半導体製造装置を、前工程・後工程・検査の装置の種類と日本の会社の例、新しい装置の販売と納めた後の保守・部品・改造という稼ぎ方、国内生産と会社の売上で見る設備投資の波、外為法・輸出貿易管理令・貨物等省令による輸出の決まり、地域の数字の読み方で整理します。フィールドエンジニア・開発・生産・営業の仕事と、求人を見比べるときの確認点も分かる内容です。

半導体製造装置の会社の求人には、お客さまの工場で装置を立ち上げて保守するフィールドエンジニアやカスタマーエンジニア、装置の機械・電気・ソフトウェアやプロセス(加工の条件)を作る開発、自社の工場で装置を組み立てる生産技術・組立、装置を提案する営業や営業技術まで幅があります。半導体メーカーの求人と違うのは、半導体を作る側ではなく、半導体を作る工場に道具を売る側だという点です。仕事の場所も、自社の工場だけでなく、国内外のお客さまの工場になります。

この記事では、日本半導体製造装置協会(SEAJ)の分類表で、ウエハー製造用・ウエハープロセス用処理・組立用・検査用・関連装置に入る装置を扱います。中心は、回路を作り込む前工程の装置、チップに切り分けて組み立てる後工程の装置、検査の装置です。工程と装置、日本の会社の例、稼ぎ方、設備投資の波、輸出の決まり、仕事を順に見ます。

半導体メーカーの工程と製品、工場の新設と国の支援は「半導体業界の地図|設計・前工程・後工程と工場の仕事」で扱います。シリコンウエハーやフォトレジストなどの材料は「半導体材料・電子材料の業界地図|日本の化学メーカーは、どの材料で世界シェアを握り、どう稼ぐのか」で扱います。工場へのガス供給は「化学メーカーの業界地図|川上・川中・川下と仕事の違い」の産業ガスの章で扱います。

汎用の計測器・分析機器と、東京精密の計測機器の事業は「計測器・分析機器の業界地図|はかる装置を誰が作り、研究所と工場でどう稼ぐのか」、工作機械の会社と受注統計は「工作機械の業界地図|受注・海外需要・保守と仕事」、産業用ロボットは「FA・産業用ロボットの業界地図|メーカーとSIerの違い」、真空ポンプなどの汎用の機械は「ポンプ・ボイラ・ベアリングなど汎用機械の業界地図|工場や建物を動かす機械は、機器販売と保守でどう稼ぎ、仕事はどう違うのか」で扱います。電機・電子部品・半導体の中で装置がどこに位置するかと、日立製作所のように装置の事業をグループの中に持つ会社の例は、「電機・電子部品・半導体の地図|製品・顧客・仕事の違い」で扱います。

半導体製造装置を電機・電子部品・半導体の全体の中で見るには、電機・電子部品・半導体の業界地図で確かめられます。

ウエハーが半導体になるまで:工程ごとに装置が分かれる

半導体は、シリコンの円板(ウエハー)の上に回路を作り込む前工程と、ウエハーを1個ずつのチップに切り分けて組み立てる後工程、できたものを試す検査を通って作られます。工程ごとに専用の装置があり、作る会社も分かれます。

SEAJの半導体製造装置分類表は、装置をAからGの7つに分けています。設計用(A)、マスク・レチクル(回路の原版)製造用(B)、ウエハー製造用(C)、ウエハープロセス用処理装置(D)、組立用(E)、検査用(F)、関連装置(G)です。太陽電池用の装置は入りません。

前工程・後工程・検査で装置が分かれ、日本の会社は開示にある工程ごとに受け持つ

装置の種類はSEAJの半導体製造装置分類表の名前。会社の札は、会社の決算資料にある工程・装置の名前だけで置いた。会社名は例で、各工程の会社をすべて示したものではない。シェアや順位は表していない。

出典:日本半導体製造装置協会「半導体製造装置分類表」、東京エレクトロン「2027年3月期第2四半期 決算説明会資料」・有価証券報告書(第63期)、SCREENホールディングス「2027年3月期第2四半期 決算説明会資料」、KOKUSAI ELECTRIC「2026年3月期 決算説明資料」、レーザーテック「2026年6月期 決算短信」、ディスコ・東京精密・アドバンテスト「2026年3月期 決算短信」。

