「コンサルタント募集」と書かれた求人には、経営戦略を描く仕事、業務やITの改革を進める仕事、人事制度や研修をつくる仕事、中小企業に毎月通って経営を支える仕事まで幅があります。同じ「コンサル」でも、顧客が大企業か中小企業か、お金をもらう対象が作業の期間か成果か毎月の支援かで、働き方も評価のされ方も変わります。
この記事では、企業や官公庁の課題について調べ、方針や計画を描き、実行を支援して対価を得るコンサルティングの会社を扱います。会社の型、民法の契約の型とお金のもらい方、人数と稼働で決まる売上、組織人事のコンサルと企業研修、業界の大きさの測り方、仕事の流れと入り方を順に確かめます。企業研修は独立した地図にせず、組織人事の章で扱います。
システム開発の受託と、請負・準委任の使い分けは、完成済みの「SIer・システム開発の業界地図」で扱っています。ITコンサルの型の違いとSIerとの境目は「ITコンサルの業界地図」、監査・税務の仕事は「会計事務所・税理士事務所・監査法人の業界地図」、人材紹介と派遣は「人材紹介・求人サービスの業界地図」「人材派遣の業界地図」で扱います。子ども向けの塾・予備校は「学習塾の業界地図」で扱います。個人が受講料を払う社会人スクール(資格・語学など)は、この記事では扱いません。法律事務、建設コンサルタント、広告・マーケティングの支援は扱いません。
コンサルタント1人あたりの請求額(単価)と稼働率の数字は示しません。この記事で確かめた会社の開示にも、公的な統計にもないためです。年収も示しません。有価証券報告書に載る平均年間給与は持株会社などの社員の値で、コンサルタントの年収とは限らないためです。会社どうしの大きさや利益率の順位も付けません。
コンサルティングは、許認可のない「課題を解く手伝い」を売る仕事
コンサルティングは、顧客の企業や官公庁が抱える経営・業務・IT・組織人事の課題について、調査・分析をし、方針や計画を描き、その実行を支援して対価を得る事業です。倉庫業や人材派遣と違い、コンサルティングという事業そのものに、始めるための許可や登録を定めた法律(業法)はありません。会社が売っているのは、主に人の時間と知恵です。
提案後のシステム構築まで担う場合は、コンサルの支援契約と受託開発の検収・運用責任を分けて確認できます。 SIer業界の地図
顧客先で働く形が似ていても、助言・成果物を提供する契約と、派遣先が指揮命令する形は異なります。 人材派遣業界の地図
業界では、会社を「戦略系」「総合系」「IT系」「組織人事系」などと呼び分けます。これは業界の通称で、法律や統計の区分ではありません。1社が複数の型にまたがることもあります。たとえば野村総合研究所(NRI)のコンサルティング部門は、政策提言・戦略のコンサルティング、業務改革を支える業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを手がけています(2026年3月期決算短信)。この記事で会社を型の例に挙げるのは、事業の中身を会社の開示で確かめた会社だけです。
会社の型で、顧客・課題・お金のもらい方が違う
型ごとに、主な顧客、扱う課題、お金のもらい方、顧客に提供するものを並べると、次のようになります。
コンサルの型ごとに、顧客・扱う課題・お金のもらい方・顧客に提供するものが違う
ベイカレントは、コンサルティング事業だけの単一セグメント(事業の区分が1つ)の会社です。2026年2月期の売上収益は1,483億円で、前期より27.8%増えました(2026年2月期決算短信。国際会計基準)。キャリア採用のページでは、ストラテジー、IT(PM、ERP、クラウド、サイバーセキュリティ、データサイエンスなど)、財務・会計、HRといったテーマが並びます(ベイカレント 採用情報)。戦略からITまで、幅広い課題を1社で引き受ける型(総合系)の例です。
NRIは、売上の大半がITソリューションの会社です。コンサルティング部門の外部の顧客への売上収益は636億円で、連結の売上収益8,147億円の約7.8%です(2026年3月期、国際会計基準。割合は本記事の計算値)。NRIは「実行支援型」のコンサルティングと、コンサルティングとITソリューションの連携を掲げています。シンクタンクの調査・提言とITの仕事を同じ会社で持つ型の例です。NRIのIT事業は「SIer・システム開発の業界地図」で扱っています。
船井総研ホールディングスの経営コンサルティング事業は、企業経営の指導・調査・診断に加えて、会員制の経営研究会とセミナーを手がけています(2025年12月期決算短信)。業種別に動くのが特徴で、2025年12月期は住宅不動産業界向けと医療介護福祉業界向けが伸びました。同じ短信で、中期経営計画(2026〜2028年)では、中小企業向けのコンサルティングに加えて、中堅企業向けにも広げる方針を示しています。中小企業を主な顧客にしてきた型の例です。
