「電機メーカー」「半導体」「電子部品」と書かれた求人には、スマホや車に入る小さな部品を作る会社、その部品を作る工場の装置を作る会社、家電を作って売る会社、発電所や鉄道の設備を受注して作る会社まで、幅があります。同じ「電機」でも、何を作り、誰に売るかで、仕事の相手も、稼ぎ方も、守る法律も変わります。この分野の特徴は、作るものの段階と、最後に使う顧客の組み合わせが多いことです。部品の会社が直接売るのは、多くの場合、機器のメーカーです。装置の会社は、部品や半導体を作る工場に売ります。家電は家庭に、発電機や変圧器は電力会社や工場に届きます。大きな会社は1社でいくつもの組み合わせを持ちます。この記事では、まず列と行の地図で会社の位置を見分け、次に大きさの物差し、総合電機の事業の分け方、稼ぎ方、法律、変化と仕事を順に見ます。
扱う範囲は、電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器具、情報通信機械器具の3つの製造業と、それを作るための半導体製造装置・計測器の全体像です。半導体の工程や製品の種類、会社の違いは「半導体の業界地図」、装置の工程ごとの違いと保守は「半導体製造装置の業界地図」、コンデンサ・コネクタ・センサーなどの品目は「電子部品・センサーの業界地図」、エアコン・冷蔵庫などのメーカーと販路は「家電の業界地図」、発電・送配電・工場の電気設備は「重電・電力機器の業界地図」、蓄電池は「電池・蓄電池の業界地図」、はかる機器は「計測器・分析機器の業界地図」、通信設備・サーバ・スマホは「情報通信機器の業界地図」で扱います。
この地図の外側にある分野もあります。半導体の材料は「半導体材料・電子材料の業界地図」、電線や光ファイバは「非鉄金属の業界地図」、ロボットと工場の自動化は「FA・産業用ロボットの業界地図」、業務用の空調は「空調・冷凍機器の業界地図」、家電の店は「家電量販店の業界地図」、車の部品の取引の仕組みは「自動車部品の業界地図」、データセンターの運営は「ITインフラ(データセンター・クラウド基盤)の業界地図」、通信の会社は「IT・通信の業界地図」で扱います。この記事は、次にどの地図を読むかを決めるための全体図です。
部品・つくる道具・完成機器の3列と、民生・産業・電力インフラの3行で見る
電機の会社は、作るものの段階で3つの列に分けられます。半導体・電子部品・センサー・電池などの部品、半導体を作る装置や計測・分析の機器などのつくる道具、家電・情報通信機器・重電やFA機器などの完成機器です。列は上下の格付けではなく、会社の大きさも表しません。
半導体は設計・前工程・後工程・製造装置などに分けて仕事を確認できます。 半導体業界の地図
もう1つの軸は、最後に使う顧客です。家庭や個人が使う民生、工場・企業・データセンターが使う産業、電力会社・鉄道・官公庁が使う電力インフラの3つの行に分けます。下の図は、この3列と3行の組み合わせに、分野と詳しく読む地図を置いたものです。
求人の会社は、部品・つくる道具・完成機器のどこにいて、誰に売っているか
部品の会社は、機器のメーカーに部品を売ります。スマホに入る部品も、車やサーバに入る部品も、取引の相手は機器を組み立てる会社です。最後に使うのが家庭か工場かで、部品の会社がどの行に強いかが決まります。たとえば村田製作所は、売上の用途を通信・モビリティ・コンピュータ・家電・産業その他に分けて公表しています(村田製作所 2026年3月期 決算短信)。電子部品の中身も幅が広く、JEITAの電子部品の出荷統計では、コンデンサなどの受動部品が49%、コネクタなどの接続部品が23%、変換部品が17%を占めます(2024年度、電子部品部会の参加企業約60社の出荷額)。品目ごとの違いは「電子部品・センサーの業界地図」で扱います。
電子機器や部品の製造と、それらを使って業務を支えるソフトウェアは、提供するものと顧客に対して担う役割が異なります。 業務ソフトウェア業界の地図
つくる道具の会社は、半導体や電子部品を作る工場、研究所に売ります。東京エレクトロンは半導体製造装置を作り、装置を売ったあとの保守や部品でも稼ぐ会社の例です。この列の買い手は工場や研究所なので、民生の行には入りません。
完成機器は、行によって売り方が大きく違います。家電は店を通して家庭に届きます。サーバや通信設備は企業や通信の会社に、FA機器は工場に売られます。発電機や大きな変圧器は、電力会社や工場の注文を受けてから作ります。