前工程の装置(D)は種類が多いのが特徴です。ウエハーに薄い膜をつける薄膜形成(成膜)装置、光に反応する薬(レジスト)を塗って現像するレジスト処理装置、回路の模様を焼き付ける露光・描画装置、不要な部分を削るエッチング装置、汚れを落とす洗浄・乾燥装置があります。ほかに、熱を加える熱処理装置、不純物を打ち込むイオン注入装置、表面を平らに磨くCMP装置、膜の厚さや異物を調べる検査評価装置が並びます。これらを組み合わせて繰り返し、回路を重ねていきます。

後工程の組立用装置(E)には、ウエハーをチップに切り分けるダイシング装置、チップをつなぐボンディング装置、樹脂で包むモールドなどのパッケージング装置があります。検査用装置(F)は、電気の信号を入れて動きを試すテスタ(SoC・ロジック用とメモリ用)、ウエハー上のチップとテスタをつなぐプローバ、試す半導体を運んでテスタにつなぐハンドラ、熱や電圧をかけて試すバーンインなどの装置です。

工程の呼び名と分類の区切りは、いつも一致するわけではありません。分類表では、ウエハーの裏を削って薄くする裏面研削盤(バックグラインダ)は、組立用ではなくウエハープロセス用処理装置の「その他」に入っています。分類表は2012年に作られたもので、新しい装置の名前がすべて入っているとは限りません。

工程ごとの日本の会社:開示にある工程名で見る

装置の会社は、受け持つ工程が会社ごとに違います。ここでは、会社が決算資料で使う工程や装置の名前だけで、会社の例を見ます。工程ごとの会社をすべて挙げたものではなく、会社どうしの大きさも比べません。会計基準・決算期・事業の分け方がそろっていないからです。

会社開示にある工程・装置開示の単位会計基準・決算期
東京エレクトロン塗布現像・洗浄・エッチング・成膜、プローバ半導体製造装置の1区分日本基準・3月期
SCREENホールディングス枚葉式洗浄・バッチ式洗浄・コーターデベロッパー4つの事業のうち半導体製造装置事業(SPE)日本基準・3月期
KOKUSAI ELECTRIC成膜などの前工程の装置半導体製造装置の1区分IFRS・3月期
レーザーテック検査・測定装置検査・測定装置の1区分日本基準・6月期
ディスコダイシング・研削・研磨の装置と精密加工ツール1区分日本基準・3月期
東京精密プローバ、グラインダ・ダイサ半導体製造装置と計測機器の2区分日本基準・3月期
アドバンテストSoC・メモリのテスタ、テストハンドラテストシステム事業とサービス他の2区分IFRS・3月期

東京エレクトロンは、前工程の複数の工程の装置とプローバを作ります。有価証券報告書によると、事業は「半導体製造装置の開発・製造・販売・保守サービス」です。製造は東京エレクトロン テクノロジーソリューションズや東京エレクトロン九州・宮城などの子会社、保守サービスは東京エレクトロンFEや海外の子会社が担います。会社は2026年3月期を「FY2026」と呼び、この期の売上高は2兆4,435億円でした。

SCREENホールディングスは、半導体製造装置事業(SPE)のほかに、印刷関連の機器やディスプレーの製造装置などの事業を持ちます。2027年3月期の中間期の説明会資料では、2026年4〜9月のSPEの売上は、枚葉式洗浄が約75%、バッチ式洗浄が約15%、コーターデベロッパーなどが約10%です。会社全体の数字をSPEの数字として読まないよう注意が要ります。

KOKUSAI ELECTRICは、半導体製造装置の1区分で開示する会社です。2026年3月期の決算短信(IFRS)では、売上収益は2,351億円(前期比1.6%減)で、NAND型フラッシュメモリ向けの装置の販売と、主にDRAM向けの改造が伸びたと説明しています。

