「人に関わる仕事」「教える仕事」「専門知識を生かす仕事」の求人には、幅があります。転職エージェントのキャリアアドバイザー、派遣会社の営業、塾の教室長、大学職員、コンサルタント、会計事務所や法律事務所の職員などです。どれも人や知識を扱う仕事ですが、お金を払う相手も、守る法律も、要る資格も違います。
この分類の分野は、1つの流れではつながっていません。製品を原料から順に加工する製造業や、荷物を運ぶ物流のように、工程の図で結ぶことができないのです。そこでこの記事では、流れ図の代わりに、分野を同じ物差しで並べて比べます。物差しは、誰が払うか、何に対して払うか、始めるために何が要るか、働く人に資格が要るか、大きさをどう測るか、どんな仕事があるか、の6つです。
会社名は仕組みや職種名を説明する例としてのみ掲載し、個別サービスの評価や順位付けには用いません。
扱う範囲は、人材紹介・求人サービス、人材派遣、学校、学習塾、コンサルティング(企業研修を含む)、会計事務所・税理士事務所・監査法人、法律事務所、研究機関・試験検査機関です。各分野の仕組み・会社・職種は、それぞれの業界地図で詳しく説明します。企業が使う採用管理や人事労務のソフトは「HRテック(人事労務・タレントマネジメント)の業界地図」、保育士・介護職・看護師の職場は「医薬品・医療・介護の業界地図」とそこから案内する地図(「医療提供の業界地図」「介護・福祉の業界地図」「保育・子育て支援の業界地図」など)、事務やコールセンターの業務の受託は「BPO・コールセンターの業界地図」、銀行・証券などの金融機関は「金融の業界地図」で扱います。
人材・教育・専門サービスは、4つのまとまりと8つの地図に分かれる
この記事の「人材・教育・専門サービス」は、このメディアの分類の名前です。国の統計の1つの産業ではありません。労働力調査では、職業紹介・労働者派遣業は「サービス業(他に分類されないもの)」、学校教育と塾などの「その他の教育,学習支援業」は「教育,学習支援業」、士業の事務所や経営コンサルタント業は大分類「学術研究,専門・技術サービス業」の中の「専門サービス業(他に分類されないもの)」、研究機関は同じ大分類の中の「学術・開発研究機関」に分かれています。
この記事では、8つの地図を4つのまとまりに分けます。まとまりの間は、工程やお金の1つの流れでは結べません。並べて見るための区分です。
人材・教育・専門サービスには、どんな分野があり、誰を相手にし、どの地図で読むか
- 採用管理・人事労務のソフト
HRテック(人事労務・タレントマネジメント)の業界地図 - ITコンサル・システムの構築
ITコンサルの業界地図/SIer・システム開発の業界地図 - 会計ソフト
会計ソフトの業界地図 - 保育士・介護職・看護師の職場
医薬品・医療・介護の業界地図から案内する医療提供・介護・福祉・保育・子育て支援の業界地図 - 採用代行・事務の受託・警備
BPO・コールセンターの業界地図/警備の業界地図 - 監査を受ける側の金融機関
金融の業界地図
雇用をつなぐ:「人材紹介・求人サービスの業界地図」は、転職エージェント・求人サイト・スカウト・ハローワークを、職業安定法の区分で分け、手数料を誰がいつ払うかを扱います。「人材派遣の業界地図」は、派遣会社が雇い派遣先が仕事の指示をする三者の関係と、派遣料金と賃金の関係を扱います。
求人企業と求職者をつなぐ制度、手数料、仕事を見る場合は、人材紹介・求人サービスの業界地図で確かめられます。
派遣元・派遣先・派遣労働者の関係、料金と仕事を見る場合は、人材派遣の業界地図で確かめられます。
学ぶ場をつくる:「学校の業界地図」は、幼稚園から大学・専門学校までの設置者と、授業料・助成などのお金、大学職員・学校事務の仕事を扱います。「学習塾の業界地図」は、集団・個別・映像授業の型と、保護者が払う授業料、教室長と講師の仕事を扱います。
学習塾の授業形態、授業料、教室長と講師の仕事を見る場合は、学習塾の業界地図で確かめられます。
