工場の自動化を、制御機器メーカー、ロボットメーカー、FA商社、ロボットSIer、利用企業の分担で整理。受注、輸出、安全、仕事の違いが分かります。

「FAの技術職」「ロボットの営業」「制御設計」と書かれた求人は、同じ工場の自動化でも中身がかなり違います。センサやモーターなどの機器を作って売る会社、ロボット本体を作る会社、それらを組み合わせて1本のラインに仕上げる会社、機器を仕入れて売る商社で、客先との関わり方も、出張の多さも、身につく技術も変わります。

この記事では、工場の生産設備を自動で動かすための機器とシステム(FA=ファクトリーオートメーション)を扱います。機械の動きの順番を決めるPLC(プログラマブルコントローラ)、モーターを指示どおりに動かすサーボ、物を見分けるセンサ、空気の力で物をつかむ空気圧機器、産業用ロボットと、それらを設備にまとめる会社です。この記事でいうSIerは、ロボットや機器を組み合わせて工場の設備を作るロボットSIerです。業務システムを作るIT業界のSIerとは別で、そちらは「SIer・システム開発の業界地図」で扱います。

工作機械とその頭脳にあたるCNC(数値制御装置)、工作機械の受注の波は「工作機械の業界地図」で扱います。ファナックは、この記事ではロボットの会社の例として見ます。インバータやモーター、受配電などの電気の設備は「重電・電力機器の業界地図」、倉庫や物流センターの搬送・仕分けの自動化は「マテハンの業界地図」、半導体製造装置は「半導体製造装置の業界地図」で扱います。センサーの部品は「電子部品・センサーの業界地図」、計測器は「計測器・分析機器の業界地図」、製造業向けの派遣は「人材派遣の業界地図」で扱います。

工場で使う工作機械、CNC、受注の波を詳しく見る場合は、工作機械の業界地図で確かめられます。

工場の自動化は、制御機器・ロボット・SIer・商社の分担で進む

工場の自動化ラインは、何社もの製品と仕事を組み合わせてできています。担い手は、大きく4つに分けられます。

1つ目は制御機器のメーカーです。PLC、サーボ、センサ、画像処理の機器、空気圧機器などを作ります。オムロンの決算短信は、制御機器事業(IAB)の主要製品として、プログラマブルコントローラ、モーションコントロール機器、センサ機器、産業用カメラ・コードリーダ、検査装置、セーフティ用機器、産業用ロボットなどを挙げています。空気圧機器などの自動制御機器を作るSMCや、センサ・画像処理の機器を作るキーエンスも、この型の会社の例です。

2つ目はロボットメーカーです。ロボットの腕にあたる本体と、その動きを制御するコントローラを作ります。この記事では、ファナック、安川電機、川崎重工業、不二越を例にします。安川電機は、サーボと産業用ロボットの両方を持つ会社です。同社のモーションコントロールの事業にはインバータも入りますが、インバータは「重電・電力機器の業界地図」で扱います。

3つ目はロボットSIerです。ロボット、制御機器、周りの装置を組み合わせて、客先の工場で動く1つの設備に仕上げます。業界団体の日本ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会、2023年4月設立)は、自らをロボット・FA(Factory Automation)システムの構築等を行うシステムインテグレータの共通基盤組織だと説明しています。会員は、2026年5月22日現在で正会員218社・協力会員112社の計330社です(2025年度事業報告書)。これは協会の会員の数で、国内のSIerの総数ではありません。

4つ目はFA商社です。メーカーから機器を仕入れて工場や機械メーカーに売り、組み合わせの提案もします。立花エレテックの決算短信は、FAシステム事業の主な取扱商品として、プログラマブルコントローラー、インバーター、ACサーボ、産業用ロボット、放電加工機、レーザー加工機などを挙げています。

設備を使う側の会社にも、自動化を担う部署があります。工場の設備を企画し、導入して立ち上げる生産技術の部門です。ファナックの職種紹介でも、製造(生産技術)は自社工場の自動化や安全性・生産性の向上のための設備の設計・導入・立ち上げを担うと書かれています。

工場の自動化を、誰がどこまで担うのか

左は機器とロボットを作るメーカー、中央は機器を売る商社と設備に組み上げるSIer、右は設備を使う会社。矢印は、機器の販売、設備の受注・納入、保守・サービスの流れ。

