新薬・後発品・市販薬を、研究から承認・製造・販売までの工程と薬価で整理。研究、開発、薬事、MR、生産、品質保証の違いが分かります。

「製薬」と書かれた求人には、新しい薬の候補を探す研究、人で効き目を確かめる臨床開発、国に承認を求める書類をまとめる薬事、医師や薬剤師に薬の情報を届けるMR、工場で薬をつくる生産技術や品質保証まで幅があります。同じ製薬会社でも、新薬・後発品・市販薬のどれを主につくるのか、国内と海外のどちらで多く売るのかで、仕事の中身も配属の可能性も変わります。

この記事では、人の病気に使う医薬品のうち、病院や薬局で使われる医療用医薬品(新薬と後発品)と、薬局やドラッグストアで買える要指導医薬品・一般用医薬品(OTCと呼ばれます)をつくる会社を扱います。薬の種類と生産の規模、研究から患者に届くまでの工程と許可、薬価の決まり方と改定、会社の稼ぎ方、仕事、変化を順に確かめます。

「医薬品・医療・介護の業界地図」では、医薬品のメーカーを「つくる」役割に置きました。この記事は、その中の医薬品を深めます。医療機器と、検査に使う薬(体外診断用医薬品)は「医療機器の業界地図」で扱います。

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国民医療費の中で薬局の調剤などがどれだけを占めるかは「医薬品・医療・介護の業界地図」で扱っています(国民医療費には、薬の代金だけを取り出した内訳は出ていません)。専ら動物に使う動物用医薬品は別の領域です。薬機法第83条では、多くの規定の「厚生労働大臣」を「農林水産大臣」に読み替えます。この記事では動物用医薬品を扱いません。

医薬品は医療用と市販薬に分かれ、医療用は新薬と後発品に分かれる

医薬品は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で定められています。大きく分けると、医師の診療や処方箋にもとづいて使う医療用医薬品と、薬局やドラッグストアで買える要指導医薬品・一般用医薬品があります。

医療用医薬品は、さらに新薬と後発品に分かれます。新薬(先発品)は、最初に承認される薬です。後発品(ジェネリック医薬品)は、先発品と同じ有効成分で、あとから発売される薬です。後発品が出たあとの先発品は、長期収載品と呼ばれます(令和8年度薬価基準改定の概要でも「後発品上市後5年を経過した長期収載品」のように使われています)。

生産の規模は、厚生労働省の令和6年 薬事工業生産動態統計年報で確かめられます。製造販売業の許可を受けたすべての事業者を対象にした統計です。2024年の医薬品の国内生産金額は10兆2,485億円で、医療用医薬品が9兆3,154億円(90.9%)、要指導医薬品・一般用医薬品が9,331億円(9.1%)です(年報本文 第1表)。国内出荷金額は12兆8,160億円です。

この金額には、検査に使う体外診断用医薬品の生産金額4,330億円も入っています。体外診断用医薬品は統計では医薬品に数えられますが、許可や承認の手続きは医療機器と同じ章で定められています。この記事では扱わず、「医療機器の業界地図」で扱います。

同じ統計の医薬品の輸入金額は4兆2,567億円です。ただし、これは輸入した製品の数量に、国内で出荷するときの販売単価を掛けた金額で、貿易統計の輸入額ではありません。厚生労働省は、この統計の輸出入の数字は貿易の実態の把握には適さないと注意書きをしています。

薬の効き目の分類(薬効)ごとの生産金額では、その他の代謝性医薬品が1兆5,153億円(14.8%)、腫瘍用薬が1兆3,208億円(12.9%)、中枢神経系用薬が1兆1,250億円(11.0%)です。統計の「生物学的製剤」の分類は7,139億円(7.0%)で、前の年から24.0%増えました。

薬の種類主な売り先国内の値段の決まり方この記事で取り上げる会社の例
新薬(先発品)卸を通じて医療機関・薬局。海外の顧客国が品目ごとに決める薬価武田薬品工業、第一三共、中外製薬
後発品卸を通じて医療機関・薬局薬価サワイグループホールディングス(中核会社は沢井製薬)、東和薬品
要指導・一般用医薬品(OTC)薬局・ドラッグストアなどの店店で売られる価格ロート製薬(第一三共もグループにOTCの会社を持つ)

