エアコン・冷蔵庫・洗濯機などの白物家電と、テレビなどのAV機器を作るメーカーを、数字の3つの物差し(業界団体の出荷統計2つと国の生産統計)、会社の型と資本(総合電機の家電部門、海外資本が大株主の上場会社、海外資本の傘下に入った会社、量販店の資本が入る予定の会社)、販路、猛暑・補助金・省エネ法の目標年度で動く需要、海外生産と利益、電気用品安全法・省エネ法・家電リサイクル法の義務で整理します。商品企画・設計開発・生産技術・品質保証・営業・カスタマーサービスの求人を見比べるときの確認点も分かる内容です。

家電メーカーの求人には、新しい製品を考える商品企画、回路や構造やソフトをつくる設計開発、工場の量産を整える生産技術、安全と品質を確かめる品質保証、量販店などに売り込む営業、買った人の修理や問い合わせに応えるカスタマーサービスまで、幅があります。同じ「家電」でも、エアコンと冷蔵庫とテレビでは、売れる時期も、かかる法律も、扱う会社の部門も違います。

この記事でいう家電は、家庭で使う電気製品です。日本電機工業会(JEMA)の統計の区分に合わせ、ルームエアコン・冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・空気清浄機・掃除機・炊飯器・調理家電・理美容家電などを白物家電、テレビ・レコーダー・オーディオ・カメラをAV機器と呼びます。法律の区分ではなく、この記事の区切りです。メーカーの側から、数字の物差し、作り手の型、販路、需要、海外と利益、作った後の責任、仕事の順に見ます。

家電量販店の販売員や店長、店の仕入れ・価格・ポイント・長期保証・配送設置の仕事は「家電量販店の業界地図」で扱います。ビルや店の業務用エアコン、冷凍機、冷蔵ショーケースは「空調・冷凍機器の業界地図」で扱います。スマホ・パソコン・タブレットは「情報通信機器の業界地図」、家電に組み込まれるモーターやセンサーなどは「電子部品・センサーの業界地図」で扱います。

使い終わった家電を集めて処理する事業は「廃棄物処理・リサイクルの業界地図」、カーナビなど車の中の機器は「自動車部品の業界地図」で扱います。この記事では、会社どうしの売上や利益の順位は作りません。

家電の大きさは、3つの物差しで別々に見る

この記事で使う統計には、家電全体の市場の大きさを1つの数字で示すものはありません。団体や国が、品目と段階を変えて別々に数えています。数える範囲が違うので、この記事では3つを足したり比べたりしません。

1つ目は、JEMAの白物家電の国内出荷の金額です。業界団体が参加企業から集める自主統計で、JEMAの月次の統計の注記では、販売会社が出荷した段階(販社出荷ベース)の数字です。ルームエアコンだけは、日本冷凍空調工業会の統計を使っています。JEMAの見通しでは、白物家電機器の国内出荷は、2024年度の実績が2兆5,838億円、2025年度の見込みが2兆6,334億円、2026年度の見通しが2兆6,637億円です。2025年度は見込み、2026年度は見通しで、どちらも実績ではありません。

品目ごとの2026年度の見通しは、ルームエアコンが9,332億円、冷蔵庫が3,801億円、洗濯機が3,718億円、電子レンジが1,016億円、空気清浄機が584億円です。白物家電の中で、ルームエアコンの金額が目立って大きいことが分かります。

2つ目は、電子情報技術産業協会(JEITA)の民生用電子機器の国内出荷で、テレビなどのAV機器はこちらで見ます。2025年の映像機器(テレビなど)の出荷金額は4,885億円(前年比93.2%)でした。薄型テレビは439万9千台(98.1%)で、そのうち60型以上は61万6千台(109.7%)と増え、有機ELは28万9千台(63.6%)と減りました。この統計の「民生機器」にはカーナビなど車の機器も入るため、この記事では映像機器とテレビの値だけを使います。

