「機械メーカー」の求人には、機械設計、制御設計、サービスエンジニア、営業や営業技術といった職種が並びます。同じ職種名でも、工作機械の会社と建設機械の会社、空調の会社では、売る相手も、注文の受け方も、売った後の仕事も違います。産業機械の分野は、何を作るかと同時に、主にどの業界に売るかで性格が分かれます。この記事では、その違いを1枚の地図にしたうえで、大きさの物差し、作り方と売り方、売った後の稼ぎ、海外、ルール、仕事を横に並べて見ます。
この記事の「産業機械」は、国の日本標準産業分類の「はん用機械器具製造業」(ボイラ・ポンプ・圧縮機・エレベータ・冷凍機・軸受など)と「生産用機械器具製造業」(農業機械・建設機械・工作機械・ロボット・化学機械・金型など)が中心です。半導体製造装置は統計上は生産用機械に入りますが、「半導体製造装置の業界地図」と「電機・電子部品・半導体の業界地図」で扱います。フォークリフトは統計上は輸送用機械ですが、この記事ではマテハンの分野に置きます。計測器・分析機器と医療機器は「計測器・分析機器の業界地図」「医療機器の業界地図」、発電機・モータ・インバータ・受変電などの電気の設備は「重電・電力機器の業界地図」で扱います。
各分野の詳しい仕組み・会社・仕事は、それぞれの業界地図で説明します。工作機械は「工作機械の業界地図」、制御機器・ロボット・SIerは「FA・産業用ロボットの業界地図」で扱っています。ほかに「建設機械の業界地図」「農業機械の業界地図」「マテハンの業界地図」「空調・冷凍機器の業界地図」「ポンプ・ボイラ・ベアリングなど汎用機械の業界地図」があります。
工作機械の機種、受注、海外需要、保守を詳しく見る場合は、工作機械の業界地図で確かめられます。
制御機器、ロボット、SIerの分担と安全を詳しく見る場合は、FA・産業用ロボットの業界地図で確かめられます。
機械を買う自動車メーカーは「自動車・輸送機器の業界地図」、機械工具商社・FA商社の稼ぎ方は「商社・卸売の業界地図」、化学やエネルギーのプラントの建設は「プラントエンジニアリングの業界地図」、空調の設置工事は「電気工事・空調設備工事の業界地図」、エレベータなどの昇降機は「ポンプ・ボイラ・ベアリングなど汎用機械の業界地図」、機械のリースは「リースの業界地図」、工作機械やプレスで部品を受託加工する会社は「金属加工の業界地図」で扱います。この記事は、次にどの地図を読むかを決めるための全体図です。
分野は、売る相手の業界で分かれる
産業機械の分野は、何を作るかと同時に、主にどの業界に売るかで性格が分かれます。下の図は、行に分野、列に主な顧客の業界を置き、根拠を示せる組み合わせに印を付けたものです。●は統計や会社の説明から主な顧客と分かる業界、○は顧客の1つと分かる業界です。印のないマスは「売っていない」という意味ではありません。会社名は例で、順位ではありません。
産業機械の分野は、どの顧客業界に何を売っていて、どの地図で読むか
- 工作機械:日工会の2025年の内需で一般機械39.9%・自動車19.8%・電気・精密11.9%(計算値)
- FA・ロボット:JARAの2025年の国内出荷額で電気機械35.2%・自動車25.3%(実装機を含む)
- マテハン:JILSの2024年度の業種別構成比で電機・精密機器46.3%、卸・小売15.1%、倉庫・運輸7.7%、輸送機器・部品4.0%、官庁・図書館等1.5%(業種別の回答がない会社があり、合計は総売上と一致しない)。海外向けの多くはクリーンルーム向け。物流センターを使う側は「倉庫業の業界地図」「3PLの業界地図」
- 空調:ダイキン工業は国内の業務用空調でオフィス・商業施設の更新需要が堅調と説明(家庭用は家電の分野)
- 汎用機械:日本産業機械工業会は2025年度のボイラ・原動機の受注の増加を非鉄金属・電力などで説明。圧縮機の受注の増加を、はん用・生産用(機械)・電力・外需で説明。エレベータは所有者(所有者と管理者が違うときは管理者)に定期検査の報告の義務
- その他:化学機械の受注の増加を石油・石炭などで説明(日本産業機械工業会)。食品機械・包装機械は食品などの工場で、この図の列にない業界
