作物・畜産物・魚・木が食卓や住まいに届くまでを、育てる・獲る(生産)、素材にする、食品・飲料にする、卸・小売・外食で届けるの4つの段階で一枚の地図に整理します。段階ごとに違う大きさの物差し(国内生産額・産出額・出荷額・家計の支出)、農地・漁業・森林を使って生産するときの許可と届出、食品や酒類・たばこを作って売るときの許可・届出・表示・免許、段階ごとの稼ぎ方、担い手の減少と法人化、原料高と人手の変化が、各段階の仕事にどう影響するかを確かめられる内容です。

「食品」「農業」「水産」と書かれた求人には、畑や牛舎・漁船・山で働く仕事、小麦粉や油などの素材を作る工場の仕事、加工食品や飲料を作って売る仕事、それを店や飲食店に届ける仕事まで幅があります。同じ「食べもの」を扱っていても、どの段階を担う会社に入るかで、仕事の相手も、稼ぎ方も、守るルールも変わります。

この分野の特徴は、段階によって大きさの測り方と、守る法律が違うことです。農業や漁業は「産出額」、食品メーカーは「出荷額」、分野全体は「国内生産額」という物差しで数えられ、それぞれ定義も時点も違います。生産の段階では農地・漁場・森林を使うルールが、作って売る段階では衛生と表示のルールが中心になります。この記事では、まず段階と品物の流れで担い手の位置を地図にし、次に物差しの違い、始めるのに要る許可・届出・免許、稼ぎ方、担い手と費用の変化を順に見ます。

扱う範囲は、農業・畜産・水産・林業の生産から、素材にする段階、食品・飲料を作る段階までの全体像です。加工食品の品目や会社の違いは「食品メーカーの業界地図」、清涼飲料・酒類は「飲料・酒類メーカーの業界地図」、農業法人と種苗・資材は「農業の業界地図」、牛・豚・鶏の生産と飼料は「畜産・飼料の業界地図」、漁業・養殖は「水産・養殖の業界地図」、小麦粉・砂糖・植物油は「食品素材の業界地図」、森林と製材は「林業・木材の業界地図」で扱います。

届ける段階は、メーカーと店の間をつなぐ卸を「食品卸の業界地図」、商社の取引の全体を「商社・卸売の業界地図」、スーパーを「食品スーパーの業界地図」、飲食店を「外食の業界地図」、社員食堂や病院の給食を「給食の業界地図」、冷蔵・冷凍の倉庫を「倉庫業の業界地図」で扱います。この記事は、次にどの地図を読むかを決めるための全体図です。

生産・素材・食品と飲料・届けるの4段で並べる

食べものと木材は、4つの段階を通って使う人に届きます。畑・牛舎・海・山で「育てる・獲る」、小麦を粉に、魚や肉を切り身に、丸太を板にする「素材にする」、素材を組み合わせて加工食品や飲料を「作る」、卸・小売・外食で「届ける」の4つです。段階は上下の格付けではなく、会社の大きさも表しません。1つの会社が複数の段階を持つこともあります。

