)。報告や資料を求められた供給者は、応じるよう努める(第5項)国ができること(供給者には第5項の努力義務)
情報セキュリティサービス基準適合サービスリストセキュリティサービスの事業者基準に適合すると判定されたサービスを、区分ごとに一覧に載せる業の許可ではない

いわゆる能動的サイバー防御法の正式な名前は「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」で、2025年5月に公布されました。届出と報告の義務を負うのは、経済安全保障推進法で国が指定した基幹インフラの事業者(特定社会基盤事業者)のうち、政令で定める重要な電子計算機(特定重要電子計算機)を使う「特別社会基盤事業者」です。すべての会社が対象ではありません。第45条は、重要な電子計算機の使用者や製品の供給者などを加えられる、情報共有と対策のための協議会を定めています。

この法律は、段階的に施行されます。届出(第4条)と報告(第5条)の規定は、2026年10月1日に施行されました(e-Govの改正履歴で、2026年4月1日施行の版にはなく、10月1日施行の版に入っていることを確認)。施行の時点ですでに特定重要電子計算機を導入している事業者は、施行の日から6か月以内に届け出ます(附則第4条)。協定にもとづく通信情報の取得などの規定は、e-Govに収録されている2026年10月1日施行の版にはまだ含まれていません。附則では、第3章から第7章までなどは、公布から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日に施行するとしています。この記事では、まだ施行されていない部分は扱いません。

情報セキュリティサービス基準適合サービスリストは、情報処理推進機構(IPA)が公開しています(サービスリスト)。区分は、情報セキュリティ監査、脆弱性診断(オプションとしてペネトレーションテスト)、デジタルフォレンジック、セキュリティ監視・運用、機器検証の5つです。基準に適合するかの審査と判定は、日本セキュリティ監査協会(JASA)が運営しています。サービスを選ぶ企業が、事業者を見比べる手がかりになります。

人の資格では、国家資格の情報処理安全確保支援士があります。2016年の情報処理の促進に関する法律の改正で生まれた資格です(IPA 情報処理安全確保支援士)。2026年10月1日時点の登録者は26,424名、平均年齢は44.5歳です。勤務先の業種は、業種を回答した登録者のうちの割合で、情報処理・提供サービス業が35.9%、ソフトウェア業が22.6%、製造業が9.4%、運輸・通信業が6.9%です(登録者の内訳。登録申請のときの任意回答の集計で、分母は登録者の総数ではありません)。これは資格の登録者の数で、セキュリティの仕事に就いている人の数ではありません。IT企業だけでなく、製造業などの事業会社に勤める登録者もいます。

ランサム攻撃・委託先・AI・運用委託が、仕事の責任を変える

IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織向けの順位では、1位がランサム攻撃による被害で11年連続、2位がサプライチェーンや委託先を狙った攻撃、3位がAIの利用をめぐるサイバーリスクで、初めて選ばれました。4位はシステムの脆弱性を悪用した攻撃です。この順位は、IPAの選考会の投票で決めたもので、被害の件数や市場の大きさの順ではありません。

脅威と制度の変化は、監視・事故対応・製品開発の業務にどう影響するか

左は主な変化、右は影響を受ける業務。脅威の順位は投票による選考で、被害の件数ではない。効果や採用数の増減は予測していない。

10大脅威2026(組織)1位・11年連続ランサム攻撃による被害
→↓
事故対応・フォレンジック、監視・運用:被害の原因と範囲の調査、立て直しの支援、兆しの早い発見
10大脅威2026(組織)2位サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
→↓
守る側の担当、診断・コンサルティング:委託先や取引先の対策の確認
10大脅威2026(組織)3位・初選出AIの利用をめぐるサイバーリスク
→↓
守る側の担当、コンサルティング:AIを使う業務のリスクの洗い出し
JNSA 2024年度調査(2025年6月)EDRの導入が大手企業でほぼ一巡し、運用委託(MSS)へ
→↓
監視・運用:顧客の端末の記録の監視と、EDRの運用
能動的サイバー防御法 第4条・第5条(2026年10月1日施行)特別社会基盤事業者の届出と報告の義務施行時に導入済みの機器は6か月以内に届出(附則第4条)
→↓
守る側の担当、事故対応:導入した機器の届出、侵害を知ったときの報告と、そのための事実の調査
基本法 第7条第2項(努力義務)、能動的サイバー防御法 第42条供給者の安全な設計・情報提供と、国(内閣総理大臣・供給する事業を所管する大臣)が供給者に脆弱性情報を提供できる仕組み
→↓
製品の開発・技術支援:脆弱性の修正と、利用者への情報の提供、国からの要請や報告の求めへの対応
出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日)、JNSA「国内情報セキュリティ市場 2024年度調査報告」、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律・サイバーセキュリティ基本法(e-Gov、2026年10月1日施行の版と改正履歴)。仕事との関係は本文で整理。通信情報の取得などのまだ施行されていない規定は含めていない。

