「設備工事」と書かれた求人には、ビルの建設現場で電気や空調の工事を管理する施工管理、設備の図面を描く設計、電線をつなぐ電気工事の作業、電柱や通信回線の工事まで幅があります。同じ設備工事でも、どの設備の工事か、誰から請け負うか、新しい建物の工事か使っている建物の改修かで、仕事の相手と中身が変わります。
この記事では、建物や工場の中に電気・空調・給排水・計装(設備を自動で制御する装置)・通信の設備を据え付ける工事を扱います。工事の種類と要る許可・資格、元請と下請の受注の経路、電力会社や通信会社からの工事、新設と改修、資格と働き方の変化、求人票で確かめることを順に見ます。受注の大きさは、国土交通省が業界団体の主要各20社の受注をまとめた調査で示します。業界全体の市場規模や、会社の売上の順位は示しません。
建設の仕事全体の中での設備工事の位置は「建設・住宅・プラントの業界地図」で扱います。ゼネコン(総合建設会社)が設備を含む工事全体を束ねる施工管理は「ゼネコンの業界地図」、ハウスメーカー・工務店と協力会社の関係は「住宅建設の業界地図」、建物の設計事務所は「建設コンサルタント・設計事務所の業界地図」で扱います。通信会社の設備投資と、通信工事の会社の売上の中身は「通信の業界地図」で整理しています。

設備工事は業種ごとに許可を受け、会社・現場・作業の3つの制度で人をそろえる
このうち電気工事業と管工事業は、建設業法施行令で「指定建設業」に指定されています(第5条の2。土木・建築・鋼構造物・舗装・造園と合わせて7業種)。指定建設業では、後で見る特定建設業の営業所に置く技術者の条件が厳しくなります。
設備工事は業種ごとに許可を受け、会社・現場・作業の3つの制度で人をそろえる
指定建設業
指定建設業
指定建設業ではない
指定建設業ではない
- 業種ごとの建設業許可。営業所ごとに営業所技術者(第7条)
- 元請で下請代金が5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上なら特定建設業の許可
- 営業所技術者は学歴と実務経験、実務経験だけ、大臣の認定でもなれる(第7条第2号イ〜ハ)
- 指定建設業の特定建設業では、営業所の技術者は技術検定の合格者など(第15条)
- 電気工事は電気工事業法の登録。建設業者は登録電気工事業者とみなされ、電気工事業を始めたときに届け出る(第34条)
- 請け負った工事に主任技術者(第26条)
- 元請の特定建設業者で、下請代金が政令の額以上なら監理技術者
- 主任技術者は実務経験などでもなれる。施工管理技術検定(第27条)の合格は道の一つ
- 指定建設業の監理技術者は、技術検定の合格者など
- 検定の種目に電気工事・管工事・電気通信工事の施工管理がある(施行令第37条)
- 自家用電気工作物は第一種電気工事士(省令で定める作業を除く)
- 一般用電気工作物等は第一種か第二種(電気工事士法 第3条)
- 登録電気工事業者は営業所ごとに主任電気工事士(電気工事業法 第19条)
設備工事の会社には、会社・現場・作業のそれぞれに、別の法律の決まりがあります。
1つ目は、会社としての許可と登録です。建設業の許可を受けるには、営業所ごとに「営業所技術者」を専任で置きます(建設業法第7条第2号)。営業所技術者になれるのは、決められた学科を修めて卒業した後に一定年数(高校などは5年以上、大学などは3年以上)の実務経験がある人、10年以上の実務経験がある人、国土交通大臣がこれらと同等以上と認定した人のいずれかです(同号イ・ロ・ハ)。発注者から直接請け負った工事で、下請に出す代金の合計が政令の額(5,000万円。建築工事業は8,000万円)以上になるときは、「特定建設業」の許可が要ります(施行令第2条)。特定建設業の営業所に置く「特定営業所技術者」は、指定建設業では、技術検定などの国土交通大臣が定める試験の合格者・免許を受けた人か、大臣がそれと同等以上と認定した人でなければなりません(建設業法第15条第2号ただし書)。電気工事の会社は、このほかに電気工事業法の登録を受けます(第3条)。ただし、建設業の許可を受けた会社(建設業者)には登録の章が適用されず、電気工事業を営む場合は登録電気工事業者とみなされます。そのうえで、電気工事業を始めたときは、遅滞なく届け出ます(第34条。自家用電気工事だけを営む場合は、通知電気工事業者とみなされ、通知をします)。
2つ目は、現場の管理です。建設業者は、請け負った工事に「主任技術者」を置かなければなりません。発注者から直接請け負った特定建設業者は、下請代金の合計が政令の額以上になる工事では「監理技術者」を置きます(建設業法第26条)。主任技術者は営業所技術者と同じ条件(第7条第2号イ・ロ・ハ)で、実務経験などでもなれます。国の施工管理技術検定(第27条)の合格は、技術者になる道の一つです。ただし、電気工事業・管工事業のような指定建設業では、特定営業所技術者と監理技術者は、技術検定の合格者などに限られます(第15条第2号、第26条第2項)。