機器・ロボットを作る
制御機器のメーカーPLC・サーボ・センサ・画像処理・空気圧機器など例:オムロン(制御機器事業)、SMC、キーエンス、安川電機(サーボ)
ロボットのメーカーロボット本体と、動きを制御するコントローラ例:ファナック、安川電機、川崎重工業、不二越
売る・組み上げる
FA商社機器を仕入れて売り、組み合わせも提案する例:立花エレテック(PLC・インバーター・ACサーボ・産業用ロボットなどを扱う)
ロボットSIerロボット・機器・周りの装置を組み合わせて、1つの設備に仕上げるSIer協会の会員は330社(2026年5月22日現在、協会の会員の数)
設備を使う
ユーザー企業電機・自動車・機械・食品などの工場生産技術の部門が、設備を企画・導入して立ち上げる
機器の販売:メーカーから直接、または商社を通して、SIer・機械メーカー・工場へ設備の受注・納入:SIerなどが工場から注文を受け、設計・組立・据付・立ち上げ保守・サービス:納入後の点検・修理・部品・操作の研修
境目があいまいな例
  • キーエンスは、代理店を介さない直販と説明している(1社の方針で、メーカーの売り方は会社ごとに違う)
  • ファナックのロボットセールスは、付帯機器や周辺設備を含めたロボットシステムの提案や導入時の技術支援も行う
  • 工作機械メーカーのDMG森精機もSIer協会の会員で、工作機械と自動化システムを組み合わせた提案を紹介している
出典:一般社団法人日本ロボットシステムインテグレータ協会「協会概要」「2025年度 事業報告書」「会員企業ハンドブック2026」、キーエンス「ビジネスモデルと強み」、立花エレテック・オムロン・安川電機の決算短信、ファナック「職種紹介」。分担の整理は本記事による。

4つの境目は、はっきり分かれているわけではありません。ファナックの職種紹介では、ロボットセールスがロボットの販売のほか、付帯機器や周辺設備を含めたロボットシステムの提案や導入時の技術支援も行うと書いています。SIer協会の会員企業ハンドブックには、工作機械メーカーのDMG森精機も会員として載り、工作機械と自動化システムを組み合わせた提案を紹介しています。工作機械メーカーの自動化の提案は「工作機械の業界地図」で詳しく扱います。

メーカーの売り方も会社によって違います。キーエンスは、ビジネスモデルの説明で、代理店を介さない直販の営業体制を世界各国で展開していると書いています。これはキーエンスの方針で、FA機器のメーカーがみな直販というわけではありません。

1本の自動化ラインができるまで:構想から立ち上げ・保守まで

ロボットを使った自動化ラインは、注文を受けてから動き出すまでに、いくつもの工程を通ります。おおまかには、構想・仕様、設計、部品加工・組立、プログラムとティーチング、据付・立ち上げ、保守の順です。

最初は構想と仕様です。何を、どんな速さで自動にするかを客先と決め、ロボットや機器の組み合わせを考えます。次の設計は、ロボットの手先や部品を置く台などの機械、配線や盤の電気、動きの順番を決める制御に分かれます。

設計ができたら、部品を加工して組み立てます。そのうえで、PLCに動きの順番(シーケンス)をプログラムし、ロボットに動きを教えます。PLCは、センサの信号を受けて、決めた順番どおりに装置を動かす制御の装置です。ロボットに動きを教える作業は、一般にティーチングと呼ばれます。労働安全衛生規則(安衛則)は、ロボットの可動範囲の中で動きの順序・位置・速度を設定・変更・確認することを「教示等」と定義しています(第36条第31号)。

組み上げた設備は客先の工場に運び、据え付けて、実際の部品を流しながら調整します。これが立ち上げです。動き出した後も、点検や修理、部品の交換、操作する人の教育が続きます。

1本の自動化ラインは、構想から保守までの工程でできあがる

上はおおまかな工程。下は、各社が自社の仕事として紹介している範囲(1社ずつの例)。

1構想・仕様何を、どんな速さで自動にするかを客先と決める
2設計機械・電気・制御
3部品加工・組立部品を作り、設備を組む
4プログラム・ティーチングPLCの順番の制御、ロボットに動きを教える
5据付・立ち上げ客先の工場で据え付け、調整する
6保守点検・修理・部品・操作の研修

各社が紹介している仕事の範囲(例)

