「メディア」「エンタメ」と書かれた求人には、広告会社の営業やネット広告の運用、テレビ局の制作や営業、出版社の編集、ゲームの開発や運営、映画やアニメの権利の仕事、コンサートの運営、印刷会社の営業まで幅があります。どれも「作品や情報を人に届ける仕事」に見えますが、お金を払う人が違います。
この分類の特徴は、お金の入口が3つあることです。1つ目は、商品を売りたい会社(広告主)が払う広告費です。2つ目は、本やゲームを買う、配信に払う、受信料を払うといった、利用者が作品に払うお金と、作品の権利を使わせて受け取るお金です。3つ目は、映画館やライブ、試合の会場に来る観客が払う入場料です。どの入口のお金を受け取る会社に入るかで、仕事の相手も、守るルールも変わります。この記事では、分野をお金の入口と役割で地図にし、お金の流れ、大きさの物差し、法律と権利、会社の例、仕事への影響を順に確かめます。
扱う範囲は、広告・放送・出版・映像(映画・アニメ・配信)・音楽・ゲーム・ライブ・スポーツ・印刷です。検索やSNSなどのネットサービスを運営する会社の事業は「SNS・検索(ネットプラットフォーム)の業界地図」と完成済みの「IT・通信の業界地図」、ネット通販のモールの中の広告は完成済みの「EC業界地図」、通信回線は完成済みの「通信の業界地図」、玩具・キャラクター商品の製造は「玩具の業界地図」で扱います。パチンコや公営競技などの余暇施設は扱いません。
分野ごとの会社の違いや仕事の詳しい流れは、「広告の業界地図」「放送の業界地図」「出版の業界地図」「映像の業界地図」「音楽の業界地図」「ゲームの業界地図」「ライブ・イベントの業界地図」「プロスポーツの業界地図」「印刷の業界地図」で扱います。この記事は、次にどの地図を読むかを決めるための全体図です。
9つの分野を、お金の入口で並べる
9つの分野は、主なお金の入口で3つに分けると位置が分かります。広告主のお金で稼ぐ「広告で稼ぐ」、利用者が作品に払うお金や権利の使用料で稼ぐ「作品と権利で稼ぐ」、観客が会場に払うお金で稼ぐ「場と体験で稼ぐ」の3つです。印刷は、この3つの入口のお金を受けた会社から注文を受けて作る「受託で作る」分野として、別に置きました。入口の分け方は格付けではなく、会社の大きさも表しません。1つの分野が複数の入口を持つことも多くあります。
広告主から制作・媒体・運用へ支払いが流れる仕組みは、広告分野の地図で確認できます。 広告業界の地図
紙の印刷物を製造する仕事は、印刷の受託工程と採算の地図で確認できます。 印刷業界の地図
9つの分野は、どの入口のお金で稼いでいるか
受信料(NHK)有料放送の視聴料コンテンツ販売→ 放送の業界地図
雑誌の広告→ 出版の業界地図
映画館の入場料→ 映像の業界地図
ライブ→ 音楽の業界地図
点線の札は、主な入口のほかに持つお金の入口。1つの会社が複数の分野・入口の事業を持つことも多い(本文の会社の表を参照)。
広告では、広告主の予算を、総合広告会社やネット広告の運用会社が受けて媒体の枠を買い、制作会社が広告を作ります。広告会社の対価の取り方と仕事の違いは「広告の業界地図」で扱います。
放送は、NHK(受信料収入)と民間放送事業者(広告収入または有料放送の料金収入)の二元体制です(令和8年版 情報通信白書「放送・コンテンツ分野の動向」)。民放は広告、NHKは受信料と、同じ放送でもお金の入口が違います。局の収支や番組制作の発注は「放送の業界地図」で扱います。
放送では番組制作・編成・送信と、広告料や受信料の仕組みを確認できます。 放送業界の地図
出版は、読者が本・雑誌・電子書籍を買うお金が中心で、雑誌には広告の収入もあります。出版社・取次・書店・電子書店の分担は「出版の業界地図」で扱います。
映像の作品は、映画館の入場料のほか、配信や放送で使わせる、キャラクターを商品にさせるといった権利の使用でも稼ぎます。東宝は、映画館への配給、映像の利用・許諾、商品化権等の利用・許諾を、決算短信で分けて示しています(2026年2月期 決算短信)。映画・アニメの作り方と権利の持ち方は「映像の業界地図」で扱います。