3つ目は、経済産業省の生産動態統計です。国が定める基幹統計で、国内の調査対象の事業所が報告した生産や販売を数えます。2025年の電気冷蔵庫は、月ごとの値を合計すると(計算値)、生産が83万6,642台、海外から受け入れた数量が67万3,576台、販売が149万2,127台でした。「海外から受け入れた数量」は、報告した事業所が海外から受け入れた分で、国の輸入の統計ではありません。洗濯機と薄型テレビは、個々の会社の数字が分からないように伏せられて(秘匿)いて、国内の生産量を示せません。

誰が作っているか:会社の型と資本の違い

家電の作り手は、資本の形と、家電が会社の中でどこに置かれているかで、いくつかの型に分けられます。求人を見るときも、応募先がどの型かで、会社の意思決定の仕組みや、同じグループの中の役割が変わります。

総合電機の家電部門の例が、パナソニック ホールディングスと三菱電機です。どちらも家電のほかの事業を持ちます。パナソニック ホールディングスは照明・電設資材や電池、工場向けの部品など、三菱電機はビル・工場・電力などの事業です。

パナソニック ホールディングスの2026年3月期の決算短信では、冷蔵庫・洗濯機・調理機器・美容家電・テレビは「スマートライフ」、家庭用のルームエアコンは「HVAC & CC」という別の区分に入っています。2026年4月には、パナソニック株式会社とパナソニック HVAC & CC株式会社が、別々の事業会社として発足しました。グループの採用サイトの会社紹介も、家庭用エアコンはパナソニック HVAC & CC、洗濯機・電子レンジ・カメラ・ドライヤーはパナソニック株式会社の例として載せています。同じブランドの家電でも、品目で応募先の会社が違う例です。

三菱電機は、家電を「ライフ」部門の中の「空調・家電」として示しています(2026年3月期 決算説明会資料)。この区分には、家庭用と業務用の空調機器が一緒に入っています。

家電事業を主力の一つとする上場会社で、海外資本が大株主の例が、シャープです。2026年3月期の決算短信では、この期から「スマートライフ」に白物家電とテレビをまとめました。主な製品には、冷蔵庫・電子レンジ・エアコン・洗濯機・掃除機・空気清浄機・理美容機器・テレビ・ブルーレイディスクレコーダー・オーディオのほか、太陽電池・蓄電池・センサモジュールなども入ります。株主構成では、2026年3月31日現在、鴻海精密工業が22.32%を持ち、Foxconnの名前が付くグループ会社も大株主に並んでいます。

海外資本の傘下に入った家電会社の例が、東芝ライフスタイルです。会社概要と沿革によると、2016年6月30日付で中国のMideaグループに参画し、TOSHIBAブランドの生活家電を国内外で開発・製造・販売しています。社員数はグループ連結で1万3,000名(2025年12月現在)で、国内に製造会社(東芝ホームテクノなど)と販売会社(東芝コンシューママーケティング)を持ちます。会社は、Mideaとはコンプレッサや小型家電、インバーターなどで25年以上の協業関係があったと説明しています。非上場で、売上や利益は公表されていません。

量販店の資本が入る予定の家電会社の例が、日立の家電事業です。日立製作所と日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)の発表によると、日立GLSは家電事業を新しい会社に移し、その株式の80.1%を、家電量販店のノジマが管理する特別目的会社に譲渡する契約を2026年4月21日に結びました。日立GLSは19.9%を持ち続けます。譲渡は、競争法などの手続きを経て、2027年3月期中(2026年度中)に完了する予定です。新会社は、日立ブランドの家電の製造からアフターサービスまでを続けます。空調事業は対象に入らず、日立GLSに残ります。

