地上波のテレビ局・ラジオ局、BS・CS、ケーブルテレビ、NHKと番組制作会社を、電波法の免許と放送法の認定、広告・受信料・視聴料の財源、在京キー局と地方局の売上の構成、番組制作の委託のルールで整理します。配信、中継局の共同利用、AMラジオの運用休止、ガバナンスの見直しが、どの仕事に影響するかも確かめられる内容です。

「放送」の求人には、テレビ局の番組制作や報道、広告枠を売る営業、送信設備を守る技術職、アナウンサー、局から番組づくりを請け負う制作会社のディレクターまで幅があります。同じテレビの仕事でも、会社が広告・受信料・視聴料のどれで成り立ち、放送のほかに配信や番組の販売、不動産でどれだけ稼いでいるかで、仕事の相手も将来の配属先も変わります。

この記事では、電波やケーブルで番組を届ける放送事業を扱います。放送局を開くための免許と業務の認定、財源の違い、テレビ局グループの稼ぎ方、在京キー局と地方局の売上の構成、番組制作の委託のルール、制度の変化と職種を順に確かめます。数字は、民間放送の集計が令和7年度(2025年度)、NHKが2025年度、各社が2026年3月期の値です。制度は2026年10月時点の内容です。

広告会社がテレビの枠を買い付ける取引と手数料は「広告の業界地図」で扱います。この記事は、テレビ局の側から見た広告収入の区分と営業の仕事までを扱います。動画配信の専業サービスや映画・アニメの製作委員会と配給は「映像の業界地図」、局のグループの音楽出版・レコードは「音楽の業界地図」、イベントの興行は「ライブ・イベントの業界地図」で扱います。局のグループが持つビルの開発と賃貸の稼ぎ方は「不動産開発・賃貸(デベロッパー)の業界地図」、ケーブルテレビ会社のインターネット接続のような通信の仕組みは「通信の業界地図」で扱います。

放送局は、電波法の免許と放送法の認定・登録で区分される

放送法は、放送を大きく2つに分けます。放送のために専ら、または優先的に割り当てられた周波数の電波を使う「基幹放送」と、それ以外の「一般放送」です。基幹放送には、地上波のテレビ・ラジオ(地上基幹放送)、BSや東経110度CSの衛星放送(衛星基幹放送)などがあります。ケーブルテレビは一般放送です。

放送の位置は、広告・コンテンツ制作・配信を含む全体の流れから確認できます。 メディア・広告・エンタメの地図

放送を始めるには、2つの法律の手続きが関わります。電波を出す放送局(無線局)を開くには、電波法にもとづいて総務大臣の「免許」を受けなければなりません(第4条)。番組を流す基幹放送の業務を行うには、放送法にもとづいて総務大臣の「認定」を受けなければなりません(第93条)。

ただし、地上放送で、自分の放送局の免許を受けた会社(法律の用語で「特定地上基幹放送事業者」)は、その放送局を使う業務を、認定を受けずに行えます(第105条の2)。地上波のテレビ局が自社の送信所から放送する場合は、この形です。同じ特例では、総務大臣の確認を受けて、同じ地域でほかの会社(基幹放送局提供事業者)の中継局を使う方法も認められています。後の章で見る中継局の共同利用は、この仕組みとつながります。一方、放送局の設備を持つ会社(基幹放送局提供事業者)と、番組を編成して業務の認定を受ける会社が分かれる形もあります。設備(ハード)と番組(ソフト)を別の会社が担えるこの仕組みを、ハード・ソフト分離と呼びます。業務の認定は5年ごと、地上放送では放送局の免許の有効期間と同じ期間ごとに更新を受けないと、効力を失います(第96条)。

ケーブルテレビなどの一般放送は、総務大臣の「登録」(第126条)か、規模の小さいものは「届出」(第133条)で始めます。NHK(日本放送協会)は、放送法にもとづいて設けられた法人で、受信料で運営されます。広告で稼ぐ民間放送とNHKが並ぶこの形を、総務省の情報通信白書は「二元体制」と説明しています。

放送局が受け取る広告料と、広告主を支援する広告会社の仕事を分けて確認できます。 広告業界の地図

放送の種類ごとに、始めるための手続きと主な財源が違う

地上の民間放送・NHK・衛星放送・ケーブルテレビの、法律上の区分、始めるための手続き、主な財源、規模。印は、法律が義務・禁止・努力義務・任意(できる)のどれとして定めているかを示す。