1つの会社が複数の種類を手がけることもあります。第一三共は、OTCを扱う第一三共ヘルスケアをグループに持ち、そのユニットの売上収益は2026年3月期で907億円です(決算短信(訂正後))。

薬ができるまで:研究・治験・承認と、2つの許可

新薬は、研究で候補になる物質を見つけ、細胞や動物で効き目と安全性を確かめ(非臨床試験)、人で確かめる臨床試験を経て、国に承認を申請します。承認の申請に添える臨床試験の成績を集めるための試験を、薬機法は「治験」と呼んでいます(第2条第18項)。医薬品を売り出すには、原則として、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受けなければなりません(国が基準を定めて指定する一部の医薬品を除く。第14条)。

新薬は、研究・治験・承認を経て、製造され、卸を通じて患者に届く

上は新薬が患者に届くまでの工程と、そこで働く仕事。下は薬機法の2つの許可。点線は、製薬会社の外の会社が担う、または担うことがある工程。

1 研究候補になる物質を探す研究
2 非臨床試験細胞や動物で効き目と安全性を確かめる研究
3 治験人で確かめる臨床試験(第2条第18項)臨床開発。運営をCROに任せることがある
4 承認原則として品目ごとに申請し、厚生労働大臣が承認(第14条)薬事
5 製造製造所で薬をつくり、試験する製造・生産技術・品質管理・品質保証。CDMOに任せることがある
6 卸医薬品卸が医療機関・薬局に届ける詳しい会社比較は本記事の対象外
7 医療機関・薬局医師が処方し、薬局などで患者に渡るMR(医療機関を訪問する活動と、Webや電話での活動)
8 市販後副作用が疑われる病気などを知ったら国に報告(第68条の10)安全性(ファーマコビジランス)
製造販売業の許可(第12条):薬を市場に出す責任を持つ会社が、厚生労働大臣から受ける。処方箋が必要な薬などは第一種、それ以外は第二種。製造をほかの会社に任せても、責任は製造販売業者にある(第2条第13項)。
製造業の許可(第13条):5の製造所ごとに受ける。製造販売業の許可とは別。
読み方:例外として、国が基準を定めて指定する一部の医薬品は承認が要らない(第14条)。仕事の名前は、工程を説明するための呼び方で、会社の正式な職種名ではない。点線の工程(治験の運営、製造、卸)を引き受ける会社の詳しい比較は、本記事の対象外。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(e-Gov。第2条・第12条・第13条・第14条・第68条の10)、武田薬品工業「新卒採用」、第一三共「新卒採用 職種一覧」。

薬機法は、薬を市場に出す会社と、薬をつくる工場を、別々の許可で管理しています。

  • 製造販売業の許可(第12条):薬を市場に出す責任を持つ会社が、厚生労働大臣から受ける許可です。処方箋が必要な薬などを扱う第一種と、それ以外の第二種に分かれ、一定の期間ごとに更新します。
  • 製造業の許可(第13条):薬をつくる製造所ごとに受ける許可です。

薬機法の「製造販売」には、ほかの会社に製造を任せて販売する場合も含まれます(第2条第13項)。製造を外部に任せても、市場に出す責任は製造販売業者にあります。

製薬会社は、治験の運営をCRO(開発業務受託機関)に、製造をCDMO(医薬品の開発・製造の受託機関)に任せることがあります。ロート製薬は、製品区分の「メディカル関連」にCDMO事業を含めています(2026年3月期決算短信)。

できた薬の多くは、医薬品卸を通じて病院・診療所・薬局に届きます。メーカーと卸、卸と医療機関・薬局の取引の価格は、それぞれ別の取引で決まります。取引の価格と卸の利益の出し方は「医薬品卸の業界地図」で扱います。

売り出したあとも、製造販売業者は、副作用が疑われる病気や死亡などを知ったときは、国に報告しなければなりません(第68条の10)。こうした情報を集めて評価する仕事を、ファーマコビジランス(医薬品安全性監視)と呼びます。武田薬品工業と第一三共は、「ファーマコビジランス職」を採用ページの職種に挙げています。