専門知識を売る:「コンサルティングの業界地図」は、戦略・総合・IT・組織人事などの会社の型と、何に対してお金をもらうかを扱います。企業研修の会社も、この地図の「組織人事と研修」の章で扱います。「会計事務所・税理士事務所・監査法人の業界地図」は、監査と税務の仕事と事務所の型を扱い、社会保険労務士も章を設けて扱います。「法律事務所の業界地図」は、弁護士の仕事と事務所の型を扱い、司法書士・行政書士も章を設けて扱います。
コンサルティングの分野、対価、企業研修、仕事を見る場合は、コンサルティングの業界地図で確かめられます。
研究と試験:「研究機関・試験検査機関の業界地図」は、研究費の出どころと研究者の働き方、試験・検査・認証を受託する機関を扱います。
1つの会社が複数のまとまりにまたがることもあります。その例は第5章で見ます。
お金は誰から、何に対して受け取るのか
分野を見分ける1つ目の物差しは、お金の出どころです。下の表は、分野ごとに、誰が払うか、何に対して払うか、法律の決まりを並べたものです。金額や相場の列は作っていません。分野ごとに単位も意味も違うためです。
どの分野は、誰から、何に対して、お金を受け取るのか
| 分野 | 誰が払うか | 何に対して払うか | 法律の決まり |
|---|---|---|---|
| 雇用をつなぐ | |||
| 人材紹介人材紹介・求人サービスの業界地図 | 求人を出す企業 | 紹介(雇用関係の成立のあっせん)の手数料。省令の上限か、届け出た手数料表による。届出制が手数料の合計の約99.7%(令和6年度速報、計算値) | 禁止求職者からは原則として手数料を取れない職業安定法 第32条の3第2項 |
| 求人サイト・求人誌人材紹介・求人サービスの業界地図 | 主に求人を出す企業 | 求人の掲載・サービスの利用の料金(形は会社とサービスで違う) | 禁止特定募集情報等提供の事業者は、応募した人から報酬を受けられない職業安定法 第43条の3 |
| 人材派遣人材派遣の業界地図 | 派遣先の企業 | 派遣料金。派遣会社はそこから派遣で働く人に賃金を払う | 義務マージン率などを事業所ごとに情報提供労働者派遣法 第23条第5項 |
| 学ぶ場をつくる | |||
| 学習塾学習塾の業界地図 | 主に保護者 | 授業料(月謝)・講習会費・教材費など | 義務2か月超・5万円超の契約は特定継続的役務提供。書面の交付、クーリング・オフ、中途解約特定商取引法 第41条・第42条・第48条・第49条 |
| 私立学校学校の業界地図 | 生徒・保護者。国・自治体の助成もある | 授業料など。設置者の学校法人が経費を負担する | できる授業料を徴収できる(学校教育法 第6条)。国・自治体は学校法人に助成をすることができる私立学校法 第132条 |
| 国立・公立学校学校の業界地図 | 設置者(国・自治体など) | 学校の経費。義務教育以外の学校は授業料を取ることができる | 禁止国立・公立の義務教育では授業料を取れない学校教育法 第5条・第6条 |
| 専門知識を売る | |||
| コンサルティングコンサルティングの業界地図 | 顧客の企業・官公庁 | 事務を行う期間と体制、成果、仕事の完成、毎月の支援、サービスの利用料など。契約ごとに決まる | 決まった形はない。民法の準委任・請負などの型で整理できる民法 第632条・第648条・第648条の2・第656条 |
| 監査会計事務所・税理士事務所・監査法人の業界地図 | 監査を求める会社(監査を受ける会社) | 財務書類の監査・証明(他人の求めに応じ報酬を得て行う)。報酬の形は各地図で | 公認会計士の業務の定義公認会計士法 第2条第1項 |
| 税務会計事務所・税理士事務所・監査法人の業界地図 | 依頼する企業・個人 | 税務代理・税務書類の作成・税務相談。付随して記帳の代行など。報酬の形は各地図で | 税理士業務の定義税理士法 第2条第1項・第2項 |
| 法律事務法律事務所の業界地図 | 依頼する企業・個人(官公署の委嘱もある) | 訴訟などの法律事務。報酬の形は各地図で | 弁護士の職務の定義弁護士法 第3条 |
| 研究と試験 | |||