メーカーから仕入れた家電を売る店やECの仕組みは、小売・ECの業界地図で確かめられます。

AV機器の作り手には、「エンタテインメント・テクノロジー&サービス」の区分でテレビやカメラなどを手掛けるソニーグループがあります。パナソニック(スマートライフのAVC事業)やシャープ(スマートライフのテレビ)も、テレビを作っています。ほかに、非上場の生活用品・家電メーカーとしてアイリスオーヤマ、ルームエアコンの作り手として空調の会社のダイキン工業もあります。

家電と電子部品・半導体などの関係を見渡すには、電機・電子部品・半導体の業界地図で確かめられます。

家電以外の生活用品や消費財の品目とメーカーを比べるには、生活用品・衣料・消費財の業界地図で確かめられます。

家電は誰が作り、どんな資本の会社なのか

行は作り手の型、列は会社の例・家電の製品(会社の開示の言葉)・資本と体制。数字は置かず、順位も付けない。型の中の会社は五十音順。

作り手の型会社の例家電の製品(開示の言葉)資本・体制
総合電機の家電部門パナソニック ホールディングス三菱電機スマートライフ:冷蔵庫・洗濯機・小型家電・テレビ。家庭用ルームエアコンは別の区分のHVAC & CC(業務用空調も含む)ライフ部門の「空調・家電」(家庭用・業務用の空調機器を含む)2026年4月にパナソニック㈱(生活家電・AVC商品など)とパナソニック HVAC & CC㈱(家庭用エアコンなど)が別の事業会社として発足家電のほかにビル・工場・電力などの事業を持つ会社の一部門
家電事業を主力の一つとする上場会社(海外資本が大株主)シャープスマートライフ:冷蔵庫・電子レンジ・エアコン・洗濯機・掃除機・空気清浄機・理美容機器・テレビ・レコーダー・オーディオなど太陽電池・蓄電池・センサモジュールなども同じ区分大株主は鴻海精密工業(22.32%)とFoxconnの名前が付くグループ会社2026年3月31日現在の株主構成
海外資本の傘下に入った家電会社東芝ライフスタイルTOSHIBAブランドの生活家電(冷蔵庫・エアコン・洗濯機・電子レンジ・掃除機・炊飯器など)2016年6月30日付でMideaグループに参画。国内に製造会社と販売会社(東芝コンシューママーケティング)を持つ非上場
量販店の資本が入る予定の家電会社日立の家電事業(日立グローバルライフソリューションズ)日立ブランドの家電(新会社が製造からアフターサービスまでを続ける)空調事業は対象外で日立GLSに残る2026年4月21日に契約。家電事業の新会社の株式80.1%を、ノジマが管理する特別目的会社へ譲渡する予定。2027年3月期中(2026年度中)の完了予定
AV機器の作り手ソニーグループエンタテインメント・テクノロジー&サービスの区分に、テレビやカメラなどパナソニック(AVC事業)・シャープ(テレビ)もテレビを作るゲーム・音楽・映画などの事業も持つ会社の一区分
非上場の生活用品・家電メーカーアイリスオーヤマ生活用品と家電非上場
空調機器の会社ダイキン工業家庭用ルームエアコン業務用の空調・冷凍は「空調・冷凍機器の業界地図」

同じブランドの家電でも、品目によって所属する区分や会社が違うことがある(パナソニックの家庭用エアコンはHVAC & CC、冷蔵庫・洗濯機・テレビはスマートライフ)。日立の家電事業の譲渡は、2026年4月の発表にもとづく予定の事柄。

出典:パナソニック ホールディングス「2026年3月期 決算短信」、パナソニックグループ「新卒採用 募集要項・8つの会社を知る」、三菱電機「2026年3月期 決算説明会資料」、シャープ「2026年3月期 決算短信」「株主構成」、東芝ライフスタイル「会社概要」「沿革」「補修用性能部品の保有期間について」、日立製作所と日立グローバルライフソリューションズのニュースリリース(2026年4月21日)、ソニーグループ「2025年度 決算短信」。

