自動車整備の求人には、車を点検・修理する整備士、指定工場で車検の検査をする自動車検査員、お客の車を受け付けて整備の内容を説明する受付(フロント)、事故などで傷んだ車体を直す板金・塗装の仕事があります。カー用品店では、作業場(ピット)で取付や点検をする仕事も募集されます。働く場所は、自動車メーカーの販売会社(ディーラー)、地域の整備工場、車検のチェーン、カー用品店などに分かれます。
同じ「整備士」の求人でも、その事業場が国の認証を受けた工場か、車検の検査までできる指定工場か、どのメーカーの車を扱うか、何人の整備要員で運営しているかによって、仕事の範囲と身につく力が変わります。この記事では、車検と点検の義務が誰にあるかから始め、担い手の分かれ方、認証と指定の仕組み、売上の中身、会社の例、整備士の仕事と待遇の数字の読み方、これからの変化を順に見ます。
新車の販売と、メーカーと販売会社の関係は「自動車業界の地図|完成車・部品・販売・整備とお金と仕事のつながり」で扱います。この記事では、ディーラーを整備の担い手としてだけ取り上げます。補修部品の出荷(部品メーカーの側)とタイヤの製造・販売は「自動車部品の業界地図|Tier構造・品目・電動化とタイヤまで」で扱います。補修用の塗料をつくる会社は「塗料・接着剤の業界地図|建物・車・船を守る材料を誰が作り、用途ごとにどう稼ぐのか」で扱います。カー用品の物販(品ぞろえや仕入れ)は扱わず、カー用品店の取付・車検・整備の部分だけを扱います。
車検と点検の義務は、車の使用者にある
整備の仕事は、車を使う人に課された義務から生まれます。道路運送車両法は、自動車の使用者に、点検をして必要に応じて整備し、保安基準(国が定める安全や環境の基準)に適合するよう維持しなければならないと定めています(第47条)。整備工場に義務があるのではなく、義務を負う使用者から依頼を受けて、工場が点検や整備をします。
ほかの生活・事業向けサービスと比べるには、廃棄物処理・ビルメンテナンス・警備・コールセンター・自動車整備の業界地図で確かめられます。
定期点検の間隔も、使用者の義務として決まっています(第48条)。
- 3か月ごと:事業用の自動車(トラック・バス・タクシーなど)や、車両総重量8トン以上の自家用自動車など
- 6か月ごと:業として有償で貸し出す自家用自動車(レンタカー)など
- 1年ごと:自家用乗用車など、上の区分に入らない車
使用者は、点検整備記録簿を車に備え、点検や整備をしたら記載しなければなりません(第49条第1項)。
車検は、国の検査を受けて有効な自動車検査証(車検証)を持っていないと、車を走らせてはならないという決まりです(第58条)。車検証の有効期間は、旅客や貨物の運送に使う車など(軽自動車を除く)が1年、それ以外は2年で、自家用乗用車などの初回は3年です(第61条)。期間が切れた後も車を使う使用者は、車を持ち込んで継続検査を受けなければなりません(第62条)。一般に「車検を通す」と言うのは、この継続検査のことです。
受ける時期には幅があります。道路運送車両法施行規則の第44条により、有効期間が満了する日の2か月前から満了日までに継続検査を受けると、新しい有効期間は満了日の翌日から数えます。この間に受ければ、早めに受けても有効期間は短くなりません。それより前に受けると、新しい有効期間は検査を受けた日から数えます。
自動車損害賠償保障法(自賠法)は、自賠責保険(または共済)の契約がない車の運行を禁じています(第5条)。継続検査を受けるときは、自賠責保険の証明書も見せなければなりません(第9条)。
誰が担っているか:ディーラー・専業・兼業・自家
整備の担い手は、日本自動車整備振興会連合会(日整連)と国土交通省が使う「業態」の区分で見ると整理できます。業態は次の4つです。
- ディーラー:自動車メーカー、または国内で一手に卸売する販売会社と、特約販売店契約を結んでいる企業の事業場
- 専業:整備の売上が総売上の50%を超える事業場(ディーラーを除く)
- 兼業:自動車販売、部品・用品の販売、保険、石油販売などの売上が50%以上の事業場(ディーラーを除く)
- 自家:主に自社が持つ車を整備する事業場
日整連の令和7年度 自動車特定整備業実態調査の概要によると、2025年6月30日の整備事業場は9万2,251でした。そのうち専業が5万6,834、ディーラーが1万6,176、兼業が1万5,767、自家が3,474です。構成比は、国土交通省の資料で専業61.6%、ディーラー17.5%、兼業17.1%、自家3.8%と示されています。