薬の値段は国が品目ごとに決め、改定で見直される

医療用医薬品には、保険で支払われる値段として、国が品目ごとに決める薬価があります。医療機関や薬局は、卸から薬を仕入れます。その仕入れの価格(市場実勢価格)は、多くの場合、薬価より低くなります。

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国は、実際の取引の価格を調べる薬価調査を行い、その結果をもとに薬価を見直します(薬価改定)。令和8年度薬価基準改定の概要によると、2025年9月の取引を調べた令和7年薬価調査では、薬価と市場実勢価格の差の割合(平均乖離率)は4.8%でした。新しい薬価は、市場実勢価格の加重平均をもとに、改定前の薬価の2%にあたる調整幅を加えて決めます(市場実勢価格加重平均値調整幅方式)。

薬価は実際の取引の価格を調べて改定され、後発品が出て5年を過ぎた先発品は段階的に下がる

上は薬価が見直される流れの模式図(個別の品目の値ではない)。下は令和7年薬価調査の、薬の種類ごとの乖離率。

1 収載国が品目ごとに薬価を決める保険で支払われる値段
2 取引卸と医療機関・薬局の取引実際の価格(市場実勢価格)は薬価より低いことが多い
3 薬価調査取引の価格を調べる令和7年の平均乖離率は4.8%
4 改定実勢価格の加重平均+調整幅調整幅は改定前の薬価の2%。令和8年度は医療費ベース0.86%・薬剤費ベース4.02%の引き下げ
特許の期間中の新薬革新的新薬薬価維持制度(旧 新薬創出等加算)の条件を満たすと、改定のときに薬価を維持。令和8年度の対象は653品目(383成分、95企業)。
後発品が出たあとの先発品(長期収載品)後発品が出てから5年を過ぎると、後発品の薬価の加重平均を基準に段階的に引き下げ(G1)。
令和7年薬価調査の乖離率(薬価と実際の取引の価格の差の割合)
先発品(後発品なし)3.6%
先発品(後発品あり)9.6%
後発品8.7%
全体(平均乖離率)4.8%
帯の右端は12%。同じ調査で、後発品は全体の数量の55.7%、薬価で計った金額の16.3%を占める。厚生労働省が示す後発品の数量割合88.8%・金額割合68.7%は、後発品がある先発品と後発品を合わせた中で後発品が占める割合で、すべての薬の中での割合ではない。
出典:厚生労働省「令和8年度薬価基準改定の概要」(令和7年薬価調査は2025年9月取引分)、同「診療報酬改定について」(令和7年12月24日の予算大臣折衝)。改定率は医療費ベースと薬剤費ベースの両方を示した。

令和8年度の薬価改定は、2026年4月1日に実施されました。改定率は、医療費ベースで0.86%の引き下げ、薬剤費ベースで4.02%の引き下げです。令和8年度は、2年に1度の通常の改定です。国は、2025年12月の予算の大臣折衝で、令和9年度(2027年度)の薬価改定も「着実に実施する」としました(厚生労働省 診療報酬改定について)。2026年10月末時点で、令和9年度の改定でどの品目を対象にするかは決まっていません。

値下がりの圧力は、薬の種類によって違います。令和7年薬価調査の乖離率は、後発品がまだない先発品で3.6%、後発品がある先発品で9.6%、後発品で8.7%でした。同じ調査で、後発品は全体の数量の55.7%を占めますが、薬価で計った金額では16.3%です。すべての薬の中で見ると、後発品は、多くの量を低い値段で供給する薬だと分かります。

薬の値段の動きには、薬の種類ごとのルールもあります。

  • 革新的新薬薬価維持制度:これまでの「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の名前を変えた制度で、条件を満たす新薬の薬価を、改定のときに維持します。令和8年度の対象は653品目(383成分、95企業)で、薬価の維持に要した額は約273億円です。一方で、28成分49品目については、これまで受けてきた分の累積額を差し引く控除が行われ、その額は約918億円です。
  • 長期収載品:後発品が出てから5年を過ぎた先発品は、後発品にどれだけ置き換わったかにかかわらず、後発品の薬価の加重平均を基準に段階的に引き下げられます(G1と呼ばれるルール)。
  • 不採算品再算定:採算がとれなくなった薬を、特例的に薬価の引き上げや維持の対象にする仕組みです。令和8年度は232成分・704品目が対象になりました。