レーザーテックは、決算短信で事業を「検査・測定装置の設計、製造、販売」の1区分としています。決算は6月期で、3月期の会社と期がずれます。

ディスコは、ウエハーを切る・削る・磨く精密加工装置と、その装置で使う消耗品の精密加工ツールを作ります。東京精密は、プローバと、グラインダ・ダイサなどの加工装置からなる半導体製造装置の事業と、計測機器の事業を持ちます。2026年3月期の決算短信では、半導体製造装置の受注高は1,234億円、売上高は1,279億円、営業利益は284億円でした。会社は、HBM(積み重ねた高速のメモリ)向けのプローバと、AI向けのパッケージング工程向けのグラインダの引き合いを挙げています。

アドバンテストは、後工程で使うテスタとテストハンドラ、テスタと半導体をつなぐデバイスインタフェースなどを作ります。2026年3月期から、事業の区分を「テストシステム事業」と「サービス他」の2つに変えました。ロジックICテスタなどの国内生産額は、国の生産動態統計では電気計測器の調査票(2380)に入り、2025年は秘匿とされて公表されていません。統計でテスタの大きさは示せません。

装置の中には、ウエハーを運ぶ搬送装置や、真空ポンプ・電源などの部品やサブシステム(装置の中の一まとまりの機能)が組み込まれています。分類表のG(関連装置)には、搬送、純水・薬液、ガス、クリーンルームの装置が入ります。この記事では、関連装置を構成する企業の例までは扱いません。真空ポンプなどの汎用機械は「ポンプ・ボイラ・ベアリングなど汎用機械の業界地図」、クリーンルームで使うロボットは「FA・産業用ロボットの業界地図」で扱います。

工作機械との違いも押さえておきます。工作機械は自動車や機械などの幅広い業種の工場が買います。半導体製造装置の買い手は、半導体を作る工場です。統計も別で、生産動態統計では半導体製造装置の調査票(2570)で数えます。

ほかの産業機械と受注・保守の違いを比べるには、産業機械・設備の業界地図で確かめられます。

稼ぎ方:新しい装置と、納めた装置の保守・部品・改造

装置の会社の売上は、大きく2つに分かれます。1つは新しい装置の販売です。もう1つは、お客さまの工場で動いている装置の保守や部品、性能を上げる改造、中古装置の販売です。

東京エレクトロンの有価証券報告書は、売上を計上する時点を分けて書いています。装置は引き渡しと設置の作業が終わった時点、保守用の部品は引き渡した時点、改造は作業が終わった時点です。保守サービスは、契約の期間にわたって少しずつ計上します。装置を納めた後も、装置が動いている間は売上が続く形です。

新しい装置と納めた後の売上:呼び名も範囲も会社ごとに違う

上の段は、会社ごとの売上の分け方。区分の名前と範囲が会社ごとに違うので、納めた後の区分は会社ごとに色を変えた。帯どうしを並べて比べない。下の段は、顧客の所在地で分けた売上(2社だけ)。割合は本記事で計算した値(KOKUSAI ELECTRICの旧基準は会社が示す比率)。

会社ごとの売上の分け方(比べない)

顧客の所在地で分けた売上(2社の例)

会社ごとに期・会計基準・区分の定義が違う。SCREENホールディングスのポストセールスとディスコの精密加工ツールは、図示できる割合が開示されていないため、本文でのみ説明する。顧客の所在地で分けた売上で、顧客の会社の本拠の国とは限らない。

出典:東京エレクトロン 有価証券報告書(第63期)、KOKUSAI ELECTRIC「2026年3月期 決算説明資料」、レーザーテック「2026年6月期 決算短信」、アドバンテスト「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕」、ディスコ「2026年3月期 決算短信」。割合は本記事で計算(KOKUSAI ELECTRICの旧基準を除く)。