総合電機と呼ばれる会社は、この格子の1つのマスに収まりません。日立製作所、三菱電機、パナソニック ホールディングス、ソニーグループは、部品と完成機器、民生と産業と電力インフラのいくつかを1社の中に持っています。中身は3つ目の章で見ます。
大きさは、物差しによって測るものが違う
「電機業界の大きさは○兆円」と、1つの数字で言うことはできません。統計を出すところによって、何を、どの範囲で、いつ数えたかが違うからです。下の図は、主な物差しを並べたものです。行どうしを足したり、大小を比べたりはできません。
分野の大きさは、どの統計のどの物差しで見ればよいか
| 物差し(出すところ) | 何を、どの範囲で数えるか | 時点 | 値 |
|---|---|---|---|
| 製造品出荷額等・従業者(経済産業省・総務省「経済構造実態調査」) | 国内の事業所の出荷額と働く人の頭数。個人経営を含まない。事業所間の取引を重ねて数える産業分類の中分類・細分類ごと | 出荷額等は2024年、従業者は2025年6月1日 |
|
| 電子情報産業の世界生産(JEITA) | 会員企業へのアンケートからの推計。ITソリューション・サービスを含む。日系企業は海外生産を含む | 2025年見込み | 世界 4兆1,184億ドル/日系企業 41兆8,134億円世界はドル、日系企業は円で発表。割り算しない |
| 電子部品のグローバル出荷(JEITA) | 電子部品部会の参加企業(約60社)の出荷。市場全体ではない | 2024年度 | 4兆5,323億円 |
| 重電の国内生産(JEMA) | 発電・送配電・産業用の電気機器の国内生産額(生産動態統計がもと) | 2024年度実績/2026年度見通し | 3兆5,132億円/4兆467億円 |
| 白物家電の国内出荷(JEMA) | 国内への出荷額。生産額ではない | 2026年度見通し | 2兆6,637億円 |
| 通信機器の国内市場(CIAJ) | 国内生産−輸出+輸入(部品を除く) | 2025年度 | 4兆6,474億円(うち国内生産 4,096億円) |
| 分析機器の生産高(JAIMA) | 工業会がまとめた分析機器の生産高。電気計測器や半導体の検査装置は別 | 2025年度 | 約8,069億円 |
| 日本製半導体製造装置の販売高(SEAJ) | 輸出を含む日本製装置の月ごとの販売高(3か月移動平均) | 毎月公表 | 協会の統計は転載に許可が要るため、この記事では値を載せない |
1つ目の物差しは、国の経済構造実態調査です。2024年の製造品出荷額等は、電子部品・デバイス・電子回路製造業が約17.8兆円、電気機械器具製造業が約21.6兆円、情報通信機械器具製造業が約6.3兆円です。従業者は2025年6月1日時点で、それぞれ40万2,212人、49万5,568人、10万6,838人です(経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」第1表)。3つを合わせると、製造業の従業者の13.2%、出荷額等の12.0%にあたります(調査の数値からの計算値)。
出荷額等は事業所が出荷した額で、事業所の間の取引を重ねて数えます。部品の工場が出荷した部品を、機器の工場が組み込んで出荷すると、同じ部品が2回数えられます。利益でも付加価値でもありません。従業者は、調査の日に事業所で働いている人の頭数で、役員や、ほかの会社から出向・派遣で受け入れた人も入り、勤務時間の長さは区別しません(経済構造実態調査「用語の解説」、2024年調査の定義を広島県が掲載)。この調査は2024年の実績から調べる事業所の範囲が新しくなったため、この記事では前の年との増減を書いていません。
統計の区分には、注意する点が2つあります。1つは、電気機械器具製造業に、自動車のエンジンまわりの電装品(内燃機関電装品、約4.3兆円)が入ることです。車の部品の取引の仕組みは「自動車部品の業界地図」で扱います。もう1つは、半導体製造装置と計測・分析機器が、電機の3つの区分の外にあることです。半導体製造装置製造業は「生産用機械」の中にあり、出荷額等は約5.4兆円、従業者は10万1,847人です。計量器・測定器・分析機器等は「業務用機械」の中にあり、出荷額等は約2.1兆円です。電圧や電流をはかる電気計測器は、電気機械器具の中に入ります。