原料を調達して食品を製造・販売する側は、食品メーカーの地図で品目や売り先ごとに確認できます。 食品メーカー業界の地図

食品を消費者に売る側は、スーパーの売場・加工・仕入れ・物流の役割から確認できます。 食品スーパー業界の地図

作物・畜産物・魚・木は、誰の手を通って食卓や住まいに届くのか

行は品物、列は段階。各マスに主な担い手と、詳しく読む地図を置いた。段階は格付けではなく、会社の大きさも表していない。1つの会社が複数の段階を持つこともある。

育てる・獲る
素材にする
食品・飲料にする
卸・小売・外食で届ける
作物
育てる・獲る農家・農業法人農業の業界地図
素材にする精米・製粉・製糖・製油の工場食品素材の業界地図
食品・飲料にする加工食品・調味料・菓子・飲料・酒類のメーカー食品メーカー/飲料・酒類メーカーの業界地図
届ける食品卸、スーパー、外食、給食食品卸・食品スーパー・外食・給食の業界地図
畜産物
育てる・獲る牛・豚・鶏の生産者(餌は飼料メーカーから)畜産・飼料の業界地図
素材にする食肉の処理・加工場、乳業食品メーカーの業界地図
食品・飲料にするハム・乳製品・冷凍食品などのメーカー食品メーカーの業界地図
届ける食品卸、スーパー、外食食品卸・食品スーパー・外食の業界地図
水産物
育てる・獲る漁業者、養殖会社水産・養殖の業界地図
素材にする市場、水産の加工場食品メーカーの業界地図(市場は水産・養殖の業界地図)
食品・飲料にする缶詰・練り製品・冷凍水産物のメーカー食品メーカーの業界地図
届ける食品卸、スーパー、外食食品卸・食品スーパー・外食の業界地図
木材
育てる・獲る森林組合・林業会社(きのこの栽培も林業)林業・木材の業界地図
素材にする・使う製材工場で板や柱にして、住まいなどに使う。食品の流れには入らない林業・木材の業界地図
出典:経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」の産業分類、林野庁「令和7年度 森林・林業白書」をもとに編集部作成。冷蔵・冷凍の保管は「倉庫業の業界地図」、商社の取引は「商社・卸売の業界地図」で扱う。

作物は、農家や農業法人が育て、米は精米、小麦は製粉の工場で素材になります。経済構造実態調査では、精穀・製粉業の出荷額等は2024年で1兆9,526億円、砂糖・でんぷん糖類製造業は6,045億円、動植物油脂製造業は1兆3,462億円です(経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」第1表)。素材の会社の稼ぎ方は「食品素材の業界地図」で扱います。

畜産物は、牛・豚・鶏を育てる生産者から、食肉を部分肉・冷凍肉にしたり、乳製品・ハム・ソーセージなどを作ったりする畜産食料品の工場へ進みます。生産者は「畜産・飼料の業界地図」、畜産食料品の工場は「食品メーカーの業界地図」で扱います。家畜の餌を作る飼料と有機質肥料の製造業の出荷額等は、2024年で2兆1,293億円です(同調査)。飼料と生産者の費用の関係も「畜産・飼料の業界地図」で扱います。

水産物は、海や川で獲る漁業と、魚や貝を育てる養殖業から、市場を通って、水産食料品の工場(缶詰・練り製品・冷凍水産物など)へ進みます。漁業者・養殖会社・水産会社の違いは「水産・養殖の業界地図」、水産食料品の工場は「食品メーカーの業界地図」で扱います。

木材は食品ではありませんが、同じ「農林水産」の分類に入ります。森林を育てて伐る林業から、製材工場で板や柱になり、住まいに使われます。林業では、木材のほかにきのこの栽培も産出額に入ります。担い手の違いは「林業・木材の業界地図」で扱います。

1つの会社が複数の段階を持つ例として、Umiosは、漁業・養殖を含む「水産資源」、水産物の調達・市場流通などの「食材流通」、冷凍食品・缶詰などの「加工食品」の3つに事業を分けて開示しています(Umios 2026年3月期 決算短信)。会社ごとの違いは「食品メーカーの業界地図」「水産・養殖の業界地図」で扱います。

大きさは、物差しによって見え方が変わる

食品・農林水産の大きさを表す数字は、いくつもの物差しで出ています。物差しごとに、何を数えるか、いつの数字かが違います。下の図は、物差しごとに値を並べたものです。物差しの違う値は、足すことも割合を出すこともできません。

物差しごとに、段階の大きさはどう見えるか

物差しごとに枠を分けた。棒の長さは同じ枠の中でだけ比べられる。飲料・たばこ・飼料製造業は税にあたる額を含みうるため、棒にせず値だけを示した。枠をまたいで足したり、比べたりはできない。値は兆円で、億円単位の原数値を小数第1位(林業は第2位)に丸めた。

