「半導体メーカー」の求人には、新しい作り方を開発するプロセス・デバイス開発、工場で量産を立ち上げる生産技術、製造装置を止めない設備保全、品質保証、客先に製品を提案する技術営業、そして工場のラインで働く技能職まで幅があります。同じ半導体でも、どの製品を作るか、どの工程を受け持つか、日本の会社か海外の会社の国内工場かで、仕事の中身も勤務の形も変わります。
この記事では、電子情報技術産業協会(JEITA)の統計分類で「半導体」に入るものを扱います。トランジスタやダイオードなどの半導体素子、集積回路(メモリ・マイクロ・ロジック・アナログなど)、光の半導体(オプトエレクトロニクス)やセンサーなどです(JEITA 調査統計ガイドブック2025-2026)。工程の分業、製品の種類、大きさと波、会社ごとの稼ぎ方、国内工場の新設と国の支援、仕事を順に見ます。
半導体を作るための製造装置と、その保守や輸出は「半導体製造装置の業界地図」で扱います。シリコンウエハー・フォトレジスト・ガスなどの材料は「半導体材料・電子材料の業界地図」、コンデンサなどの受動部品、温度・圧力などのセンサー部品、基板は『電子部品・センサーの業界地図』で扱います。パワー半導体を組み込むインバータや受配電機器は「重電・電力機器の業界地図」、車載半導体を自動車部品の取引の中で見る話は「自動車部品の業界地図」です。
電機・電子部品・半導体の中で半導体がどこに位置するかの全体像は、「電機・電子部品・半導体の業界地図|部品・製造装置・完成機器を誰が作り、どこで稼ぐのか」で確かめられます。
半導体は設計・前工程・後工程の3段で作られ、工程ごとに担い手が分かれる
半導体づくりは、大きく3つの段階に分かれます。まず回路を設計します。次に前工程で、シリコンの円板(ウエハー)の上に回路を作り込みます。最後に後工程で、ウエハーを1個ずつのチップに切り分け、外側の容器(パッケージ)に組み立てて検査します。
経済産業省の半導体産業の事業適応の実施に関する指針(告示)は、前工程・後工程ともに様々な工程があり、製造装置や素材を含む長いサプライチェーンを持つと書いています。工程ごとに、国内外の地域や企業で生産が行われているとも書いています。1つの会社がすべてを受け持つとは限りません。
半導体の供給先は、電機製品・電子部品・製造装置を含む全体の流れから確認できます。 電機・電子部品・半導体の地図
半導体の製造を支える材料は、素材側の工程・価格・顧客との関係も分けて確認できます。 素材・金属・紙の地図
設計・前工程・後工程の3段を、型の違う会社が分けて受け持つ
事業の型と受け持つ範囲
日本で工場を持つ会社の例(計画を含む)
工程の分け方によって、事業の型も分かれます。設計に特化して工場を持たない会社はファブレスと呼ばれます。他社が設計した半導体を受託して作る会社はファウンドリです。経済産業省の半導体・デジタル産業戦略(2023年6月)は、先端ロジック半導体について「設計能力(ファブレス)は米国、製造能力(ファウンドリー)は台湾に集中」と書いています。このほか、設計から製造まで自社で行う会社(IDMと呼ばれることがあります)と、後工程の組立・検査を受託する会社(OSATと呼ばれることがあります)があります。
日本の例を3つ見ます。北海道千歳市で工場を立ち上げているRapidusは、先端ロジックのファウンドリを目指す会社です。国が公表した実施計画の概要では、まずAIデータセンター向けのカスタム半導体を設計するファブレス企業等からの受注確保を目指すとしています。前工程に加えて後工程も開発し、2025年度中に後工程のパイロットラインを動かす計画です。
熊本県菊陽町の工場で作るJASMは、台湾のファウンドリTSMCの子会社です。計画の概要では、出資完了時の株主はTSMCが約86.5%、ソニーセミコンダクタソリューションズが約6.0%、デンソーが約5.5%、トヨタ自動車が約2%です。製品の納入先は日本の顧客が中心と書かれています。
メモリのキオクシアは、四日市と北上の工場でフラッシュメモリを作ります。ただし工場の設備は、キオクシアとサンディスクが出資する製造合弁会社が持っています。製造の業務は、キオクシアまたはキオクシア岩手が受託する形です(計画の概要)。
統計では、工程を分けて数えられません。日本標準産業分類の「集積回路製造業」は、集積回路の「製造並びに組立て」を行う事業所で、前工程の工場も後工程の工場も同じ分類に入ります。