| 研究・試験研究機関・試験検査機関の業界地図 | 研究費を出す企業・国など(2024年度の研究費の支出源は民間80.8%、国と地方公共団体18.7%)、試験・検査を依頼する企業 | 研究の費用、試験・検査・認証の依頼。形は各地図で | 各地図で扱う |
雇用をつなぐ分野では、主に企業が払います。人材紹介では、求人を出す企業が紹介会社に手数料を払います。職業安定法は、有料職業紹介の事業者が求職者から手数料を受け取ることを、原則として禁じています(第32条の3第2項)。企業から受け取る手数料は、省令の上限によるものか、届け出た手数料表によるもので、令和6年度の速報では届出制が手数料の合計の約99.7%でした(計算値)。求人サイト・求人誌の料金も主に企業が払い、特定募集情報等提供の事業者は応募した人から報酬を受け取れません(第43条の3)。人材派遣では、派遣先の企業が派遣会社に派遣料金を払い、派遣会社はそこから派遣で働く人に賃金を払います。派遣会社は、マージン率などを事業所ごとに公開しなければなりません(労働者派遣法第23条第5項)。
学ぶ場をつくる分野では、払う人が学校の種類で変わります。学習塾では、主に保護者が授業料・講習会費・教材費などを払います。期間が2か月を超え、金額が5万円を超える塾の契約は、特定商取引法の特定継続的役務提供に当たり、書面の交付、クーリング・オフ、中途解約のルールがかかります(第41条・第42条・第48条・第49条)。学校は、学校教育法で、設置者が経費を負担すると決まっています(第5条)。学校は授業料を取ることができますが、国立・公立の小学校・中学校などの義務教育では取れません(第6条)。私立学校については、国や自治体が学校法人に助成を「することができる」と私立学校法が定めています(第132条)。助成は法律の義務ではなく、できる規定です。
学校法人は、お金の書類の公開にも決まりがあります。計算書類などを事務所に備え置き、在学者などが閲覧を求めたら、正当な理由なく拒めません(第106条)。インターネットなどでの公表は、大学などを設置する学校法人(文部科学大臣が所轄する学校法人など)には義務で(第151条)、それ以外の学校法人には努力義務です(第137条)。
専門知識を売る分野では、依頼する企業や個人が払います。コンサルティングの契約には決まった形がなく、事務を行う期間と体制、成果、仕事の完成、毎月の支援、サービスの利用料など、案件ごとの契約で決まります。公認会計士法は、公認会計士の仕事を「他人の求めに応じ報酬を得て」財務書類の監査・証明をすることと定めています(第2条第1項)。税理士法の税理士業務は、他人の求めに応じて行う税務代理・税務書類の作成・税務相談で(第2条第1項)、記帳の代行などは税理士業務に付随して行える事務です(同第2項)。弁護士法は、弁護士の職務を、当事者などの依頼や官公署の委嘱を受けて訴訟などの法律事務を行うことと定めています(第3条)。顧問料や報酬の形は、会計事務所・法律事務所それぞれの地図で扱います。
研究と試験では、研究のお金を企業や国などが出し、試験・検査・認証の機関は依頼を受けて仕事をします。科学技術研究調査では、2024年度の研究費を出したのは、民間が80.8%、国と地方公共団体が18.7%でした(支出源別)。お金の出どころは、研究機関・試験検査機関の地図で扱います。
ここから、求職者に関わることが1つ分かります。人材紹介や求人サイトを求職者が原則無料で使えるのは、企業が手数料や料金を払う仕組みだからです。紹介会社のお金は、求職者ではなく企業から入ります。そのため、紹介会社は求職者の代理人ではなく、求職者と企業の間に立つ立場で、扱えるのはその会社が企業から受けている求人に限られます。サービスに登録したり紹介を受けたりしても、内定や年収が上がることが約束されるわけではありません。派遣で働く人には、派遣料金の明示と事業所ごとのマージン率の公開という決まりがあります。一方で、国の集計の料金と賃金の平均から全国のマージン率を計算することはできず、比べるときは事業所ごとの公開の値を見ます。
始めるための条件と、働く人に要る資格は分野ごとに違う
2つ目の物差しは、法律が事業と人に何を求めるかです。事業を始めるのに国の許可が要る分野、届出で足りる分野、学校のように設置の認可が要る分野、資格を持つ人にしか仕事を認めない分野、事業そのものの法律がない分野があります。