3つの区分の中を細かく見ると、分野の位置が分かります。2024年の出荷額等は、集積回路製造業が約4.9兆円、発電用・送電用・配電用電気機械器具製造業が約5.8兆円、民生用電気機械器具製造業が約3.5兆円、電池製造業が約2.0兆円です。一方、スマートフォン・携帯電話機等の製造業は11事業所・538人で、国内でスマホを作る事業所はわずかです。
2つ目の物差しは、業界団体のJEITA(電子情報技術産業協会)の世界生産です。2025年の見込みで、電子情報産業の世界生産額は4兆1,184億ドル、海外生産を含む日系企業の世界生産額は41兆8,134億円です(JEITA「電子情報産業の世界生産見通し」2025年12月16日)。会員企業へのアンケートからの推計で、ITソリューション・サービスを含むため、機器や部品だけの大きさではありません。世界はドル、日系企業は円で発表されているので、割り算して日本の割合を出すことはしません。
半導体については、JEITAによると、2024年の見込みで世界の生産額のうち日系企業の生産は約7%で、その約53%が国内での生産です(JEITA「調査統計ガイドブック2025-2026」)。工程や製品ごとの違いは「半導体の業界地図」で扱います。
同じガイドブックでは、JEITAが国の貿易統計から、電子工業の輸出入をまとめています。2024年の輸出は13兆1,872億円で、その約80%が電子部品・デバイスです。輸入は15兆8,915億円で、電子機器が54%を占め、2013年から輸入が輸出を上回る状態が続いています。輸出は部品が、輸入は機器が中心です。
3つ目は、分野ごとの業界団体の物差しです。重電はJEMA(日本電機工業会)がまとめる国内の生産額で、2024年度の実績が3兆5,132億円、2026年度の見通しが4兆467億円です。白物家電はJEMAの国内の出荷額で、2026年度の見通しが2兆6,637億円です(JEMA「2026年度 電気機器の見通し」)。同じ団体でも、重電は生産額、白物家電は出荷額で、物差しが違います。
通信機器はCIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)が、国内生産から輸出を引き、輸入を足して国内市場を出しています。2025年度の国内市場は4兆6,474億円、国内生産は4,096億円、輸入は4兆5,987億円です。CIAJは、海外メーカーのスマホや基地局、データセンター向けのサーバなどの輸入が増えたと説明しています(CIAJ「2025年度通期 通信機械生産・輸出入概況」)。国内で売られる通信機器には、輸入品が多いということです。
つくる道具の列にも、別の物差しがあります。JAIMA(日本分析機器工業会)によると、分析機器の生産高は2025年度で約8,069億円です(JAIMA「2025年度 分析機器生産高・輸出高一覧」)。半導体製造装置はSEAJ(日本半導体製造装置協会)が日本製装置の販売高を毎月公表しています。協会の統計は転載に許可が要るため、この記事では装置の大きさを経済構造実態調査の値で示しています。
求人や会社案内で「市場規模○兆円」という数字を見たら、誰が出した数字か、生産か出荷か市場か、国内か世界か、実績か見込みかを確かめます。
総合電機は、1社でいくつものマスにまたがる
総合電機の会社は、事業をいくつかの区分(セグメント)に分けて、区分ごとの売上と利益を決算で公表しています。区分は会社が決めたもので、この記事の分野と1対1には対応しません。下の図は、4社の2026年3月期の区分ごとの売上の構成比を、会社ごとに別の帯で示したものです。
総合電機は、1社の中でどの事業から売上と利益を得ているか(会社の例)
- エナジー(送配電・原子力)28.6%4,160
- コネクティブインダストリーズ(ビル・家電空調・産業機器・計測分析システム)28.9%3,674
- デジタルシステム&サービス26.1%4,501
- モビリティ(鉄道システム)11.7%1,081
- その他4.7%230
- インフラ(社会・エネルギー・防衛宇宙)21.8%1,547
- インダストリー・モビリティ(FA・自動車機器)24.9%1,311
- ライフ(ビル・空調家電)34.5%1,706
- デジタルイノベーション2.4%120
- セミコンダクター・デバイス4.3%475
- その他12.2%532