SIerの1社の例筑波エンジニアリング:「構想設計から、部品加工、組立、シーケンス制御、ロボットティーチングまでの全工程のスタッフ」(工程1〜4)
ファナックロボットセールス:付帯機器や周辺設備を含めたロボットシステムの提案(工程1)
ファナックロボットセールス:導入時の技術支援(工程5)
安川電機フィールドエンジニア職:納入後のセットアップ・メンテナンス・修理・部品販売(工程5〜6)
ファナックサービス:修理・メンテナンス、顧客向けの研修(工程6)
工程4の注:ロボットの可動範囲の中で動きの順序・位置・速度を設定・変更・確認する「教示等」の業務(駆動源を遮断して行うものを除く)は、特別教育の対象(労働安全衛生規則第36条第31号)。特別教育は、作業者を雇う事業者(ティーチングを社員にさせるSIer・メーカーを含む)が行う教育で、免許ではない。
出典:日本ロボットシステムインテグレータ協会「会員企業ハンドブック2026」、ファナック「職種紹介」、安川電機「職種紹介」、労働安全衛生規則・労働安全衛生法(e-Gov法令)。工程の分け方と各社の範囲の当てはめは本記事による。

工程を誰が受け持つかは、会社によって違います。SIer協会の会員企業ハンドブックでは、茨城県の筑波エンジニアリングが「構想設計から、部品加工、組立、シーケンス制御、ロボットティーチングまでの全工程のスタッフを抱えています」と紹介しています。これは1社の例で、ほかのSIerが同じ範囲を社内で持つとは限りません。

メーカー側にも、ラインの工程にかかわる職種があります。安川電機の職種紹介では、フィールドエンジニア職が納入後の自社製品のセットアップ・メンテナンス・修理・部品販売を担います。ファナックのサービスは全商品の修理・メンテナンスを担い、アカデミ部門では顧客向けの操作・保守の研修の講師も務めます。

安全の面では、ロボット単体だけでなく、組み合わせた設備にも国際規格の要求があります。厚生労働省が公開する労働安全衛生総合研究所の資料は、ISO 10218-1がロボット、ISO 10218-2がロボットシステムとインテグレーションの安全要求事項を定めると説明しています。規格の上では、設備を組み上げる段階にも安全の要求があります。法令の義務を負うのは、後で見るとおり、働く人に作業をさせる事業者です。

稼ぎ方の違い:標準品の機器、ロボット本体と保守、一品ごとの設備

FAの会社の稼ぎ方は、大きく3つの型に分けて見ると分かりやすくなります。カタログに載った標準品の機器を数多く売る型、ロボット本体を売り保守でも稼ぐ型、客先ごとに1つずつ設備を作る型です。総合電機の中のFA事業と、FA商社もあります。

ただし、会社どうしの数字は比べられません。決算の時期(2月・3月・3月20日・11月)、会計基準(日本基準・IFRS・米国基準)、利益の名前、事業の区切り方がそろわないからです。ロボットだけの利益を開示している会社も、この記事で見る中では安川電機だけです。ここでは1社ずつ、開示の言葉どおりに見ます。

FAの会社は、どこで売上と利益を出しているか

稼ぎ方の型ごとに、各社の開示をそのまま載せた。決算期・会計基準・利益の名前・事業の範囲がそろわないため、会社どうしの数字は比べられない。

標準品の機器を数多く売る
キーエンス2026年3月期(2025年3月21日〜2026年3月20日)・日本基準・単一セグメント(電子応用機器)

売上高 1兆1,693億円/営業利益 5,958億円(売上高営業利益率51.0%)

代理店を介さない直販とファブレス経営(会社の説明)。海外の売上66.6%(記事で計算)

会社全体の値。センサだけの売上は分からない

SMC2026年3月期・日本基準・単一セグメント(自動制御機器事業)

売上高 8,425億円/営業利益 1,906億円(売上高営業利益率22.6%)

日本以外の顧客への売上81.1%(仕向地別、記事で計算)

会社全体の値。空気圧機器だけの値ではない

オムロン 制御機器事業(IAB)2026年3月期・米国基準・セグメント

外部顧客への売上高 4,095億円/セグメント利益 428億円

PLC・モーション・センサ・画像・検査装置・セーフティ・産業用ロボットなど

セグメント利益は会社独自の定義(売上総利益−販管費−試験研究開発費)

ロボット本体を売り、保守でも稼ぐ
ファナック2026年3月期・日本基準・単一セグメント(部門別は売上高だけ)

ロボット部門 3,786億円(連結の44.1%)/サービス部門 1,411億円

連結の売上高8,578億円、売上高営業利益率21.4%(会社全体)