どこで売られ、メーカーは誰に営業するか

家電は、注文を受けてから作る発電機や鉄道の設備と違い、需要を見込んで先に作り、販路に出荷する製品です。三菱電機は、空調・家電の事業について「受注生産形態をとらない製品が多い」として、受注の金額を示していません。どれだけ作り、いつ店に届けるかを、需要を読んで決めることになります。

メーカーが作った家電は、家電量販店、地域の家電店、ネット通販に加え、ルームエアコンなどでは住宅設備会社や工務店などの住宅設備ルートを通って家庭に届きます。メーカーの営業先は販路ごとに異なります。日立GLSの社長は、ノジマとの発表の中で、家電事業を支える相手として「全国の家電量販店や地域の家電店など多様な販売チャネル」を挙げています。

店の側にも、法律で決まった役割があります。省エネ法は、家電を売る小売の事業者に、消費者へ省エネ性能の表示などの情報を提供するよう努めることを求めています(第165条、努力義務)。家電リサイクル法でも、店には引取りの義務があり(第9条、後の章で見ます)、長く使うための情報の提供などに努めることも求められています(第5条、努力義務)。

メーカーの中で、作る会社と売る会社が分かれていることもあります。東芝ライフスタイルは、国内に販売会社の東芝コンシューママーケティングを持ちます。求人で「営業」と書かれていても、メーカー本体の営業か、販売会社の営業かで、所属と仕事の範囲が変わります。

量販店とメーカーの関係が、資本でつながる例も出てきました。ノジマの社長は、発表のコメントで、店で得られる「お客さまの声」を製品開発に直接反映し、製造からアフターサービスまで循環させる体制をつくりたいとしています。売る側の店の仕事や、量販店の会社の狙いは「家電量販店の業界地図」で扱います。

家電はどこを通って家庭に届き、使い終わったらどこへ戻るのか

上の段は売る流れ、下の段は家電リサイクル法の4品目が戻る流れの模式。下の段の条番号は家電リサイクル法で、義務・努力義務・「できる」を書き分けた。

売る流れ

戻る流れ(エアコン・テレビ・冷蔵庫と冷凍庫・洗濯機と衣類乾燥機)

令和6年度(2024年4月〜2025年3月)に全国の指定引取場所で引き取られた台数で、4品目の合計は約1,458万台(ブラウン管式テレビ約46万台を含む)。暫定の集計値。引き取られた台数で、捨てられた家電の全部ではない。矢印は模式で、会社どうしの実際の取引を示すものではない。

出典:家電リサイクル法・同施行令(e-Gov法令検索)、環境省「令和6年度における家電リサイクル実績について」、東芝ライフスタイル「会社概要」「補修用性能部品の保有期間について」、日立製作所・日立グローバルライフソリューションズのニュースリリース(2026年4月21日、販路の例)。

需要はなぜ動くか:猛暑・補助金・省エネの目標年度・世帯の変化

家電の需要は、天候、国や自治体の制度、世帯の形で動きます。JEMAの見通しの資料は、品目ごとに理由を挙げています。

ルームエアコンは、天候と制度で大きく動きます。JEMAは、2025年度について、夏の猛暑と寒冷地の暖房の需要に、自治体による補助金の下支えが加わり、ルームエアコンが白物家電全体を引っ張ったと説明しています。2026年度も、「省エネ法の目標年度を前に」ルームエアコンの需要が高まると想定しています。

省エネ法の目標年度は、経済産業省が家庭用エアコンの省エネ性能の新しい基準を定め、その達成の目標とした年度です。資源エネルギー庁の説明資料によると、2022年5月にエアコンの基準を定めた告示が改正されました。新しい基準の目標年度は、壁掛形が2027年度、壁掛形以外とマルチタイプが2029年度です。