- コネクト(アビオニクス・プロセスオートメーション・SaaSなど)15.7%1,001
- エレクトリックワークス(照明・電設資材。くらし事業から分割)13.2%577
- HVAC & CC(家庭用・業務用の空調、冷凍・冷蔵)14.9%231
- スマートライフ(冷蔵庫・洗濯機・テレビなど)15.6%△373
- エナジー(電池)11.2%698
- インダストリー(コンデンサー・基板材料・産業用モーターなど)13.3%405
- その他16.1%509
- イメージング&センシング・ソリューション(イメージセンサー)16.8%3,573
- エンタテインメント・テクノロジー&サービス(テレビ・カメラなど)17.7%1,586
- ゲーム&ネットワークサービス36.6%4,633
- 音楽16.6%4,470
- 映画11.7%1,049
- その他0.7%△746
読み方:構成比は、各社のセグメント売上(セグメント間の取引を含む「計」)の合計を分母にした計算値で、連結売上とは一致しない。四捨五入のため、合計が100%にならない会社がある。右端の数字はセグメントの利益で、百万円の原数値を億円に四捨五入した。中身が複数の列や行にまたがる区分は「複数の分野」とした。それ以外の色は区分の主な中身による目安で、1つの区分の中に別の分野が入ることがある。照明・電設資材のように、この記事の分野に入らない区分は灰色にした。
日立製作所は、2026年3月期の期首に事業を5つの区分に組み替えました。エナジーは送配電や原子力、モビリティは鉄道システムで、電力インフラの行の事業です。コネクティブインダストリーズには、ビルのエレベーター、家電・空調、産業機器、半導体製造装置を含む計測分析システムが入り、1つの区分が民生・産業・つくる道具にまたがります。デジタルシステム&サービスはITのサービスとストレージ・サーバなどで、IT・通信の側の事業です(日立製作所 2026年3月期 決算短信)。日立は2026年10月の補足資料で、2026年4月からの新しい体制に合わせて組み替えた2026年3月期の値も示しています。その資料では、日立ハイテクの計測分析システムのうち、半導体製造装置などを含む事業(Nano-Technology Solutions)の売上収益が3,057億円です(日立製作所 2026年度第2四半期 補足情報)。決算短信の区分とは分け方が違うので、図の値とは混ぜません。
三菱電機は、インフラ、インダストリー・モビリティ、ライフ、デジタルイノベーション、セミコンダクター・デバイスなどの区分を持ちます(三菱電機 2026年3月期 決算短信)。決算説明会資料では、インフラを社会システム・エネルギーシステム・防衛宇宙、インダストリー・モビリティをFAシステムと自動車機器、ライフをビルシステムと空調・家電に分けて示しています(三菱電機 2026年3月期 決算説明会資料)。パワー半導体などの部品から、家電、FA、電力の設備まで、3つの行のすべてに事業がある例です。
パナソニック ホールディングスは、2026年1月に、くらし事業をエレクトリックワークス、HVAC & CC、スマートライフの3つの区分に分けました。電池を作るエナジーと、コンデンサーや基板材料、産業用モーターなどのインダストリーは主に部品の列、冷蔵庫・洗濯機・テレビなどのスマートライフは民生の完成機器の列にあたります。エレクトリックワークスは照明や配線器具などの電設資材、HVAC & CCは家庭用・業務用の空調と冷凍・冷蔵の事業で、業務用の空調・冷凍は「空調・冷凍機器の業界地図」で扱います(パナソニック ホールディングス 2026年3月期 決算短信)。
製品を構成する材料の供給側では、鉄鋼の工程・鋼材・顧客の違いを確認できます。 鉄鋼業界の地図
ソニーグループは、売上の多くがゲーム、音楽、映画の区分です。電機の地図に関係するのは、イメージセンサーを作るイメージング&センシング・ソリューションと、テレビやカメラなどのエンタテインメント・テクノロジー&サービスの2つの区分です(ソニーグループ 2026年3月期 決算短信)。会社全体を電機メーカーとして見ると、事業の中身を見誤ります。イメージセンサーは「半導体の業界地図」で扱います。