外資系の大手は、日本法人の売上が分からないことがあります。アクセンチュアの日本法人が会社概要で示しているのは従業員数で、約31,000人です(2026年9月1日時点、会社概要)。この人数は会社全体の人数で、職種ごとの内訳は示されていません。
監査法人や税理士法人と同じグループにあるコンサルティング会社(会計系)は、総合系の一部として表に入れました。監査・税務の仕事そのものは「会計事務所・税理士事務所・監査法人の業界地図」で扱います。
何に対してお金をもらうか:期間と体制、成果、毎月の支援、利用料
コンサルティングの契約には、決まった形がありません。契約の型は民法で整理できますが、実際の契約がどの型に当たるかは、会社と案件ごとに違います。「コンサルの契約は準委任」と決まっているわけではありません。
民法では、法律行為ではない事務を任せる契約を「準委任」と呼び、委任の規定を使います(第656条)。受任者(引き受けた側)は、特約がなければ報酬を請求できず、報酬は事務を終えた後に請求します。期間で報酬を決めたときは、その期間が過ぎた後に請求できます(第648条)。準委任でも、事務によって得られる成果に対して報酬を払うと決めることができます。成果の引渡しが必要なときは、報酬は引渡しと同時に払います(第648条の2)。仕事の完成を約束し、その結果に対して報酬を受け取る「請負」(第632条)とは、約束するものが違います。
| お金をもらう対象 | 中身 | 根拠・開示で確かめた例 |
|---|---|---|
| 事務を行うこと(期間・体制) | 決めた期間に、決めた体制で調査・分析・支援を行う。報酬は事務の後か期間ごと | 民法第656条・第648条(準委任) |
| 事務の成果 | 準委任のまま、成果に対して報酬を払うと決める。引渡しが必要なら引渡しと同時に払う | 民法第648条の2。シグマクシスは2027年3月期の方針に「成功報酬型提案の推進」を挙げる(実績ではない) |
| 仕事の完成 | 完成を約束し、結果に対して報酬を受け取る | 民法第632条(請負) |
| 毎月の支援・会費 | 継続して経営を支援する契約、会員制の研究会の会費 | 船井総研ホールディングス(月次支援、経営研究会) |
| サービスの利用 | クラウドのサービスや学習管理システムの利用料 | リンクアンドモチベーション(モチベーションクラウド)、インソース(Leaf) |
| 研修の実施 | 講師を派遣して行う研修、公開講座の受講料 | インソース(講師派遣型研修、公開講座) |
どの形が多いかを示す統計はありません。シグマクシスは、2027年3月期の方針として「人月・工数に依拠しない成功報酬型提案の推進」を挙げています(2026年3月期決算短信)。人数と時間を基準にした提案から、成果に応じた報酬の提案へ広げる方針で、まだ実績の数字ではありません。
会社の開示からは、お金のもらい方の違いが見えます。船井総研ホールディングスは、2025年12月期の経営コンサルティング事業の増収の理由として、主力の「月次支援」の契約単価の上昇と、経営研究会の会費の値上げを挙げています。経営研究会の会員数は過去最高だったと書いています(単価や会員数の実数は開示されていません)。主力は、プロジェクトごとの契約ではなく、毎月の支援と会費です(プロジェクトの経営コンサルティングの収入もあります)。
リンクアンドモチベーションでは、2025年12月期のコンサル・クラウド事業の売上収益133億円のうち、コンサルティングが61億円、クラウド(モチベーションクラウド)が72億円で、クラウドのほうが大きくなっています(2025年12月期決算短信。国際会計基準)。人が行うコンサルティングと、ソフトウェアの利用料を組み合わせて稼ぐ形です。
プロジェクトで動く会社の売上は、人数と稼働で決まる。外注を使うと利益の出方が変わる
プロジェクトで動くコンサルティング会社の売上は、どれだけの人数のコンサルタントが、どれだけ案件に就き、いくらの値段で、どれだけの期間働くかで決まります。社内の人だけで足りなければ外部の会社に作業を任せ(外注)、その分も売上に入りますが、外注費は費用になります。
売上は人数・稼働・単価・期間で決まり、外注を使った分も売上に入る
単価と稼働率の数値は、本記事で確かめた決算短信にも公的な統計にもないため入れていない。毎月の支援や会費、利用料で稼ぐ会社は、この式とは違う形で売上が決まる。
売上収益1,483億円、売上原価643億円、売上総利益840億円。営業利益は509億円で、売上収益営業利益率34.3%。ベイカレント1社の値で、ほかの会社とは比べていない。決算短信に売上原価の内訳、コンサルタントの数、単価の記載はない。