後発品の使用の広がりについて、厚生労働省は、後発品の数量割合を88.8%、金額割合を68.7%と示しています(令和7年薬価調査)。これは、後発品がある先発品と後発品を合わせた中で、後発品が占める割合です。上の55.7%・16.3%は、後発品がない先発品などを含む、すべての薬の中での割合です。

何で稼ぐか:新薬・後発品・市販薬の会社の例で、売上の中身を見る

会社によって、売上の中身は違います。ここでは、会社ごとに何を開示しているかを1社ずつ確かめます。会社ごとに決算の期と会計基準が違うため、会社どうしの大きさは比べていません。

新薬・後発品・市販薬の会社の例:売上の中身は会社ごとに違う

各社の売上の内訳(各社の合計を100%とした割合)。区分の仕方・決算の期・会計基準が会社ごとに違うため、会社どうしの大きさは比べていない。

新薬の会社:地域別の売上収益
武田薬品工業2026年3月期・IFRS・顧客の所在地日本9.6%、米国48.0%、欧州およびカナダ25.4%、その他16.9%(中南米・中国・アジア・ロシア/CISなど)。研究開発費は売上収益の15.0%
第一三共2026年3月期・IFRS・地理的な近さによる区分日本27.3%、米国35.3%、欧州23.4%、その他13.9%。研究開発費(連結損益計算書の値)は売上収益の21.9%。ADCのエンハーツは2025年度に8,195億円(一時金などを含む)
中外製薬2025年12月期・Core・ロシュが59.89%を所有国内製商品37.6%、海外製商品48.1%(ロシュ向けの輸出を含む)、その他の売上収益14.3%(内訳は本図の比較対象外)。研究開発費(Core)は1,801億円で売上収益の14.3%(会社の記載)。その他の売上収益と同じ額だが、別の項目
後発品の会社:国内の数量と供給の体制
サワイグループホールディングス2026年3月期・IFRS(米国事業を除く)。売上収益の地域別・製品区分別の内訳は図にしていない(薬効別では循環器官用薬が最大)。研究開発費は売上収益の6.1%。生産能力は年間250億錠の体制に向けて投資を予定(会社の計画)。
東和薬品2026年3月期・日本基準。海外セグメント(欧州・米国など)の売上高は連結売上高の約21.1%(セグメント間の取引を含む可能性がある参考値)。研究開発費率6.6%(会社の記載)。3工場の生産能力は2026年度から175億錠(能力の値で、生産の実績ではない)。
市販薬の会社:製品区分別の外部顧客への売上高
ロート製薬2026年3月期・日本基準スキンケア関連57.3%(外皮用薬と機能性化粧品などを含み、市販薬と化粧品を分けた開示はない)、内服・食品関連15.8%、アイケア関連13.2%、メディカル関連11.1%(医療用眼科薬・CDMO事業など)、その他2.6%。日本以外の地域セグメント(会社の所在地による区分)の外部顧客への売上高は50.7%。研究開発費は売上高の4.0%
出典:武田薬品工業「四半期フィナンシャルレポート 2025年度(2026年6月5日修正版)」、第一三共「2026年3月期決算短信(訂正後)」「決算補足資料(2026年7月31日訂正版)」、中外製薬「2025年12月期決算短信」、サワイグループホールディングス・東和薬品・ロート製薬「2026年3月期決算短信」、東和薬品「2026年3月期決算説明資料」。割合と研究開発費の比率は本記事で計算した値(東和薬品の研究開発費率6.6%と中外製薬の14.3%は会社の記載)。緑・橙・紫・灰は地域、青系と赤紫は製品・事業の区分を表す。四捨五入のため、合計が100%にならないことがある。

武田薬品工業は、2026年3月期の売上収益4兆5,057億円(国際会計基準)のうち、日本が4,331億円で、計算値で約9.6%です。米国は2兆1,648億円で、計算値で約48.0%です(四半期フィナンシャルレポート 2025年度。地域は顧客の所在地による区分)。エンタイビオという1つの製品の売上は、9,580億円です。武田薬品工業の場合、売上の9割ほどが日本の外にあります。