実際の出荷も増えています。JEMAの2026年度上期(4〜9月)の実績では、ルームエアコンが732万3千台(前年同期比125.5%、日本冷凍空調工業会の調査)で、上期として過去最高の出荷台数でした。JEMAは理由として、省エネ法の目標年度を前にした需要の高まり、自治体の補助金の効果、猛暑を挙げています。民生用電気機器の上期の国内出荷の金額は1兆5,234億円(109.5%)でした。この「民生用電気機器」の数字は月ごとの集計で、見通しの資料の「白物家電機器」と範囲がそろっているとは限らないため、並べて比べません。

冷蔵庫と洗濯機は、減る見通しです。JEMAは、冷蔵庫について、買い替えの間隔が長くなっていることと、少人数の世帯が増えて大型から中型に移っていることを理由に挙げています。2026年度上期の冷蔵庫の出荷178万7千台(前年同期比98.1%)のうち、401L以上の大きな機種が70万3千台で全体の4割近くを占めますが、この大型タイプも前年同期を下回りました(JEMA)。洗濯機は、ドラム式洗濯乾燥機に移る一方で、大容量のモデルの需要が減る傾向にあるとしています。

ほかの品目では、電子レンジは単身世帯の増加による単機能のレンジの買い替えで、空気清浄機はコロナ禍のころに買った分の買い替えの時期に入ったことで、増える見通しです。ルームエアコン以外は全体として、物価高による買い控えと、人口減少による市場のゆるやかな縮小が続くと、JEMAは予想しています。

テレビは、白物家電とは別の動きをしています。JEITAの統計では、2025年の薄型テレビの国内出荷は前年をわずかに下回りましたが、60型以上の大きな画面は109.7%と増えました。有機ELは63.6%、ブルーレイディスクレコーダーは62万3千台で80.1%と、減った品目もあります。会社の側では、シャープがテレビの減収の理由を「他社攻勢が激しかった」と説明し、パナソニック ホールディングスは海外のテレビの販売が減ったとしています。テレビでは、画面の大きさや方式の移り変わりと、会社どうしの競争が、売れ行きの説明に出てきます。

家電の国内出荷はなぜ動くのか

左はJEMAの白物家電機器の国内出荷金額と品目別の内訳。色の薄い棒は見込み・見通しで、実績ではない。右は、JEMAが挙げる品目ごとの理由。

業界団体の自主統計(販社出荷ベース)。ルームエアコンは日本冷凍空調工業会の統計。2025年度は見込み、2026年度は見通しで、実績ではない。10年平均はJEMAが示す参考値。どの棒も2兆7,000億円を100%として本記事で計算した。上期の台数はJEMAの月次の統計(民生用電気機器)で、年度の金額とは別の集計。

出典:日本電機工業会「2026年度 電気機器の見通し」「民生用電気機器 2026年9月度ならびに2026年度上期 国内出荷実績」、資源エネルギー庁「省エネ法に基づくエアコン告示の改正概要について」(内閣府 消費者委員会 第379回本会議 資料)。

海外生産・海外資本と、会社ごとの利益

家電は、国内の工場だけで作られているわけではありません。生産動態統計では、2025年の電気冷蔵庫について、国内の事業所の生産が83万6,642台、海外から受け入れた数量が67万3,576台でした(どちらも月ごとの値の合計)。報告する事業所の側の数字で、国内で売られた冷蔵庫のうち何割が輸入品かを示すものではありません。