工作機械は、金属を削って部品の形にする機械です。日本工作機械工業会(日工会)の2025年の受注統計で国内の注文を業種別に見ると、一般機械が39.9%、自動車が19.8%、電気・精密が11.9%でした(日工会「2025年12月分受注確報」、割合は計算値)。機械を作る会社と自動車の会社が、主な買い手です。
FA・産業用ロボットは、工場の自動化に使う機器です。日本ロボット工業会(JARA)の2025年の国内出荷額では、電気機械向けが35.2%、自動車向けが25.3%でした(JARA「マニピュレータ、ロボット統計」2025年)。この統計には、電子部品を基板に載せる実装機も入ります。
建設機械・鉱山機械は建設の現場や鉱山で、農業機械は田畑で使われます。マテハン(物を運ぶ・保管する・仕分ける機械)は、倉庫や物流センターのほか、工場や半導体の工場にも納められます。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の調査では、2024年度の物流システム機器の売上を業種別に分けると、電機・精密機器が46.3%、卸・小売が15.1%、倉庫・運輸が7.7%でした(業種別の回答がない会社もある構成比)。海外向けの売上の多くは、クリーンルーム向けです。
空調・冷凍機器では、ダイキン工業が、国内の業務用空調はオフィス・商業施設を中心とする更新需要が堅調だったと説明しています。ボイラ・ポンプ・圧縮機・弁・軸受・エレベータなどの汎用機械は、工場・プラント・ビルなどに売られ、顧客の幅が広い分野です。日本産業機械工業会の2025年度の受注の説明では、ボイラ・原動機は非鉄金属・電力と海外、化学機械は石油・石炭と海外の注文で増えました(日本産業機械工業会「2026年3月 産業機械受注状況」)。
1社が複数の分野を持つこともあります。クボタは農業機械・エンジン・建設機械を同じ機械部門に持ち、コマツは建設機械のほかに、自動車向けの大型プレスなどの産業機械の事業を持っています。
大きさは、物差しによって数えるものが違う
「産業機械の市場は○兆円」と、1つの数字で言うことはできません。国の統計は工場などの事業所の出荷額等を、業界団体の統計は会員などの受注・出荷・売上を、それぞれ違う期間で数えているからです。
産業機械の大きさは、どの物差しで、どこまでを数えているか
国の物差し:経済構造実態調査(中分類)
(うち2670 約5.9兆円・11.1万人)
25+26の合計:約38.4兆円・約95.1万人。製造業全体の出荷額等の10.1%、従業者の12.5%、付加価値額の12.1%(計算値)。2670を除くと約32.5兆円・約84.0万人。合計は市場規模ではない(部品と完成機を重ねて数える)。
細分類の出荷額等(2024年、兆円)
棒の長さは建設機械・鉱山機械を100とした比。図に載せた区分だけで、25・26の全部ではない。
フォークリフト(3151)は輸送用機械(31)の中で約0.51兆円。物流運搬設備(2533)には入らない。
業界団体の物差し(足さない・割らない)
| 団体 | 何を数えるか | 期間 | 値と注意 |
|---|---|---|---|
| 日本産業機械工業会 | 産業機械の受注額 | 2025年度 | 約7兆4,951億円工業会が集計する196社。外需約2.9兆円(38.7%)。ボイラ・原動機2兆7,867億円(37.2%)は発電向けを含み重電と重なる |
| 日本工作機械工業会 | 工作機械の受注額 | 2025年(暦年) | 1兆6,043億円会員企業から集計。外需72.5% |
| 日本ロボット工業会 | マニピュレータ・ロボットの受注額 | 2025年(暦年) | 1兆456億円会員と非会員。電子部品の実装機を含む |
| 日本建設機械工業会 | 建設機械の出荷金額 | 2025年度 | 3兆5,217億円工業会の集計(正会員は60社)。補給部品4,438億円を含む。輸出69.6% |
| 日本農業機械工業会 | 農業機械の出荷金額 | 2025年(暦年) | 4,679億円報告する会社の国内工場からの出荷。輸出向け32.1% |
| 日本ロジスティクスシステム協会(JILS) | 物流システム機器の総売上金額 | 2024年度(最新の公表分) | 6,570億円主要メーカーへの調査。海外向け34.8%。受注は約8,399億円(回答会社の範囲が違う) |