事業を始めるのに何が要り、働く人にはどんな資格が要るのか
| 分野 | 事業に要るもの | 働く人に要る資格・会社が選ぶ責任者 |
|---|---|---|
| 人材紹介 | 許可有料職業紹介は厚生労働大臣の許可職業安定法 第30条 | 職業紹介責任者の選任は会社の義務(第32条の14)。キャリアアドバイザーに資格は要らない |
| 求人サイト | 届出募集情報等提供は許可不要。特定募集情報等提供は届出職業安定法 第43条の2 | 法律の資格は要らない |
| 人材派遣 | 許可厚生労働大臣の許可。港湾運送・建設・警備などの業務には派遣できない労働者派遣法 第5条・第4条第1項 | 派遣元責任者の選任は会社の義務(第36条)。派遣の営業・コーディネーターに資格は要らない |
| 学校 | 認可設置者は原則として国・地方公共団体・学校法人。私立の幼稚園〜高校は都道府県知事、大学などは文部科学大臣の認可学校教育法 第2条・第4条 | 幼稚園〜高校・特別支援学校の教員は免許状が要る(教育職員免許法 第3条第1項)。大学の教員はこの法律の対象外 |
| 学習塾 | 学校教育法第1条の学校ではない。契約には特定商取引法がかかる特定商取引法 第41条ほか | 教室長・講師に法律の資格は要らない |
| コンサルティング | 業法なし始めるための許可や登録を定めた法律がない | コンサルタントに法律の資格は要らない |
| 監査 | 登録・独占公認会計士・監査法人でない者は、報酬を得て監査・証明を営めない。監査法人は5人以上の公認会計士で設立公認会計士法 第47条の2・第34条の7 | 公認会計士は名簿に登録(第17条)。事務所の職員の仕事は会計事務所の地図で |
| 税務 | 登録・独占税理士・税理士法人でない者は税理士業務を行えない(報酬の限定なし)税理士法 第52条・第48条の2 | 税理士は税理士名簿に登録。事務所の職員の仕事は会計事務所の地図で |
| 法律事務 | 登録・独占弁護士・弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で法律事務を業とできない弁護士法 第72条・第30条の2 | 弁護士は日本弁護士連合会の名簿に登録(第8条)。事務所の職員の仕事は法律事務所の地図で |
| 研究・試験 | 事業や働く人に共通の許可・資格の法律は、この表では扱わない。研究機関・試験検査機関の地図で扱う | |
独占の書き方は3つの法律で違う:公認会計士法と弁護士法は「報酬を得て(得る目的で)」業とすることを制限し、税理士法の条文には報酬の限定がない。社会保険労務士・司法書士・行政書士の業務の範囲は、会計事務所の地図・法律事務所の地図で扱う。
許可と届出:有料職業紹介と労働者派遣は、厚生労働大臣の許可が要ります(職業安定法第30条、労働者派遣法第5条)。求人サイトなどの募集情報等提供は許可が要らず、求職者の情報を集めるなどの特定募集情報等提供は届出です(職業安定法第43条の2)。派遣は、港湾運送・建設・警備などの業務では行えません(労働者派遣法第4条第1項)。会社の側には、紹介なら職業紹介責任者、派遣なら派遣元責任者を選ぶ義務があります(職業安定法第32条の14、労働者派遣法第36条)。一方、キャリアアドバイザーや派遣の営業として働くこと自体に、法律の資格は要りません。
認可:学校を設置できるのは、原則として国(国立大学法人などを含む)、地方公共団体(公立大学法人を含む)、学校法人です(学校教育法第2条)。私立の幼稚園から高校までは都道府県知事、公立・私立の大学などは文部科学大臣の認可を受けて設置します(第4条)。幼稚園から高校・特別支援学校までの教員は、教育職員免許法で免許状が必要です(第3条第1項)。大学の教員はこの法律の対象外です。学習塾は、学校教育法第1条の学校(小学校・中学校・高校など)には当たりません。塾の契約にかかる法律は、前の章で見た特定商取引法です。
法律のない分野:コンサルティングという事業そのものには、始めるための許可や登録を定めた法律(業法)がありません。資格がなくてもコンサルタントとして働けます。