会社の開示にも、海外での生産と販売の影響が出ています。家電を含む区分の数字は、会社ごとに期・会計基準・利益の名前・区分の範囲が違うため、比べません。

会社区分(期・会計基準)売上高と利益区分に入るもの・会社の説明
シャープスマートライフ(2026年3月期・日本基準)売上高5,980億円(前年度比7.1%減)、セグメント利益285億円白物家電・テレビのほか太陽電池・蓄電池なども入る。国内・米国の調理家電が伸びたが、洗濯機・冷蔵庫・エアコンなどは前年度に届かず、テレビは「他社攻勢が激しかった」ため減収
パナソニック ホールディングススマートライフ(2026年3月期・IFRS)売上高1兆3,742億円(5%減)、営業利益は373億円の損失冷蔵庫・洗濯機・小型家電・テレビ。中国の需要減で冷蔵庫・洗濯機が減り、海外のテレビの販売も減少。構造改革の費用を含む
パナソニック ホールディングスHVAC & CC(2026年3月期・IFRS)売上高1兆3,124億円(1%減)、営業利益231億円家庭用ルームエアコンのほか業務用空調や北米のコールドチェーンを含む。国内のルームエアコンは猛暑で需要が拡大、アジアのルームエアコンは天候不順で減収
三菱電機空調・家電(2026年3月期・IFRS)売上高1兆6,103億円、営業利益1,038億円(営業利益率6.4%)家庭用・業務用の空調機器を含む。増収は円安・価格改善と、欧州・国内・北米の空調機器の増加による

シャープの億円は、百万円の値を四捨五入しました。三菱電機の営業利益率は、会社の資料に載っている値です。どの区分にも、家電以外のものが入っています。この表の会社は、家電だけの売上や利益を示していません。

パナソニック ホールディングスは、立て直しが必要な事業として、キッチン家電の事業で量産品の開発を中国に移し、開発の体制(リソース)を適正化することと、テレビの欧州での販売について中国のSkyworthグループと包括的なパートナーシップを結んだことを挙げています。開発や販売の場所が、国をまたいで組み替えられている例です。

三菱電機は、空調・家電の利益が前の年度より33億円減った理由として、素材の高騰や開発費、ASEANと中国での収益性の悪化などを挙げています。

資本の面では、前の章で見たとおり、シャープは鴻海精密工業とそのグループ会社が大株主、東芝ライフスタイルはMideaグループに参画、日立の家電事業はノジマが管理する会社に株式の80.1%が渡る予定です。会社の発表は、こうした関係を「参画」「パートナーシップ」「譲渡」という言葉で説明しています。

作った後の責任:安全・省エネ・リサイクル・修理

家電メーカーには、作って売る前と、売った後の両方に、法律で決まった責任があります。義務と、努力義務(努めなければならない)と、国や会社が「できる」とされることを分けて見ます。

製品の安全は、電気用品安全法で決まっています。電気用品を製造・輸入する事業者は、事業を始めてから30日以内に経済産業大臣に届け出なければなりません(第3条、義務)。届け出た型式の製品を技術基準に適合させ、検査をして記録を作り、保存する義務があります(第8条)。政令で決まる特定電気用品は、販売するまでに登録検査機関の適合性検査を受けなければなりません(第9条)。

これらの義務を果たした事業者は、省令で決まった方式の表示を付けることが「できる」とされています(第10条)。表示は義務の形ではなく「できる」と書かれていますが、表示のない電気用品は販売も、販売のための陳列もできません(第27条)。今の条文には、外国の事業者が国内の消費者に直接届ける場合も「輸入」に含める規定や、国内管理人の規定、取引デジタルプラットフォーム(ネット通販の場)にかかわる規定も加わっています。

省エネは、省エネ法で決まっています。エネルギーを使う機器の製造・輸入事業者は、性能の向上に努めなければなりません(第148条、努力義務)。エアコン・テレビ・冷蔵庫・冷凍庫・炊飯器・電子レンジ・電気便座などは、政令で特定エネルギー消費機器に指定されています。洗濯機は入っていません。

特定エネルギー消費機器について、経済産業大臣は、製造事業者などが判断の基準とする事項を定めて公表します(第149条)。基準は、エネルギー消費性能が最も優れた製品の性能や、技術開発の見通しなどを考えて決めます。いわゆるトップランナー制度です。