| (参考)生産動態統計 | 金属工作機械の生産額 | 2025年 | 9,826億円日工会がまとめた値。受注額とは比べない |
割合は本記事で計算(産業機械の外需、工作機械の外需、建設機械の輸出、農業機械の輸出向け、JILSの海外向け)。ロボットの輸出79.5%は日本ロボット工業会の年間統計の値。
国の物差しは経済構造実態調査です。2024年の製造品出荷額等は、はん用機械が約13.1兆円、生産用機械が約25.3兆円で、合わせて約38.4兆円です。2025年6月1日時点の従業者は、それぞれ31万2,299人と63万9,002人で、合わせて約95.1万人です。合計は、製造業全体の従業者の12.5%、出荷額等の10.1%、付加価値額の12.1%にあたります(経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」第1表、割合は計算値)。
出荷額等は、事業所が出荷した額に加工の収入などを加えたもので、部品の工場と完成した機械の工場を重ねて数えます。そのため約38.4兆円は「産業機械の市場の大きさ」ではありません。この調査は2024年の実績から調べる事業所の範囲が新しくなったため、前の年との増減もここでは書きません。
範囲には注意する点が2つあります。1つは、生産用機械の中に、半導体・フラットパネルディスプレイの製造装置(約5.9兆円・11万828人)が入ることです。はん用・生産用を合わせた出荷額等の15.4%にあたり、これを除くと約84.0万人・約32.5兆円です(計算値)。そのうち半導体製造装置は約5.4兆円・10万1,847人です。もう1つは、フォークリフトが輸送用機械(出荷額等は約0.51兆円)に入り、物流運搬設備とは別の区分になることです。
細かい区分で見ると、半導体製造装置を除いて図に載せた区分の中では、建設機械・鉱山機械が約5.19兆円・7万6,125人で最も大きく、冷凍機・温湿調整装置が約1.89兆円、金属工作機械が約1.75兆円、玉軸受・ころ軸受が約1.61兆円、物流運搬設備が約1.21兆円、農業用機械が約1.14兆円と続きます。
業界団体の統計は、分野ごとに数えるものが違います。日本産業機械工業会の2025年度の産業機械の受注額は約7兆4,951億円で、工業会は1996年度を超える過去最高と説明しています。対象は工業会が集計する196社で、ボイラ・原動機(2兆7,867億円)には発電向けの受注が入るため、重電と重なります。ほかの機種は、化学機械(冷凍機械を含む)が1兆8,550億円、ポンプが5,028億円、運搬機械が5,021億円です。国内の注文(内需)4兆5,945億円を注文した側で分けると、製造業が1兆6,422億円、非製造業が1兆4,348億円、官公需が1兆854億円、代理店が4,322億円で、工場だけでなく、電力などの非製造業や国・自治体も買い手です。日本建設機械工業会がまとめた出荷金額は、2025年度に3兆5,217億円でした(日本建設機械工業会「建設機械出荷金額統計」2025年度)。日本農業機械工業会の、報告する会社の国内工場からの出荷金額は、2025年に4,679億円でした(日農工統計 2025年 生産・出荷実績)。マテハンはJILSが主要メーカーに調べた物流システム機器の総売上で、2024年度(最新の公表分)は6,570億円です(JILS「2024年度 物流システム機器生産出荷統計」)。工作機械(日工会の受注額、2025年に1兆6,043億円)とロボット(JARAの受注額、2025年に1兆456億円)は、それぞれの地図で詳しく見ています。
これらは受注・出荷・売上と数えるものが違い、暦年と年度も混ざります。どの会社を数えるかも団体ごとに違い、重なりも分からないため、足して「機械の受注は合計○兆円」とは言えません。国の出荷額等と団体の値を割って「○割」とすることもできません。求人や会社案内で「市場規模」を見たら、誰が、何を、いつ数えた数字かを確かめます。
受注後に設計・生産する機械と、需要を見込んで生産する標準品