車検や修理を担う事業場の4つの業態
事業場の数は2025年6月30日、構成比は国交省掲載の資料の値。売上は日整連が会員の事業場の2割の抽出調査から推計した値で、主に2024年度の実績。総整備売上は6兆6,592億円、事業場は9万2,251。棒は構成比の長さ。「入りうる例」は業態の定義から考えられる例で、個別の店や会社の区分を示すものではない。国の統計の「89 自動車整備業」にはディーラーが入らない。
売上で見ると、順番が変わります。日整連の推計では、総整備売上高は6兆6,592億円で、ディーラーが3兆493億円(45.8%)、専業が2兆5,488億円(38.3%)、兼業が7,746億円(11.6%)、自家が2,865億円(4.3%)でした。ディーラーは事業場の2割に満たない一方、整備の売上の半分近くを占めます。この数字は「自動車業界の地図」が使っているのと同じ調査です。
整備と完成車・部品・販売のつながりは、自動車業界の地図で確かめられます。
日整連の数字を読むときは、調べ方を押さえておきます。会員の事業場の2割を対象にした抽出調査(有効回答率40%)から全体を推計した値で、売上は2024年7月から2025年6月までに決算期を迎えた実績、つまり主に2024年度の売上です。
事業場の大きさも業態で違います。国交省の資料によると、2025年6月末の認証事業場のうち、整備要員(工場で作業する人)が2〜3人の事業場は全体の55.0%でした。専業では67.1%、兼業では57.7%が2〜3人の事業場です。ディーラーでは2〜3人は10.0%で、4〜10人の事業場が76.0%を占めます。
カー用品店やガソリンスタンド(SS)は、物品や燃料の売上の比重しだいで兼業に入りうる事業場で、日整連の兼業の定義にも「石油販売」が入っています。車検のチェーンの加盟店や板金塗装の工場は、専業にも兼業にも入りえます。個別の店がどの業態かは、売上の構成で決まります。運送会社が自社のトラックを整備する事業場は自家に当たり、運送の仕事は「トラック輸送・宅配・郵便の業界地図|荷主から届け先まで、誰が運び誰が手配するか」で扱います。
国の統計の産業分類は、この業態の区分と一致しません。日本標準産業分類では、車の整備と販売の両方を行う事業所は小売業に入ります。そのため、ディーラーのサービス部門は「89 自動車整備業」に入りません。総務省統計局のサービス産業動態統計調査では、89の2025年の月平均の売上高が2,270億円、事業従事者が21.3万人です。ディーラーを含まない数字なので、日整連の総整備売上高とは比べられません。令和6年の経済センサスでは、89の事業所は3万120で、その77.2%が本所や支所を持たない単独事業所でした(計算値)。
認証工場と指定工場:特定整備・整備主任者・自動車検査員
整備の事業で中心になる許可が「認証」です。原動機やブレーキなどを取り外して行う整備を「特定整備」と呼び、これを事業として行う人は、事業の種類と事業場ごとに地方運輸局長の認証を受けなければなりません(道路運送車両法第78条)。事業の種類は、扱う車の大きさで普通・小型・軽の3つに分かれます(第77条)。
特定整備には2種類あります(法第49条第2項、施行規則第3条)。
- 分解整備:原動機、クラッチやトランスミッション、かじ取り装置、ブレーキ、ばねなどを取り外して行う整備・改造
- 電子制御装置整備:車の状態や前方の状況を検知するセンサー(カメラやレーダーなど)、その情報を処理するコンピュータ、センサーが付いた車体の前の部分や窓ガラスを取り外したり、取付の位置や角度を変えたり、機能を調整したりする整備(ハンドルやブレーキの働きに影響するおそれがあるものに限る)。自動運行装置の整備も含む
国交省の説明によると、特定整備の制度は令和2年4月に始まり、取り外しを伴わなくても装置の働きに影響する整備が対象に加わりました。国交省は、車体整備(板金塗装)、電装品の整備、ガラスの修理をする事業者向けにも、特定整備の案内を出しています。施行規則第3条は、センサーが付いた車体の前の部分や窓ガラスの取り外しも、ハンドルやブレーキの働きに影響するおそれがあれば電子制御装置整備に含めています。