生産量・輸入量が政令の要件(年間の国内向けの量で、エアコンは500台、テレビは1万台、電気冷蔵庫は2,000台など)に当たる事業者について、基準に照らして性能の向上を相当程度進める必要があると認めるときは、大臣は勧告することが「できる」、従わなければ公表することが「できる」とされています。正当な理由なく措置をとらず、省エネを著しく害すると認めるときは、審議会の意見を聴いて命令することも「できる」とされています(第150条)。店などの小売の事業者は、消費者に省エネ性能の情報を伝えるよう努めなければなりません(第165条、努力義務)。メーカーが製品やカタログに付ける省エネ性能の表示は、家庭用エアコンのように家庭用品品質表示法の対象になる製品では、省エネ法の告示(第151条)から外れ、家庭用品品質表示法の側で決まっています。

使い終わった後は、家電リサイクル法で決まっています。対象は政令で決まる4品目で、エアコン(ウィンド形と、室内機が壁掛け形・床置き形のセパレート形)、テレビ(ブラウン管式・液晶式・有機EL式・プラズマ式)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機です。

店(小売業者)は、自分が過去に売ったものや、買い替えのときの同じ種類のものの引取りを求められたら、引き取らなければなりません(第9条)。製造業者等は、自社が作った製品の廃棄物を、指定引取場所で引き取る義務があります(第17条)。合併や事業の譲渡で事業を引き継いだ会社も、この義務を引き継ぐと条文に書かれています。

引き取った後は、遅れることなく再商品化等をしなければならず(第18条)、エアコンや冷蔵庫の冷媒、冷蔵庫の断熱材のフロン類の回収も、政令で再商品化と一緒に行います。再商品化は政令の基準に従う義務があります(第22条)。製造業者等は料金を請求「できる」とされ(第19条)、料金はあらかじめ公表しなければなりません(第20条、義務)。料金は、能率的に再商品化等をした場合の適正な原価を上回ってはいけないとされています。

ここでいう製造業者等には、輸入する者や、製造・輸入をほかの会社に委託する者も入ります(第2条第6項)。自社の工場を持たないブランドも、義務を負いうるということです。製造業者等は、修理の体制の充実などで廃棄物を減らし、設計や部品・材料の工夫で再商品化の費用を下げるよう努めなければなりません(第4条、努力義務)。

環境省の集計によると、令和6年度(2024年4月〜2025年3月)に全国の指定引取場所で引き取られた4品目は、約1,458万台でした。エアコンが約396万台、液晶式などのテレビが約315万台、冷蔵庫・冷凍庫が約323万台、洗濯機・衣類乾燥機が約378万台です。再商品化率は、エアコンが93%(法定基準80%)など、すべての品目で基準を上回りました。どれも暫定の集計値です。

修理のための部品の持ち方は、会社が決めて公表している例があります。東芝ライフスタイルは、製品の性能を保つために必要な部品(補修用性能部品)を、製造終了後、冷蔵庫は9年、エアコンは10年、洗濯機は6年、電子レンジは8年保有すると公表しています。これは1社の例で、ほかの会社の年数が同じとは限りません。

メーカーの中の仕事と、求人の見方

家電メーカーの仕事は、売れる製品を考えるところから始まり、設計して工場で量産し、安全と品質を確かめ、販路に売り込み、買った人の修理や問い合わせに応えるところまで続きます。職種の名前は会社ごとに違うので、採用ページで確かめた名前を会社名つきで見ます。

パナソニック株式会社の新卒の募集要項(2027年3〜9月卒業見込み向け)は、事務系に「営業・営業企画」「商品企画」「CS(カスタマーサービス)」「事業企画」「調達」「ロジスティクス」「生産管理」など、技術系に「研究開発」「設計開発」「生産技術」「品質管理」「技術営業」などを挙げています。具体的な仕事や役割は入社後に決まるとしています。パナソニック HVAC & CC株式会社は、事務系に「営業(国内/海外)」「営業企画」「CS(カスタマーサービス)」など、技術系に「研究開発」「設計開発」「生産技術」「品質管理」などを挙げています。