区分
始めるための手続き
主な財源
規模
地上の民間放送地上基幹放送(テレビ・ラジオ)
始めるための手続き義務放送局の免許(電波法)。自分の放送局で放送する会社は、業務の認定を受けずに放送できる特例がある。放送局の設備を別の会社に頼る場合は義務業務の認定(放送法)
主な財源広告(タイム・スポット)、配信広告、番組販売
規模194社、売上高2兆2,079億円(令和7年度、コミュニティ放送を除く)
NHK放送法にもとづく法人
始めるための手続き義務放送局の免許(電波法)。業務の範囲は放送法で定められ、インターネット配信は必ず行う業務(必須業務)
主な財源義務受信設備を置いた人は受信契約を結ぶ(ラジオだけの設備は対象外)。禁止第三者の商品やサービスを宣伝する広告(法律上の『他人の営業に関する広告』)の放送
規模受信料5,851億円、事業収入6,130億円(2025年度)
衛星放送衛星基幹放送(BS・東経110度CS)
始めるための手続き義務業務の認定(放送法)。衛星の放送設備は、免許を受けた別の会社が提供する形がある
主な財源広告、視聴料。義務有料放送の契約約款は実施前に届出
規模38社、衛星放送事業の営業収益3,151億円(令和7年度)
ケーブルテレビ一般放送
始めるための手続き義務業務の登録(放送法)。規模の小さいものは届出
主な財源視聴料(インターネット接続などの通信の収入は別の事業)
規模275社、ケーブルテレビ事業の営業収益4,878億円(令和7年度)

できる地上放送の会社を子会社とし、2つ以上の基幹放送事業者を関係会社とする持株会社は、総務大臣の認定を受けて「認定放送持株会社」になることができる(受けなければならないものではない)。

努力義務中継局をやむを得ず廃止するとき、ブロードバンドなどで番組を見続けられるようにする措置を講ずるよう努める(2025年10月施行)。

業務の認定は5年ごと(地上放送は放送局の免許の有効期間ごと)に更新する。

出典:放送法・電波法(e-Gov法令検索)、総務省「令和7年度民間放送事業者の収支状況」(令和8年10月19日)、日本放送協会「2025年度(令和7年度)決算概要」。ケーブルテレビは自主放送を行う登録一般放送事業者(営利法人)のうち集計できた社の値。衛星とケーブルテレビは会社全体ではなく、それぞれの放送事業の値で、各社の直近の決算期の値。

番組の中身にもルールがあります。放送事業者は、番組の編集にあたって、公安と善良な風俗を害しないこと、政治的に公平であること、報道は事実をまげないこと、意見が対立している問題はできるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを守ります(第4条)。また、番組の種類ごとの基準(番組基準)を定めて公表します(第5条)。制作や報道の仕事は、このルールの中で行われます。

日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京は、いずれも持株会社(〇〇ホールディングス)の下に放送局を子会社として置くグループです。地上放送の会社を子会社に持ち、2つ以上の基幹放送事業者を関係会社とする持株会社は、総務大臣の認定を受けて「認定放送持株会社」になることができます(第159条)。認定は受けなければならないものではなく、受けることができる仕組みです。認定の条件には、子会社の放送局の株式などが総資産の50%を超えることなどがあります。

1つの会社が多くの放送局を支配することは、総務省令で制限されています。いわゆるマスメディア集中排除原則です(基幹放送の業務に係る特定役員及び支配関係の定義並びに表現の自由享有基準の特例に関する省令)。白書によると、この省令は2023年と2024年の改正で、地上放送・衛星放送のそれぞれについて緩和されました(情報通信白書 放送制度の見直し)。

財源は、広告・受信料・視聴料の3つに、放送以外の収入が加わる

放送の財源は、放送の種類で違います。民間の地上放送は主に広告、NHKは受信料、有料のBS・CSやケーブルテレビは視聴者が払う視聴料が中心です。

区分主な財源規模年度と出典
地上系の民間放送(コミュニティ放送を除く)広告194社、売上高2兆2,079億円(前年度比1.1%増)令和7年度、総務省
うちテレビ(ラジオとの兼営31社を含む)広告127社、売上高2兆1,038億円令和7年度、総務省
うちラジオ広告67社、売上高1,042億円令和7年度、総務省
衛星系の民間放送広告・視聴料38社、衛星放送事業の営業収益3,151億円(1.6%減)令和7年度(各社の直近の決算期)、総務省
ケーブルテレビ視聴料275社、ケーブルテレビ事業の営業収益4,878億円(0.7%減)令和7年度(各社の直近の決算期)、総務省
NHK受信料受信料5,851億円(事業収入6,130億円)2025年度、NHK