一方、施行規則第3条に挙げられた作業に当たらない整備は、特定整備ではありません。タイヤやオイルの交換は第3条の作業ではなく、特定整備に当たりません。カー用品店やタイヤの販売店の作業場でも行われる作業です。認証が要るのは、特定整備を事業として行う場合です。
認証は、申請して基準を満たせば受けられる仕組みです(第79条・第80条)。地方運輸局長は、設備と従業員が国の基準に合い、欠格事由に当たらなければ、認証をしなければなりません(第80条)。基準は施行規則第57条にあり、主なものは次のとおりです。
- 屋内の作業場と車両置場、作業の機械を備える。電子制御装置整備をする事業場は、そのための作業場と、型式ごとの技術情報や、センサーの向きを調整する作業(エーミング)に要る機器を手に入れられる体制を持つ
- 特定整備をする従業員が2人以上いる
- 分解整備をする事業場は、1級か2級の整備士が1人以上いて、1〜3級の整備士の数が従業員の4分の1以上(端数は切り上げ)
認証を受けた事業者(自動車特定整備事業者)にも義務があります。特定整備をした部分が保安基準に合うようにし(第90条)、特定整備記録簿を備えて記載し、使用者に写しを渡します(第91条)。事業場ごとに整備主任者を選び、特定整備と記録簿の記載を統括させます(施行規則第62条の2の2)。整備主任者は、分解整備では1級か2級の整備士、電子制御装置整備では1級の整備士か、2級などの整備士で講習を修了した人で、ほかの事業場と兼ねられません。
認証工場の中から選ばれるのが「指定工場」で、民間車検場とも呼ばれます。地方運輸局長は、設備・技術・管理の体制や検査の設備が基準に合い、自動車検査員を選んで検査させる事業場を、申請によって指定自動車整備事業に指定することができます(第94条の2)。どちらも申請によりますが、認証は基準を満たせば国が認証しなければならず、指定は国が指定することができる、という違いがあります。
指定を受けた事業者は、事業場ごとに自動車検査員を選ばなければなりません(第94条の4)。点検・整備をして、検査員が保安基準に合うと証明したときは、求めに応じて保安基準適合証を交付しなければなりません(第94条の5第1項)。継続検査でこの適合証を出すと、車を見せて基準に合ったものとみなされます(同第8項)。指定工場で車検を受けると、車を運輸支局などへ持ち込まなくてよいのは、この規定によります。違反があれば、地方運輸局長は適合証の交付の停止を命じたり、指定を取り消したりできます(第94条の8)。
指定工場は、自賠責保険の証明書を見せられなければ保安基準適合証を交付してはなりません(自賠法第9条)。整備工場に車検を頼んだときの支払いに、整備の料金とは別に自賠責保険の保険料などが入ることがあるのは、このためです。
整備の事業に要る認証と、車検を受けられる指定工場
オイル交換など、施行規則第3条の作業に当たらない整備は特定整備ではない
義務事業の種類(普通・小型・軽)と事業場ごとに地方運輸局長の認証を受ける(第78条)
国の義務申請が基準を満たせば、国は認証しなければならない(第79条・第80条)
特定整備=分解整備(原動機・ブレーキなどを取り外す)+電子制御装置整備(自動ブレーキのセンサーなどの取り外し・調整)
基準:特定整備の従業員2人以上。分解整備をする事業場は1級か2級の整備士1人以上、1〜3級の整備士が従業員の4分の1以上など。事業場ごとに整備主任者を選ぶ
令和7年度末 92,261
できる認証工場の中から、申請により地方運輸局長が指定できる(第94条の2)
義務事業場ごとに自動車検査員を選ぶ(第94条の4)
検査員が適合を証明すると、保安基準適合証を交付(第94条の5)
令和7年度末 29,788(認証工場の内数)
条番号は道路運送車両法(施行規則と明記したものを除く)。「義務」は事業者に、「国の義務」は国に、法令が「しなければならない」と定めるもの、「できる」は国が申請を受けて判断するもの。工場の数は国交省の令和7年度末(2026年3月末)の値。
数で見ると、国交省の令和7年度の統計では、令和7年度末(2026年3月末)の認証工場が9万2,261、指定工場が2万9,788でした。指定工場は認証工場の中から指定されるので、2つは足しません。選ばれている整備主任者は22万1,887人、自動車検査員は約10万人です。どちらも選任されている人の数で、資格を持つ人の総数ではありません。この認証工場の数は年度末の値で、日整連の9万2,251(2025年6月末)とは時点が違います。
何で稼ぐか:車検・定期点検・事故・その他の整備