音楽には、作詞・作曲の著作権と、音を最初に録音した者(レコード製作者)の権利(著作隣接権)があります。レコード製作者は、レコード会社とは限りません。CD・配信の売上がどう分かれるかは「音楽の業界地図」、音楽のライブは「ライブ・イベントの業界地図」で扱います。
ゲームは、利用者がソフトを買うお金や、遊びながら払う課金で稼ぎます。そのお金は、ゲーム機やスマートフォンのストアなどのプラットフォームを通ります。開発・販売・ストアの分担は「ゲームの業界地図」で扱います。
ゲームは開発・販売・継続運営とストアの役割を分けて確認できます。 ゲーム業界の地図
ライブとスポーツは、観客が会場に払う入場料が入口の1つです。公演の企画・チケット・会場の分担は「ライブ・イベントの業界地図」、クラブとリーグの稼ぎ方は「プロスポーツの業界地図」で扱います。
印刷は、出版社・広告主・企業から注文を受けて刷る受託の仕事が中心です。総合印刷会社と呼ばれる会社は、包装や事務の受託(BPO)、電子部材の事業も持っています。印刷会社の工程と稼ぎ方は「印刷の業界地図」で扱います。
お金は、広告主・利用者・観客の3つの入口から入る
3つの入口のお金は、それぞれ別の会社を通って稼ぎになります。下の図は、誰が払い、誰を通り、誰の稼ぎになるかを並べたものです。権利の使用料は、作品を使う会社から権利を持つ会社へ流れる別の流れとして示しました。矢印の太さは金額を表していません。
広告主・利用者・観客のお金は、誰を通って誰の稼ぎになるか
広告費は、広告主から広告会社やネット広告の運用会社を通って、テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・ネット・屋外・交通などの媒体と、広告を作る制作会社に渡ります。電通の推計する広告費には、広告を載せる媒体費だけでなく、制作費も入っています(電通「2025年 日本の広告費」)。広告会社を通さず、媒体が広告主に直接売る取引もあります。
利用者が作品に払うお金には、本やCDやゲームを買うお金、配信の月額、ゲームの課金、NHKの受信料、有料放送の視聴料があります。NHKは受信料で運営され、他人の営業の広告を放送できません(放送法 第64条・第83条)。受信料の仕組みは「放送の業界地図」で扱います。
権利の使用料は、作品を配信・放送・商品化する会社から、作品の権利を持つ会社へ流れます。1つの会社が、広告と権利の両方の入口を持つこともあります。日本テレビホールディングスは、コンテンツ・メディア事業の外部顧客向けの売上を、地上波テレビ広告収入、デジタル広告収入、コンテンツ販売収入、物品販売収入、興行収入などに分けて開示しています(2026年3月期 決算短信)。会社はこの事業を、投下したコンテンツ制作費を回収し、利益を上げる事業と説明しています。
入場料は、観客からチケット会社・映画館・会場を通って、公演や試合の主催者に渡ります。チケットを売る会社の数字は、扱ったお金と自社の売上が大きく違うことがあります。ぴあは、2026年3月期の売上高が553億円で、取扱高ベースの売上は3,000億円を超えると決算短信に書いています(2026年3月期 決算短信)。取扱高には、チケットの販売のほかイベントの受託なども含まれ、売上高にもチケット以外の事業が入ります。2つの数字の比を、チケット会社の取り分と読むことはできません。取扱高と売上高は別の数字で、どちらを見ているかを確かめます。
求人で会社の数字を見るときは、世界で稼ぐ会社の数字にも注意が要ります。ソニーグループの決算短信の「ゲーム&ネットワークサービス」「音楽」「映画」の各分野の売上は、世界全体の値です(2026年3月期 決算短信)。日本の市場の大きさを表す数字ではありません。