保守・部品・改造の呼び名と範囲は、会社ごとに違います。そのため、ここでは会社ごとに定義を添えて見ます。割合を並べて会社を比べることはできません。

東京エレクトロンの2026年3月期の売上は、新規装置が1兆8,173億円、「フィールドソリューション他」が6,263億円です(有価証券報告書)。フィールドソリューションは、納めた装置の保守用部品・サービス・装置の改造・中古装置の販売などです。決算説明会資料では、フィールドソリューションの売上は2024年3月期の4,285億円から、2025年3月期の5,383億円、2026年3月期の6,260億円へ増えました。内訳は、パーツ・サービスが4,359億円、中古装置・改造が1,900億円です(2026年3月期)。会社は、お客さまの工場の稼働率が一段と上がり、パーツ・サービスと改造がともに好調だったと説明しています。2つの資料は区分と端数の扱いが少し違います。

KOKUSAI ELECTRICは、既存の装置の性能や機能を上げる改造を「アップグレード改造」と呼び、新しい装置の代わりになるものと説明しています。2026年3月期の決算説明資料では、アップグレード改造をサービスに入れる旧基準で、装置が1,400億円、サービスが951億円、比率は装置60%・サービス40%です。アップグレード改造を用途ごとの装置の側に入れる新基準では、サービスは516億円、装置は1,834億円になります。同じ会社の同じ期でも、基準でサービスの大きさが変わる例です。会社は、装置の販売の一部がアップグレード改造に置き換わったと説明しています。

レーザーテックの2026年6月期の決算短信では、サービスの売上が586億円で、前期より36.5%増えました。売上高に占める割合は計算すると約25.4%で、前期の約17.1%から上がっています。

アドバンテストの「サービス他」は、サポート・サービスのほか、テスト用のインタフェースボードなどの消耗品や、ナノテクノロジー関連の製品も含みます。2026年3月期の売上高は1,092億円でした(決算短信、IFRS)。

ディスコは、消耗品の精密加工ツールの出荷が、お客さまの設備の稼働率などに連動して高い水準だったと説明しています(2026年3月期 決算短信)。SCREENホールディングスは、保守や部品などの「ポストセールス」を新しい装置と別に開示し、お客さまの工場の高い稼働率を背景に順調に伸びたと説明しています。

お客さまの多くは海外にいます。東京エレクトロンの2026年3月期の売上を顧客の所在地で分けると、中国が約34.1%、韓国が約22.3%、台湾が約20.5%で、日本は約9.8%です(計算値)。ディスコは中国が約30.9%、台湾が約26.9%、日本が約10.4%です(計算値)。アドバンテストは、台湾・中国・韓国などを含むアジアが約91.8%でした(計算値)。

開示されている主な顧客は、東京エレクトロンではSamsung Electronicsが3,681億円、TSMCが3,158億円、ディスコではTSMCが482億円です。どれも1社の開示で、業界全体で顧客がどれだけ集まっているかを示すものではありません。

設備投資の波:国内生産・会社の売上・受注で見る

装置の注文は、半導体メーカーが工場にいつ、どれだけ投資するかで大きく上下します。投資の判断や工場の新設は「半導体業界の地図」で扱い、この記事では装置の側に届く波を見ます。

装置を使う半導体メーカーの工程分業と稼ぎ方は、半導体の業界地図で確かめられます。

まず、波を測る物差しを分けておきます。どれも数えている範囲が違うので、足したり比べたりできません。

物差し何を数えるか値
生産動態統計(調査票2570の半導体用4品目)国内の事業所が作った装置の生産額。販売額・海外工場の生産・保守は入らない。テスタも入らない2025年 2兆9,333億円(4品目の合計は計算値)
経済構造実態調査(2671 半導体製造装置製造業)主に半導体製造装置を作る事業所の製造品出荷額等と従業者。部品を作る事業所も入りうる2024年 5兆4,084億円、1,829事業所、従業者10万1,847人(2025年6月1日)
貿易統計(半導体等製造装置)国境を越えて輸出した額2025年 4兆5,471億円
会社の売上海外での生産や、保守・部品・改造も含む。期と会計基準は会社ごとに違う例:東京エレクトロン 2026年3月期 2兆4,435億円
SEAJの販売統計日本製の装置の販売高(3か月移動平均)を毎月公表転載には協会の許可が要るため、この記事では値を載せない