型の違いは仕事にも表れます。ファウンドリでは、作る半導体を設計するのは顧客です。顧客が工場の作り方に合わせて設計できるよう、設計キット(PDK)を用意して顧客を支える仕事があります(Rapidusの例は後で見ます)。自社製品を売る会社では、製品を決めて客先に提案する仕事が社内にあります。
製品の種類で、求められる技術も日本企業の立ち位置も違う
先の告示は、半導体を演算用(ロジック)、記憶用(メモリ)、その他の信号変換用(アナログ・パワー・センサなど)の3つに分けています。3つは求められる技術が違い、業界を引っ張るメーカーもさまざまだと書いています。
世界市場統計(WSTS)の2026年春季予測で2025年の販売額を製品別に見ると、ロジックが2,995億ドル、メモリが2,300億ドル、アナログが865億ドル、マイクロ(マイコンなど)が849億ドルです。光の半導体(オプトエレクトロニクス)は430億ドル、トランジスタなどの個別の素子(ディスクリート)は307億ドル、センサ&アクチュエータは209億ドルでした。
製品の種類ごとに、日本の会社と国内の工場の顔ぶれが違う
| 製品 | 何をするか(告示の分類) | 日本の会社の例と開示の単位 | 国内の工場の例 | 国の資料が書く位置 |
|---|---|---|---|---|
| メモリ | データをためる記憶用 | キオクシアHDメモリ事業の1つだけ(IFRS・3月期) | キオクシア 四日市・北上(フラッシュメモリ)、マイクロンメモリジャパン 広島(DRAM、米国企業の子会社) | NAND・DRAMとも韓国企業が大きなシェア。キオクシア/ウエスタンデジタルとマイクロンの日米連携企業も大きなシェア(2023年戦略) |
| ロジック | 計算する演算用 | Rapidus非上場。2ナノ世代の量産開始は2027年度後半の計画 | JASM 熊本(22/28nm、第2工場は3nmの計画、TSMCの子会社)、Rapidus 千歳 | 先端品は設計(ファブレス)が米国、製造(ファウンドリー)が台湾に集中(2023年戦略) |
| パワー | モーターや電源の大きな電気を制御するその他の信号変換用 | ローム「半導体素子」セグメント(日本基準)三菱電機セミコンダクター・デバイス部門 | ― | 日本企業は欧州・米国と並ぶ世界シェアの三極。複数社でシェアを分け合う(2023年戦略)。SiC・GaNの重要性が増す(2026年戦略) |
| マイコン・アナログ | 機器を制御する(マイコン)、連続した信号を扱う(アナログ)アナログは、その他の信号変換用 | ルネサス エレクトロニクス自動車向け/産業・インフラ・IoT向け(IFRS・12月期)ローム「LSI」セグメント | ― | マイコンはルネサスが16%(2021年値、OMDIAのデータをもとに経済産業省作成、2023年戦略) |
| イメージセンサー | 光を電気の信号に変えるその他の信号変換用(センサ) | ソニーグループI&SS分野(親会社のセグメント、IFRS・3月期) | ― | センサデバイスは日本が競争力を持つ半導体(2026年戦略) |
メモリは、データをためておく半導体です。2023年の戦略は、NAND型フラッシュメモリとDRAMのどちらも韓国企業が大きなシェアを占める一方、キオクシア/ウエスタンデジタルとマイクロンの日米の連携企業も大きなシェアを持つと書いています。日本では、キオクシアが三重県四日市市と岩手県北上市でフラッシュメモリを作り、米国マイクロンの子会社が広島でDRAMを作っています。
ロジックは計算をする半導体で、スマートフォンやデータセンターの処理装置の中心です。先端品は、先に見たとおり設計が米国、製造が台湾に集まっています。国内では、JASMの第1工場が22/28nmのロジックを作り、第2工場は3nmのロジックを作る計画です。Rapidusは2ナノ世代の量産を2027年度後半に始める計画です。
パワー半導体は、モーターや電源で大きな電気を制御する半導体です。2023年の戦略は、パワー半導体で日本企業が欧州・米国と並ぶ世界シェアの三極を占める一方、複数の会社でシェアを分け合っていると書いています。会社の例はロームと三菱電機です。2026年6月改訂の戦略は、AIデータセンター向けの電源などでSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)のパワー半導体の重要性が増すと書いています。
マイコンは機器を制御する小さなコンピューター、アナログ半導体は電圧や音などの連続した信号を扱う半導体です。2023年の戦略は、マイコンでルネサス エレクトロニクスが16%のシェアを持つと書いています。2021年の値で、調査会社OMDIAのデータをもとに経済産業省が作ったものです。