登録と業務の独占:公認会計士・税理士・弁護士は、それぞれの名簿に登録して仕事をします(公認会計士法第17条、税理士法では日本税理士会連合会の税理士名簿、弁護士法第8条の日本弁護士連合会の名簿)。法人の形として、監査法人(設立時に5人以上の公認会計士が要る)、税理士法人、弁護士法人があります。資格のない人がその仕事を営むことは禁じられていますが、禁じ方は3つの法律で違います。
- 公認会計士法第47条の2:公認会計士・監査法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て監査・証明を営んではならない
- 弁護士法第72条:弁護士・弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことなどを業とすることができない
- 税理士法第52条:税理士・税理士法人でない者は、税理士業務を行ってはならない。条文に報酬の限定はない
会計事務所や法律事務所には、資格のない職員も勤めています。監査・税理士業務・法律事務の仕事の主体は資格者で、資格のない職員がどこまでの仕事を受け持つかは、それぞれの地図で扱います。社会保険労務士・司法書士・行政書士の業務の範囲は、それぞれ会計事務所の地図と法律事務所の地図で扱います。
大きさの物差しは分野ごとに違い、足して比べられない
3つ目の物差しは、大きさです。ただし、分野ごとに使える統計が違い、単位も、時点も、数えている範囲も違います。人材紹介は就職件数と手数料、派遣は働く人の数と売上、学校は在学者と教員の数、士業は登録している人の数、研究は研究費です。下の表は分野ごとの物差しを並べたもので、合計の行は作っていません。分野どうしの大きさを比べるための表でもありません。
| 分野 | 物差し(統計) | 値 | 時点 | 数えている範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 人材紹介 | 職業紹介事業報告の集計(速報) | 有料職業紹介の常用就職888,993件、民営の職業紹介の手数料収入 約9,835億円 | 令和6年度(2024年4月〜2025年3月) | 紹介会社が国に出した報告の集計。求人サイトの売上は入らない |
| 人材派遣 | 労働者派遣事業の6月1日現在の状況(速報)、労働者派遣事業報告の集計(速報) | 派遣で働く人2,009,094人、年間売上高9兆9,005億円 | 人数は2025年6月1日、売上は令和6年度報告 | 売上は派遣会社ごとに事業年度が違う合計 |
| 学習塾 | サービス産業動態統計調査の参考表 | 売上(収入)金額の月次値の合計 約1兆3,610億円(計算値) | 2025年1〜12月 | 細分類の特別集計で「参考値」。2024年までの旧統計とは比べられない |
| 学校 | 学校基本統計 | 在学者:小学校5,812,375人(私立1.4%)、高校2,873,619人(私立34.7%)、大学2,972,412人(私立73.8%)。教員(本務者):小学校424,894人、大学192,823人 | 2025年5月1日 | 私立の割合は在学者からの計算値。教員に非常勤(兼務者)は入らない |
| コンサル | 経済構造実態調査の二次集計 | 事業者向けコンサルティングの売上 3兆5,207億円 | 2024年 | 専門サービス業に分類された法人企業の分だけ。市場規模ではない |
| 会計・税務 | 日本公認会計士協会の会員数等調、国税庁「税理士制度」、日本弁護士連合会「基礎的な統計情報(2025年)」 | 公認会計士38,762人・監査法人302法人、税理士81,696人、社会保険労務士46,237人 | 会計士は2026年9月30日、税理士は2024年度末、社労士は2025年3月31日 | 登録している人の数。勤め先や開業の別は分からない。社労士は各会の調べ |
| 法律 | 日本弁護士連合会「基礎的な統計情報(2025年)」 | 弁護士46,243人、司法書士23,387人、行政書士52,734人 | 弁護士と行政書士は2025年3月31日、司法書士は2025年4月1日 | 司法書士・行政書士は各会の調べ |