出典:農林水産省「令和6年 農業・食料関連産業の経済計算(概算)」、同「令和6年 生産農業所得統計」、同「令和6年 漁業産出額(確報)」、林野庁「令和7年度 森林・林業白書」、経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」。棒の長さは各枠の最大値を100とした計算値。

1つ目の物差しは、農林水産省の「農業・食料関連産業の経済計算」の国内生産額です。2024年の概算で、農業・食料関連産業の全体が120兆7,013億円、そのうち食品製造業が43兆6,635億円、関連流通業が38兆7,299億円、外食産業が19兆905億円、農林漁業が13兆9,269億円です(令和6年 農業・食料関連産業の経済計算(概算))。国内生産額は売上の合計に近い数字で、農家が売った小麦を製粉会社が買い、その粉を食品メーカーが買うと、同じ小麦が段階ごとに数えられます。利益でも、付加価値でもありません。付加価値で数えた国内総生産は、2024年の概算で、農業・食料関連産業が59兆9,689億円、食品製造業が15兆922億円です。

食品を製造して売る事業と、店で調理して提供する外食では、採算を左右する費用や仕事が異なります。 外食業界の地図

この経済計算の「林業」は、きのこなどの特用林産物だけを数えた値で、木材の生産は入りません。林業全体の大きさを見るときは、次の産出額を使います。

2つ目の物差しは、生産段階の産出額です。2024年の農業総産出額は10兆7,801億円で、米が2兆5,524億円、野菜が2兆5,510億円、果実が1兆112億円、畜産が3兆6,654億円です(令和6年 生産農業所得統計)。農業総産出額は、品目ごとの生産量に農家の庭先での価格を掛けた値で、経済計算の「農業」の値とは定義が違います。2023年の9兆4,878億円より増えましたが、量と価格のどちらの変化によるかは、この表では分かれていません。2024年の漁業産出額は1兆6,055億円で、海面の漁業が8,915億円、海面の養殖業が5,891億円です(令和6年 漁業産出額(確報))。漁業産出額は2026年3月に過去の年の値が改定されたため、古い資料の値と並べるときは注意が要ります。2024年の林業産出額は5,713億円で、木材生産が3,276億円、栽培きのこ類が2,323億円です(林野庁「令和7年度 森林・林業白書」第2章第1節)。林業産出額は前年より2.9%増え、林野庁は、栽培きのこ類の価格の上昇や燃料用のチップ素材の生産の増加などを理由に挙げています。

3つ目の物差しは、製造業の出荷額等と従業者数です。食料品製造業は、2025年6月1日時点で事業所が23,820、従業者が111万7,773人、2024年の製造品出荷額等が35兆107億円です。飲料・たばこ・飼料製造業は、事業所が5,002、従業者が10万5,951人、出荷額等が10兆7,596億円です(経済構造実態調査)。この調査は個人経営を含まず、人数と金額で時点が違います。酒類とたばこの出荷額には税にあたる額が含まれることがあるため、ほかの品目と大きさを比べません。

従業者は、調査の日にその事業所で働いている人の数です。期間を決めずに雇われている人と1か月以上の期間で雇われている人は、臨時社員などの呼び名にかかわらず入ります。役員や、ほかの会社から出向・派遣で受け入れた人も入ります。1か月未満の期間や日々雇われている人は入りません。勤務時間の長さは区別しない頭数です(経済構造実態調査「用語の解説」、2024年調査の定義を広島県が掲載)。

冷凍食品のように、品目ごとの業界団体が出す物差しもあります。業界団体の工場出荷額は、経済構造実態調査の出荷額等とは対象も定義も年も違うため、並べて比べません。冷凍食品の数字は「食品メーカーの業界地図」で扱います。

4つ目の物差しは、家計の支出です。総務省の家計調査では、2025年の二人以上の世帯の「食料」への支出は1か月平均9万4,895円で、消費支出に占める割合(エンゲル係数)は28.6%です。そのうち外食は1万6,563円、調理食品(弁当・惣菜など)は1万3,580円です(家計調査報告 2025年平均結果の概要)。家庭が食品をどこで買い、どれだけ外で食べるかを見る物差しで、会社の売上の合計ではありません。