第一三共は、2026年3月期の売上収益2兆1,230億円のうち、日本が5,801億円で、計算値で約27.3%です(決算短信(訂正後))。がんの薬で、抗体に薬を結びつけた抗体薬物複合体(ADC)のエンハーツは、2025年度に8,195億円の売上収益を上げています。この額には、提携先のアストラゼネカが売上を計上する国での共同販促の収入や、契約の一時金なども含まれます(決算補足資料)。

中外製薬は、製薬会社ロシュのグループで、ロシュが発行済株式の59.89%を持っています(2025年12月期決算短信)。2025年12月期の売上収益1兆2,579億円は、国内製商品売上高4,724億円、海外製商品売上高6,054億円、その他の売上収益1,801億円に分かれます(計算値で約37.6%・約48.1%・約14.3%)。会社は、海外製商品の伸びを、ロシュ向けのヘムライブラ・アクテムラの輸出の増加によると説明しています。その他の売上収益の増減の理由としては、一時金の収入の減少やヘムライブラに関する収入の増加などを挙げています。ロイヤルティなどの内訳は、本図の比較対象外です。

後発品の会社の国内の売上は、薬価と販売する数量に左右されます。サワイグループホールディングスは、2026年3月期の売上収益が2,017億円(国際会計基準。米国事業を除いた継続事業)で、薬効別では循環器官用薬が458億円と最も大きな区分です(2026年3月期決算短信)。会社は、原価の高騰の影響分を、低い薬価の品目を中心に卸への価格に反映したと説明しています。

東和薬品は、2026年3月期の売上高が2,737億円(日本基準)です。2つの報告セグメントのうち、欧州・米国の後発品事業などの海外セグメントの売上高は576億円です(2026年3月期決算短信)。後発品の製品数は、2025年12月時点で316成分742品目です。

研究開発費の売上に対する割合は、図の下に会社ごとに示しました(東和薬品の6.6%と中外製薬の14.3%は会社の記載、ほかはこの記事の計算値)。中外製薬では、Coreの研究開発費とその他の売上収益が、どちらも1,801億円で同じ額ですが、別の項目です。業界全体では、日本製薬工業協会のDATA BOOK 2026が総務省の科学技術研究調査から、2024年度の研究開発費の売上高に対する割合を、医薬品製造業で11.01%、製造業全体で4.19%と示しています。この研究開発費は社外への委託研究費を含まないなど、会社の決算の研究開発費とは定義が違うため、会社ごとの比率とは比べられません。

市販薬の会社の例として、ロート製薬を取り上げます。2026年3月期の売上高3,437億円のうち、製品区分で最も大きいのはスキンケア関連で、計算値で約57.3%です。スキンケア関連には、外皮用薬(塗り薬など)と機能性化粧品などが一緒に入っており、市販薬と化粧品を分けた売上は開示されていません。目薬などのアイケア関連は約13.2%、胃腸薬や漢方薬、サプリメントなどの内服・食品関連は約15.8%、医療用眼科薬やCDMO事業を含むメディカル関連は約11.1%です(計算値)。ロート製薬の報告セグメントは、製造・販売の体制にもとづく地域別(会社の所在地による区分)で、日本以外の地域セグメントの外部顧客への売上高は、計算値で約50.7%です。

製薬会社の仕事:研究・開発・薬事・MR・生産・品質・安全性

製薬会社で働く人は、どの部門に多いのでしょうか。DATA BOOK 2026に載る厚生労働省の医薬品・医療機器産業実態調査によると、2023年度の製薬企業318社の医薬品関係の従業者は149,812人です。部門別では、営業部門が51,103人(34.1%)、製造部門が46,860人(31.3%)、研究開発部門が26,174人(17.5%)、管理部門が25,675人(17.1%)です。調査の対象は、日本製薬団体連合会の業態別団体に加盟する会社で、すべての製薬会社ではありません。