機械の作り方は、大きく2つに分かれます。注文を受けてから設計・製作し、客先に据え付けて引き渡す受注生産と、仕様を決めた製品を先に作り、販売店・代理店・商社を通して、または直接売る見込み生産(標準品)です。分野ごとに受注生産が何割という統計はありません。ただ、統計と会社の説明から、どちらに寄った分野かは見えます。下の図の①は、2つの形と例を並べたものです。
受注後に設計・生産する機械と、需要を見込んで生産する標準品では、売った後の部品・保守と海外の比重がどう違うか(会社と統計の例)
① 作り方と売り方
② 売った後の稼ぎ(会社が示している例。名前も範囲も会社ごとに違い、比べない)
統計の補足:日本建設機械工業会の2025年度の出荷金額のうち補給部品は4,438億円・12.6%(計算値)。部品の出荷だけで、サービスの売上は入らない。オークマ・牧野フライス製作所などは保守・部品の売上を分けて開示していない。
③ 海外の比重(統計と会社を別の列に置く)
統計:国内からの輸出・外需国内の工場で作って送った分、海外からの注文
会社:海外の売上海外の工場で作って海外で売った分も入る。期と地域の数え方は会社ごとに違う
- コマツ:建設機械・車両の外部顧客向け売上のうち日本以外91.7%(2025年度、計算値)
- クボタ:海外売上高比率77.3%(2025年12月期、会社の値。建設機械・エンジンなどを含む)
- ダイキン工業:空調・冷凍機事業の外部売上のうち日本以外85.4%(2026年3月期、計算値。家庭用を含む)
- オークマ:海外売上高比率73.3%(2026年3月期)
- SMC:日本以外の顧客への売上81.1%(2026年3月期、計算値)
左の列と右の列は数え方が違うので並べて読まない。会社どうしも比べない。
受注生産の手がかりは、受注の統計があることです。日本産業機械工業会は、ボイラ・化学機械・ポンプ・運搬機械などの受注額を集めています。ポンプなどには標準品もありますが、受注の統計があること自体が、注文を受けて作る機械が多い手がかりです。マテハンでもJILSが出荷とは別に受注を調べており、2024年度の受注は約8,399億円でした。ロボットSIerが客先ごとに作る自動化の設備も、この形です。
工作機械は、その中間にあたります。マシニングセンタや旋盤などの機種には標準の形がありますが、お客さまの加工に合わせて仕様を決めて注文を受け、納めるまでの受注残があります。日工会の統計では、2025年12月末の受注残高は7,574億円でした。
標準品の例は、空気圧機器などの自動制御機器を作るSMCです。事業は自動制御機器の単一セグメントで、カタログの機器を数多くの工場に売る型です。トラクタや建設機械、空調機も、作った製品が販売店や流通を通って顧客に届きます。この形では、販売店や流通の在庫が売上を左右します。クボタは2025年12月期に、北米のトラクタ市場が落ち込むなか、在庫削減の実施もあって販売が減ったと説明しています(クボタ「2025年12月期 決算短信」)。ダイキン工業は2026年3月期に、米州の住宅用空調で、前の年度の冷媒規制に伴う駆け込み需要の影響で流通在庫が高止まりし、需要が停滞したと説明しています(ダイキン工業「2026年3月期 決算短信」)。
届け方も会社で違います。キーエンスは代理店を介さない直販をとると説明しています。工作機械には山善のような機械工具商社を通す流れがあり、FAでは立花エレテックのようなFA商社が機器を仕入れて売ります。建設機械や農業機械には、メーカー系の販売会社や代理店、販売店が機械を届ける流れがあります。どの形をとるかは会社ごとに違い、各分野の地図と「商社・卸売の業界地図」で扱います。
売った後の稼ぎ:部品・保守・サービス
機械は、売った後も長く使われます。その間の部品の交換、点検、修理、改造も、メーカーの稼ぎになります。ただし、どこまでを「売った後」と呼ぶかは会社ごとに違い、分けて開示していない会社も多くあります。図の②は、会社が示している例を、会社の言葉のまま並べたものです。会社どうしの割合は比べられません。
コマツは、2025年度の建設機械・車両の外部顧客向けの売上を、本体1兆8,314億円、部品1兆552億円、サービス等9,095億円に分けて示しています。部品とサービス等を合わせて「アフターマーケット(AM)」と呼び、その比率は52%です。2018年度から2025年度まで、この比率は49〜53%の間でした(コマツ「2025年度 決算説明会資料」)。