ロボット部門の利益は開示がない

安川電機 ロボット2026年2月期(2025年3月〜2026年2月)・IFRS・セグメント

外部顧客への売上収益 2,470億円/営業利益 204億円(前期比14.0%減)

同じ会社のモーションコントロール(ACサーボなど)は外部2,361億円・営業利益244億円

決算期が他社より1か月早い

川崎重工業 精密機械・ロボット2026年3月期・IFRS・セグメント

売上収益 2,591億円/事業利益 143億円

半導体製造装置向けロボットが増加

建設機械向けの油圧機器を含み、ロボットだけの値ではない

不二越 機械工具事業2025年11月期(2024年12月〜2025年11月)・日本基準・セグメント

売上高 734億円/営業利益 43億円

中国のロボット需要の減少で5.3%の減収

工具・工作機械とロボットの合計

総合電機の中のFA事業・FA商社・一品ごとの設備
三菱電機 FAシステム2025年度(2025年4月〜2026年3月)・決算説明会資料の値・サブセグメント

売上高 7,982億円/営業利益 766億円(営業利益率9.6%)

調整後営業利益は752億円。2026年度の見通しは調整後営業利益1,020億円(計画)

受注高 8,656億円(前年度の122%、決算短信の値)

立花エレテック FAシステム事業2026年3月期・日本基準・セグメント(FA商社の1社の例)

売上高 1,099億円/営業利益 50億円

PLC・インバーターなどは減り、システムソリューションは伸びた(会社の説明)

ロボットSIer客先ごとに設備を設計・製作・立ち上げ

この記事では数字で示さない。仕事の性質(注文ごとに仕様が違い、設計から立ち上げまで人の手がかかる)から見る

読み方:利益の名前は、営業利益(日本基準・IFRS)、事業利益(川崎重工業の指標)、セグメント利益(オムロンの定義)と会社ごとに違う。海外の比率も、キーエンスは地域別、SMCは仕向地別で定義が違う。カードの並びは型の分け方によるもので、順位ではない。
出典:キーエンス・SMC・オムロン・ファナック・安川電機・川崎重工業・不二越・立花エレテックの決算短信、キーエンス「ビジネスモデルと強み」、三菱電機「2026年3月期 決算説明会資料」「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕」(受注高)。百万円の値を億円に四捨五入した。

標準品の機器の例です。キーエンスの2026年3月期(2025年3月21日〜2026年3月20日)は、決算短信(日本基準)で売上高1兆1,693億円、営業利益5,958億円、売上高営業利益率51.0%でした。事業は電子応用機器の単一セグメントで、センサだけの売上は分かりません。自社で生産設備を持たず、企画・開発・設計に力を集めて生産を協力工場に任せるファブレス経営をとると説明しています。営業はテリトリー制で、特定の顧客に頼らず幅広い業界・工程の情報を集め、商品の企画に生かすとしています。海外の売上は66.6%です(記事で計算)。

SMCの2026年3月期は、決算短信(日本基準)で売上高8,425億円、営業利益1,906億円、売上高営業利益率22.6%でした。事業は「自動制御機器事業」の単一セグメントです。仕向地別に見ると、日本以外の顧客への売上が81.1%で(記事で計算)、中国が同社の仕向地の中で最も大きくなっています。

オムロンの制御機器事業(IAB)の2026年3月期は、米国基準で外部顧客への売上高4,095億円、セグメント利益428億円でした。セグメント利益は、売上総利益から販売費・一般管理費と試験研究開発費を引いた会社独自の定義です。

ロボット本体と保守の例です。ファナックの2026年3月期は、決算短信(日本基準)で連結の売上高8,578億円、売上高営業利益率21.4%でした。単一セグメントで、部門別には売上高だけを示しています。ロボット部門は3,786億円で、連結の44.1%を占めます。全商品の保守を担うサービス部門も1,411億円あります。顧客の所在地別に見ると、日本の売上は連結の12.9%です(記事で計算)。ロボット部門の利益は開示がないため、会社全体の利益率をロボットの利益率と読むことはできません。

安川電機の2026年2月期(2025年3月〜2026年2月)は、決算短信(IFRS)でロボットセグメントの外部顧客への売上収益が2,470億円、営業利益が204億円(前期比14.0%減)でした。会社は、減益の理由を大口案件の付加価値の影響と説明しています。ACサーボなどのモーションコントロールは、外部顧客への売上収益2,361億円、営業利益244億円です。会社全体では、2027年2月期にAI・半導体関連の需要と受注の好調を背景として、売上収益5,800億円、営業利益600億円を計画しています。