区分の数字を読むときは、3つの点に気をつけます。区分の売上は、区分の間の取引を含むので、足しても連結の売上と一致しません。利益の名前は、日立がAdjusted EBITA、ほかの3社は営業利益やセグメント利益で、定義が違います。そして、区分の名前と範囲は組み替えで変わります。三菱電機は2026年3月期にビジネス・プラットフォームをデジタルイノベーションに改め、ソニーグループは金融の事業を区分から外しました。
上場をやめると、比べる材料が減ります。東芝は2023年12月20日に上場廃止になりました。会社のサイトに掲載されている有価証券報告書は2024年3月期まで(2026年11月時点)で、2025年度の決算は全社の数値と事業の説明を公表しています。区分ごとの金額の表はありません(東芝「2025年度決算」)。
稼ぎ方は、列と行によって違う
同じ電機でも、収入がどう決まるかは分野によって違います。下の表は、分野ごとの稼ぎ方の違いをまとめたものです。
| 分野 | 主に売る相手 | 収入の決まり方 | 次に読む地図 |
|---|---|---|---|
| 電子部品・半導体・電池 | 機器のメーカー | 顧客の新しい製品に設計段階で採用され、その製品が売れた数だけ売れる | 電子部品・センサー、半導体、電池・蓄電池 |
| 半導体製造装置 | 半導体・電子部品の工場 | 顧客の設備投資で新しい装置が売れ、納めたあとの保守・部品・改造でも稼ぐ | 半導体製造装置 |
| 家電 | 家庭(店を通して) | 家庭の買替えの時期で需要が動き、省エネの規制も需要に影響する | 家電、家電量販店 |
| 重電・FA機器 | 電力会社・鉄道・工場 | 受注してから作る設備と、標準品を代理店経由で売る量産品で違う | 重電・電力機器、FA・産業用ロボット |
部品は、顧客が新しいスマホや車を設計するときに選ばれて、はじめて量産で売れます。そのため、どの用途の顧客が多いかで業績が動きます。JEITAによると、電子部品の用途は2024年度で自動車が39.4%、通信機器が25.6%です(電子部品部会の参加企業約60社の値)。1社の例では、村田製作所の2026年3月期の売上を用途で分けると、通信が35.7%、モビリティが25.9%、コンピュータが16.9%で、コンピュータはサーバ向けで前期より28.4%増えました(会社の推計値で、当期から集計の範囲を変えています)。JEITAの値と村田製作所の値は、数え方が違うので並べて比べません。
装置は、顧客の工場が投資する時期に売上が増え、投資を控えると減ります。一方で、納めた装置が動いている間は保守や部品の仕事が続きます。東京エレクトロンの保守・部品・中古装置・改造(フィールドソリューション)の売上は、2024年3月期の4,285億円から、2025年3月期の5,383億円、2026年3月期の6,260億円へ増えました(東京エレクトロン 2026年3月期 決算説明会資料)。2026年3月期の売上のうち日本向けは、四半期の値を足して計算すると約9.8%で、東京エレクトロンの顧客の工場の多くは海外にあります。工程ごとの装置の違いは「半導体製造装置の業界地図」で扱います。
家電は、家庭の買替えと規制で需要が動きます。JEMAは、ルームエアコンの2026年度の国内出荷を9,332億円と見通し、省エネ法の目標年度を前に需要が高まると想定しています。冷蔵庫は、買替えの間隔が長くなっていることや、少人数の世帯が増えていることで減ると見込んでいます。メーカーと販路の違いは「家電の業界地図」で扱います。
重電・FA機器は、作り方で2つに分かれます。JEMAは、発電用の原動機や大きな変圧器、電力・工場向けの電気設備を「受注生産品」、インバータ・サーボモータ・PLCなどの標準仕様の量産品を「産業用汎用電気機器」と区分し、量産品は代理店を通して売ることが多いとしています。2025年度の見込みで、受注生産品は1兆4,645億円、産業用汎用電気機器は1兆4,988億円です。会社の開示にも、この違いが表れます。三菱電機は、インフラやFAシステムなどの受注高を開示する一方、自動車機器や空調・家電は「受注生産形態をとらない製品が多い」として受注高を示していません。
重電の国内生産は、2026年度に1997年度以来29年ぶりに4兆円を超える見通しです。JEMAは、原材料の費用が高いままであることの影響もあると説明しています。生産額の増加が、すべて作る量の増加というわけではありません。詳しくは「重電・電力機器の業界地図」で扱います。
分野によって、効く法律が違う