三浦工業は、ボイラなどの機器の販売と、そのメンテナンスの稼ぎの違いを示している例です。2026年3月期の参考資料の旧区分では、国内機器販売が売上収益902億円・利益率9.7%、国内メンテナンスが484億円・利益率25.9%でした(三浦工業「2026年3月期決算 参考資料」)。会社は、機器販売とメンテナンスが一体として機能する相互補完の関係にあるとして、この期から報告セグメントを地域別に変えました(三浦工業「2026年3月期 決算短信」)。参考として示された旧区分の値で、1社の形です。保守がどの会社でも同じように稼げるとは言えません。
DMG森精機は、工作機械の修理復旧やソリューションを「インダストリアル・サービス」というセグメントにしており、2025年12月期の外部売上の33.3%でした(計算値)。ファナックは2026年3月期のサービス部門の売上高が1,411億円で、売上高の16.5%です。ロボットなどを含む全商品の保守の売上です。一方、工作機械の地図で見たとおり、オークマや牧野フライス製作所の決算短信は、保守・部品の売上を分けていません。
業界の統計では、日本建設機械工業会の2025年度の出荷金額のうち、補給部品が4,438億円で12.6%でした(計算値)。これは部品の出荷だけで、修理や点検のサービスの売上は入りません。この記事で扱う統計には、保守・サービスの売上の項目はありません。
海外の比重:統計の輸出と、会社の海外売上は別の数字
産業機械には、海外の比重が大きい分野が多くあります。ただ、海外を示す数字には2種類あり、混ぜると読み違えます。図の③は、2つを別の列に分けたものです。
1つは業界団体の統計の輸出・外需で、国内の工場で作って海外へ送った分や、海外から受けた注文の分です。工作機械の受注の外需は72.5%(2025年)、ロボットの出荷の輸出は79.5%(2025年)、建設機械の出荷の輸出は69.6%(2025年度)でした。産業機械の受注の外需は約2.9兆円で38.7%(2025年度)、農業機械の出荷の輸出向けは32.1%(2025年。トラクタは台数の71.0%)、物流システム機器の海外向けは34.8%(2024年度)です(ロボットの79.5%は統計の値、ほかは計算値)。分野によって、海外への頼り方に幅があります。
もう1つは会社の海外売上で、海外の工場で作って海外で売った分も入ります。クボタの2025年12月期の海外売上高比率は77.3%です。日農工の統計は国内の工場からの出荷だけを数え、海外の工場で作って海外で売る分は入りません。クボタの海外売上にはその分が入り、建設機械やエンジンなども含みます。2つの数字は数え方が違うので、並べて読むことはできません。
ほかの会社の例も、会社の言葉と期のまま見ます。コマツの2025年度の建設機械・車両の外部顧客向け売上のうち、日本は8.3%で(計算値)、9割を超える分が日本の外の顧客です。ダイキン工業の2026年3月期の空調・冷凍機事業の外部売上のうち、日本は14.6%です(計算値。家庭用を含む)。オークマの2026年3月期の海外売上高比率は73.3%、SMCの同じ期の日本以外の顧客への売上は81.1%です(計算値)。決算の期も地域の数え方も会社ごとに違うため、会社どうしを比べることはしません。
海外の比重が大きい分野では、輸出の手続きや海外の客先・拠点にかかわる仕事が出てきます。工作機械では、一定の仕様の数値制御の機械を輸出するときに外為法の許可が要ります。詳しくは「工作機械の業界地図」で扱います。
守るルール:作る側・使う側と、分野ごとの法律
産業機械には、人がけがをするおそれのある機械が多くあります。労働安全衛生法(安衛法)には、作る側と使う側の両方への決まりがあります。作る側には努力義務だけでなく、製造の許可や、譲ったり貸したりすることの禁止もあります。使う側の義務を負うのは「事業者」、つまり事業を行い、働く人を使う会社です(労働安全衛生法第2条第3号)。機械を使う工場の会社のほか、レンタル会社やサービス会社が自社の社員に作業させるときは、その会社が事業者です。下の表は、主なルールを並べたものです。