社員紹介に出てくる表記を拾ったもので、会社の公式な職位体系の説明ではない。業界共通の職位でもない。職種のタグとして出てくる「コンサルタント」は職位とは別の表示。
シグマクシス・ホールディングスの決算短信は、この関係を言葉で説明しています(2026年3月期、日本基準)。会社は、事業の成長に必要なものを「コンサルタント能力(スキル×人数)」と表現しています。大型案件が本番の稼働に入ったことで、第3・第4四半期は外注が大幅に減り、売上原価の外注費は前の期より約40%減りました。売上高は238億円で前の期より9.4%減りましたが、売上総利益は118億円でほぼ横ばい(0.4%増)で、営業利益は61億円で7.6%増えました。同じ期には子会社2社の株式も売っており、売上の減少は外注だけによるものではありません。社内の人材の稼働率は第3四半期に下がり、第4四半期に目標の水準まで戻ったと書いています。稼働率の数値は開示されていません。
シグマクシスは、コンサルタントの数も開示しています。コンサルタントは2026年3月末に692名で、新卒79名が入社した後の4月1日時点では757名でした。2026年3月期には、経験者47名と新卒81名が入社しています。
ベイカレントの2026年2月期は、売上原価が643億円、売上総利益が840億円で、売上総利益率(売上から原価を引いた利益の割合)は56.6%でした。営業利益は509億円で、売上収益営業利益率は34.3%です。これはベイカレント1社の値です。決算短信には、売上原価の内訳、コンサルタントの数、案件の単価は書かれていません。
職位(社内の役職の段階)の名前は会社ごとに違います。ベイカレントの採用ページの社員紹介には、シニアコンサルタント、マネージャー、シニアマネージャー、シニアディレクター、マネージングディレクターといった職位の表記があります。社員紹介に出てくる表記を並べたもので、会社の公式な職位の順序を示すものではありません。社員紹介で職種のタグとして出てくる「コンサルタント」は、職位とは別の表示です。ほかの会社の職位は、それぞれの採用ページで確かめる必要があります。
組織人事と研修:研修会社は「研修の実施」で稼ぐ
組織人事のコンサルティングは、採用・育成・人事制度・職場の風土などの課題を扱います。リンクアンドモチベーションのコンサル・クラウド事業は、組織の課題を診断し、採用・育成・制度・風土といった組織人事の全領域の変革を支援すると説明しています。同じ会社には、個人向けのキャリアスクール・学習塾の事業や、ALT(外国語指導助手)の配置・人材紹介の事業もあります。人材紹介と派遣の仕組みは「人材紹介・求人サービスの業界地図」「人材派遣の業界地図」で扱います。
コンサルティング会社が報告書・計画・実行支援を提供するのに対し、研修会社は研修そのものを実施します。
研修会社の稼ぎ方は、インソースの事業の種類別の売上で確かめられます(2025年9月期決算短信。日本基準)。講師派遣型研修では、民間企業・官公庁ともに対面の研修が増えたと書いています。売上高145.1億円のうち、企業に講師を派遣して行う講師派遣型研修が69.1億円、企業が社員を送る公開講座が35.8億円、学習管理システム(LMS)「Leaf」などのITサービスが19.3億円、その他が20.9億円です。その他には、コンサルティング、動画・eラーニング、BPO(業務の受託)、人材紹介などが入ります。Leafは有料で使う組織が860で、期末の月の月額の利用料を12倍した年間の利用料(ARR)は14.6億円です。研修を1回ずつ売る形と、システムの利用料を継続して受け取る形を組み合わせています。
学習塾の会社が企業研修を手がける例もあります。ナガセのビジネススクール部門(2026年3月期の売上高20億円)は、大学生・社会人向けの教育に、大企業向けの語学研修やDX人材の育成を含みます(2026年3月期決算短信)。
企業の側の支出は、厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」で分かります。常用労働者30人以上の企業のうち、OFF-JT(仕事を離れて行う研修)に費用を支出した企業は50.1%でした。費用を支出した企業での労働者一人当たりの平均額は2.0万円で、前回の1.5万円から増えています(令和6年度の1年間)。この費用には社内の講師による研修も入るため、外部の研修会社に払った額ではありません。研修の市場の大きさを示す公的な数字はなく、この記事でも示しません。
業界の大きさは、公的統計では1つの数字にならない
コンサルティング業界の大きさを1つの数字で示す公的な統計はありません。国の統計は、会社を産業に分類して集計します。経営コンサルタント業は「専門サービス業(他に分類されないもの)」という中分類に入りますが、この中分類には法律事務所、会計事務所、デザイン業なども入ります。NRIのように情報サービス業に分類される会社が売るコンサルティングは、この中分類には入りません。