民間放送の数字は、総務省の令和7年度民間放送事業者の収支状況によります(別紙)。テレビとラジオの売上高は、この記事で億円未満を四捨五入しているため、足すと2兆2,080億円になり、合計と1億円ずれます。衛星系は、会社全体ではなく衛星放送事業の値です。衛星系とケーブルテレビは各社の直近の決算期の値で、3月期決算でない会社も入ります。ケーブルテレビは、自主放送を行う登録一般放送事業者(営利法人)のうち集計できた275社の、ケーブルテレビ事業の値です。この年度からIPマルチキャスト方式の事業者が集計に加わり、前年度の値も組み替えたうえで前年度と比べています。会社全体の収益には通信の事業なども入るため、ここでは使いません。放送以外の事業も含めた放送事業者全体の売上高は、白書によると2024年度で3兆6,042億円です。

広告:民間のテレビ局の広告収入は、主に「タイム」と「スポット」に分かれます。タイムは番組を提供するスポンサーに売る枠、スポットは番組と番組の間などに流すCMの枠です。白書が引用する電通の調べでは、2025年の地上系民間放送の広告費は1兆7,486億円で、テレビが1兆6,333億円、ラジオが1,153億円です。これは広告主が払った広告費の推計で、局の売上高とは数え方が違います。電通の同じ調べでは、テレビ局などが配信する番組に付く動画広告(テレビメディア関連動画広告費)が805億円で、前年より23.3%増えました(日本テレビホールディングス 2026年3月期決算短信の引用による)。

受信料:テレビなどの受信設備を置いた人は、NHKと受信契約を結ばなければなりません(放送法第64条)。ラジオだけを受信できる設備や、放送の受信を目的としない設備は、この義務の対象外です。NHKのインターネット配信のうち法律で定める一定のもの(特定必要的配信)の受信を始めた人も、契約を結ぶ義務の対象になります。一方で、NHKは、第三者の商品やサービスを宣伝する広告(法律上の『他人の営業に関する広告』)を放送できません(第83条)。NHKの2025年度決算では、受信料は5,851億円で、前年度より50億円減りました。事業収入6,130億円に対して事業支出は6,449億円で、NHKの決算では事業収支差金が318億円の不足でした。不足は積立金(還元目的積立金)を取り崩して補っています。年度末の受信契約は4,033万件、支払率は77%です。

視聴料:有料のBS・CSやケーブルテレビは、視聴者との契約で料金を受け取ります。有料の基幹放送を行う会社は、契約約款を実施前に総務大臣へ届け出ます(第147条)。

放送以外の収入:テレビ局のグループは、番組の配信や販売、イベント、物販、不動産でも稼いでいます。次の章で、会社ごとの開示を見ます。

テレビ局グループは、放送のほかに配信・コンテンツ販売・不動産でも稼ぐ

テレビ局のグループは、放送局を子会社に持つ持株会社の決算短信で、事業の内訳を開示しています。区分の名前も範囲も会社ごとに違うため、ここでは会社どうしの大きさは比べず、1社ずつ内訳の形を見ます。

テレビ局グループの収入は、広告のほかにコンテンツ販売・アニメ・不動産にも分かれる

2026年3月期の各社の開示を、帯ごとに合計を100%として並べた。日本テレビHDは1つの事業の中の収入の種類別、TBSHDとテレビ東京HDはセグメント別で、区分の種類も範囲も違う。色の意味はブロックごとに凡例で示し、会社どうしの大きさや割合は比べていない。