電機の分野では、製品の安全、回収、省エネ、無線、輸出、国内の工場への支援について、それぞれ別の法律があります。どの法律が効くかで、品質保証や営業の仕事で確かめることが変わります。下の図は、主な法律と、誰に何を求めるかを並べたものです。
分野によって、どの法律の何が効くのか
| 法律 | 主に効く分野 | 誰に何を求めるか |
|---|---|---|
| 電気用品安全法 | 家電・電源など、政令で定める電気用品 | 義務製造・輸入の事業者は事業開始から30日以内に届出、技術基準に適合させ検査記録を保存。特定電気用品は登録検査機関の適合性検査。できる義務を果たすと表示(PSEマーク)を付けられ、表示のない電気用品は販売できない第3条・第8条・第9条・第10条・第27条 |
| 家電リサイクル法 | 家電(政令で定める特定家庭用機器) | 義務小売業者は、過去に売ったものや買替えの際の同じ種類のものを引き取る。製造業者等は、自社が作った機器の廃棄物を指定引取場所で引き取り、再商品化等をする第9条・第17条・第18条 |
| 省エネ法 | 家電・情報機器など、政令で定めるエネルギーを使う機器 | 国が機器ごとに、最も性能のよい製品などを勘案した判断の基準を公表。勧告一定規模以上の製造・輸入事業者で向上が必要なとき、大臣は勧告でき、従わなければ公表できる。正当な理由なく措置をとらず、省エネを著しく妨げるときは命令もある第149条・第150条 |
| 電波法 | 無線の機能を持つ機器 | 技術基準に合っていることの表示は、登録証明機関の証明などで付く。組み込んだ製品にも同じ表示を付けることができる。総務省令で定める1ワット以下の無線局で、表示のある設備だけを使うものなどは免許が要らない第4条・第38条の2の2・第38条の7 |
| 外為法 | 装置・部品など、輸出する製品 | 義務政令で定める地域を仕向地とする、特定の種類の貨物を輸出するときは、経済産業大臣の許可第48条 |
| 経済安全保障推進法・5G促進法 | 国内の工場(対象の物資は政令で決まる) | できる供給の確保や、特定半導体の生産施設の計画を作り、主務大臣の認定を受けることができる(申請は任意)。認定された特定半導体の計画について、NEDOが助成金の交付や利子補給を行う仕組みがある経済安全保障推進法 第9条、5G促進法 第11条・第29条 |
製品の安全:電気用品安全法では、電気用品を製造・輸入する事業者は、事業を始めてから30日以内に経済産業大臣に届け出なければなりません(第3条)。技術基準に適合させ、検査の記録を作って保存する義務があり(第8条)、特定電気用品は、販売するまでに登録検査機関の適合性検査を受けなければなりません(第9条)。これらの義務を果たすと表示(PSEマーク)を付けることができ(第10条)、表示のない電気用品は販売できません(第27条)。対象の品目は政令で決まります。
回収とリサイクル:家電リサイクル法では、小売業者は、過去に売った家電や、買替えの際の同じ種類の家電の引取りを求められたら引き取る義務があります(第9条)。製造業者等は、自社が作った家電の廃棄物を指定引取場所で引き取り、再商品化等をする義務があります(第17条・第18条)。対象の機器は政令で決まります。
省エネ:省エネ法では、経済産業大臣が、政令で定める機器ごとに、製造事業者等の判断の基準を定めて公表します。基準は、その機器のうち最も性能のよいものの性能などを勘案して決めます(第149条)。生産量や輸入量が一定以上の事業者で、性能の向上が相当程度必要なときは、大臣が勧告でき、従わなければ公表できます。正当な理由なく措置をとらず、省エネを著しく妨げると認めるときは、命令もできます(第150条)。
無線:電波法では、無線局を開くには原則として免許が要ります。ただし、空中線電力が1ワット以下の無線局のうち総務省令で定めるもので、技術基準に合っていることを示す表示(いわゆる技適)のある設備だけを使うものなどは、免許が要りません(第4条)。表示は、登録を受けた証明機関が適合を証明して付けるほか、条文にはほかの付け方(工事設計の認証など)もあります。表示のある設備を組み込んだ製品には、扱う事業者が同じ表示を付けることができます(第38条の7)。無線の機能を持つ製品を作る会社では、この表示の手続きも開発や品質保証の仕事に入ります。