装置の国内生産は、2023年に減ってから増え、2026年1〜8月は前年同期を18.6%上回る

経済産業省の生産動態統計(調査票2570)で、半導体用の4品目(ウエハー製造用、ウエハープロセス用処理、組立用、関連装置)の生産額を足した。国内の事業所の生産額で、販売額・海外工場の生産・保守は入らない。テスタも入らない。2026年は8か月分なので、右の点線の枠に分けた。

010,00020,00030,000億円 15,1592019 16,2022020 21,4032021 26,6902022 24,2952023 29,4142024 29,3332025 前年比-9.0%
年生産額(億円)前年比
201915,159—
202016,202+6.9%
202121,403+32.1%
202226,690+24.7%
202324,295-9.0%
202429,414+21.1%
202529,333-0.3%

4品目の合計・前年比・内訳の割合は本記事で計算。2019〜2023年は2023年年報の時系列表、2024・2025年は各年の年報、2026年は8月分確報の値。生産額で、会社の売上や輸出額とは範囲が違い、足したり比べたりしない。日本半導体製造装置協会(SEAJ)の販売統計は、転載に協会の許可が要るため使っていない。

出典:経済産業省「生産動態統計」2023年年報 時系列表、2024年年報、2025年年報、2026年8月分確報(調査票2570、e-Stat掲載)。合計・前年比・割合と棒の高さは本記事で計算。

経済産業省の生産動態統計で、半導体用の4品目(ウエハー製造用、ウエハープロセス用処理、組立用、関連装置)の生産額を合計しました(計算値)。2019年の1兆5,159億円から、2022年には2兆6,690億円になりました。2023年は2兆4,295億円で、前年より9.0%減っています。2024年は2兆9,414億円、2025年は2兆9,333億円でした。2025年は、前工程の装置にあたるウエハープロセス用処理装置が4品目の約63.4%を占めます(計算値)。統計は増減の理由を書いていないため、ここでは数字の動きだけを見ます。

2026年は、1〜8月の合計が2兆2,201億円で、2025年の同じ期間(1兆8,723億円)より18.6%多くなっています(計算値)。2026年は確報、2025年は年報の値で、あとで直されることがあります。

2025年経済構造実態調査の半導体製造装置製造業の製造品出荷額等は、2021年が4兆1,421億円、2022年が4兆8,820億円、2023年が4兆6,065億円、2024年が5兆4,084億円です。2024年の値から集計のもとになる事業所の名簿が新しくなったため、前の年との増減は計算しません。

会社の売上は、四半期ごとにも大きく動きます。東京エレクトロンの2027年3月期 第2四半期の説明会資料では、四半期の売上高は6,300億円(2026年3月期の第2四半期)、5,520億円、7,118億円、7,323億円と動き、2027年3月期の第2四半期(2026年7〜9月)は9,350億円でした。2027年3月期の売上高の予想は3兆7,000億円で、前期より51.4%多い見込みです。

受注と売上の間には時間差があります。レーザーテックの2026年6月期は、受注高が2,375億円で、前期の1,052億円から増えました。一方で売上高は2,305億円で、前期より8.3%減りました。会社は、前期の受注高の影響で売上が減ったと説明しています。注文が増えても、装置を作って納めるまで売上に表れない例です。

どの半導体向けの投資が強いかも、時期によって入れ替わります。会社の説明を並べます。

  • 東京エレクトロン(2026年3月期):新しい装置の売上の用途は、ロジック・ファウンドリなどの非メモリが59%、DRAMが31%、不揮発性メモリが10%
  • SCREENホールディングス(2026年4〜9月):ファウンドリー向けが減り、DRAMを中心とするメモリー向けとポストセールスが増えた
  • KOKUSAI ELECTRIC(2026年3月期):前の期に活発だった中国でのDRAM向けの投資が落ち着いた
  • アドバンテスト(2026年3月期):高性能なSoC(HPC・AI関連)向けのテスタが大きく増え、自動車・産業機器などの成熟した半導体向けは弱い
  • ディスコ(2026年3月期):高性能な半導体向けは好調で、パワー半導体向けは電気自動車の需要の鈍化で低調