| 研究 | 科学技術研究調査 | 研究費23兆7,925億円。企業73.3%・大学等17.0%・非営利団体と公的機関9.7% | 2024年度 | 企業の社内の研究費が大半で、研究機関の地図の範囲とは一致しない |
表の数字を足したり、並べて比べたりしない理由は、次のとおりです。年度の値と、特定の日の値と、暦年の値が混ざっています。売上と手数料と人数と研究費は、単位が違います。コンサルの値は、専門サービス業に分類された法人企業の分だけで、情報サービス業などほかの産業に分類される会社のコンサルの売上は入りません。塾の値は参考値を足した計算値です。
学校基本統計は、少子化の事実も示しています。2025年5月1日の在学者は、小学校が581万2千人、中学校が310万5千人でどちらも過去最少でした。一方、大学全体の在学者は過去最多でした。学校の経営や定員の話は、学校の地図で扱います。
働く人の数は、労働力調査の産業別の就業者で見られます。これも、分野の人数とそのまま読み替えられません。
| 産業(労働力調査の区分) | 就業者 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 職業紹介・労働者派遣業 | 41万人 | 派遣で働く人は派遣先の産業に数えるため、ここには原則入らない。人材業界の人数でもない |
| 学校教育 | 243万人(うち教員167万人) | 公立学校の教員も入る |
| その他の教育,学習支援業 | 112万人 | 学習塾のほか、教養・技能の教室なども入る。塾の人数ではない |
| 専門サービス業(他に分類されないもの) | 127万人 | 法律事務所・会計事務所・税理士事務所・経営コンサルタント業・デザイン業・純粋持株会社などを含む。士業やコンサルだけの人数ではない |
| 学術・開発研究機関 | 18万人 | 大学は入らない |
出典は労働力調査(基本集計)2025年平均「産業,職業別就業者数」で、全産業の就業者は6,828万人です。値は万人単位に丸められています。
1つの会社が、いくつもの分野にまたがる
分野は制度で分かれていても、会社は1つの分野に収まるとは限りません。同じグループの中で、紹介・派遣・業務の受託・研修・塾を別の事業として持つ会社があります。事業が変われば、お金を払う相手も、かかる法律も変わります。以下の会社は決算期や会計基準が違うため、会社どうしの大きさは比べません。
パーソルホールディングスは、国内の事務の派遣を中心とするStaffing、受託請負のBPO、設計・開発の受託と技術者派遣のTechnology、人材紹介と求人メディアのCareerを、別のセグメントとして開示しています(2026年3月期決算短信、IFRS)。Staffingの売上収益は6,081億円、Careerは1,529億円です(セグメント間の取引を含む)。一方、会社が報告セグメントの利益として示す調整後EBITDAは、Staffing 348億円、Career 349億円です。売上の大きさと利益の大きさは一致しません。派遣の売上には、派遣会社が派遣で働く人に払う賃金の分が入っています。また、Staffingには事務職の人材紹介も、Careerには求人メディアも入っています。この1社の値から、どちらの事業が儲かるかは言えません。
パソナグループは、人材派遣のエキスパートソリューション、委託・請負のBPOソリューション、人材紹介・再就職支援のキャリアソリューションを分けて示しています(2026年5月期決算短信)。派遣とBPOは同じ会社にあっても、仕事の指示を誰が出すかが違います。派遣では派遣先が指示し、BPOでは仕事を受けた会社が自分で指示します。
リクルートホールディングスは、求人検索・求人広告・人材紹介をHRテクノロジー事業に、国内外の人材派遣を人材派遣事業に分けて開示しています(2026年3月期決算短信)。HRテクノロジー事業の中で、紹介と求人広告と求人検索を分けた数字は開示されていません。