大きさは、分野ごとに違う物差しで見る。足し合わせない
分野ごとに、大きさの数字は数えているものが違います。広告主が出した額の推計、事業者の売上高、映画館の入場料の総額、消費者が払った額の推計、会員社の生産額、工場の出荷額は、足し合わせて「エンタメ市場の大きさ」を作ることも、分野どうしの大小を比べることもできません。下の図は、分野ごとの物差しを、出典・期・数える対象のまま並べたものです。
分野の大きさは、別々の統計の別々のものを数えている。足し合わせない
日本国内に投下された広告費。媒体費と制作費を含む。うちインターネット4兆459億円(50.2%)、マスコミ四媒体2兆2,980億円、プロモーションメディア1兆7,184億円。広告会社の売上ではない。
放送以外の事業の収入を含む。地上系民間基幹放送事業者2兆1,977億円、衛星系民間放送事業者3,200億円、ケーブルテレビ事業者4,740億円、NHKの経常事業収入6,125億円。民放の売上には広告収入が入るため、広告費と足すと二重になる。
家庭用ゲーム機・PC・アーケード(ビデオゲームのみ)・ネットワーク上で流通するゲームソフト。ゲーム機などのハードウェアは含まない。うちネット経由は1兆6,837億円。海外を含む会社の売上とは別物。
274,452百万円(前年比132.6%)。うち邦画75.6%。配給会社や製作者の収入ではない。
紙の出版物9,647億円(書籍5,939億円・雑誌3,708億円)、電子出版5,815億円。前年比1.6%減。出版社の売上ではない。
音楽ソフト(CDなど)の総生産金額と、音楽配信の売上を別々に集計。会員社の実績を集めたもので、市場全体の推計ではない。
12,766事業所・235,064人(2025年6月1日)。個人経営の事業所を含まない。2025年調査から新しい母集団で集計しており、過去の年の値とは単純に比べられない。
数字を読むときは、定義に注意が要ります。
- 広告費は、電通の推計で、広告主が日本国内に投下した広告費を数えています。媒体費と制作費を含み、広告会社の売上や手数料の合計ではありません(電通「2025年 日本の広告費」、2025年1〜12月)
- 放送事業者の売上高には、放送以外の事業の収入も入っています。民放の売上には広告収入が入るため、広告費と放送の売上高を足すと二重になります。広告費は暦年、放送の売上高は年度で、期も違います(令和8年版 情報通信白書)
- ゲームソフトの市場規模は、総務省情報通信政策研究所の推計で、家庭用ゲーム機・PC・アーケード・ネットワーク上で流通するゲームソフトを数え、ゲーム機などのハードウェアは入りません。海外の売上を含む会社の数字とは比べません(メディア・ソフトの制作及び流通の実態に関する調査)
- 映画の興行収入は、映画館の入場料の総額で、配給会社や製作者の収入ではありません(日本映画製作者連盟「2025年(令和7年)全国映画概況」)
- 出版の金額は、紙と電子の推定販売金額で、出版社の売上ではありません(出版科学研究所 ニュースリリース)
- 音楽の金額は、日本レコード協会の会員社の実績を集めたもので、市場全体の推計ではありません(日本のレコード産業2025)
- 印刷の金額は、経済構造実態調査の印刷・同関連業の製造品出荷額等で、個人経営の事業所は入りません。チラシやDMの広告費とは数える対象が違います(2025年経済構造実態調査 産業別統計表)
ライブとスポーツの大きさは「ライブ・イベントの業界地図」「プロスポーツの業界地図」で扱います。求人や会社案内で市場の大きさの数字を見たら、誰が払った額か(広告主か、利用者か、観客か)、売上か推計か、全部の会社か一部の会社か、暦年か年度かを確かめます。
法律と権利が、仕事の形を決める