3つ目は、電気工事の作業そのものです。電気工事士法は、電気工事士の免状がない人が電気工事の作業をすることを禁じています(第3条)。自家用電気工作物の工事の作業は第一種電気工事士(省令で定める作業を除く)、一般用電気工作物等の工事の作業は第一種か第二種の電気工事士が行います。登録電気工事業者は、一般用電気工事を行う営業所ごとに「主任電気工事士」を置く義務があります(電気工事業法第19条)。
営業所技術者・主任技術者・監理技術者・主任電気工事士を置くことは、いずれも法律上の義務です。電気工事士は「作業をする人」の資格、施工管理技術検定は「現場や営業所の技術者」になる道の一つになる試験で、別の制度です。
受注の経路:主要20社では、元請と下請がほぼ半々
設備工事の会社が仕事を受ける経路は、大きく3つあります。発注者(建物の持ち主など)から直接請け負う元請、ゼネコンなどの建設会社から請け負う下請、電力会社や通信会社の設備の工事です。ゼネコンから設備工事を請け負う会社は「サブコン」と呼ばれることがありますが、元請の仕事もしています。
主要各20社の受注では、元請と下請がほぼ半々。電力会社・通信会社からの工事もある
国土交通省の設備工事業に係る受注高調査は、日本電設工業協会・日本空調衛生工事業協会・日本計装工業会の、それぞれ主要20社の受注をまとめたものです。管工事の令和7年度の値は19社分です(2026年4月から20社に変わり、データが断絶しています)。この調査は、発注者から直接請け負った元請工事を「工事A」、それ以外の下請工事を「工事B」と分けています。商社など建設業以外の会社を通して請け負った工事は、工事Aに入ります。
主要各20社の令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の受注総額は5兆2,403億円です。このうち工事A(元請)は2兆4,607億円、工事B(下請)は2兆7,796億円で、割合にすると元請が約47%、下請が約53%です(本記事の計算値)。これは大手の受注の割合で、中小の設備会社を含む業界全体の割合ではありません。「建設・住宅・プラントの業界地図」では、国土交通省の建設工事施工統計調査で、設備工事業の2024年度の完成工事高のうち元請の分が51.7%だと示しています。こちらは統計の産業分類で数えた多くの会社の完成工事高で、主要各20社の受注とは対象も年度も物差しも違うため、47%と比べることはしません。
工事の種類別では、電気工事が2兆5,887億円(元請1兆2,977億円・下請1兆2,910億円)、管工事が2兆3,296億円(元請1兆450億円・下請1兆2,846億円)、計装工事が5,200億円です。総計は計装の重複分を除いているため、3つを足しても総計にはなりません。発注者別では、民間が4兆7,621億円で約91%(計算値)、官公庁が4,782億円です。主要各20社の受注総額は令和3年度から毎年増え、3兆3,533億円から5兆2,403億円になりました。工事の件数や量ではなく、受注の金額の推移です。
電気工事には、別の物差しもあります。日本電設工業協会が会員企業に行う受注調査では、令和7年度の集計企業158社の電気工事受注高は4兆964億円で、前年度より9.7%増えました(前年度と当年度の同じ企業での比較)。このうち「内線工事」は3兆1,154億円です。対象の会社の数も範囲も主要20社の調査と違うため、2つの数字は比べたり足したりしません。協会の資料には内線・外線の定義が書かれていないため、この記事では、電気工事受注高から内線を引いた残りを送配電の工事とは読みません。
元請と下請では、仕事の相手が変わります。下請の現場では、ゼネコンの工程の中で、電気や空調の工事の段取りを合わせます。元請では、発注者と直接話し、工事全体を自社が取りまとめます。ゼネコンの側から見た設備の取りまとめは、「ゼネコンの業界地図」で扱います。
電力系・独立系・通信系は、得意先で見る
設備工事の会社は、「電力系」「独立系」「通信系」と呼び分けられることがあります。これは法律上の区分ではなく、主な得意先や会社の成り立ちによる一般的な呼び方です。ここでは、法律上の区分や資本関係ではなく、決算短信に開示された得意先と工事の種類で違いを見ます。