整備の売上は、作業の料金(工賃)と、交換した部品の代金から成ります。日整連が公表している概要では、工賃と部品の割合は示されていませんが、作業の内容ごとの売上が分かります。総整備売上高6兆6,592億円のうち、車検整備が2兆7,037億円、定期点検整備が4,928億円、事故整備が1兆2,253億円、その他の整備が2兆2,374億円でした。構成比にすると、車検整備40.6%、定期点検整備7.4%、事故整備18.4%、その他33.6%です(計算値)。
整備の売上は、どんな作業から生まれているか
- 車検整備
- 定期点検整備(全体7.4%・ディーラー10.9%・専業4.3%)
- 事故整備
- その他整備
全体の金額:車検整備2兆7,037億円、定期点検整備4,928億円、事故整備1兆2,253億円、その他2兆2,374億円(合計6兆6,592億円)。構成比は金額から本記事で計算。事故整備は修理の売上で、保険金の額ではない。工賃と部品の割合は、日整連の概要には示されていない。
棒は0円から7兆円までの長さ。各年の調査の売上は、その年の6月30日までの1年間に決算期を迎えた実績(令和7年度の調査は主に2024年度)。抽出調査からの推計。
業態で比べると、売上の中身に違いがあります。ディーラーは車検整備35.6%、定期点検整備10.9%、事故整備18.1%、その他35.4%です。専業は車検整備44.9%、定期点検整備4.3%、事故整備18.9%、その他31.9%でした(いずれも計算値)。専業は車検の比重が大きく、ディーラーは定期点検の比重が専業より大きい形です。
総整備売上高は、令和7年度の調査で前の年度より6.4%増え、4年続けて増えました。作業の内容別では、車検整備が6.4%、定期点検整備が7.9%、事故整備が9.4%、その他が4.6%増えています。
料金の示し方には、国のルールがあります。施行規則第62条の2の2は、自動車特定整備事業者が守る事項として、次のことを定めています。
- 定期点検などを行う事業場は、作業の料金を事業場の見やすい場所に掲示し、自社が管理するウェブサイトにも載せる(常に使う従業員が5人以下の事業場や、ウェブサイトがない場合は、サイトへの掲載は除く)
- 依頼者に、必要な整備の内容と必要性を説明し、料金の概算見積りを書面(または電子の記録)で渡す
- 行っていない点検・整備の料金を請求したり、頼まれていない整備を不当に行って請求したりしない
この規定により、必要な整備の説明と概算見積りの交付は、整備事業者の正式な業務工程に組み込まれています。
事故の修理(事故整備)の売上は、修理の代金で、保険金の額ではありません。事故の修理では損害保険会社が修理費を払うことがあり、整備工場やディーラーが損害保険の代理店を兼ねることもあります。代理店のルールや保険金の仕組みは「保険の業界地図|生命保険・損害保険・代理店は、保険料をどう受け取り、リスクをどう引き受けるのか」で扱います。
部品の面では、整備工場は補修部品を仕入れて、修理で使う側です。部品メーカーが補修用にどれだけ出荷しているかは「自動車部品の業界地図」で扱います。リース車の点検を誰が手配するかは契約によって違い、リースの仕組みは「リースの業界地図|リース会社は設備の購入資金をどう賄い、銀行系・商社系・メーカー系で何が違うのか」で扱います。
整備工場が使う補修部品をメーカーの側から見るには、自動車部品の業界地図で確かめられます。
会社の例:カー用品店・ディーラーを持つ会社・車検チェーン
上場会社の開示から、整備の事業がどう表れるかを見ます。開示の範囲と定義が会社ごとに違うため、会社どうしの数字は比べません。
オートバックスセブンは、カー用品店のチェーンを本部として運営し、加盟する会社の店舗も含めて、カー用品の販売と並んで車検・整備や板金・塗装を行う会社です。2026年3月期の決算短信(日本基準)によると、加盟店を含む国内のオートバックスのチェーン全体で、車検の実施台数が約68万2千台(前期比1.7%増)、車検・整備の売上高が257億84百万円(6.0%増)でした。チェーン全体の値で、会社の連結売上の内訳でも、整備業全体の大きさでもありません。会社は、平均の車齢が上がって車のメンテナンスの需要が増えていることや、先進運転支援システム(ADAS)の搭載で整備に求められる専門性が高まっていることを挙げています。