どれも1社の説明で、業界全体の傾向とは限りません。ただ、同じ時期でも、会社がどの用途の工場に強いかで、受注の波の形が違うことが分かります。

納めた装置の保守や消耗品の売上は、別の理由で説明されています。東京エレクトロン・SCREENホールディングス・ディスコは、いずれもお客さまの工場の稼働率の高さを挙げています。新しい工場への投資の波と、すでにある工場の稼働の波は、時期が同じとは限りません。

輸出の決まりと、地域の数字の読み方

装置の多くは海外の工場へ出荷されるため、輸出の決まりが仕事にかかわります。外国為替及び外国貿易法(外為法)の枠組みは「半導体業界の地図」でも触れているので、ここでは、どの装置が対象になるかを見ます。

決まり書かれていること強さ
外為法 第48条第1項政令で定める特定の地域を仕向地として、特定の種類の貨物を輸出する者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない許可を受ける義務
輸出貿易管理令 別表第1の7の項(16)半導体素子・集積回路・半導体物質の製造用の装置や試験装置、その部分品・附属品のうち、省令で定める仕様のもの。仕向地は全地域対象の貨物と地域を決める
貨物等省令 第6条第17号露光・リソグラフィ、エッチング、成膜、アニール(熱処理)、洗浄、イオン注入、欠陥の検査・計測、試験装置などを、用途や性能などの条件つきで並べる対象の仕様を決める

外為法の第48条第2項は、同じ種類の貨物を、それ以外の地域へ輸出する場合にも、大臣が許可を受ける義務を課すことが「できる」としています。装置そのものだけでなく、技術を渡すときにも許可の決まりがあります(第25条)。

貨物等省令の第6条第17号には、たとえば極端紫外線(EUV)用のレジストを塗って現像する装置、表面を改質した後に乾燥する工程をもつ枚葉式のウェット洗浄装置、パターンのあるウエハーの欠陥を調べる検査装置なども挙がっています。第17号の2には、集積回路の画像を撮る走査型電子顕微鏡や、ごく低い温度で使うウエハープローバも並びます。どれも用途・仕組み・性能などの条件がついていて、装置の種類の名前だけで対象かどうかは決まりません。前工程と検査の多くの工程の装置について、条件に当たるものが並んでいます。

条文の仕向地は「全地域」で、特定の国の名前は出てきません。許可が要るかどうかは、装置の仕様と仕向地で決まります。東京エレクトロンは有価証券報告書で、輸出入や経済安全保障を含む各国の法令の制約を受けると書いています。そのうえで、製品に適用される法令について、規制の内容と対象となる製品・部品を整理していると説明しています。

地域の数字は、物差しによって中国の割合が違って見えます。財務省の貿易統計では、2025年の半導体等製造装置の輸出は4兆5,471億円で、輸出総額の4.1%でした。仕向地別では、中国が1兆9,108億円(前年比12.2%減)、韓国が7,146億円(11.7%増)、米国が3,699億円(30.2%減)です。中国向けは全体の約42.0%、アジア向けは約89.5%です(計算値)。統計は、増減の理由を書いていません。

一方で、東京エレクトロンの約34.1%とディスコの約30.9%は、お客さまの所在地で分けた割合です。KOKUSAI ELECTRICの「中国地場」向けの比率35%(2026年3月期)は、本拠が中国にある半導体メーカー向けの売上の割合で、会社独自の分け方です。会社は2027年3月期に29%になると見込んでいます。仕向地、顧客の所在地、顧客の本拠と、定義が3つとも違うので、割合を並べて比べることはできません。

仕事:フィールドエンジニア・開発・生産・営業

装置の会社の仕事は、装置の一生のどこにかかわるかで分かれます。

フィールドエンジニアは、納めた装置の立ち上げから保守・改造までを受け持つ

装置の一生の流れと、それぞれの場面に出てくる職種。職種名は、東京エレクトロンFEの求人、ディスコの採用サイトの職種一覧、KOKUSAI ELECTRICの社員紹介にあるもの。会社によって呼び名と分担は違う。