営業部門には、MR(医薬情報担当者)が含まれます。

MRの数は減っています。MR認定センターの2025年版 MR白書によると、2025年3月31日時点のMRは43,646名(199社)で、前の年から3,073名(6.6%)減りました。2014年度の64,657名からは、21,011名少なくなっています(計算値)。この数は、医療機関を訪問して活動するMRと、Webや電話だけで活動するMRの合計で、管理職を含みません。上の営業部門の51,103人とは別の調査で、対象の会社と時点が違います。白書は、近年は4〜6%の減少が続いていたところ、今回は下げ幅がやや大きく、MRを多く雇ってきた会社の早期希望退職の影響が大きかったとみられる、としています。

研究と開発の中にも、いくつもの仕事があります。新薬の候補を探す研究、治験を計画して進める臨床開発、承認申請の資料をまとめて国とやりとりする薬事、売り出したあとに副作用などの情報を評価する安全性(ファーマコビジランス)です。武田薬品工業は、メディカルサイエンスリエゾン(MSL/HOL)も募集職種に挙げています。

工場の仕事には、製造、生産の方法や設備を整える生産技術、製品の試験を行う品質管理、製造と出荷の仕組みが正しく動いているかを確かめる品質保証があります。

職種の名前は、会社によって違います。採用ページで確かめた名前は、次のとおりです。

会社採用ページに載っている職種・部門の名前
武田薬品工業総合職、MR職、生産技術職(製造職・エンジニアリング職)、研究技術職、ファーマコビジランス職、メディカルサイエンスリエゾン(MSL/HOL)など(新卒採用)
第一三共研究職、データサイエンス、開発職、ファーマコビジランス職、サプライチェーンスタッフ、MR、コーポレートスタッフ(新卒採用 職種一覧)
沢井製薬研究開発部門(研究開発職)、生産部門(製造・生産技術・品質管理職)、信頼性保証部門(品質保証・薬制・安全管理職)、営業部門(職種紹介)
東和薬品研究技術(企画・基盤技術開発・製剤開発・分析・BE(臨床試験)・原薬開発・品質保証)、営業、製造、管理系業務(職種紹介)
ロート製薬ビジネス企画職、研究開発職、製品・製剤技術職、プラントエンジニア職、品質マネジメント職、SCM職(職種紹介)

中外製薬は、採用サイトで仕事を研究・開発・生産・販売・マーケティング・育薬・コーポレート・DXに分けて紹介しています(仕事を知る)。これは仕事の区分で、募集する職種の名前はこの記事では確かめていません。この記事の「薬事」「品質保証」は、仕事の説明として使っています。それだけを名前にした職種があるかは、会社ごとに確かめていません。

供給不安・ドラッグ・ロス・MRの減少が、仕事を変える

医薬品の業界では、薬の供給、新薬の開発、情報の届け方のそれぞれで変化が続いています。

薬の供給では、2025年5月に公布された薬機法の改正の検討の時点で、厚生労働省は「医療用医薬品の約20%が限定出荷・供給停止」の状態で、供給不足が特に後発品を中心に数年にわたって続いていると説明していました(改正法の概要)。これは改正の検討時点の数字です。2026年の供給の状況は、「医薬品・医療・介護の業界地図」で扱っています。

薬機法の現行の条文では、特定医薬品として定められた薬の製造販売業者は、6か月以内に出荷を止めたり限ったりすることにしたとき、またはそのおそれがあるときに、直ちに国に報告しなければなりません(第18条の3)。出荷を止めたり限ったりしたときは、すぐに届け出る義務があり、国はその情報を公表します(第18条の4)。

2025年の改正法には、ほかにも、薬の供給の体制を管理する「供給体制管理責任者」や、品質保証の責任者を置くことが盛り込まれました。品質保証の責任者は、公布から2年以内に施行される項目です。供給体制管理責任者を含め、2026年10月末時点のe-Govの条文にはまだ入っていません(未施行)。改正法には、後発品の会社が品目の統合や事業の再編を進めるための基金(後発医薬品製造基盤整備基金。5年の時限措置)も盛り込まれました。背景として、後発品の業界が少ない量で多くの品目をつくる「少量多品目生産」で、生産の効率が下がっていることが挙げられています。

後発品の会社は、生産能力の増強と、他社との協業を進めています。

  • サワイグループホールディングス:グループの生産能力を年間250億錠の体制にすることに向けて、工場への設備投資を予定しています。第二九州工場には、最終的に35億錠の生産能力になる固形剤棟が2024年7月に完成しました。2025年9月には、日医工と後発品の品目統合などに向けた協業に合意しました。
  • 東和薬品:3つの工場の年間生産能力は、2024年3月末の140億錠から、2026年度から175億錠に増えます。2026年1月には、大塚製薬と製造の協業体制の構築について基本合意しました。