イメージセンサーは、光を電気の信号に変える半導体で、カメラの目にあたります。会社の例は、ソニーグループのイメージセンサー事業です。2026年の戦略は、センサデバイスを日本が競争力を持つ半導体と書いています。
2026年の戦略は、マイコン・パワー・アナログ・センサなどを「重要基盤領域」と呼び、経済安全保障の上でも重要な基盤としています。データセンター、自動車、通信、工場の自動化やロボット向けに、需要が広く増える見込みとしています。
大きさは物差しで変わる:世界市場・日系の生産・国内の工場・貿易
「半導体の市場は何兆円」と1つの数字で言うことはできません。誰が、何を、どこで数えたかで、値が大きく変わるからです。次の表の数字は、物差しが違うため、足したり割ったりできません。
| 物差し | 何を数えるか | 値 |
|---|---|---|
| WSTSの世界市場 | 半導体メーカーが第三者に販売した額(ドル、暦年) | 2025年 7,956億ドル(前年比26.2%増) |
| WSTSの日本市場 | 日本で販売された額。メーカーの国籍や工場の場所は問わない | 2025年 447億ドル(4.3%減)、円で6兆6,937億円(5.5%減) |
| JEITAの世界生産額 | 世界の半導体の生産額と、そのうち日系企業の生産 | 2024年 94兆5,318億円。日系企業は約7%の6兆7,658億円(2024年12月発表の見込み) |
| 経済構造実態調査 | 国内の集積回路製造業の事業所の製造品出荷額等と従業者 | 98事業所、従業者60,795人(2025年6月1日)、出荷額等4兆9,389億円(2024年) |
| 貿易統計 | 国境を越えた輸出入の額(2025年) | 半導体等電子部品の輸出6兆5,880億円・輸入4兆1,835億円 |
WSTSの「日本市場」は、日本で販売された半導体の額です。日本企業の売上でも、国内で作った量でもありません。日本で買われた半導体が、その後海外の工場で機器に組み込まれても、日本市場に入ります。2025年は世界市場が26.2%増えた一方、日本市場はドルで4.3%減りました。
JEITAの見込みでは、日系企業の生産6兆7,658億円のうち、国内での生産が3兆5,547億円で、割合は約53%です。日系企業の生産は世界の約7%ですが、その半分ほどを国内の工場で作っています。
2025年経済構造実態調査の集積回路製造業は、先に見たとおり前工程と後工程を合わせた数字です。この分類に、トランジスタなどの半導体素子製造業(従業者23,599人)と、発光ダイオードなどの光電変換素子製造業(14,019人)を加えると、従業者は98,413人、出荷額等は6兆3,898億円になります(統計表の数字から計算した値)。事業所の主な製品で分類するため、本社や設計の拠点は別の分類に入ることがあります。
集積回路製造業の出荷額等は、2021年の4兆440億円から、2022年4兆2,134億円、2023年4兆4,878億円、2024年4兆9,389億円と増えています。ただし2024年の値は新しい母集団(令和6年経済センサス‐基礎調査)で集計されており、前の年と段差がありうると統計の留意事項に書かれています。
財務省の貿易統計では、2025年の半導体等電子部品の輸出は輸出総額の6.0%を占め、そのうち集積回路(IC)は4兆8,696億円でした。輸入のうちICは3兆5,961億円です。
売上が大きく上下するのは、メモリの価格と需要が短期間で変動するから
半導体の売上は、年によって大きく上下します。特に動きが大きいのがメモリです。
メモリの販売額は2年続けて減った後、AI向けの需要で大きく増えている
| 年 | 全体(億ドル) | うちメモリ(億ドル) |
|---|---|---|
| 2020 | 4,404 | 1,175 |
| 2021 | 5,559 | 1,538 |
| 2022 | 5,741 | 1,298 |
| 2023 | 5,269 | 923 |
| 2024 | 6,305 | 1,655 |
| 2025 | 7,956 | 2,300 |
| 2026予測 | 15,112 | 8,039 |
| 2027予測 | 19,137 | 10,621 |
全体の前年比は2023年8.2%減、2024年19.7%増、2025年26.2%増、2026年予測89.9%増、2027年予測26.6%増。