経済構造実態調査は、売上の大きい産業について、売上を生産物(売ったもの)の種類別に示しています。2025年経済構造実態調査の二次集計では、2024年に、専門サービス業(他に分類されないもの)に分類された法人企業が売った「事業者向けコンサルティング」は3兆5,207億円で、この中分類の売上高29.1兆円の12.1%でした。この数字を読むときは、次の点に注意が要ります。
- 専門サービス業に分類された会社の分だけで、NRIのように情報サービス業などほかの産業に分類される会社が売るコンサルティングは入らない
- 生産物の定義(サービス分野の生産物分類)は、経営・戦略・業務・組織人事・ITのコンサルティングを含むが、システムの構築など、解決策を実行するサービスそのものは含まない
- コンサル業界の市場規模ではない
- 専門サービス業の売上で最も大きいのは、持株会社が子会社から受け取る配当金(34.9%)。経営コンサルタント業と純粋持株会社は、産業分類で同じ小分類(728)に入る
労働力調査の就業者も中分類の単位で、法律・会計・デザインなどを含むため、コンサルの人数としては使えません。
そこでこの記事では、上場している会社の開示で、何で稼いでいるかを確かめます。
上場しているコンサル・研修会社は、何で稼いでいるか
図は、会社ごとの売上の中身を示したもので、会社どうしの大きさや利益率は比べていません。決算期(2月・3月・9月・12月)、会計基準(国際会計基準と日本基準)、開示している利益の段階(営業利益と売上総利益)が会社ごとに違うためです。たとえばリンクアンドモチベーションのセグメント利益は売上総利益で、ほかの会社の営業利益とは並べられません。
仕事は提案から始まる。職種名は会社ごとに確かめる
プロジェクトで動くコンサルティングの仕事は、顧客の課題を聞いて提案し、契約で範囲と期間と体制を決め、調査・分析・計画づくりと実行の支援を進め、報告する流れが基本です。毎月の支援の契約では、契約が続く限り同じ顧客を継続して支援します。
コンサルの仕事は提案から報告へ流れ、職種名は会社ごとに違う
職種の名前も会社ごとに違います。ベイカレントのキャリア採用では、ベイカレント・コンサルティングが「コンサルタント職」「エキスパート職」、ベイカレント・テクノロジーが「システムコンサルタント職」「スペシャリスト職」、ベイカレントが「アカウントセールス職」「リクルーター職」を募集しています。コンサルタントのほかに、顧客を担当する営業や、採用の担当も職種として分かれています。
中途採用と新卒採用の両方で人を増やしている会社もあります。シグマクシスでは、2026年3月期に経験者47名と新卒81名が入社しました。経験のない人を中途で採るかどうか、どんな経験を求めるかは、会社と求人ごとに違うので、応募の条件は求人票で確かめてください。
求人票では、顧客・お金のもらい方・担当範囲・人の使い方を確かめる
コンサルの仕事は会社の型と料金の受け取り方によって、主な顧客と提供内容が変わります。
| 仕事 | 主な相手 | 主に顧客に提供するもの | お金のもらい方との関係 |
|---|---|---|---|
| プロジェクトのコンサルタント | 大企業・官公庁の経営・業務・IT部門 | 調査・分析、計画、実行の支援、報告 | 期間と体制で決めるか、成果で決めるか。案件ごとに契約が変わる |
| 中小企業の継続支援 | 中小企業の経営者 | 毎月の助言、研究会・セミナーの運営 | 月次の契約と会費。業種ごとの担当になることがある |
| 組織人事のコンサルタント | 人事部門、経営者 | 組織の診断、人事制度、育成の計画 | コンサルとクラウドの利用料を組み合わせる会社がある |
| 研修の企画・営業 | 人事部門、研修の受講者 | 研修の実施、公開講座、LMSの提供 | 研修の代金と、システムの継続の利用料 |
| 営業・採用 | 顧客の担当者、応募者 | 案件の獲得、コンサルタントの採用 | 売上がコンサルタントの人数と稼働で決まるため、人を集める仕事も売上に関わる |
求人票では、次の4点を確かめます。
- 顧客:大企業・官公庁が中心か、中小企業が中心か。業種ごとの部門で動くのか
- お金のもらい方:プロジェクトごとの契約か、毎月の支援や会費か、研修やクラウドの利用料か
- 担当範囲:戦略や計画を描くところまでか、業務・ITの実行の支援まで担うのか。ITの構築まで請ける場合は、SIの仕事に近くなる
- 人の使い方:社内のコンサルタントで案件を回すのか、外注と組んで回すのか。職位の名前と、それぞれの役割
ITの構築まで請ける仕事の契約と取引の流れは「SIer・システム開発の業界地図」で、ITコンサルの型の違いは「ITコンサルの業界地図」で確かめられます。