| ルール(条文) | 誰に何を求めるか | 対象の例 | 主にかかわる分野 |
|---|---|---|---|
| 作る側の努力(安衛法第3条第2項) | 機械を設計・製造・輸入する者は、労働災害の防止に役立つよう努める(努力義務) | 機械全般 | すべての分野 |
| 特定機械等の製造許可と検査(第37条・第38条) | 製造しようとする者は都道府県労働局長の許可を受ける。製造・輸入した者や設置した者は検査を受ける(義務) | ボイラー、第一種圧力容器、つり上げ荷重3トン以上のクレーン・移動式クレーン、積載荷重1トン以上のエレベーター、ゴンドラなど(施行令第12条) | 汎用機械(ボイラ・エレベータ)、マテハン(天井クレーン)、建設機械(移動式クレーン) |
| 規格・安全装置のない機械の譲渡などの禁止(第42条・第43条) | 規格や安全装置を備えない機械を譲渡・貸与・設置してはならない。動く部分に覆いなどの措置のない動力機械を、譲渡・貸与し、またはそのために展示してはならない(禁止) | フォークリフト、車両系建設機械、研削盤、小型のクレーン・エレベーター、高所作業車など(施行令第13条第3項) | 建設機械、マテハン、工作機械 |
| 型式検定(第44条の2) | 製造・輸入した者は登録機関の型式検定を受ける。表示のないものは使用してはならない(義務・禁止) | プレス機械の安全装置、クレーンの過負荷防止装置など(施行令第14条の2) | 金属加工機械(プレス)、マテハン・建設機械(クレーン) |
| 定期自主検査・特定自主検査(第45条) | 事業者は定期に自主検査をして記録する。特定自主検査は、資格を持つ者か登録を受けた検査業者が行う(義務) | フォークリフト、車両系建設機械、不整地運搬車、作業床2メートル以上の高所作業車、動力プレス(施行令第15条第2項) | 建設機械、マテハン、金属加工機械 |
| 就業制限(第61条) | 事業者は、免許や技能講習の修了などの資格を持つ者でなければ、決められた業務につかせてはならない(義務) | ボイラーの取扱い、つり上げ荷重5トン以上のクレーンの運転、1トン以上の移動式クレーン・フォークリフトの運転、機体重量3トン以上の建設機械の運転など(施行令第20条。移動式クレーン・フォークリフト・建設機械は道路上の走行を除く) | 汎用機械、建設機械、マテハン |
| フロン排出抑制法(第2条・第16条・第27条・第37条) | 管理者(所有者など)が取り組む措置の判断の基準を国が定める。冷媒の充塡・回収の業者は都道府県知事の登録を受ける。整備で充塡が要るときは登録業者に委託する(義務) | 業務用のエアコン、冷蔵・冷凍機器(冷蔵・冷凍の機能を持つ自動販売機を含む) | 空調・冷凍機器 |
| 建築基準法第12条第3項 | 政令で定める昇降機などの所有者(所有者と管理者が違うときは管理者)は、定期に建築士か建築設備等検査員に検査させ、特定行政庁に報告する(義務) | エレベーターなど | 汎用機械(エレベータ) |
| 外為法第48条 | 政令・省令で定める仕様の機械を輸出するときは、経済産業大臣の許可を受ける(義務) | 軸の数や精度などで決まる一定の仕様の数値制御工作機械 | 工作機械 |
ルールは、機械の大きさで線が引かれています。たとえばクレーンは、つり上げ荷重3トン以上が製造の許可の対象(作る側)で、5トン以上の運転には就業制限がかかります(使う側)。就業制限では、フォークリフトは最大荷重1トン以上、建設機械は機体重量3トン以上の運転が対象です(使う側)。どの業務にどの資格が当たるかは、業務と大きさで分かれます。ロボットに動きを教える作業などの特別教育は、「FA・産業用ロボットの業界地図」で扱います。
特定自主検査は、事業者が、資格を持つ社員か登録を受けた検査業者に行わせる検査です。フォークリフトと車両系建設機械は、定期の自主検査を1年以内ごとに1回行うと規則で決まっています(労働安全衛生規則第151条の21・第167条)。機械の販売店やサービス会社の仕事につながることもあります。
仕事の地図:機械設計・制御設計・サービスエンジニア・営業