川崎重工業の精密機械・ロボット事業の2026年3月期は、決算短信(IFRS)で売上収益2,591億円、事業利益143億円でした。この区分には建設機械向けの油圧機器も入っており、ロボットだけの数字ではありません。受注高は2,785億円で、増えたのは主に(ロボットではなく)中国の建設機械市場向けの油圧機器でした。不二越の2025年11月期は、決算短信(日本基準)で機械工具事業の売上高734億円、営業利益43億円です。工具・工作機械とロボットを合わせた数字です。

総合電機の中のFA事業の例は、三菱電機です。決算説明会資料では、FAシステムの2025年度の売上高は7,982億円、営業利益は766億円(営業利益率9.6%)でした。同じ資料では、2026年度の見通しを売上高8,650億円、調整後営業利益1,020億円としています(計画。2025年度の調整後営業利益は752億円)。決算短信(IFRS)では、FAシステムの受注高は8,656億円で、前年度の122%です。

FA商社の例として、立花エレテックのFAシステム事業の2026年3月期は、売上高1,099億円、営業利益50億円でした。会社は、PLC・インバーターなどは顧客の在庫調整で減った一方、システムソリューションのビジネスは引き合いが増えて大きく伸びたと説明しています。

一品ごとに設備を作るロボットSIerは、この記事では数字ではなく、仕事の性質から見ます。注文ごとに仕様が違い、設計から立ち上げまで人の手がかかる仕事だという点を、求人を見る手がかりにしてください。

ロボットの需要の波:受注は2年落ち込み、2025年に戻った

ロボットの需要の大きさを見る主な統計は、日本ロボット工業会(JARA)の年間統計です。会員と非会員のメーカーを対象にした暦年(1〜12月)の集計で、統計の名前は「マニピュレータ、ロボット」です。この中には、垂直多関節・水平多関節・直角座標ロボットなど(MR)のほか、電子部品を基板に載せる実装機(マウンタなど)も入っています。全体の額は、産業用ロボットだけの額ではありません。

ロボットの受注は、どの年にどれだけ上下し、どこへ売られているか

日本ロボット工業会の年間統計(会員+非会員、暦年、電子部品実装機を含む)。上は受注額と生産額の推移、下は2025年の生産額の内訳、国内出荷額の業種別、輸出額の地域別。受注・生産・出荷は別の数字。

受注額生産額
03,0006,0009,00012,000億円 202020212022202320242025 8,58810,78611,1188,4348,32110,456 7,6659,39110,2108,9167,8119,453
年受注額(億円)生産額(億円)
20208,5887,665
202110,7869,391
202211,11810,210
20238,4348,916
20248,3217,811
202510,4569,453

受注は注文を受けた額、生産は作った額、出荷は送り出した額。原本の百万円の値を億円に四捨五入した。

出典:一般社団法人日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷実績【会員+非会員】2025(令和7)年[暦年]」(Sheet1・Sheet2・Sheet3-1・Sheet3-2、主要地域別輸出額推移)。線の位置と帯の長さは本記事で計算。

受注額は、2022年の1兆1,118億円から、2023年に8,434億円(前年比24.1%減)、2024年に8,321億円(1.3%減)と2年続けて落ち込みました。2025年は1兆456億円(25.7%増)に戻っています。生産額は2025年に9,453億円(21.0%増)でした。受注は注文を受けた額、生産は作った額で、年ごとの増え方も一致しません。

2025年の生産額を形で分けると、MRが5,264億円、実装機が3,152億円、その他が1,037億円です。MRは全体の55.7%です(記事で計算)。多関節ロボットなどの話をするときは、このMRの数字を手がかりにします。

2025年の総出荷額9,938億円のうち、輸出は7,897億円で79.5%、国内は2,041億円で20.5%でした。台数で見ても、輸出が82.1%を占めます。日本のメーカーが出荷するロボット(実装機を含む)の多くは、海外に向かっています。

2026年の動きは、JARAの四半期統計で見られます。こちらは会員だけを対象にした統計で、JARAは1年分を足しても年間統計とは合わないと注記しています。四半期統計では、2026年1〜9月の受注額は9,329億円で、前年同期の6,545億円から42.5%増えました(記事で計算)。7〜9月期だけでは3,254億円で、前年同期比46.6%増です。年間統計とは別の物差しなので、上の6年の数字と並べて読まないようにしてください。