食料自給率も、物差しによって値が変わります。令和7年度の概算で、供給熱量(カロリー)で測ると37%、生産額で測ると66%です(令和7年度 食料需給表(概算))。どちらの物差しでも、輸入した飼料で育てた分は国産に数えません。熱量で測る方法は食べものの熱量で、生産額で測る方法は金額で重みをつけるため、同じ年でも値が違います。熱量の37%と生産額の66%は、どちらが正しいというものではなく、何で重みをつけたかの違いです。

求人や会社案内で「食品業界は○兆円」という数字を見たら、どの物差しか、どの段階の数字か、いつの数字かを確かめます。

生産を始めるには、農地・漁場・森林のルールがある

生産の段階では、土地や海を使うための許可・免許と、届出のルールが分野ごとに決まっています。下の図は、主な法律と、誰の許可か、届出かを並べたものです。

農地・漁場・森林・品種を使って生産するのに、誰の許可か、届出か

分野ごとに、何をするときに、誰の許可・免許が要るか、届出で足りるかを並べた。許可・届出は、受けずに(出さずに)始めてはならない手続き。漁業の免許は、申請して受けた者が漁業権を得る手続き。種苗法の制限の届出は、育成者が選べる「できる」規定。

分野何をするとき手続きと相手詳しく読む地図
農業農地を買う・借りるなど、権利を動かす許可当事者が農業委員会の許可を受ける(例外あり)農地法 第3条第1項農業の業界地図
農業登録品種を業として利用する/新しい品種を登録する業として利用する権利は育成者権者が専有。育成者は出願時に、輸出・栽培地域の制限を届出できる種苗法 第20条第1項・第21条の2第1項農業の業界地図
漁業船で行う漁業(省令で定めるもの)許可船ごとに農林水産大臣漁業法 第36条水産・養殖の業界地図
漁業それ以外の漁業(省令・規則で定めるもの)許可都道府県知事漁業法 第57条水産・養殖の業界地図
漁業・養殖定置・区画(海や湖などでの養殖など)・共同の漁業権の漁業免許都道府県知事漁業法 第60条・第69条水産・養殖の業界地図
林業民有林で政令の規模を超える開発をする許可都道府県知事森林法 第10条の2第1項林業・木材の業界地図
林業同じ民有林(保安林などを除く)の立木を伐採する届出あらかじめ市町村長へ(例外あり)森林法 第10条の8第1項林業・木材の業界地図
出典:農地法、種苗法、漁業法、森林法(e-Gov法令検索)。民有林は地域森林計画の対象のもの(保安林などを除く)。

農地:農地法では、農地を買う、借りるなど権利を動かすときは、原則として当事者が農業委員会の許可を受けなければなりません(第3条第1項。例外あり)。農業法人が農地を持つための要件は「農業の業界地図」で扱います。

種苗:種苗法では、品種登録を受けた品種を業として利用する権利は、育成者権者が専有します(第20条第1項)。育成者は、品種登録の出願と同時に、指定した国以外への種苗の輸出や、指定した地域以外での栽培を制限する旨を届け出ることができます(第21条の2第1項)。これは届け出る義務ではなく、育成者が選べる仕組みです。

漁業:漁業法では、船で行う漁業のうち省令で定めるものは船ごとに農林水産大臣の許可(第36条)、それ以外で省令や規則で定めるものは都道府県知事の許可(第57条)が要ります。漁業権には定置・区画・共同の3種類があり(第60条)、海や湖などの一定の区域で行う養殖業は区画漁業にあたります。漁業権の免許は都道府県知事が出します(第69条)。養殖の始め方は「水産・養殖の業界地図」で扱います。