イエローハットは、カー用品店を運営し、取付・整備の作業と車検も行う会社です。2026年3月期の決算短信(日本基準)では、期末の店舗数は、カー用品店のイエローハット765店舗と、二輪・自転車の店を合わせて936店舗で、ほかに車検センターが10店舗あります。車検・整備の売上の金額は開示されていません。会社は、工賃の収入が増えたことを増収の理由の一つに挙げ、ウェブでの作業予約の件数が前の年の157%になったと書いています。対処すべき課題として、オイルやタイヤの交換・取付と車検を強めるため、整備士と検査員の育成に力を入れるとしています。
両社とも、2025年4月の規則の改正で、有効期間を減らさずに車検を受けられる期間(会社の言う「受検可能期間」)が広がったことを、お客への告知に使ったと書いています。イエローハットは、満了の1か月前からだったものが2か月前からになったと説明しています。
VTホールディングスは、日産やホンダなどの販売会社(ディーラー)を子会社に持つ持株会社です。2026年3月期の決算説明資料(IFRS)では、新車・中古車などと並ぶ「サービス」部門の売上収益が590億7百万円(前期は517億79百万円)でした。これは説明資料の部門の区分で、決算の報告セグメントではありません。資料は、サービス部門に整備・車検のほかに何が含まれるかの内訳を示していません。また、子会社が増えた分も含む値です。そのため、日整連のディーラーの整備売上と同じ物差しとしては読めません。会社は、サービス部門の収益のもとは車の保有台数で、保有台数は増えてきたものの、車を長く持つ人が増えるなどして増え方が緩やかになっていると説明しています。
コバックは、愛知県豊田市に本社を置く非上場の会社で、車検を中心とする自動車整備と、そのフランチャイズの事業を営んでいます。会社概要の事業内容には、自動車整備、フランチャイズ、鈑金塗装、損害保険、飲食が並びます。車検のチェーンには、仕組みを提供する本部と、各地で整備を行う加盟店があります。
ディーラーの整備は、会社ごとの開示ではまとまった姿が分かりにくいため、この記事では日整連の業態別の数字で見ています。
整備士の仕事と待遇の読み方
自動車整備士は、国土交通大臣が行う技能検定に合格した人です(道路運送車両法第55条)。自動車整備士技能検定規則は、整備士の種類を14と定めています(第2条)。
- 1級:大型自動車、小型自動車、二輪自動車
- 2級:ガソリン自動車、ジーゼル自動車、自動車シャシ、二輪自動車
- 3級:自動車シャシ、自動車ガソリン・エンジン、自動車ジーゼル・エンジン、二輪自動車
- 特殊:自動車タイヤ、自動車電気装置、自動車車体
板金・塗装の仕事には、特殊の「自動車車体整備士」があります。国が指定した養成施設を修了した人は、試験の全部または一部が免除されることがあります(第55条第3項)。
整備士の資格がないと整備の仕事ができない、という決まりはありません。資格が必要になるのは、認証の基準(分解整備をする事業場の場合、1級か2級の整備士が1人以上、1〜3級の整備士が従業員の4分の1以上)と、整備主任者の要件を満たすためです。指定工場では、要件を満たす人から自動車検査員が選ばれます。求人で「2級整備士」「検査員」が求められるのは、こうした制度上の役割を担う人が要ることが、理由の一つです。
会社の採用ページにも、仕事の分け方が表れます。オートバックスグループの採用ページは、店舗で働く正社員の例に、フロアスタッフ、ピットスタッフ、自動車検査員、車買取・販売スタッフを挙げ、自動車整備士の採用サイトを別に設けています。コバックユナイテッドグループ(愛知県の三河地区)の採用ページには、自動車整備士、鈑金・塗装、保険販売、自動車販売、外食、コンサルタントの職種があり、コンサルタントは加盟店を支える仕事として紹介されています。
働く人の数は、日整連の調査(2025年6月末)で整備要員が40万2,367人、そのうち整備士の資格を持つ人が33万3,475人(82.9%)です。1事業場あたりの整備要員は4.36人でした。女性は整備要員の4.8%、整備士の3.2%です。
整備の働き手の数と、業態ごとの年齢・年収・1人あたり売上
2025年6月30日の調査。年収と売上は主に2024年度。整備要員には整備士の資格を持たない人も含む。平均年齢がディーラーと専業で約15歳違い、扱う車・作業・事業場の人数も違うため、年収や1人あたり売上の差を待遇や能力の優劣として読まない。抽出調査からの推計。