ランサム攻撃は、データを暗号化するなどして身代金を求める攻撃です。被害が起きると、何が起きたかを調べるフォレンジックと、システムを立て直す支援の仕事が生まれます。被害の兆しを早く見つける監視の仕事にも関わります。

委託先を狙う攻撃は、守る範囲を自社の外へ広げます。守る側の会社は、自社だけでなく委託先や取引先の対策を確かめる必要が出てきます。製品やシステムを供給する側には、基本法が、利用者の安全に配慮した設計・開発と、維持管理に必要な情報の継続的な提供に努めることを求めています。能動的サイバー防御法の第42条では、国(内閣総理大臣や、供給する事業を所管する大臣)が知った脆弱性の情報を、供給者に提供できる仕組みもできました。製品の開発や、脆弱性に対応する仕事に関わる変化です。

EDRの導入が一巡し、運用を外部に任せる需要に合わせた導入が増えている(JNSA)ことは、監視・運用の仕事を増やす方向に働くと、この記事では見ています。トレンドマイクロは、日本でAIを使った次世代のSOCに関わるセキュリティが伸びたと説明しています。

特別社会基盤事業者にとっては、2026年10月1日から、侵害を知ったときの報告が法律の義務になりました。社内のセキュリティ担当には、報告に必要な事実をそろえる役割が加わります。

求人票では、工程・立場・会社の中での位置を確かめる

セキュリティの仕事は、工程と立場によって、相手と成果物が変わります。

仕事主な相手主な仕事の例変化との関係
製品の開発・技術支援製品を使う企業、販売店製品の開発、脆弱性の修正と情報の提供、導入の技術支援供給者の努力義務、国からの脆弱性情報の提供
診断・コンサルティング顧客の情報システム部門脆弱性診断の報告書、規格認証の支援、対策の計画委託先を狙う攻撃、AIの利用をめぐるリスク
監視・運用顧客のセキュリティ担当記録の監視、攻撃の兆しの通知、EDRの運用EDRの運用委託、監視へのAIの活用
事故対応・フォレンジック被害を受けた顧客原因と被害の範囲の調査、立て直しの支援、調査の報告書ランサム攻撃、基幹インフラの事業者の報告
営業顧客企業、販売店製品とサービスの提案、回線とあわせた提案製品から運用委託への広がり
守る側の社内の担当社内の部門、委託先社内の対策、委託先の管理、事故のときの社内外への報告委託先を狙う攻撃、特別社会基盤事業者の届出・報告

職種の名前は会社によって違います。ラックは採用情報で、職種をシステムエンジニア、営業、プロジェクトマネージャー、ホワイトハッカー、セキュリティエンジニア、コーポレート部門に分けています(採用情報)。各職種がどの工程を担うかは、募集ごとに確かめます。「SOCアナリスト」のような呼び方は、この記事では職種名ではなく、監視の仕事の説明として使っています。

求人票では、次の3点を確かめます。

  • 工程:予防(診断・コンサルティング)、検知(監視・運用)、対応(事故対応・フォレンジック)のどこを担うのか。製品の開発か、サービスの提供か
  • 立場:製品メーカー、サービスの会社、SIerや通信会社のセキュリティ部門、守られる側の事業会社のどれか。相手が社外の顧客か、社内の部門か
  • 会社の中での位置:セキュリティが会社の主な事業か、SIや回線、製品の販売とあわせて売る一部門か。部門の売上が開示されていなくても、募集する部門の仕事の範囲は求人票で確かめられる

セキュリティが、IT・通信の分野全体のどこに位置するかは「IT・通信の業界地図」で確かめられます。回線とあわせて売る通信会社の稼ぎ方は「通信の業界地図」、SIerの受託の構造は「SIer・システム開発の業界地図」で整理しています。

情報システムを守る仕事と、施設・人・物を守る警備を分けて見る場合は、警備の業界地図で確かめられます。