森林:森林法では、地域森林計画の対象の民有林で、政令で定める規模を超える開発をするときは都道府県知事の許可が要ります(第10条の2第1項)。同じ地域森林計画の対象の民有林(保安林などを除く)で立木を伐採するときは、あらかじめ市町村長に伐採と伐採後の造林の届出を出します(第10条の8第1項。例外あり)。この範囲の伐採は、許可ではなく届出です。保安林などは別のルールです。

許可は、国や自治体が審査して認めるまで始められない手続きです。届出は、決められた事項を先に知らせれば始められる手続きです。漁業の免許は、都道府県知事に申請して受けた者が、その漁業権を取得する手続きです。求人票で「漁業権」「農地」などの言葉を見たら、会社がどの手続きで生産しているかの目安になります。

作って売るときのルール:営業によっては許可、表示の義務、酒類の製造免許

食品・飲料を作って売る段階には、法律で決まった許可・届出・免許と、守る義務があります。食品衛生法の営業許可は、政令で定める営業が対象で、すべての食品の営業に要るわけではありません。下の図は、主な法律と、それが求めることを並べたものです。

食品・飲料・たばこを作って売るのに、どの法律の何が要るか

始めるための許可・届出・免許と、続ける間に守る義務を分けた。食品の営業と表示の行の「続ける間に守ること」は法律上の義務で、努力義務ではない。営業許可は政令で定める営業だけが対象。

対象始めるために要るもの続ける間に守ること
食品の製造・販売の営業3つに分かれる。政令で定める営業は都道府県知事の許可。それ以外の多くは都道府県知事への届出。影響が少ない営業として政令で定めるものはどちらも不要食品衛生法 第55条第1項・第57条第1項衛生管理の基準に従って措置を定め、守る。基準にはHACCPに沿った衛生管理が入る。小規模な営業者などは食品の特性に応じた取組。2021年6月1日から原則すべての食品等事業者が対象(厚生労働省)食品衛生法 第51条
食品の表示―食品表示基準に従った表示がない食品を販売しない。表示の事項は名称・アレルゲン・保存の方法・消費期限・原材料・添加物・栄養成分の量と熱量・原産地など。袋や箱に入れて一般向けに売る国内の加工食品は、重量の割合が最も高い原材料の原産地を表示食品表示法 第4条第1項・第5条、食品表示基準 第3条第2項
酒類の製造品目別・製造場ごとに税務署長の製造免許。1年間の製造見込みが最低製造数量(清酒60kL、ビール60kL、ウイスキー6kLなど)に達しないと原則受けられない酒税法 第7条第1項・第2項酒税の納付などは「飲料・酒類メーカーの業界地図」で扱う
たばこの製造製造たばこを作れるのは「会社」=日本たばこ産業(JT)だけたばこ事業法 第3条・第8条「飲料・酒類メーカーの業界地図」で扱う
出典:食品衛生法、食品表示法、食品表示基準、酒税法、たばこ事業法(e-Gov法令検索)、厚生労働省「HACCP(ハサップ)」。生産の段階のルールは前の図。

営業の許可と届出:食品衛生法では、食品の営業は3つに分かれます。公衆衛生への影響が大きい営業として政令で定めるものは、都道府県知事の許可が要ります(第55条第1項)。それ以外の多くの営業は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければなりません(第57条第1項)。影響が少ない営業として政令で定めるものは、どちらも要りません。どの業種がどれに入るかは政令で決まります。

衛生管理:同じ法律で、厚生労働大臣が衛生管理の基準を定めます。基準には、一般的な衛生管理と、危害の発生を防ぐために特に重要な工程を管理する取組(HACCPに沿った衛生管理)があります。営業者は、基準に従って必要な措置を定め、守らなければなりません(第51条第2項)。これは義務です。小規模な営業者などは、扱う食品の特性に応じた取組とされています(第51条第1項)。厚生労働省は、2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになったと案内しています(厚生労働省「HACCP(ハサップ)」)。