業態ごとの数字は、条件の違いを添えて読みます。整備要員の平均年齢(自家を除く)は47.7歳で、ディーラーが37.9歳、兼業が49.0歳、専業が53.0歳でした。平均年収(給与・各種手当・賞与、自家を除く)は442万8,900円で、ディーラーが535万1,200円、兼業が420万3,800円、専業が395万7,200円です。専業と兼業を合わせた値は401万5,200円で、日整連は初めて400万円を超えたとしています。
ディーラーと専業では平均年齢が15歳ほど違います。年収の平均は、年齢の構成、扱う車、事業場の人数が違う集団どうしの値で、同じ条件で働いたときの差ではありません。整備要員には整備士の資格を持たない人も含まれます。
整備要員1人あたりの年間の整備売上高(自家を除く)は1,659万5千円で、ディーラーが2,564万1千円、専業と兼業を合わせて1,253万7千円でした。扱う車や作業、部品の構成が違うので、この差を働く人の能力の差として読むことはできません。
これからの変化:電子制御装置・OBD検査・人手の確保
車の電子化は、整備の仕事を変えています。自動ブレーキなどのセンサーやカメラの取り外しや調整は、令和2年4月から電子制御装置整備として特定整備に入りました。認証の基準は、エーミングの機器や型式ごとの技術情報を手に入れられる体制を求め、施行規則の遵守事項も、エーミングが適切に行われるようにすることを事業者に求めています。
車検にも、電子装置の検査が加わりました。国交省の説明によると、OBD検査は令和6年10月1日以降の車検で行われています(輸入車は令和7年10月1日以降)。対象は、令和3年10月1日以降の新型車(フルモデルチェンジされた車など。輸入車は令和4年10月1日以降)に限られ、すべての車が対象ではありません。検査用のスキャンツールを車の端子につなぎ、故障にあたる情報(特定DTC)がないかを確かめます。不合格なら修理しないと車検に通らず、修理は認証を受けた整備工場で行う必要があると、国交省は利用者向けに説明しています。国交省は2025年9月、運用の状況を確かめる会合を開くと発表しました。
働く人の確保は、国も課題に挙げています。国交省の2023年3月の資料は、自動車整備業の有効求人倍率が令和3年に4.55で、全国で上がる傾向にあるとし、整備の仕事についていない整備士の資格保有者を約54.8万人と推計しています。2024年3月の資料は、整備の専門学校の入学者が過去18年で約47%減ったこと、整備士資格の試験の受験者が2004年をピークに減っていること、国交省の算出で整備の仕事は全職種と比べて労働時間が長く、所得が約1割低いこと(差は近年小さくなっている)を示しています。
最近の数字では、厚生労働省の一般職業紹介状況で、令和8年9月の「機械整備・修理従事者」の有効求人倍率が3.90倍(常用、パートを含む、実数)、職業計が1.08倍でした。この分類は車以外の機械の整備も含み、ハローワークを通した求人と求職だけの数字です。国交省の4.55倍とは分類と年が違うので、並べて比べません。
人を確保する方法として、国交省の資料は、募集・定着・育成の3つを柱に挙げています。外国人材では、技能実習(平成28年4月から)、特定技能1号(令和元年9月から)に加え、令和5年6月に特定技能2号に自動車整備を加えることが決まりました。資料は、若い人への広報、働きやすい職場のガイドライン、短い時間の勤務や週休三日などの働き方を経営者に示すことも対策に挙げています。
求人を見比べるときの確認点
整備の求人を比べるときは、次の点を確かめると、仕事の範囲と身につく力が分かりやすくなります。
- 認証工場か指定工場か:指定工場なら、車検の検査まで自社の事業場で行い、自動車検査員の仕事がある
- 電子制御装置整備の認証と機器:エーミングの機器や型式ごとの技術情報を使う仕事があるか
- 扱う車:特定のメーカーの車が中心か、さまざまなメーカーの車か。普通・小型・軽のどの種類か。大型車を扱うか
- 仕事の中身:車検・定期点検・事故の修理(板金・塗装)・その他の修理のどれが多いか
- 資格の支援:2級から1級、整備主任者や自動車検査員への道を会社がどう支えるか。講習や試験の費用を誰が負担するか
- 事業場の人数:2〜3人の工場か、10人前後の工場か。1人が受け持つ作業の幅が変わる
- 料金と説明の運用:料金の掲示や概算見積りの説明を、誰がどう担っているか(受付の担当がいるか)