IFRS、6か月の値。前年同期比436.8%増。会社はデータセンター向けの販売単価の上昇と出荷量の増加によると説明。円の売上で、WSTSのドルの市場とは比べられない。
WSTSの「市場」は半導体メーカーが第三者に販売した額で、生産額ではない。値は原本の百万ドルを億ドルに四捨五入した。
WSTSによると、世界市場は2023年に5,269億ドル(前年比8.2%減)まで落ち、2024年は19.7%増、2025年は26.2%増の7,956億ドルでした。メモリだけを見ると、2022年が15.6%減、2023年が28.9%減の923億ドルと2年続けて減った後、2024年は79.3%増、2025年は39.0%増の2,300億ドルになっています。
WSTSは、2025年の伸びについて、AIの利用拡大に伴うデータセンター投資の恩恵を受けやすいメモリとロジックが成長に寄与したと説明しています。2026年6月2日公表の予測では、2026年の世界市場は89.9%増の1兆5,112億ドル、メモリは249.5%増の8,039億ドルです。AIサーバー向けのメモリと、GPUを含むロジックの高い成長を見込み、前回(2025年12月)の予測から5,300億ドル以上の上方修正をしました。2027年は世界市場が26.6%増の1兆9,137億ドルという予測です。どれも予測で、実績ではありません。
1社の例として、メモリを作るキオクシアホールディングスの2027年3月期 中間期の決算短信(IFRS=国際会計基準)を見ます。2026年4〜9月の売上収益は4兆2,472億円で、前年同期の7,911億円から436.8%増えました。前年同期は、その前の年より13.0%減っていました。営業利益は、前年同期の1,308億円から3兆2,647億円になりました。
会社は、データセンター向けの顧客の需要で平均の販売単価が大きく上がり、出荷量(記憶容量で数えた量)も増えたためと説明しています。そのうえで、半導体メモリ業界は事業環境が短期間に大きく変化するとして、年度の計画値を出していません。値段の上げ下げがそのまま売上と利益に表れる事業の例です。
日本企業の稼ぎ方:会社ごとの開示で見る
日本の半導体の会社は、何を作るかも、事業をどう分けて開示するかも違います。会計基準と決算の時期、利益の名前もそろっていません。そのため、ここでは会社を1社ずつ見て、会社どうしの大きさは比べません。
| 会社 | 主な製品 | 開示の単位 | 会計基準・決算期 |
|---|---|---|---|
| キオクシアHD | フラッシュメモリ | メモリ事業の1つだけ。売上は用途別に分けて示す | IFRS・3月期 |
| ルネサス エレクトロニクス | マイコン・SoC・アナログ・パワー | 自動車向けと、産業・インフラ・IoT向け | IFRS・12月期 |
| ソニーグループ | イメージセンサー | 親会社の「イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)」分野 | IFRS・3月期 |
| ローム | アナログなどのLSI、パワーなどの半導体素子 | LSI、半導体素子、モジュール | 日本基準・3月期 |
| 三菱電機 | パワー半導体・通信用光デバイス | 総合電機の中のセミコンダクター・デバイス | 決算説明会資料の値・3月期 |
キオクシアHDの2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)は、決算短信で売上収益2兆3,376億円(前期比37.0%増)、営業利益8,704億円でした。売上は用途で3つに分けて示しています。PCやデータセンター向けのSSDなどの「SSD & ストレージ」、スマートフォンや車載・産業機器に組み込む「スマートデバイス」、SDカードなどの「その他」です。2026年4〜9月の中間期は、SSD & ストレージが2兆7,907億円、スマートデバイスが1兆3,145億円でした。
ルネサス エレクトロニクスの2025年12月期は、決算短信で売上収益1兆3,212億円(2.0%減)、営業利益2,012億円(9.8%減)でした。事業は自動車向けと、産業・インフラ・IoT向けの2つで、どちらもマイコン、SoC、アナログ半導体、パワー半導体を中心に売っています。2026年12月期 中間期の決算短信では、2026年1〜6月の外部顧客への売上は、自動車向けが3,587億円、産業・インフラ・IoT向けが4,122億円でした。前年同期(組替後)は3,163億円と2,984億円で、この期は産業・インフラ・IoT向けが自動車向けを上回りました。これらは経営者が使う社内指標で、IFRSの値から無形資産の償却費などを除いています。同社は2026年2月、タイミング事業をSiTime社に譲渡する契約を結びました。