ロボットや制御機器の大きさを示す数字は、ほかにもあります。物差しが違うため、足したり比べたりはできません。

物差し何を数えるか値
JARAの年間統計会員と非会員のメーカーの受注・生産・出荷(暦年、実装機を含む)2025年の受注額1兆456億円、生産額9,453億円
国際ロボット連盟(IFR)世界の各国に新しく据え付けられた産業用ロボットの台数(暦年)2025年は60万台超(11%増)。中国354,000台、日本36,219台(19%減)
経済構造実態調査ロボット製造業に分類される国内の事業所の出荷額等と従業者457事業所、従業者18,156人(2025年6月1日)、出荷額等8,106億円(2024年)
日本電気制御技術工業会(NECA)制御機器の出荷額(年度の半期)2026年度上期(4〜9月)3,626億円(前年同期比111.5%)、うちPLC/FA 1,203億円、輸出比率44.2%

IFRの発表では、世界の工場で動いている産業用ロボットは約500万台です。IFRは2026年の設置台数を65.5万台と予測しています。IFRの「設置」は据え付けた国で数え、JARAの「出荷」は日本のメーカーから送り出した量で数えるので、2つは別の数字です。

2025年経済構造実態調査は、事業所の主な製品で分類します。ロボットメーカーの本社や開発の拠点、ロボットを組み込んで設備を作るSIerが、ロボット製造業に入るとは限りません。同じ調査では、油圧・空圧機器製造業の従業者は35,156人、出荷額等は1兆4,335億円(2024年)です。NECAの統計報告書は年度の半期の値で、暦年のロボットの統計とは期間も違います。

どの業界の設備投資に支えられているか:電機・自動車と海外

ロボットの売れ行きは、客である工場の設備投資で決まります。JARAの年間統計で2025年の国内出荷額を業種別に見ると、電気機械が35.2%、自動車が25.3%、機械が11.3%でした。台数で見ると、電気機械向け13,602台のうち電子部品・デバイス・電子回路向けが9,267台です。自動車向け9,511台のうち、自動車部品向けが7,050台、自動車向けが2,461台です。

2025年の国内出荷は、自動車向けが台数で26.4%減、電機向けが16.6%減でした。国内の工場向けは減り、輸出が伸びた年です。

用途別の総出荷台数では、マテリアルハンドリング(物の移動や積み下ろし)が40,321台、クリーンルーム用の半導体向けが26,628台、一般組立が22,532台、ロード・アンロード(機械への部品の出し入れ)が20,418台、アーク溶接が19,135台、スポット溶接が18,315台でした。この「マテリアルハンドリング」や「半導体」はロボットの使い道の名前です。マテハン機器の業界や半導体製造装置の業界の大きさを示す数字ではありません。

輸出を地域別に見ると、2025年は中国向けが3,160億円で前年比34.1%増えました。輸出の40.0%です(記事で計算)。中国を除くアジアが2,380億円、米大陸が1,475億円、欧州が802億円でした。IFRによると、2025年に中国で据え付けられたロボットは世界の59%を占めます。

需要の動きを、会社はそれぞれの言葉で説明しています。理由は会社ごとに違い、業界全体の理由として1つにまとめることはできません。

  • ファナック:2026年3月期のロボット部門は、国内は自動車産業向けが復調せず減った一方、中国はEV関連と一般産業向けが好調だった。2026年4〜9月の中間期は、国内の自動車産業向けが持ち直した
  • 安川電機:ロボットは自動車市場向けが日本・米州・欧州で減り、中国・アジアの大口案件と一般産業の需要で増収。ACサーボは電子部品・工作機械向けがAI関連投資などで好調だった
  • 川崎重工業:半導体製造装置向けロボットが増えた。会社は「AI向け半導体の急成長と汎用メモリの深刻な不足」で需要が高まる傾向と説明している
  • 三菱電機:FAシステムはスマートフォン・AI関連の設備投資と工作機械関連の需要で、受注・売上とも増えた
  • 不二越:中国のロボット需要が減り、機械工具事業は5.3%の減収だった

制御機器の会社も、客先の業界の設備投資の影響を受けます。SMCは、中華圏のデジタル機器関連が好調で、日本・北米・韓国の半導体関連は年度後半から回復した一方、自動車関連は北米・日本・欧州で設備投資の先送りが続いたと説明しています。オムロンは、制御機器事業の外部顧客への売上が、EV関連の停滞の中、生成AI関連の需要と新商品の効果で12.3%増えたと説明しています。