表示:食品表示法では、国が食品表示基準を定め、名称・アレルゲン・保存の方法・消費期限・原材料・添加物・栄養成分の量と熱量・原産地などを表示の事項にしています(第4条第1項)。食品関連事業者などは、基準に従った表示がない食品を販売してはなりません(第5条)。食品表示基準では、袋や箱に入れて一般向けに売る加工食品(輸入品を除く)は、使った原材料のうち重量の割合が最も高いものの原産地を表示します(第3条第2項)。原料を国内と海外のどちらから買うかが、表示の仕事にも関わります。

酒類:酒税法では、酒類を製造しようとする者は、品目別・製造場ごとに、税務署長の製造免許を受けなければなりません(第7条第1項)。免許後1年間の製造見込みの量が、品目ごとの最低製造数量(清酒60kL、ビール60kL、ウイスキー6kLなど)に達しない場合は、原則として免許を受けられません(第7条第2項)。

たばこ:たばこ事業法では、製造たばこは「会社」でなければ製造してはならないとされ(第8条)、この「会社」は日本たばこ産業株式会社です(第3条)。製造たばこを作れるのは、法律上、日本たばこ産業(JT)だけです。飲料・酒類・たばこの会社は「飲料・酒類メーカーの業界地図」で扱います。

稼ぎ方は、段階によって違う

4つの段階では、収入の決まり方が違います。

段階主な担い手収入の決まり方次に読む地図
育てる・獲る農家・農業法人、畜産の生産者、漁業者・養殖会社、森林組合・林業会社作った量と、売るときの価格農業、畜産・飼料、水産・養殖、林業・木材
素材にする製粉・製糖・製油・飼料・製材の会社、食肉・乳・水産の加工場原料の仕入れ値と製品の価格の差、工場の稼働食品素材、畜産・飼料(飼料)、林業・木材、食品メーカー(食肉・乳・水産の加工)
食品・飲料にする加工食品・調味料・冷凍食品・飲料・酒類のメーカー商品の価格と、家庭用・業務用などの販路食品メーカー、飲料・酒類メーカー
届ける食品卸、スーパー、外食、給食仕入れ値と売り値の差、店や契約の運営食品卸、食品スーパー、外食、給食

生産の段階では、作った量と価格で収入が決まり、そこから費用を引いた分が手元に残ります。2024年の生産農業所得は3兆9,649億円で、農業総産出額に占める割合は36.8%です(生産農業所得統計)。2024年の生産漁業所得は7,208億円です(漁業産出額)。

素材の段階では、原料を仕入れて加工し、製品として売ります。原料の価格と製品の価格の差、そして大きな工場をどれだけ動かせるかが利益に効きます。小麦粉・砂糖・植物油の価格の決まり方は「食品素材の業界地図」で扱います。

食品・飲料の段階では、ブランドの商品をスーパーなどで家庭向けに売る販路と、外食や中食(惣菜・弁当)向けに業務用として売る販路があります。スーパーが自分の名前で売る商品(プライベートブランド、PB)を作って納めることもあります。家計の外食と調理食品への支出は、家庭が外食と惣菜・弁当にどれだけ使っているかの目安で、業務用の売上の大きさではありません。会社ごとの販路と稼ぎ方は「食品メーカーの業界地図」で扱います。

届ける段階では、仕入れて売る差額と、店や物流の運営が収入の中心です。卸のリベートや物流は「食品卸の業界地図」、店の運営は「食品スーパーの業界地図」「外食の業界地図」で扱います。

生産の担い手は減り、法人と大きな経営体の比重が増えている

生産の段階では、担い手の数が5年ごとの調査で変わっています。下の図は、農林業センサスと漁業センサスの概数値で、5年前と比べた増減を並べたものです。

生産の担い手は、5年前と比べてどう変わったか

農林業センサス(2025年調査の概数)と漁業センサス(2023年調査の概数)の値。調査の年が違うため、分野どうしの増減は比べない。増減の理由は示していない。

農業・林業(2025年2月1日、5年前比)