この分類では、分野ごとに、仕事の形を決める法律が違います。放送は、放送局(無線局)を開くのに電波法の免許が要り、他人の放送局を使って放送の業務を行うときは放送法の認定が要ります。ケーブルテレビなどの一般放送は登録か届出です。映像・音楽・放送では、作品の権利を誰が持つかを著作権法が決めています。出版・新聞・音楽CDには、定価で売らせる取り決めを認める独占禁止法の例外があります。広告には表示のルールが、制作の受託には取引のルールがあります。
| 分野 | 法律と条文 | 決めていること | 言葉の区別 |
|---|---|---|---|
| 放送 | 電波法 第4条 | 放送局(無線局)を開くこと | 免許(受けなければならない) |
| 放送 | 放送法 第93条・第105条の2 | 他人の放送局を使って基幹放送(地上・衛星などの放送)の業務を行うこと | 業務の認定(受けなければならない)。自分の放送局の免許を受けた地上の事業者は、認定なしで業務ができる |
| 放送 | 放送法 第126条・第133条 | ケーブルテレビなどの一般放送の業務 | 登録または届出 |
| 映像 | 著作権法 第16条・第29条 | 映画の著作物の著作者と、著作権を持つ者 | 著作者が製作への参加を約束していれば、著作権は映画製作者が持つ |
| 音楽・放送 | 著作権法 第89条 | 実演家・レコード製作者・放送事業者の権利 | 著作隣接権 |
| 出版・新聞・音楽CD | 独占禁止法 第23条第4項 | 著作物の発行者などが、売る先の事業者と定価を決めて守らせること | 独占禁止法の適用除外。使うかどうかは事業者が決める |
| 広告 | 景品表示法 第5条 | 実際よりも著しく良い・有利だと消費者に誤解させる表示、広告と分からない広告(ステマ。内閣総理大臣の指定による) | 禁止。対象は広告主 |
| 制作の受託 | 取適法 第2条 | 番組・映像・プログラム・デザインなどの作成の委託 | 資本金や従業員数の要件に当たる取引に適用 |
放送では、「免許」と「業務の認定」を分けて読みます。免許は放送局という設備(無線局)に対するもので、電波法で決まっています。業務の認定は放送の業務に対するもので、放送法で決まっています。放送法は、基幹放送をする事業者を、業務の認定を受けた「認定基幹放送事業者」と、自分の放送に使う放送局の免許を受けた「特定地上基幹放送事業者」に分けて定義しています(第2条)。自分の放送局の免許を受けた特定地上基幹放送事業者は、認定を受けずに放送の業務を行えます(第105条の2)。免許と認定の関係や、認定放送持株会社などの局のグループの形は「放送の業界地図」で扱います。
作品の権利では、映画の著作物の著作権は、著作者が製作への参加を約束していれば、映画製作者が持ちます(著作権法第29条第1項)。放送局が専ら放送や同時配信のための手段として作る映画の著作物(録画の番組など)では、著作権のうち放送・同時配信・複製などの一部の権利が放送局に帰属します(同条第2項)。製作委員会のように複数の会社がお金を出して作る場合に、誰がどの権利を持つかは契約で決まります。詳しくは「映像の業界地図」で扱います。音楽で「原盤権」と呼ばれる権利は法律の用語ではなく、著作権法ではレコード製作者の権利が中心になります。
再販売価格維持は、本や新聞を定価で売らせる仕組みです。独占禁止法第23条第4項は、著作物を発行する事業者などが、売る先の事業者と再販売価格を決めて守らせる行為に、独占禁止法を適用しないとしています。対象の範囲について、公正取引委員会は2001年の文書で、書籍・雑誌、新聞、レコード盤・音楽用テープ・音楽用CDの6品目に限るとしています(公正取引委員会「著作物再販制度の取扱いについて」、2001年3月23日)。
広告では、景品表示法の表示の禁止を受けるのは、商品やサービスを売る広告主です。2023年10月1日からは、広告であることが一般の消費者に分からない表示(ステルスマーケティング)も禁止の対象です。消費者庁は、規制の対象は広告主で、依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は対象にならないと説明しています(消費者庁「ステルスマーケティング」)。広告会社の仕事との関係は「広告の業界地図」で扱います。