ロボットの安全のルール:義務を負うのは、働く人を雇って作業させる事業者

産業用ロボットは力が強く、動きも速いため、法令で安全のルールが決められています。安衛則の規定で義務を負うのは「事業者」、つまり働く人を雇い、その作業をさせる会社です(労働安全衛生法第2条第3号の「事業を行う者で、労働者を使用するもの」)。運転中の柵などの措置は、主にロボットを使う工場の会社が講じます。SIerやメーカーの社員が客先でティーチングや点検・修理をする場合は、その社員を雇う会社が事業者として、作業の規程や特別教育などの措置を行う立場になります。

産業用ロボットの安全のルールは、誰に何を求めているか

義務を負うのは、どの場面でも「事業者」(働く人を雇って、その作業をさせる会社)。運転中の措置は主にロボットを使う工場、ティーチングや点検を社員にさせるSIer・メーカーも、その作業では事業者になる。

場面事業者がすること(条文などの言葉)根拠決まりの強さ
運転中接触で危険が生じるおそれがあるとき、「さく又は囲いを設ける等」の措置を講じる厚生労働省のリーフレットは、対象を定格出力80Wを超える産業用ロボットと説明労働安全衛生規則 第150条の4義務「講じなければならない」
人との協働作業次のどちらかのとき、柵なしの協働作業ができる。①リスクアセスメントで、接触による危険のおそれが無くなったと評価できる(評価結果は記録・保管)②ISO 10218に従い、技術ファイルと適合宣言書のあるロボットを使用条件どおりに使う「協働ロボット」という製品名だけで柵が要らなくなるわけではない2013年12月24日付 基発1224第2号(通達)条件第150条の4の「おそれのあるとき」に当たらない場合を示す
教示等(ティーチング)作業の規程を定める、異常時にすぐ運転を止められる措置、作業中だと表示するなどして、ほかの人が起動スイッチを操作しないようにする措置。作業開始前に非常停止装置などを点検駆動源を遮断して行う場合は一部の措置を除く同 第150条の3、第151条義務「講じなければならない」
検査・修理・調整・掃除・給油など運転を止め、起動スイッチに錠をかけ表示する等。運転中に行わなければならない場合は、規程・停止・表示の措置を講じれば「この限りでない」同 第150条の5義務例外の条件つき
特別教育教示等の業務(駆動源を遮断して行うものを除く)と、運転中に可動範囲の中で行う検査などの業務につかせる人に、安全のための特別の教育を行う事業者が行う教育で、国の免許や資格試験ではない労働安全衛生法 第59条第3項、同規則 第36条第31号・第32号義務「行なわなければならない」
読み方:国際規格ISO 10218は、10218-1がロボット、10218-2がロボットシステムとインテグレーションの安全要求事項を定める(法令ではなく規格)。SIer協会のロボットSI検定は民間の検定で、国の資格ではない。
出典:労働安全衛生規則・労働安全衛生法(e-Gov法令、2026年10月1日施行の改正を反映した現行)、厚生労働省「産業用ロボットと人との協働作業が可能となる安全基準を明確化しました」(2013年12月)、同「産業用ロボットの安全規格について」(労働安全衛生総合研究所、2015年)、日本ロボットシステムインテグレータ協会「2025年度 事業報告書」。場面の分け方は本記事による。

ロボットを運転するとき、接触で働く人に危険が生じるおそれがあれば、事業者は「さく又は囲いを設ける等」の措置を講じなければなりません(安衛則第150条の4)。厚生労働省のリーフレットは、この規定の対象を定格出力80Wを超える産業用ロボットと説明しています。

人とロボットが柵なしで同じ場所で働く協働作業は、2013年12月24日付の通達で条件が示されました。1つは、事業者がリスクアセスメント(危険の洗い出しと対策)を行い、接触による危険のおそれが無くなったと評価できるときです。もう1つは、国際規格ISO 10218に従って設計・製造・設置され、技術ファイルと適合宣言書が作られたロボットを、使用条件どおりに使うときです。「協働ロボット」と呼ばれる製品でも、それだけで柵が要らなくなるわけではありません。使い方を含めて、こうした条件を満たすかが問われます。

ロボットに動きを教える教示等の作業では、事業者は作業の規程を定め、異常のときにすぐ止められる措置や、作業中だと表示するなどしてほかの人が起動スイッチを操作しないようにする措置を講じなければなりません(第150条の3。駆動源を遮断して行う場合は一部を除く)。作業を始める前には、非常停止装置などを点検します(第151条)。