ソニーグループでは、2026年3月期の決算短信のI&SS分野が、主にイメージセンサーの事業です。2025年度の売上高は2兆1,515億円、営業利益は3,573億円でした(2024年度は1兆7,990億円、2,611億円)。売上には、グループ内のゲームなどの分野向けの取引925億円を含みます。これは親会社のセグメントの数字で、ソニーセミコンダクタソリューションズ1社の決算ではありません。
ロームの2026年3月期は、決算短信(日本基準)で、外部顧客への売上がLSI(アナログ・ロジック・メモリなど)2,183億9千万円、半導体素子(トランジスタ・ダイオード・パワーデバイス・発光ダイオードなど)2,052億6千3百万円でした。LSIはセグメント利益245億3千5百万円、半導体素子はセグメント損失227億4百万円です。会社は、電気自動車(BEV)市場の成長の見通しが想定を下回ったことを受け、SiC事業の固定資産を中心に多額の減損損失を計上したと説明しています。親会社株主に帰属する当期純損失は1,584億2千4百万円でした。一方で、SiCのパワーデバイスは自動車の電動車(xEV)向けが堅調だったとも説明しています。この期から減価償却の方法を変えたため、前の期との比較には注意が必要です。
三菱電機の2026年3月期決算説明会資料では、セミコンダクター・デバイスの2025年度の売上高は2,871億円、営業利益は475億円でした。パワー半導体の需要の停滞が続いた一方、通信用の光デバイスの需要が堅調だったと説明しています。受注高は、電鉄・電力向けのパワー半導体と通信用光デバイスの増加で前年度を上回りました。同社はパワー半導体事業の再編について協議を進めているとしています。総合電機の中での位置づけは「電機・電子部品・半導体の業界地図」で扱います。
半導体の会社を支える材料と装置にも、日本の会社がいます。2023年の戦略は、後工程の分野で素材・装置ともに日本メーカーが高い技術とシェアを持つと書き、2026年の戦略は、洗浄装置やエッチング装置などの一部の装置と、前工程・後工程の部素材に一定の強みがあると書いています。品目と会社は「半導体材料・電子材料の業界地図」と「半導体製造装置の業界地図」で扱います。
国内の工場新設と国の支援:「認定」と「選定」は別の制度
半導体は、経済安全保障推進法(第7条)に基づく施行令(第1条第6号)で、「半導体素子及び集積回路」として特定重要物資に指定されています。この法律の仕組みは「電機・電子部品・半導体の業界地図」でも触れています。この記事では、工場の新設を直接支える2つの法律を見ます。
1つ目は、通称5G促進法(特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律)です。大量の情報を高速で処理でき、国内で安定して生産することが特に必要な半導体のうち、政令で種類と性能を定めたものを「特定半導体」とし(第2条第4項)、その工場を整える事業者は計画を作って国の認定を「受けることができる」としています(第11条第1項)。認定を受けるかどうかは事業者が決めます。認定の基準には、一定の期間以上続けて生産すること、需給がひっ迫したときに増産などに取り組むこと、技術情報を管理する体制が入っています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、認定を受けた事業者に助成金や利子補給金を出します(第29条)。国が必要な資金の確保に「努める」とする規定(第30条)は、努力義務です。
認定された計画は7件で、JASMが2件、キオクシアが2件、マイクロンが3件です。JASMの第1工場やキオクシアの計画の概要には、10年以上続けて生産する予定が書かれています。7件の最大助成額を足すと2兆110.5億円です(本記事で計算)。これは上限の合計で、実際に交付された額ではありません。
国内の新しい工場は、5G促進法の認定7件と情報処理促進法の選定1件で支えられている
- 場所
- 熊本県菊陽町
- 製品
- ロジック 22/28nm(別途40nm)
- 生産能力
- 4.5万枚/月(12インチ換算、工場全体5.0万枚/月)
- 総従業員
- 1,700名(計画)