産業機械の会社の仕事は、引き合い(問い合わせ)から、提案・見積り、設計、製造、据付・立ち上げ、保守まで続きます。下の図は、4つの仕事が流れのどこを受け持つかと、分野で違う点をまとめたものです。職種の名前は会社ごとに違うので、採用ページの名前を会社名つきで示します。
機械設計・制御設計・サービスエンジニア・営業は、引き合いから保守までのどこを受け持ち、分野でどう違うか
- 受注生産の機械:仕様を詰める段階が長く、客先での据付・立ち上げがある
- 標準品の機器:多くの客先に同じ製品を売る(キーエンスはテリトリー制と説明)
- 建設機械・農業機械:メーカー系の販売会社・代理店・販売店が機械を届ける流れがある
- 空調・ボイラ・エレベータ:長く使われる設備で、点検や更新の仕事が続く
- 特定自主検査(フォークリフト・車両系建設機械・動力プレスなど):資格を持つ者か登録検査業者が行う
- 就業制限:ボイラーの取扱い、5トン以上のクレーン、1トン以上のフォークリフト、機体重量3トン以上の建設機械の運転などは免許・技能講習など
- ロボットの教示等:特別教育(「FA・産業用ロボットの業界地図」)
- フロン類の充塡:登録を受けた業者に委託
営業は、引き合いを受けて提案し、注文をとる仕事です。ファナックにはFAセールスとロボットセールス、キーエンスには営業職があり、コマツは採用のフィールドに販売を挙げています。営業と設計の間には、機械の使い方で提案する仕事があります。オークマの営業技術は、加工技術の提案と仕様の見積り、テスト加工、受注した製品の技術的なフォローを担います。DMG森精機には加工ソリューションエンジニア、ヤマザキマザックにはアプリケーションエンジニア、キーエンスにはコンサルティングエンジニア職があります。
設計は、機械の本体の形と仕組みを決める機械設計と、機械の動きを決める電気やソフトウェアの制御設計に分かれます。DMG森精機は機械設計と電気制御設計(PLCの設計)、ヤマザキマザックは機械設計と制御設計、オークマは機械設計とソフトウェア開発・設計を職種に挙げています。コマツの設計・開発は、次の機種の開発や量産に向けた設計のほか、市場に出ている機械の不具合の改良も担い、営業担当とお客さまを訪ねる機会もあると説明しています。
サービスエンジニアは、納めた機械の据付・立ち上げ、点検、修理を受け持ちます。名前は会社ごとに違い、DMG森精機は修理復旧エンジニア、安川電機はフィールドエンジニア職、牧野フライス製作所とヤマザキマザックはサービスエンジニア、ファナックはサービスです。コマツは、メンテナンスを含むアフターサービスを、サービスエンジニアが現場のリーダーとして担うと説明しています。DMG森精機の修理復旧エンジニアはお客さまの工場へ出張して修理や保守点検をし、安川電機はフィールドエンジニア職に全国での勤務や海外での活躍もあると書いています。どちらも1社の説明です。
分野によっても、仕事の重心は変わります。注文を受けてから作る機械では、仕様を詰める段階が長く、客先での据付・立ち上げがあります。標準品の機器では、多くの客先に同じ製品を売ります。キーエンスは、営業がテリトリー制で幅広い業界・工程の情報を集め、商品の企画に生かすと説明しています。空調・ボイラ・エレベータのように長く使われる設備では、点検や更新の仕事が続きます。
求人を見比べるときは、次の点を確かめると、仕事の中身が分かりやすくなります。
- どの分野の会社か:主な顧客はどの業界か(図1の列)。顧客の設備投資や建設投資の波が、仕事量に表れる
- 受注生産か標準品か:客先ごとに設計するのか、カタログの製品を数多く売るのか
- 売った後の仕事:保守・部品・サービスを会社が事業として示しているか。サービスの拠点と担当地域
- 海外:海外の売上や拠点の比重、海外出張や駐在の有無
- 資格と教育:特定自主検査や運転・取扱いの資格、特別教育が要る業務にかかわるか。取得を会社が支援するか
- 職種名の中身:同じ「サービス」「営業技術」でも、受け持つ工程が会社ごとに違う
この地図で分野と顧客の見当がついたら、次はその分野の地図で、会社ごとの違いと仕事の流れを確かめます。
半導体を作る装置の工程ごとの役割と保守の仕事は、半導体製造装置の業界地図で確かめられます。