可動範囲の中で検査・修理・調整・掃除・給油などをするときは、運転を止め、起動スイッチに錠をかけて表示するなどの措置が必要です(第150条の5)。運転中に行わなければならない場合は、規程や停止の措置などを講じれば、この限りでないとされています。

教示等の業務(駆動源を遮断して行うものを除く)と、運転中に可動範囲の中で行う検査などの業務は、特別教育の対象です(安衛則第36条第31号・第32号)。労働安全衛生法第59条第3項により、事業者は、こうした業務につかせる人に安全のための特別の教育を行わなければなりません。特別教育は事業者が行う教育で、国の免許や資格試験ではありません。

仕事の違い:セールス、サービス、開発・生産技術、SIの設計とティーチング

FAの会社の仕事は、機器やロボットを売る仕事、納めた後に支える仕事、製品を開発し作る仕事、設備を組み上げる仕事に分けられます。職種の名前は会社ごとに違うので、ここでは各社の新卒採用のページにある名前を、会社名をつけて紹介します。

売る仕事では、ファナックにFAセールスとロボットセールスがあります。FAセールスは機械メーカーを中心とした顧客へのFA商品の販売や技術支援、ロボットセールスはロボットシステムの提案や導入時の技術支援も担います。安川電機の営業職は、社内の各部門や社外のパートナーとチームでソリューションを提供すると説明しています。キーエンスの新卒の募集職種には、営業職やコンサルティングエンジニア職があります。キーエンスはビジネスモデルの説明で、商品特性を熟知したセールスエンジニアが顧客の現場のアプリケーションまで提案すると書いています(セールスエンジニアは会社の説明の言葉で、採用の職種名ではありません)。

納めた後を支える仕事は、安川電機のフィールドエンジニア職、ファナックのサービスです。安川電機は、フィールドエンジニア職について全国での勤務や海外での活躍もあると書いています。納入後の製品にかかわる職種なので、勤務地や出張の範囲を求人で確かめておくと安心です。

開発と生産の仕事では、ファナックの研究開発が、CNCやロボットコントローラのハードウェア・ソフトウェア、サーボ、ロボットの機構部などを担います。安川電機の技術職には研究・開発・設計・生産技術・品質管理などがあり、キーエンスには商品開発職や生産技術職があります。ファナックの製造(生産技術)は、自社工場の自動化の設備を設計・導入・立ち上げる仕事で、設備を使う側から自動化にかかわる職種の例です。

SIの仕事は、先に見たとおり、構想設計、機械・電気・制御の設計、組立、PLCのプログラム、ロボットのティーチング、立ち上げと幅があります。どこまでを社内で受け持つかは会社によって違うので、求人では担当する工程を確かめます。

SIer協会は、ロボットシステムのインテグレーションに必要な知識と技術の習熟度を測るロボットSI検定を運営しています。2025年度は3級・2級・エキスパートの試験を行い、3級の本試験は団体受験と一般受験を合わせて83人が受けて62人が合格し、2級は2回の試験で計53人が受けて18人が合格しました(記事で合計)。これは民間の検定です。協会は厚生労働省の認定試験とすることを目指して1級の準備を進めていますが、国の資格ではありません。

求人を見比べるときの確認点

ここまでの内容を、求人票と面接で確かめる項目にまとめます。

  • 何を作る・売る会社か:制御機器・センサ・空気圧機器か、ロボット本体か、設備を組み上げるSIerか、機器を仕入れて売る商社か
  • 標準品か一品受注か:カタログの機器を数多く売るのか、客先ごとに設備を設計するのか。仕事の進め方と忙しい時期が変わる
  • どの業界向けか:電機・半導体・自動車・食品など。業界の設備投資の波が、受注に表れる
  • 海外の比率:輸出や海外の売上の多い会社では、海外の客先や拠点にかかわる可能性がある
  • 保守と出張:納入後のセットアップ・修理を担う職種か。全国・海外への出張や客先での作業の頻度
  • 安全の教育と検定:ロボットの教示等の業務につくなら、雇う会社が事業者として特別教育をどう行うか。ロボットSI検定などの受験を支援するか

工作機械にロボットを付けて自動化する話や、工作機械の受注の波は、「工作機械の業界地図」で確かめられます。

工場の自動化設備と、半導体製造の各工程で使う専用装置の違いは、半導体製造装置の業界地図で確かめられます。