きんでんの2026年3月期の個別(単体)の完成工事高6,125億円のうち、関西電力(関西電力送配電を含む)からの工事は15.0%、関西電力グループからが3.2%で、一般得意先からが81.8%です。工事の種類別では、ビルや工場などの一般電気工事が66.1%、配電工事が13.2%、情報通信工事が8.1%、環境関連工事が8.7%、発電所・変電所などの電力その他工事が3.9%です(2026年3月期決算短信)。電力会社と取引の深い会社でも、きんでんの場合、仕事の8割以上は電力会社以外の得意先から受けています。
エクシオグループは、通信会社向けの工事を事業の柱の一つとする会社の例です。2026年3月期の外部売上高7,877億円は、通信キャリア(光回線やモバイルの工事)が2,557億円、都市インフラが2,485億円、システムソリューションが2,836億円で、通信キャリアは約32.5%です(本記事の計算値)。都市インフラは通信・電気・土木・環境のサービスの区分で、同社は大規模なデータセンターや大型開発ビルの電気関連工事が好調で、EV充電設備や蓄電池設備の工事の需要が広がっていると説明しています(2026年3月期決算短信)。通信工事の会社には、建物の電気設備の工事に仕事を広げている会社もあります。
通信工事のもう一つの例として、コムシスホールディングスがあります。NTTなど通信会社の設備投資が、通信工事会社の売上にどう影響するかは、「通信の業界地図」で同社とミライト・ワンの決算を使って整理しています。
このほか、関電工、高砂熱学工業、ダイダンなども、設備工事の会社として決算短信で業績を開示しています。住宅・建物の会社が設備工事の会社をグループに加える動きもあり、大和ハウス工業は2026年3月に住友電設の株式を取得して連結子会社にしました(2026年3月期決算短信)。
求人を比べるときは、「電力系」「独立系」という呼び名より、その会社の工事のうち、電力会社・通信会社の工事と、ビルや工場の工事がそれぞれどのくらいかを確かめます。配属される部門によって、現場が電柱や送配電線なのか、建物の中なのかが変わります。
新設と改修:この記事で使う2つの受注調査には区分がない。1社の例と、新設の工期の課題で見る
設備工事には、新しい建物の工事と、使っている建物の設備を入れ替える改修(リニューアル)の工事があります。ただし、この記事で使う2つの受注調査(主要20社の受注調査、日本電設工業協会の受注調査)には、新設と改修の区分がありません。この2調査だけでは業界全体の新設と改修の割合を分けられないため、割合は示しません。住宅以外の建物の改修工事の受注全体と、使いながら進める改修の施工管理は、「ゼネコンの業界地図」で扱っています。
主要20社の受注調査に改修の区分はない。ダイダンでは完成工事高の42.5%がリニューアル工事
1社の例として、ダイダンは改修の割合を開示しています。2026年3月期の連結の完成工事高2,562億円のうち、リニューアル工事は1,088億円で42.5%です。受注工事高3,531億円のうちリニューアル工事は1,334億円で37.8%でした。完成工事高の工事の種類は、空調衛生工事が80.8%、電気工事が19.2%です(2026年3月期決算短信)。同社の表は工事の種類ごとの集計で、リニューアル工事は産業施設工事などと重なりがあるため、リニューアル以外をすべて新設とは読めません。ほかの会社の割合がこれに近いかどうかは分かりません。
新しい建物の工事では、工期の課題があります。日本電設工業協会の適正な工期確保に向けた対応指針(電気設備工事)は、電気設備工事は建築工事全体の後工程に位置づけられることが多く、工期の「しわ寄せ」を受けることが長年の構造的な課題だと書いています。後工程は、前の工程の遅れの影響を受けやすい位置にあります。
指針は2026年3月に改訂されました。背景として、2024年4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用されたこと、建設業法令遵守ガイドラインの改訂、公共建築工事標準仕様書(電気設備編)の改訂を挙げています。公共工事では、建物に電気を受け入れる受電や、設備を動かして調整する試運転調整に必要な日数を確保することを前提に、「概成工期」を示す扱いがあることも紹介しています。この指針は業界団体のもので、法的な拘束力はありません。
住宅の給湯器や空調、電気設備の交換などの設備の更新は、主要20社の受注調査の範囲とは別です。
資格と働き方:作業の資格と、現場の管理の資格は別
設備工事の求人では、「電気工事士」と「施工管理技士」の両方の名前をよく見かけます。施工管理技士は、施工管理技術検定の第二次検定の合格者が名乗れる称号で、たとえば「1級電気工事施工管理技士」のように、級と検定の種目の名前を付けます(第一次検定の合格者は「技士補」。建設業法施行令第40条)。前の章で見たとおり、電気工事士と施工管理技術検定は別の法律の別の制度です。