日本テレビHD:コンテンツ・メディア事業の外部売上(4,527億円)の、収入の種類別緑系の3色が広告。同社にはほかに不動産関連事業とウェルネス事業のセグメントがあり、この帯には入らない。
日本テレビHD収入の種類別
  • 地上波テレビ広告 51.2%
  • BS・CS広告 3.5%
  • デジタル広告 2.6%
  • コンテンツ販売 20.5%
  • コンテンツ制作 7.7%
  • 物品販売 7.5%
  • 興行 4.0%
  • その他と不動産賃貸 3.0%
広告の3区分の合計は約57%。コンテンツ制作には、グループ会社の施設の展示などの案件とドラマの制作受託が入る。
TBSHD:セグメント別メディア・コンテンツには、放送のほか配信・番組販売なども入る。
  • メディア・コンテンツ
  • ライフスタイル
  • 不動産・その他
TBSHDセグメント売上高
TBSHDセグメントの営業利益
売上高:メディア・コンテンツ73.5%、ライフスタイル22.5%、不動産・その他4.0%。営業利益:メディア・コンテンツ59.0%、ライフスタイル11.6%、不動産・その他29.4%。
テレビ東京HD:セグメント別地上波・BS放送とアニメ・配信を分けて開示している。
  • 地上波・BS放送
  • アニメ・配信
  • ショッピング・その他
テレビ東京HDセグメント売上高
テレビ東京HDセグメントの営業利益
売上高:地上波・BS放送59.9%、アニメ・配信30.3%、ショッピング・その他9.7%。営業利益:地上波・BS放送44.1%、アニメ・配信52.3%、ショッピング・その他3.6%。
出典:日本テレビホールディングス・TBSホールディングス・テレビ東京ホールディングス「2026年3月期決算短信」。割合は本記事で計算。日本テレビHDの分母はコンテンツ・メディア事業の外部売上の合計(会社が示す値。内訳を足した値とは百万円単位でわずかに違う)で、不動産関連事業(売上高116億円)とウェルネス事業(同277億円)は入らない。TBSHD・テレビ東京HDはセグメントの合計を100%とした値で、全社の費用などを調整する前の値。

日本テレビホールディングスは、2026年3月期のコンテンツ・メディア事業の外部売上4,527億円を、収入の種類ごとに開示しています(決算短信)。地上波テレビの広告収入は2,317億円で、内訳はタイム1,041億円、スポット1,276億円です。BS・CSの広告収入は159億円、TVerの動画広告などのデジタル広告収入は119億円です。広告以外では、コンテンツ販売収入が927億円、グループ会社が受ける施設の展示などの案件やドラマの制作受託を含むコンテンツ制作収入が347億円、物品販売収入が340億円、興行収入が180億円あります。外部売上に占める広告収入(地上波・BS・CS・デジタル)の割合は約57%です(本記事の計算値)。同社は、この事業を、テレビ広告枠の販売を中心に、配信や物販、イベントなどで「投下したコンテンツ制作費を回収し、利益を上げる事業」と説明しています。

TBSホールディングスでは、2026年3月期の売上高のうち、放送を含むメディア・コンテンツ事業が3,122億円、雑貨の小売や学習塾などのライフスタイル事業が957億円、不動産・その他事業が169億円です(決算短信)。営業利益では、不動産・その他事業が73億円で、3つの事業の合計の約29%を占めます(本記事の計算値。全社の費用などを調整する前の合計で計算)。子会社のTBSテレビのテレビ部門の売上高2,251億円のうち、タイムは887億円、スポットは874億円、配信広告は143億円(18.8%増)、有料配信は93億円(16.8%減)です。

テレビ東京ホールディングスでは、2026年3月期のアニメ・配信事業の営業利益が66億円で、地上波・BS放送事業の56億円を上回りました(決算短信。調整前の値)。売上高は地上波・BS放送事業が1,034億円、アニメ・配信事業が523億円です。売上では放送が大きく、利益ではアニメと配信が大きい形です。

テレビ朝日ホールディングスは、2026年3月期のテレビ放送事業の売上高2,488億円の中で、タイム815億円、スポット1,052億円、BS・CS 259億円、他の局などに番組を売る番組販売134億円を開示しています(決算短信)。配信は、サイバーエージェントとの共同事業のABEMA、KDDIとの共同事業のTELASA、TVerを含むインターネット事業として示され、売上高は361億円です。

フジ・メディア・ホールディングスは、放送と、サンケイビルなどの都市開発・観光事業を合わせ持つグループです。2026年3月期は、都市開発・観光事業がセグメント利益252億円を出し、メディア・コンテンツ事業は308億円の損失でした(決算短信)。会社は、子会社のフジテレビジョンの減収について、同社の「事案の影響」で上期の広告出稿が減ったと説明しています。会社は、第3四半期以降は広告出稿の再開が続き、回復基調にあるとも説明しています。この年の構成は特別な事情を含むため、テレビ局が不動産で稼ぐ一般的な傾向としては読めません。