シャープの職種紹介は、「製品開発」を、電気回路の設計、機械の構造の設計、ソフトウェアの開発で新製品をつくり、商品企画・研究開発・生産技術・品質保証などと連携する仕事として説明しています。「品質保証」は、開発段階での品質や安全性の確認から、市場での故障や事故の原因の解析、設計へのフィードバック、製品安全・法規制への対応までを扱います。ほかに「生産技術」「営業(グローバル・国内)」などがあり、新卒の事務系の応募職種には「商品企画」「生産企画」があります。会社全体の職種で、家電の部門に配属が限られるわけではありません。

パナソニックの募集要項は、グループの各社をまとめた採用サイトに載っています。勤務地や配属は、会社と部署で違います。会社紹介では、パナソニック株式会社の事業を生活家電、美容・健康家電、AVC商品などとし、家庭用エアコンはパナソニック HVAC & CC株式会社の例に挙げています。同じ「設計開発」でも、応募する会社の事業を採用サイトで確かめます。

家電メーカーの中では、どんな仕事がつながっているのか

左から右へ、製品が企画されてから買った人に届いた後までの流れ。各段には、各社の採用ページに掲載された職種名を会社名付きで示した。下段は、制度や事業環境の変化と、関わる職種の段階を示す。実線は会社の説明や条文に明記された関係、点線はそれらから考えられる関係を表す。

職種の名前は、パナソニック株式会社・パナソニック HVAC & CC株式会社(2027年3〜9月卒業見込み向けの新卒募集要項)とシャープ(職種紹介・新卒の応募職種)の採用ページの表記。シャープは会社全体の職種で、家電の部門への配属に限らない。ほかの会社の職種の名前は会社ごとに違う。

出典:パナソニックグループ「新卒採用 募集要項」、シャープ「職種紹介」「新卒採用」、電気用品安全法・家電リサイクル法(e-Gov法令検索)、日立製作所・日立グローバルライフソリューションズのニュースリリース(2026年4月21日)、パナソニック ホールディングス「2026年3月期 決算短信」、資源エネルギー庁「省エネ法に基づくエアコン告示の改正概要について」。

制度や事業環境の変化は、職種によって関わり方が異なります。省エネ法の目標年度への対応では、エアコンの性能を基準に合わせる設計開発と、需要の山に備えて生産量や販売計画を調整する生産・営業が関わります。電気用品安全法が求める技術基準への適合と検査記録の作成・保存は、品質保証の業務です。家電リサイクル法が努力義務として求める修理体制の充実や設計上の工夫は、設計開発とカスタマーサービスに関わります。

資本構成や開発拠点の変化は、商品企画・開発・カスタマーサービスなどの担当業務にも影響します。パナソニック ホールディングスは、キッチン家電の事業で量産品の開発を中国に移すとしています。日立の家電事業では、ノジマが、店で得た声を製品開発に反映し、アフターサービスまで循環させる体制をつくりたいとしています。商品企画やカスタマーサービスが、量販店の資本の入った会社の中でどう変わるかは、譲渡の完了後の会社の説明で確かめる必要があります。

求人を見るときは、次の点を確かめると、仕事の中身を比べやすくなります。

  • どの品目の会社か:エアコンは天候と省エネの目標年度で、冷蔵庫・洗濯機は買い替えの周期で需要が動く
  • 応募先はどの会社か:グループの中で品目ごとに会社が分かれていないか(パナソニックの採用サイトでは、家庭用エアコンと洗濯機などで会社が分かれている)。メーカー本体か販売会社か
  • 資本の形:上場会社の一部門か、海外資本の傘下の会社か、資本の再編が予定されている会社か
  • 海外との関わり:開発や生産の拠点が国内か海外か、海外での販売の不振や好調がどの区分に出ているか
  • 法律とのかかわり:品質保証の仕事に、電気用品安全法の検査記録や省エネ法の基準への対応が入るか
  • 売った後の仕事:修理部品の保有や家電リサイクルの対応に、どの部署がかかわるか