| 資格・役割 | 根拠 | 何のための資格・役割か | 置く義務 |
|---|---|---|---|
| 第一種・第二種電気工事士 | 電気工事士法 第3条 | 電気工事の作業に従事する(自家用は第一種、一般用は第一種か第二種) | 免状がない人は作業できない |
| 主任電気工事士 | 電気工事業法 第19条 | 登録電気工事業者が、一般用電気工事を行う営業所に置く(第一種、または免状取得後3年以上の実務経験がある第二種) | 営業所ごとに置く義務 |
| 主任技術者・監理技術者 | 建設業法 第26条 | 建設業者が、請け負った工事に置く技術者。主任技術者は実務経験などでもなれる | 主任技術者はすべての工事。監理技術者は元請の特定建設業者で、下請代金が政令の額以上の工事(指定建設業では技術検定の合格者など) |
| 営業所技術者・特定営業所技術者 | 建設業法 第7条・第15条 | 許可を受けた営業所の技術者。学歴と実務経験、実務経験だけ、大臣の認定でもなれる | 営業所ごとに専任で置く。指定建設業の特定建設業では技術検定の合格者など |
| 施工管理技術検定 | 建設業法 第27条、施行令 第37条 | 上の技術者になる道の一つになる国の試験。種目に電気工事・管工事・電気通信工事の施工管理がある | 試験そのものに置く義務はない |
施工管理技術検定は、第一次検定と第二次検定に分かれています。国土交通省の資料によると、2024年度から受検の資格が変わり、1級の第一次検定は、その年度の末に19歳以上であれば受けられるようになりました。2級の第一次検定は17歳以上で、これまでと同じです。第二次検定は、第一次検定に合格した後の実務経験などで受けられます。2024年度から2028年度までは経過措置の期間で、第二次検定は前の受検資格と新しい受検資格のどちらでも受けられます。1級でも、実務経験を積む前に第一次検定を受けられるようになった、という変化です。検定は種目ごとに1級と2級に分かれ、1級は監理技術者、2級は主任技術者として必要な知識と能力を判定するものと定められています(施行令第37条)。
働き方では、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。前の章の日本電設工業協会の指針は、この規制を改訂の背景の一つに挙げています。求人票の残業時間の記載や、工期の遅れにどう対応しているかを、面接で確かめることが大切です。
通信の設備の工事についても、建設業法の29業種には「電気通信工事業」があります。電気工事業とは別の業種で、指定建設業ではありません(別表第一、施行令第5条の2)。施工管理技術検定には「電気通信工事施工管理」の種目があり(施行令第37条)、合格は主任技術者や監理技術者になる道の一つです。通信会社の側で設備を監督する電気通信主任技術者などの資格は、「通信の業界地図」で扱っています。
求人票では、工事の種類・受注の経路・新設か改修か・担当範囲を確かめる
設備工事の仕事は、工事の種類と受注の経路によって、相手と現場が変わります。次の表は、仕事の中身で編集部が分けたもので、会社の職種名ではありません。
| 仕事 | 主な相手 | 主な仕事の例 | 関係する制度・変化 |
|---|---|---|---|
| 施工管理 | ゼネコンの現場、発注者、協力会社 | 電気・空調などの工事の段取り、工程・品質・安全の管理 | 主任技術者・監理技術者、施工管理技術検定、工期のしわ寄せと時間外労働の上限 |
| 設計 | 発注者、設計事務所、ゼネコン | 設備の設計と図面 | 新設と改修の別(改修の割合は会社ごとに違う) |
| 電気工事の作業(技能) | 現場の施工管理 | 配線・機器の取付けなどの作業 | 電気工事士の免状が要る |
| 配電・通信の工事 | 電力会社・送配電会社、通信会社 | 電柱・送配電線や、光回線・モバイルの設備の工事 | 得意先の設備投資の計画 |
求人票では、次の5点を確かめます。
- 工事の種類:電気か、空調・衛生(管工事)か、計装か、通信か。必要な資格と、取得の支援や資格手当があるか
- 受注の経路:元請の工事が多いか、ゼネコンからの下請が多いか。電力会社や通信会社の工事の部門があるか
- 新設か改修か:新しい建物の工事が中心か、使っている建物の改修が中心か。会社が改修の割合を開示しているか
- 担当の範囲:施工管理か、設計か、作業をする技能職か。施工管理なら、主任技術者や監理技術者を目指す道筋があるか
- 働き方:残業時間と休日の実績、工期が詰まったときの対応
完成した建物の設備を運転・点検する仕事は、工事とは別の契約になります。
完成後の建物で、清掃や設備の運転・点検を受託する側を見る場合は、ビルメンテナンスの業界地図で確かめられます。