ジェイ エイ シー リクルートメント(JAC)は、人材紹介を中心に営む会社です。決算短信では、人材紹介は候補者が求人企業に入社した時点で成功報酬を売上にし、採用代行サービスは契約の期間に応じて売上にすると書いています(2025年12月期決算短信)。同じ会社の中でも、サービスによってお金の受け取り方が違います。
教育とコンサルにまたがる会社もあります。リンクアンドモチベーションは、組織人事のコンサルティングとクラウドの事業のほか、個人向けのキャリアスクール・学習塾の事業、ALT(外国語指導助手)の配置と人材紹介の事業を持っています(2025年12月期決算短信)。ナガセは、直営の東進ハイスクールとFC加盟校の東進衛星予備校を持つ一方、ビジネススクール部門で大学生・社会人向けの教育を行い、大企業向けの語学研修やDX人材の育成も含めています(2026年3月期決算短信)。インソースは、企業に講師を派遣する研修、公開講座、学習管理システム(LMS)を事業の柱とし、その他の事業にはコンサルティングや人材紹介も入ります(2025年9月期決算短信)。
求人を見るときは、会社名だけでなく、配属される事業がどの分野に当たるかを確かめます。同じグループでも、紹介の部署と派遣の部署、塾の部署と研修の部署では、お金を払う相手と法律が違います。
仕事の地図:相手は企業か、個人か、生徒と保護者か
4つ目の物差しは、仕事です。この分類の仕事は、誰を相手にするかで大きく3つに分かれます。企業を相手にする仕事(紹介会社の企業担当、派遣の営業、コンサルタント、監査)、個人を相手にする仕事(キャリアアドバイザー、派遣のコーディネーター、法律や税の相談)、生徒と保護者を相手にする仕事(塾の教室長と講師、学校の教員)です。1つの職種で、企業と個人の両方を担当することもあります。
どの分野に、どんな仕事があり、資格は要るのか
| 仕事 | 分野 | 主な相手 | 資格・選任 | 職種名の例(確かめた会社) |
|---|---|---|---|---|
| 求職者の相談・企業の求人の担当 | 人材紹介 | 求職者、求人を出す企業 | 資格不要職業紹介責任者の選任は会社の義務 | リクルートメントコンサルタント(JAC。1人が企業と求職者の両方を担当)、キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザー(リクルートの職種の区分) |
| 派遣の営業・人選 | 人材派遣 | 派遣先の企業、登録した人・就業中の人 | 資格不要派遣元責任者の選任は会社の義務 | 派遣営業と人選担当コーディネーター(パーソルテンプスタッフの1つの求人票) |
| コンサルタント | コンサルティング | 企業・官公庁 | 資格不要 | コンサルタント職(ベイカレント・コンサルティング) |
| 研修の企画・営業 | コンサルティング(企業研修の章) | 企業の人事部門 | 資格不要 | コンサルティングの業界地図で扱う |
| 教室の運営・授業 | 学習塾 | 生徒・保護者、講師 | 資格不要講師は多くが非常勤 | 教室長(明光ネットワークジャパン)、総合職の講師(早稲田アカデミー) |
| 教員 | 学校 | 生徒・学生 | 免許状幼稚園〜高校・特別支援学校。大学の教員は免許法の対象外 | 学校の業界地図で扱う |
| 大学職員・学校事務 | 学校 | 学生・教員 | 資格不要 | 学校の業界地図で扱う |
| 会計事務所・監査法人の職員(資格のない人) | 会計事務所・監査法人 | 監査を受ける会社、顧問先の企業・個人 | 監査・税理士業務の主体は資格者 | 会計事務所・税理士事務所・監査法人の業界地図で扱う |
| 法律事務所の職員 | 法律事務所 | 依頼する企業・個人 | 法律事務の主体は弁護士 | 法律事務所の業界地図で扱う |
| 研究職・技術職・試験の担当 | 研究機関・試験検査機関 | 研究費を出す国・企業、試験を依頼する企業 | 働き方は各地図で | 研究機関・試験検査機関の業界地図で扱う |