- 初回出荷
- 2024年12月
- 最大助成額
- 4,095億円(上限)
- 場所
- 熊本県(具体的な場所は今後決定)
- 製品
- ロジック 3nm
- 生産能力
- 0.6万枚/月(12インチ換算)
- 総従業員
- 約1,700名(計画)
- 初回出荷
- 2028年第4四半期(計画)
- 最大助成額
- 6,451.5億円(上限)
- 製品
- 3次元フラッシュメモリ(四日市は第8・第9世代、北上は第8世代)
- 生産能力
- 四日市6.0万枚/月、北上2.5万枚/月
- 総従業員
- 四日市約7,400名、北上約1,600名(継続生産開始時の計画)
- 初回出荷
- 2025年9月(2024年の計画時点の予定)
- 最大助成額
- 1,500億円(上限)
- 最大助成額
- 929.3億円(上限)
- 製品
- 次世代DRAM(2025年認定の計画)
- 生産能力
- 4万枚/月
- 総従業員
- 約5,200名(広島工場全体、計画)
- 初回出荷
- 2028年第4四半期(マイクロンの会計年度、計画)
- 最大助成額
- 464.7億円(2022年9月30日)、1,670億円(2023年10月3日)、5,000億円(2025年9月12日)(いずれも上限)
- 場所
- 北海道千歳市
- 製品
- 2ナノ世代の先端ロジック(受託生産)
- 量産開始
- 2027年度後半(計画)
- 人
- 正社員1,300人以上・全社2,000人超(2026年7月末)
- 国の支援
- 委託費(〜2025年度)約1.7兆円措置済み、IPA出資1,000億円(2026年2月)
JASMの第2工場は、2026年10月16日に計画の変更が認定されました。変更後の概要では、AIの急速な進展に伴う市場の変化を踏まえ、3nmのロジックを作る計画にしています。初回の出荷は2028年第4四半期の計画です。
2つ目は、情報処理の促進に関する法律です。経済産業大臣が、極めて大量の情報を極めて高速で処理する半導体のうち、国内での生産・供給が安定していないものを指定し(第61条)、その生産に取り組む事業者を公募で選びます(第63〜65条)。選ばれた事業者には、情報処理推進機構(IPA)が出資や劣後ローン、債務保証をできます(第47条第1項第13〜15号)。5G促進法の「認定」とは手続きも支援の形も違います。
この法律で、Rapidusが2025年11月21日に選定事業者に選ばれました。計画では、2027年度後半に2ナノ世代の量産を始め、2031年度ごろの株式上場を目指します。研究開発の委託費は2025年度までに約1.7兆円が措置済みです。IPAは2026年2月に1,000億円を出資し、民間企業を中心とした32社からも1,676億円の出資がありました。国の2026年10月の資料では、2025年12月に顧客が使う設計キット(PDK)の先行評価版を出し、60社以上の顧客と量産に向けた協議を続けています。
輸出には別の決まりがあります。外国為替及び外国貿易法は、政令で定める特定の地域に特定の種類の貨物を輸出するとき、経済産業大臣の許可を受けることを義務づけています(第48条第1項)。政令で定める特定の技術を、特定の国で提供する取引や、特定の国の非居住者に提供する取引にも、許可が必要です(第25条第1項)。どの品目が対象かは政令・省令で決まり、装置の話は「半導体製造装置の業界地図」で扱います。
JASMとマイクロンの工場は海外企業の子会社の工場で、売上は日本企業の売上ではありません。それでも国内で働く場所としては、日本の会社の工場と並ぶ選択肢です。マイクロンの計画の概要には、生産関連の費用の約80%を国内で調達したと書かれています(2023年の実績)。
工場と開発の仕事:工程と部門で中身が分かれる
半導体の会社の仕事は、工程と部門で分かれます。会社が自社の部門をどう説明しているかの例として、Rapidusの採用サイトを見ます。
工程と部門で仕事が分かれ、工場の現場では交替勤務の職種もある
- 回路の設計
- Rapidus設計・PDK/ADK技術(顧客が使う設計キットなど)
- Rapidusプロセス技術(作り方)
- Rapidusデバイス技術(トランジスタなどの素子)
- Rapidus開発企画
- Rapidus生産技術部(量産化技術、歩留まり改善)
- Rapidus生産管理部(試作ロット管理、量産計画)
- Rapidus施設部(工場の計画・建設、ユーティリティ)
- RapidusD/Lオートメーション部(搬送ロボット・制御)