制作の受託では、放送番組・映画・プログラム・デザインなどの「情報成果物」の作成を委託する取引が、取適法(旧下請法)の対象になりえます。対象になるかは、発注する会社と受ける会社の資本金や従業員数で決まります(第2条)。
1つの会社が、いくつもの役割を持っている
この分類では、1つのグループが複数の分野・役割の事業を持つことがよくあります。下の表は、主な会社が決算短信で示している報告セグメント(事業の区分)と、地図の上の主な位置を並べたものです。期と会計基準は会社ごとに違い、会社どうしの大きさは比べていません。
| 会社(期) | 決算短信の報告セグメント | 主なお金の入口(役割) |
|---|---|---|
| サイバーエージェント(2025年9月期) | メディア&IP、インターネット広告、ゲーム、投資育成 | 広告で稼ぐ(ネット広告の運用、ABEMAで媒体を持つ)、作品と権利で稼ぐ(ゲーム) |
| 日本テレビホールディングス(2026年3月期) | コンテンツ・メディア、ウェルネス、不動産関連 | 広告で稼ぐ(地上波で媒体を持つ)、作品と権利で稼ぐ(コンテンツ販売)、場と体験で稼ぐ(映画・イベント) |
| 東宝(2026年2月期) | 映画、IP・アニメ、演劇、不動産 | 作品と権利で稼ぐ(配給で届ける、映像の利用・許諾、商品化)、場と体験で稼ぐ(映画館・演劇) |
| KADOKAWA(2026年3月期) | 出版・IP創出、アニメ・実写映像、ゲーム、Webサービス、教育・EdTech | 作品と権利で稼ぐ(出版から映像・ゲームへ) |
| 東北新社(2026年3月期) | 広告プロダクション、コンテンツプロダクション、メディア、プロパティ | 受託で作る(CM制作)、作品と権利で稼ぐ(版権・配給) |
| TOPPANホールディングス(2026年3月期) | 情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクス | 受託で作る(印刷・包装・BPO)、電子部材 |
| ソニーグループ(2026年3月期、IFRS) | ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画など | 作品と権利で稼ぐ(数字は世界全体の値) |
同じ会社の名前の求人でも、どのセグメントの仕事かで、お金の入口が違います。サイバーエージェントなら、インターネット広告事業の仕事は広告主の予算を扱い、ゲーム事業の仕事は利用者の課金を扱います。KADOKAWAは、出版・IP創出の事業の売上に、書籍・雑誌、電子書籍のほか、Web広告と権利許諾を含めています(2026年3月期 決算短信)。
会社ごとの数字と、会社の型の違いは、それぞれの分野の地図で扱います。広告会社は「広告の業界地図」、テレビ局のグループは「放送の業界地図」、ゲーム会社は「ゲームの業界地図」、印刷会社は「印刷の業界地図」です。
ネット広告・配信・作品の多面展開・紙の減少は、どの仕事に影響するか
ネット広告の広がり、放送の配信、作品の多面展開、紙の印刷物の減少、取引ルールの変更は、分野ごとに異なる仕事へ影響します。下の図は、主な変化と、確かめられる事実、影響を受ける仕事の領域、詳しく読む地図を並べたものです。仕事の領域は、仕事の中身で編集部が整理したもので、会社の職種名ではありません。採用数の増減は予測していません。
ネット広告・配信・作品の多面展開・紙の減少は、どの仕事に影響するか
ネット広告は、総広告費の半分を超え、ネット広告の媒体費の大半は入札で取引される運用型です(電通の推計、媒体費と制作費を含む、2025年。電通ほか4社「インターネット広告媒体費 詳細分析」)。これは、広告の計画・分析・運用に影響する変化です。詳しくは「広告の業界地図」で扱います。