職種の名前は、会社ごとに違います。図の職種名は、各社の採用ページや求人票で確かめた例です。たとえばJACは、1人のコンサルタントが企業の求人の状況を把握しながら転職希望者の相談にも乗る形をとり、職種名を「リクルートメントコンサルタント」としています(採用サイト「仕事を知る」)。株式会社リクルートのキャリア採用サイトには「キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザー」という職種の区分があります(キャリア採用 募集職種一覧)。パーソルテンプスタッフの派遣営業の1つの求人票では、仕事の紹介(人選)は人選担当コーディネーターが担い、営業は原則として行わないと書かれています(求人票)。どれも1社の例で、業界で共通の呼び方とは限りません。
資格の要否も、仕事ごとに違います。資格が要らない仕事でも、会社には責任者を選ぶ義務があることがあります(紹介の職業紹介責任者、派遣の派遣元責任者)。幼稚園から高校までの教員には免許状が要り、監査・税理士業務・法律事務の仕事の主体は資格者です。資格のない人が会計事務所や法律事務所で働く場合の仕事の中身は、それぞれの地図で扱います。
求人票で確かめることと、次に読む地図
この分類の求人を見比べるときは、次の4点を確かめます。
- お金の出し手:その事業のお金を払うのは企業か、個人か、保護者か、国や自治体か。紹介なら求人企業、派遣なら派遣先、塾なら主に保護者
- 制度と資格:会社の事業に許可・届出・認可・登録のどれが要るか。自分の仕事に資格が要るか、資格者の事務所で資格のない職員として働くのか
- 担当する相手と範囲:企業だけか、個人だけか、両方か。営業と相談役が分かれているか
- 同じ会社のほかの事業:紹介と派遣、派遣とBPO、塾と研修のように、同じグループの別の事業か
分野が決まったら、次はその分野の地図で、会社の型と仕事の流れを確かめます。
| 次に読む地図 | 扱うこと |
|---|---|
| 人材紹介・求人サービスの業界地図 | 職業紹介・募集情報等提供・ハローワークの区分、手数料のルールと情報公開、紹介会社の企業担当と求職者担当の仕事 |
| 人材派遣の業界地図 | 三者の関係、許可・期間制限・同一労働同一賃金・マージン率の公開、派遣料金と賃金、紹介予定派遣・請負・BPOとの境目、営業とコーディネーターの仕事 |
| 学校の業界地図 | 学校の種類と設置者、授業料・助成などのお金、学校法人の仕組みと財務書類の公開、少子化と定員、大学職員・学校事務の仕事 |
| 学習塾の業界地図 | 集団・個別・映像授業と直営・FCの型、授業料・講習会費と売上の季節の山、教室長と非常勤講師、特定商取引法のルール |
| コンサルティングの業界地図 | 戦略・総合・IT・組織人事・中小企業向けの型、何に対してお金をもらうか、人数と稼働で決まる売上、企業研修(「組織人事と研修」の章) |
| 会計事務所・税理士事務所・監査法人の業界地図 | 監査と税務の独占業務、事務所の型、監査報酬と顧問料の形、資格のない職員の仕事、社会保険労務士 |
| 法律事務所の業界地図 | 弁護士の職務と法律事務の独占、企業法務と一般民事の事務所の型、報酬の形、秘書やパラリーガルの仕事、司法書士・行政書士 |
| 研究機関・試験検査機関の業界地図 | 研究費の出どころと研究者の働き方、共同研究・受託研究、試験・検査・認証を受託する機関 |
隣の分類との境目も、分け方を決めています。企業が使う採用管理・人事労務のソフトは「HRテック(人事労務・タレントマネジメント)の業界地図」で扱います。求人サイト・求人検索・スカウトは、ソフトの会社が運営していても、職業安定法の募集情報等提供として「人材紹介・求人サービスの業界地図」で扱います。ITコンサルは「ITコンサルの業界地図」、会計ソフトは「会計ソフトの業界地図」です。保育士・介護職などが働く職場の制度は「医薬品・医療・介護の業界地図」から案内する地図で、その人材を紹介・派遣する仕組みはこの分類の地図で扱います。採用代行や事務の受託は「BPO・コールセンターの業界地図」、警備は「警備の業界地図」です。
保育士などの紹介・派遣先となる保育施設の種類と運営の仕組みは、保育・子育て支援の業界地図で確かめられます。