- キオクシア岩手ラインエンジニア(装置の生産データを監視・分析し改善)
- キオクシア岩手オペレータ
- キオクシア岩手マシンキーパ
- キオクシア岩手施設管理職・技術職
- 切り分け・組立・検査
- Rapidusチップレットパッケージ技術(先端のパッケージ)
休憩105分。4日働いて2日休む「4勤2休」。年間休日161日(2025年度)。
年間休日125日(2025年度)。勤務地は岩手県北上市。四日市工場への出向(半年〜3年)の可能性がある。
キオクシア岩手の高卒採用の条件で、半導体工場の勤務がすべてこの形ではない。Rapidusの名前は採用サイトの部門名で、求人票の職種名とは限らない。タグのない項目は一般的な仕事の説明。
開発を担うエンジニアリングセンターには、プロセス技術、デバイス技術、設計・PDK/ADK技術、チップレットパッケージ技術、開発企画の部門があります。前工程と後工程を合わせて、設計からパッケージまで一貫して開発すると説明しています。量産を担うオペレーション本部には、工場の計画・建設とユーティリティ(電気・水・ガスなど)の運用を担う施設部、搬送ロボットや制御システムのD/Lオートメーション部、量産化技術と歩留まり(良品の割合)の改善を担う生産技術部、試作品のロットの管理と量産の計画を担う生産管理部があります。電気・電子、機械、物質・材料、化学、情報・ソフトウェア、物理、数学などの経験を生かせると書いています。これは部門の紹介で、求人票の職種名とは限りません。
工場の現場の仕事の例は、キオクシア岩手の高卒採用です。職種は、ラインエンジニア・オペレータ・マシンキーパ(いずれも技能職)、施設管理職、技術職です。ラインエンジニアは、製造装置の生産データをPCで監視・分析し、異常を見つけて改善する仕事です。
キオクシア岩手の募集では、技能職と施設管理職は二交替制です。勤務時間は7:00〜17:50、8:15〜19:05、19:00〜5:50、20:15〜7:05の4つで、休憩は105分、4日働いて2日休む「4勤2休」です。年間休日は161日(2025年度)です。技術職は8:30〜17:15(一部フレックス)で、年間休日は125日(2025年度)です。勤務地は岩手県北上市で、四日市工場に半年から3年出向する可能性があると書かれています。これはキオクシア岩手の高卒採用の条件で、半導体工場の勤務がすべてこの形というわけではありません。
2026年の戦略は、製造現場のデータを分析するデータサイエンティストなども重要な半導体人材だとしています。
採用の規模は、国の資料に計画として書かれています。JASMの第1工場の総従業員数は1,700名で、台湾から300名、ソニーから200名、地域から1,200名を雇う計画でした。第2工場は約1,700名で、台湾から約500名、地域から約1,200名の計画です。第1工場の計画では大卒・高専卒、第2工場の計画では大卒・高専卒・高卒を積極的に雇うとしています。キオクシアの計画の概要には、グループで過去4年に約2,000名の新卒を採用したと書かれています。マイクロンの計画の概要は、過去5年に約900人の新卒を雇ったとしています。
Rapidusは、2026年7月末に正社員が1,300人以上、全社の従業員が2,000人を超えました。北海道での直接雇用は、派遣社員を含めて1,454人以上です(2026年8月末時点)。千歳市やその周辺には、半導体関連の65社が拠点を置くことを決めています(国の2026年10月の資料)。
求人を見比べるときの確認点
- 何を作る会社か:メモリ・ロジック・パワー・マイコン/アナログ・イメージセンサーのどれか。製品で求められる技術と、売上の波の大きさが違う
- どの工程か:設計・前工程・後工程のどこを受け持つ職場か。統計では前工程と後工程が同じ分類に入るので、求人票で確かめる
- 事業の型:自社製品を売る会社か、他社の設計を受託して作る会社か。顧客との関わり方が変わる
- 雇う会社:日本の会社か、海外企業の子会社か、製造を受託するグループ会社か。出向の可能性もあわせて見る
- どの制度の計画か:5G促進法で認定された計画か、情報処理促進法で選ばれた事業か。人数・出荷・量産の時期は計画で、変わることがある
- 勤務の形:交替勤務か日勤か、休日の数。同じ会社でも職種で違うことがある
半導体の前工程・後工程を支える装置と保守の事業は、半導体製造装置の業界地図で確かめられます。
車載半導体を組み込む部品メーカーの取引と仕事は、自動車部品の業界地図で確かめられます。