生産能力は会社が示す計画や能力の値で、実際に生産した量ではありません(東和薬品単体の2026年3月期の生産数量の実績は164.3億錠です。決算説明資料)。工場の増強や品目の統合は、生産技術、品質管理・品質保証、生産計画の仕事に関わります。

新薬の開発では、ドラッグ・ロスが課題になっています。ドラッグ・ロスは、欧米では承認されている薬のうち、日本では開発が始まっていない薬のことです。2025年3月に厚生労働省が公表した研究班の整理では、86品目を、開発の必要性が特に高いA(14品目)、高いB(41品目)、低いC(11品目)、ないD(12品目)、すでに解消した品目(8品目)に分けました(厚生労働省 報道発表)。2026年4月の公表では、2021年1月から2023年3月に欧米で承認された薬のうち、2025年3月末時点で国内の開発が始まっていない薬が28品目ありました(厚生労働省 報道発表)。2つは対象の期間が違うため、品目数を比べることはできません。

子どもの薬の開発では、薬局医薬品(要指導医薬品と一般用医薬品以外の医薬品。第4条第5項第2号)の製造販売業者に、小児用の開発を進めるための資料を集める計画をつくり、計画にもとづいて資料を集めるよう努めることが求められています(第14条の8の2)。これは努力義務です。海外で承認された薬を日本でも開発するか、子ども向けの用法をどう確かめるかは、臨床開発と薬事の仕事に関わります。

情報の届け方では、MRの数が減り続けています。MR白書のMR数には、Webや電話だけで活動するMRも含まれます。MRの減り方の理由として白書が挙げているのは、早期希望退職の影響までです。

薬価では、2027年度にも改定が予定されています。対象の範囲はまだ決まっていません。新薬の会社にとっては、どの薬が値下げの対象になるか、後発品の会社にとっては、不採算品再算定や最低の薬価の扱いが、売上や採算に関わります。サワイグループホールディングスは、2027年3月期は最低薬価の引き上げなどで収益性の改善を見込むとしています。

求人票では、薬の種類・工程・会社の稼ぎ方を確かめる

製薬会社の仕事は、工程と、会社が主に扱う薬の種類によって、相手と成果物が変わります。

仕事主な相手主な仕事の例変化との関係
研究社内の開発部門、共同研究の相手新薬の候補を探し、細胞や動物で効き目と安全性を確かめるドラッグ・ロス
臨床開発・薬事治験を行う医療機関、CRO、国治験の計画と運営、承認申請の資料づくりドラッグ・ロス、小児用の開発計画(努力義務)
MR・MSL医師・薬剤師などの医療機関医療機関を訪問しての活動、Webや電話での活動(MR白書の数え方による)MRの減少、Webや電話での活動、薬価の改定
生産・品質工場、原料の仕入れ先、委託先製造、生産技術、品質管理・品質保証供給不安、増産と品目の統合、出荷停止の届出
安全性(ファーマコビジランス)医療機関、社内の開発・営業部門副作用などの情報を集めて評価する副作用などの国への報告(第68条の10)

求人票では、次の3点を確かめます。

  • 薬の種類:新薬、後発品、市販薬のどれが会社の中心か。新薬なら、主力品とその開発の段階。後発品なら、扱う品目の数と供給の体制
  • 工程:研究、臨床開発、薬事、MR、生産、品質、安全性のどこを担うのか。治験や製造の一部を外部に任せている会社では、委託先を管理する仕事も入る
  • 稼ぎ方:売上の多くが国内か海外か。国内が中心なら、薬価の改定の影響を受けやすい。海外が中心なら、配属や仕事の相手に海外の部門が入ることがある

医薬品の会社が、医療・介護の分野全体のどこにいるかは「医薬品・医療・介護の業界地図」で確かめられます。医療機器と体外診断用医薬品は「医療機器の業界地図」、病院や薬局で薬が使われる場面の仕事は「医療提供の業界地図」で扱っています。