出典:東京エレクトロングループ 採用情報(東京エレクトロンFE フィールドエンジニアの求人、2026年11月2日時点)、東京エレクトロン 有価証券報告書(第63期)、ディスコ 採用サイト「職種を知る」、KOKUSAI ELECTRIC 新卒採用サイト「人を知る」。

お客さまの工場で装置を支えるのがフィールドエンジニアです。東京エレクトロンFE株式会社の経験者向けの求人では、職種名は「フィールドエンジニア」です。仕事は、国内外のお客さまの工場に納めた装置の立ち上げ、メンテナンス、トラブルへの対応、お客さまの求めに応じたカスタマイズ・改良です。開発・生産の拠点で、既存の装置を改善する仕事もあります。大きな不具合では、自ら装置を分析・解析し、専門の技術者と協力して対応します。この求人の担当工程の例はエッチングで、初任地は宮城です。国内外の出張や転勤が多いと書かれ、将来は海外駐在や新しい装置の開発に進む可能性もあるとしています。これは1社の1つの求人の条件で、業界の勤務の形がすべてこうだというわけではありません。同じ求人一覧には、東京エレクトロン宮城の、データの活用・分析も担うフィールドエンジニアの求人もあります。

ディスコの採用サイトの職種一覧には、技術系として新規装置開発(メカ・エレキ・ソフト)、精密加工ツール開発、アプリケーション開発、カスタマーエンジニア(国内・海外)、技術サポート、営業技術が並びます。製造系には生産技術や精密加工装置の製造、精密加工ツールの製造、営業系には国内営業と海外営業があります。消耗品のツールを作る会社なので、化学・材料系の開発の仕事もあります。

KOKUSAI ELECTRICの新卒採用サイトの社員紹介では、プロセスエンジニア、機械エンジニア、電気エンジニア、ソフトウェアエンジニア、生産技術エンジニア、フィールドエンジニア、装置組立、国内営業という職種が紹介されています。これは社員紹介に付いた職種の表示で、募集要項の職種名とは限りません。

雇う会社がどこかも、求人で確かめる点です。東京エレクトロンでは、製造は東京エレクトロン テクノロジーソリューションズなどの子会社、保守サービスは東京エレクトロンFEが担います。同じグループでも、応募する会社によって仕事の中身と勤務の場所が変わります。

国内で装置を作る人の数は、生産動態統計の月末の従事者数で見られます。調査票2570(半導体製造装置とフラットパネル・ディスプレイ製造装置)の品目に従事する人は、2024年1月の2万5,540人から、2025年12月に2万7,852人、2026年8月に2万8,835人になりました。この数には、装置の会社の営業や保守、海外で働く人は入りません。東京エレクトロンの連結の従業員数は2万236人です(2026年3月31日)。連結の従業員数は海外の子会社や営業・保守の人も含み、統計とは範囲が違うので比べられません。

生産の拠点を増やす動きもあります。SCREENホールディングスは、京都府長岡京市に半導体製造装置の新しい拠点をつくり、洗浄装置の生産工程の一部を担わせる計画です(投資は約250億円、2028年1月の操業開始予定)。

求人を見比べるときの確認点

  • どの工程の装置か:前工程(成膜・塗布現像・エッチング・洗浄など)、後工程(研削・ダイシングなど)、検査(プローバ・テスタなど)のどれか。必要な知識と、お客さまの工場で触れる場所が違う
  • 新しい装置の仕事か、納めた装置の仕事か:開発・組立・営業は新しい装置、フィールドエンジニアは納めた装置の立ち上げ・保守・改造が中心
  • 雇う会社:装置の会社の本体か、製造や保守を担うグループ会社か
  • お客さまの地域:売上の多くが海外の工場から来る会社では、出張・転勤・海外駐在の有無と頻度を求人票で確かめる
  • 決算期と受注・売上の局面:3月期か6月期か。受注が先に増えている段階か、納入が進んで売上に表れている段階か
  • 輸出の決まりとのかかわり:営業や輸出の管理の仕事では、装置の仕様と仕向地で許可の要否が変わる