輸出:外為法では、政令で定める地域を仕向地として、特定の種類の貨物を輸出するときは、経済産業大臣の許可が要ります(第48条)。装置や部品の輸出では、品目と仕向地によって許可が必要かどうかが変わり、営業や輸出の管理の仕事で確かめます。
AI・データセンター、国内工場への支援、電動化・脱炭素で、どの仕事が変わるか
2026年3月期の決算や業界団体の資料には、いくつかの変化が表れています。下の図は、変化と、その影響を受ける分野・仕事を並べたものです。根拠の多くは1社の例で、業界全体の動きを示す値ではありません。
AI・データセンター、国内工場への支援、電動化・脱炭素は、どの分野・仕事に影響するか
AIサーバとデータセンターの需要増は、部品・装置・重電の3分野に影響しています。部品では、村田製作所のコンピュータ用途の売上が伸び、パナソニック ホールディングスではデータセンター向けの蓄電システムが大きく伸びました。装置とFAでは、JEMAがFA機器について、半導体・電子部品向けの設備投資で前年度を上回る見込みとしています。重電では、三菱電機のエネルギーシステムが北米を中心としたデータセンターの増設に伴う電力需要で増収になりました。
国内工場への支援は、前の章の計画認定の仕組みで行われます。会社の公表例として、キオクシアは2024年2月に、四日市工場と北上工場の3次元フラッシュメモリの設備投資計画が認定され、助成は最大1,500億円と発表しています(キオクシア「特定半導体生産施設整備等計画の認定について」)。工場ごとの計画は「半導体の業界地図」で扱います。
電動化と脱炭素は、すべてが伸びているわけではありません。パナソニック ホールディングスでは車載電池が減収になり、三菱電機は、パワー半導体の主な市場である自動車・産業の需要の停滞が続いたと説明しています。家電では、JEMAがルームエアコンについて、省エネ法の目標年度を前に需要が高まると想定しています。
これらの変化は、仕事の中身にも表れます。部品会社では、顧客の新製品の設計に合わせる開発、増産ラインを作る生産技術、品質保証に影響します。装置会社では、顧客工場での装置の立ち上げ・保守に影響します。東京エレクトロンFE株式会社の経験者向けの求人では、職種名は「フィールドエンジニア」で、国内外の顧客の工場に納めた装置の立ち上げ・保守・トラブル対応・改良を担い、国内外の出張や転勤が多いと書かれています(東京エレクトロングループ 採用情報)。重電会社では、受注設備の設計、工場での製造・試験、現地での据付に影響します。
研究開発と設備投資も、電機では大きな位置を占めます。JEITAによると、製造業の研究開発費(2024年度)と設備投資額(2024年)のうち、電子・電機はそれぞれ20%です。どちらもJEITAが国の統計から集計した値で、ここでの電子・電機は、電子部品・デバイス・電子回路、情報通信機械、電気機械を合わせた範囲です。
求人票では、列・行・会社の区分を確かめる
同じ「電機」の求人でも、どの列とどの行にいる会社かで、仕事の相手と収入の決まり方が違います。求人票と会社の資料では、次の4点を確かめます。
- 列:部品、つくる道具(装置・計測器)、完成機器のどれを作る会社か
- 行:最後に使うのは家庭、工場や企業やデータセンター、電力会社や鉄道のどれか
- 稼ぎ方:設計段階での採用、設備投資と保守、買替えと規制、受注生産と量産品のどれが効くか
- 会社の区分:総合電機なら、応募する事業がどの区分に入り、その区分の売上と利益がどう開示されているか
求人を出している会社が、大きな会社のグループ会社であることもよくあります。東京エレクトロンFEのように、装置の保守を担うグループ会社が別にある例もあります。応募する会社が親会社のどの区分に入り、その区分の数字がどの決算で開示されているかを確かめると、会社の位置が分かりやすくなります。
大きさの数字を見るときは、物差しと時点を確かめ、違う物差しの数字を足しません。この4点が分かったら、次はその列と行の業界地図で、会社ごとの違いと仕事の流れを確かめます。
このうち、制御機器・産業用ロボット・SIerを含むFA側の分担を見る場合は、FA・産業用ロボットの業界地図で確かめられます。
半導体を作る装置の工程ごとの違いと保守の仕事は、半導体製造装置の業界地図で確かめられます。
エアコン・冷蔵庫などのメーカーと販路の違いは、家電の業界地図で確かめられます。
車載機器を、自動車部品の品目や取引関係から見たい場合は、自動車部品の業界地図で確かめられます。