  • 農業経営体82万8千(23.0%減)
  • うち法人経営体3万3千(7.9%増)
  • 個人経営体の基幹的農業従事者102万1千人(25.1%減)
  • 経営耕地面積20ha以上の経営体が持つ面積の割合51.0%(6.7ポイント上昇、初めて5割超)
  • 林業経営体2万3千(32.9%減)

漁業(2023年、5年前比)

  • 海面漁業の経営体6万5,652(17.0%減)
  • うち会社3.8%増

概数値(2023年調査の概数)。

出典:農林水産省「2025年農林業センサス結果の概要(概数値)」、同「2023年漁業センサス結果の概要(概数値)」の公表について。

2025年農林業センサスの概数値(2025年2月1日現在)では、農業経営体は82万8千で、5年前より23.0%減りました。一方、法人経営体は3万3千で7.9%増えています。経営耕地面積が20ha以上の経営体が、経営耕地面積全体の51.0%を占め、5年前より6.7ポイント上がって初めて5割を超えました。個人経営体の基幹的農業従事者(ふだん主に自営農業に従事する人)は102万1千人で、25.1%減りました。林業経営体は2万3千で、32.9%減りました。

2023年漁業センサスの概数値では、海面漁業の経営体は6万5,652で、5年前より17.0%減りました。そのうち会社は3.8%増えています。

経営体の総数は減る一方で、法人や会社の数は増えています。減った理由や法人が増えた理由は、この調査の結果だけでは決められません。求人で「農業法人」「水産会社」の募集を見るときの背景として押さえておきます。法人の経営の中身は「農業の業界地図」「水産・養殖の業界地図」で扱います。

原料高と人手の変化で、作る段階の仕事がどう変わるか

食品を作る段階は、原料とエネルギーの費用が大きい段階です。2024年の食料品製造業では、原材料・燃料・電力の使用額等が22兆803億円で、出荷額等35兆107億円の63.1%(調査の数値からの計算値)です(経済構造実態調査)。原料や燃料・電力の価格が変わると、仕入れ量や生産計画の見直し、営業による販売価格の調整が必要になります。出荷額等は売上に近い数字で、利益ではありません。

主な食品メーカーの値上げ品目数と、その要因は「食品メーカーの業界地図」で扱います。原料の費用は、作る段階の前でも効きます。小麦粉・砂糖・植物油などの素材の段階は「食品素材の業界地図」、家畜の飼料の費用は「畜産・飼料の業界地図」で扱います。原料を国内と海外のどちらから買うかは、前の章で見た原料原産地の表示にも関わります。

人手の面では、食料品製造業の従業者111万7,773人は、製造業の従業者の14.7%(調査の数値からの計算値)です。出荷額等では製造業の9.2%(同)で、出荷額の割合より人の割合が大きい業種です。この人数は頭数で、正社員かどうかや働く時間の長さの違いは表していません。賃金や1人あたりの稼ぎを示す数字ではありません。

外国人材では、在留資格「特定技能」の飲食料品製造業分野で、1号の在留者が2025年12月末の速報値で9万3,393人です(農林水産省「飲食料品製造業における外国人の受入れについて」)。対象の業務や受入れの条件は「食品メーカーの業界地図」で扱います。

求人票では、段階・品物・ルール・稼ぎ方を確かめる

同じ「食品」の求人でも、段階と品物によって、仕事の相手と収入の決まり方が違います。求人票では、次の4点を確かめます。

  • 段階:育てる・獲る、素材にする、食品・飲料にする、届けるのどこか
  • 品物:作物・畜産物・水産物・木材のどれか、加工食品・飲料・酒類のどれか
  • ルール:農地・漁業権・森林の許可や届出、営業の許可や届出、HACCPに沿った衛生管理、表示、酒類の製造免許など、仕事で関わる決まりは何か
  • 稼ぎ方:生産量と価格、原料と製品の価格の差、ブランドと販路、仕入れと売り値の差のどれが効く会社か

大きさの数字を見るときは、物差しと時点を確かめ、違う物差しの数字を足しません。この4点が分かったら、次はその段階の業界地図で、会社ごとの違いと仕事の流れを確かめます。