テレビ局の総合職でも、配属先は番組の制作や広告の営業に限りません。グループの中に、配信、番組やアニメの権利の販売、物販、イベント、不動産の事業がある会社では、そこに配属される可能性があります。

地上系の民間放送の売上は、在京キー局が約半分を占める

総務省は、地上系の民間放送(コミュニティ放送を除く)の売上高と営業損益を、在京キー局、在阪準キー局、その他のテレビ・ラジオ等の3つに分けて示しています。内訳の合計が総額と一致する令和6年度では、売上高2兆1,833億円のうち、在京キー局が1兆955億円で約50.2%、在阪準キー局が2,448億円で約11.2%、その他が8,430億円で約38.6%です(割合は本記事の計算値)。

地上系の民間放送は、売上高・営業損益とも約半分が在京キー局

上は総務省が示す、在京キー局・在阪準キー局・その他のテレビ・ラジオ等の内訳を、合計が総額と一致する令和6年度の値で示した(コミュニティ放送を除く)。下は令和7年度の総括表の値。

内訳(令和6年度)
  • 在京キー局
  • 在阪準キー局
  • その他のテレビ・ラジオ等
売上高合計2兆1,833億円
営業損益合計893億円
売上高:在京キー局1兆955億円(50.2%)、在阪準キー局2,448億円(11.2%)、その他8,430億円(38.6%)。営業損益:在京キー局439億円(49.2%)、在阪準キー局136億円(15.2%)、その他318億円(35.6%)。割合は本記事の計算値。
総括表の値(令和7年度)
地上系(コミュニティ放送を除く)194社の売上高2兆2,079億円テレビ127社2兆1,038億円、ラジオ67社1,042億円。営業損益994億円
衛星系38社の衛星放送事業の営業収益3,151億円うちキー局系BS5社789億円
ケーブルテレビ275社のケーブルテレビ事業の営業収益4,878億円275社中39社が単年度赤字
出典:総務省「令和7年度民間放送事業者の収支状況」別紙(p1・p2・p4・p6・p9)。「その他」には在京キー局・在阪準キー局以外のテレビ局とラジオ局などが入る。同じ資料の令和7年度の内訳は、合計(2兆1,833億円)が前年度の総額と同じ値で、令和7年度の総額(2兆2,079億円)と一致しないため使っていない。テレビとラジオの売上高は本記事で億円未満を四捨五入したため、足した値は総計と1億円ずれる。衛星系とケーブルテレビは各社の直近の決算期の値。

令和7年度の地上系の売上高は2兆2,079億円、営業損益は994億円です。同じ資料の令和7年度の内訳は、合計が前年度の総額と同じ値になっているため、この記事では使いません。

令和6年度の営業損益は、在京キー局が439億円、在阪準キー局が136億円、その他が318億円で、3つの合計893億円に占める在京キー局の割合は約49%です(本記事の計算値)。地上系194社のうち、令和7年度に黒字だったのは151社、赤字は43社です。

地方のテレビ局とラジオ局は「その他」に入ります。その他には、在京キー局・在阪準キー局以外のテレビ局と、ラジオ局などがまとめて入っているため、地方のテレビ局だけの売上高はこの資料からは分かりません。ラジオは、ラジオだけの会社67社で売上高1,042億円です。このうちAMだけの会社16社が479億円、短波の会社1社が18億円、FMだけの会社50社が545億円です。市町村単位で放送するコミュニティ放送は315社で売上高148億円、営業損益は3億5,400万円の赤字でした。

在京キー局の番組は、系列の地方局を通じて全国に放送されます。系列(ネットワーク)は、法律で決められた区分ではなく、局どうしの関係です。テレビ東京は、タイム収入457億円を、系列局を通じた全国放送のネット部門と、首都圏での放送のローカル部門に分けて説明しています。フジテレビジョンの2026年3月期の放送・メディア収入1,171億円では、全国に流す番組のネットタイムが344億円、関東で流す番組のローカルタイムが61億円、スポットが435億円でした(前の章で見た事情を含む年の値です)。キー局は、番組を地方の局などに販売もしています。テレビ東京の番組販売は42億円、テレビ朝日の番組販売は134億円です。