放送の配信では、ネットでの番組の配信がNHKの必須の業務になり、2025年10月1日から「NHK ONE」が始まりました(令和8年版 情報通信白書「放送政策の動向」)。これは、番組配信と配信広告の営業に影響する変化です。詳しくは「放送の業界地図」で扱います。
ゲームの決済では、2025年12月18日にスマホ法が全面施行され、アプリストアの決済のルールが変わりました(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)。これは、ゲームの運営・課金設計に影響する変化です。詳しくは「ゲームの業界地図」で扱います。
作品の多面展開では、東宝が2026年2月期から「IP・アニメ事業」を報告セグメントの1つにしました。これは、作品の権利管理・利用許諾に影響する変化です。詳しくは「映像の業界地図」「出版の業界地図」で扱います。
紙の需要では、紙の出版物の販売が減り、印刷の生産金額の中で出版の割合が下がり、包装の割合が上がっています(日本印刷産業連合会「印刷産業Annually Report 2026年度版」、従業者100人以上の事業所の統計)。これは、出版の編集・営業と、印刷会社の営業・製造に影響する変化です。詳しくは「出版の業界地図」「印刷の業界地図」で扱います。
制作の取引のルールでは、取適法が2026年1月1日に施行され、総務省の放送コンテンツの製作取引適正化ガイドラインも同じ日から第9版が適用されています(総務省 報道資料)。番組・CM・映像・ゲーム制作の取引管理に影響する変化です。
求人票では、お金の入口と役割を確かめる
同じ「メディア」「エンタメ」の求人でも、分野と役割によって、主な相手とお金の入口が違います。
| 分野 | 主なお金の入口 | 求人票で確かめること | 次に読む地図 |
|---|---|---|---|
| 広告 | 広告主の予算 | 総合広告会社か、ネット広告の運用会社か、制作会社か。媒体の取扱い・運用・制作のどれで稼ぐ部署か | 広告の業界地図 |
| 放送 | 広告、受信料、有料放送の視聴料 | 民放かNHKか、地上か衛星・ケーブルか。局か、番組を受託で作る制作会社か | 放送の業界地図 |
| 出版 | 読者の購入、雑誌の広告 | 紙か電子か。出版社・取次・書店・電子書店のどこか | 出版の業界地図 |
| 映像 | 入場料、配信、権利の使用料 | 作品を作る会社か、権利を持つ会社か、配給・配信の会社か | 映像の業界地図 |
| 音楽 | CD・配信の購入、権利の使用料 | 作詞・作曲の権利の側か、レコード製作者の側か | 音楽の業界地図 |
| ゲーム | 利用者の購入・課金 | 自社で出す会社か、開発を受託する会社か。買い切りか運営型か | ゲームの業界地図 |
| ライブ | 観客の入場料 | 企画・チケット・会場のどこを担うか | ライブ・イベントの業界地図 |
| スポーツ | 観客の入場料など | クラブか、リーグか、会場か | プロスポーツの業界地図 |
| 印刷 | 発注する会社からの受託 | 出版・商業の印刷か、包装か、BPOか、電子部材か | 印刷の業界地図 |
求人票では、次の4点を確かめます。
- 分野:9つの分野のどれか。グループの会社なら、募集する会社や部署がどの分野の事業を担うか
- お金の入口:広告主の予算か、利用者が作品に払うお金か、観客の入場料か、発注する会社からの受託か
- 役割:広告を仲介する、媒体を持つ、作品を作る、権利を持つ、届ける、場をつくる、受託で作る、のどれか
- 権利の側:作品の権利を持つ会社か、権利を持つ会社から仕事を受ける会社か
この4点が分かったら、次はその分野の業界地図で、会社ごとの違いと仕事の流れを確かめます。