衛星系の民間放送は38社で、衛星放送事業の営業収益は3,151億円、営業損益は204億円です。BSを放送する民間の会社は20社で、このうちキー局系のBS5社の衛星放送事業は789億円です。東経110度CSは20社です。ケーブルテレビは275社で、ケーブルテレビ事業の営業損益は388億円、275社のうち39社(14.2%)が単年度で赤字でした。

番組は局と制作会社がつくり、放送のあとも配信・販売・権利で収入を生む

テレビの番組は、局の社員が自分で制作するほか、局が番組制作会社に制作を委託してつくります。制作会社の求人では、どの局のどの番組を請け負っているか、委託の条件がどうなっているかが、仕事の中身に直結します。

番組は局と制作会社がつくり、放送のあとも配信・販売・権利で収入を生む

左から、番組の発注、制作、届け方と収入の流れ。下は制作の委託にかかわるルール。金額は各社の2026年3月期の開示で、1社ずつの例。

1 企画・発注放送局番組の企画と編成。自社で制作するか、制作会社に委託するかを決める
→↓
2 制作局の制作部門/番組制作会社局の社員が制作するほか、制作会社が委託を受けて制作する
→↓
3 届け方と収入放送・配信・販売・権利
  • 放送:タイム・スポットの広告、受信料
  • 配信:配信広告、有料配信(TBSテレビの配信広告143億円)
  • 販売:番組販売、コンテンツ販売(日本テレビHDのコンテンツ販売927億円)
  • 権利:アニメの商品化・ゲーム展開など(テレビ東京のアニメ部門272億円)
委託のルール:放送番組は取適法の「情報成果物」に入り、その作成の委託は対象になりうる(対象かどうかは、双方の資本金や従業員数で決まる)。総務省の「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」第9版が2026年1月1日から適用。2026年度から制作現場の就業環境の調査を行う。
出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(e-Gov)、総務省「『放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン』改訂版(第9版)の公表」(令和7年12月25日)、令和8年版 情報通信白書、日本テレビホールディングス・TBSホールディングス・テレビ東京ホールディングス「2026年3月期決算短信」。

番組制作の委託には、取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律。2026年1月に下請法から改められた法律)が関わることがあります。取適法では、映画や放送番組のように映像や音声で構成されるものは「情報成果物」に入り、その作成を委託する取引が対象になりえます。対象になるかは、発注する側と受ける側の資本金や従業員数の組み合わせで決まります。情報成果物の作成の委託では、資本金の基準のほかに、常時使用する従業員が100人を超えるかどうかの基準もあります。

総務省は、放送局と制作会社などの取引について「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」を2009年2月に定め、改訂を重ねてきました。2026年1月1日からは、取適法の施行に合わせた第9版が適用されています(総務省 報道資料)。白書によると、総務省はガイドラインにもとづく指導や講習会、無料の法律相談の窓口を設けており、2026年度からは制作現場の就業環境の調査も行います(情報通信白書 放送コンテンツの適正な製作取引の推進)。

つくった番組は、放送したあとも収入を生みます。日本テレビホールディングスは、コンテンツ販売収入927億円を開示しています。テレビ東京は、番組やアニメの権利から得るライツ事業収入が426億円で、このうちアニメ部門が272億円、配信ビジネス部門が139億円、イベントが14億円です。テレビ東京は、アニメの収入に海外でのオンラインゲームへの展開や商品化が入ると説明しています。

局が出資する映画やアニメの製作委員会の仕組みは「映像の業界地図」で扱います。

配信・中継局・AMラジオ・ガバナンスの見直しが、局の仕事を変える

制度改正と配信事業の拡大により、放送局の担当業務も変わっています。

配信:民間のテレビ局は、TVerなどの配信で広告を売っています。TBSテレビの2026年3月期の配信広告は143億円で、前年より18.8%増えました。NHKでは、2024年5月の放送法改正で、インターネットでの番組の配信が、NHKが必ず行う業務(必須業務)になりました。NHKは2025年10月1日から「NHK ONE」で、同時配信・見逃し配信と番組関連情報の配信を行っています。2025年度の国内・国際放送番組等配信費は174億円で、前年度より24.4%増えました。

中継局:地域の隅々まで電波を届ける中継局の維持にも、制度の変化があります。2023年の放送法・電波法改正で、NHKの子会社(共同利用会社)が、NHKと民間の局の中継局をまとめて管理・運用できるようになりました。2024年12月にNHKの出資で準備会社の日本ブロードキャストネットワークが設立され、2025年12月には、全国の小規模な中継局(ミニサテライト局)を対象に共同利用事業を行うことにNHKと民放が合意しています。また、2025年10月施行の改正で、やむを得ず中継局を廃止するときに、ブロードバンドなどで番組を見続けられるようにする措置を講ずることが、地上放送の事業者などの努力義務になりました(放送法第92条第2項)。

AMラジオ:民間のAMラジオ局は、設備の老朽化と、AM放送をFMの電波でも流すFM補完放送の二重のコストを抱えています。FMへの転換などをした場合の影響を検証するため、AM局の運用休止の特例が設けられ、2024年2月以降、一部のAM局が運用を休止しています(情報通信白書 AMラジオ)。

ガバナンス:民間放送事業者で起きた事案を受けて、総務省は2025年6月から「放送事業者におけるガバナンス確保に関する検討会」を開き、2026年1月に取りまとめました。その後、基幹放送普及計画の変更と省令の改正が行われ、2026年4月からは円卓会議が開かれています(情報通信白書 ガバナンス確保)。

変化時期主に届く仕事
配信広告とNHKの配信の必須業務化NHK ONEは2025年10月から配信広告の営業、配信の編成と技術、権利の処理
中継局の共同利用と、廃止するときの代わりの視聴手段(努力義務)共同利用の合意は2025年12月、努力義務は2025年10月から送信・中継局の技術
AM局の運用休止の特例2024年2月以降、一部の局が休止ラジオ局の技術・編成
製作取引ガイドライン第9版2026年1月から局の制作の発注、制作会社の受注
ガバナンス確保の見直し2026年1月取りまとめ、2026年4月から円卓会議経営・管理の部門

表の「主に届く仕事」は、本記事が制度と各社の開示から整理したものです。採用や仕事の量が増えるか減るかは予測していません。

放送局の仕事は、制作・報道・営業・技術・アナウンサーなどに広がる

テレビ局の新卒採用では、職種の分け方が会社ごとに違います。たとえばTBSテレビの新卒・第二新卒採用では、総合職を「制作・報道・ビジネス部門」「テクノロジー部門」「アナウンサー部門」の3部門で選考しています。2027年度の採用では「デザイン部門採用」も掲載しています(募集は終了。TBS RECRUIT)。

放送の仕事を、相手と収入の源で整理すると、次のようになります(本記事の整理で、会社の職種名ではありません)。

仕事の領域主な相手仕事の例関わる収入・ルール
番組の制作出演者、制作会社番組の企画・制作、制作会社への発注制作費、番組の配信・販売、取適法と製作取引ガイドライン
報道取材先、視聴者ニュースの取材・編集番組編集準則(政治的公平、事実をまげない)
広告の営業広告会社、広告主タイム・スポット・配信広告の販売広告収入
権利・コンテンツの販売配信事業者、海外の会社、商品化の相手番組やアニメの販売、権利の管理コンテンツ販売・ライツの収入
技術送信所・中継局、配信の設備放送設備の運用・保守、配信の技術放送局の免許、中継局の共同利用
アナウンサー視聴者、出演者番組の進行、ニュースを読む番組編集準則
制作会社の制作発注する局委託を受けた番組の制作取適法と製作取引ガイドライン

求人票では、次の点を確かめます。

  • 会社の種類:放送局そのものか、持株会社のグループ会社か、局から番組を請け負う制作会社か。制作会社なら、主な取引先の局と番組
  • 収入の源:配属先の仕事が、放送の広告、受信料、視聴料、配信、番組の販売や権利のどれにつながるか
  • 局の区分:在京キー局か、地方のテレビ局か、ラジオ局か、BS・CS・ケーブルテレビか。地方局なら、自社で制作する番組の比重と、地域の広告の営業の範囲
  • 変化との関係:配信や中継局の共同利用、AMの運用休止のような変化が、その職場の仕事にどう届いているか

広告会社の側からテレビの枠を見る仕事は「広告の業界地図」で扱います。放送とほかのメディア・エンタメの分野を並べて見たいときは、「メディア・広告・エンタメの業界地図」から次の地図を選べます。