家や土地を売りたい人と買いたい人、貸したい人と借りたい人の間に立つ不動産仲介を、宅建業の免許と宅建士、媒介契約とレインズ、告示が決める仲介手数料の上限と両手・片手、売買仲介と賃貸仲介の違いで整理します。デベロッパー系・フランチャイズ・地域の会社という会社の型と、仲介営業の仕事の流れ、求人票で確かめる点も分かる内容です。

不動産仲介の求人には、中古の家やマンションの売買を担う営業、賃貸の店舗で部屋を紹介する営業、会社や投資家の不動産の売買を扱う法人向けの営業まで幅があります。同じ「仲介」でも、売買か賃貸か、どの会社のグループに属するかで、相手にする人、1件の取引の重さ、手数料の得方が変わります。

この記事では、宅地建物取引業法(宅建業法)でいう「媒介」、つまり売買・交換・貸借の当事者の間に立って契約の成立を助ける仕事を扱います。仲介会社が負う責任(免許、宅地建物取引士、媒介契約、重要事項の説明)、手数料の上限の決まり方、売買仲介と賃貸仲介の違い、会社の型、仲介営業の仕事の流れを順に確かめます。制度は2026年10月時点、会社の数字は2026年3月期(And Doホールディングスは2026年6月期)です。

不動産業の全体の中で仲介がどこにいるかは「不動産の業界地図」で整理します。新築マンションなどを自ら売主として売る分譲と、その販売の代理は「不動産開発・賃貸(デベロッパー)の業界地図」で、この記事は主に中古の売買仲介と賃貸仲介を扱います。入居した後の賃貸住宅やマンションの管理は「不動産管理の業界地図」、REITやファンドの資産運用と投資用の不動産の売買は「不動産ファンド・REITの業界地図」、住宅ローンの仕組みは「銀行の業界地図」で扱います。

仲介には宅建業の免許が要り、契約の大事な場面は宅建士が担う

宅建業法は、宅地や建物の売買・交換と、売買・交換・貸借の代理や媒介を、業として行うことを「宅地建物取引業」(宅建業)と定めています(第2条第2号)。仲介はこの媒介に当たり、宅建業の免許がなければ営めません。2つ以上の都道府県に事務所を置く会社は国土交通大臣の免許、1つの都道府県だけに置く会社はその都道府県の知事の免許を受けます(第3条第1項)。免許の有効期間は5年です。

仲介を開発・賃貸・管理と区別すると、不動産業界全体の役割分担が見えます。 不動産業界の地図

一方で、自分が持つ建物を自ら貸主として貸すことは、宅建業の定義に入っていません。アパートの持ち主が自分で入居者と契約するだけなら免許は要らず、他人の部屋の借り手を探して契約を仲立ちすると、媒介として免許が要ります。

宅建業者の数は、国土交通省の令和7年度 宅地建物取引業法の施行状況調査によると、2026年3月末で133,727業者です。大臣免許が3,238、知事免許が130,489で、法人が121,747、個人が11,980です。ただし、これは免許の数で、仲介会社だけの数ではありません。自ら売主として分譲する会社や、中古の物件を買い取って直して売る買取再販の会社も、同じ宅建業の免許を持っています。

契約を仲介する会社と、自ら物件を開発して販売・賃貸する会社の収益の違いを確認できます。 デベロッパー業界の地図

仲介の仕事で欠かせないのが、宅地建物取引士(宅建士)です。宅建業法では、宅建士は試験に合格して登録し、宅建士証の交付を受けた人を指します(第2条第4号)。宅建業者は、事務所ごとに、宅建業の業務に従事する人の5分の1以上の数の専任の宅建士を置かなければなりません(第31条の3第1項、施行規則第15条の5の3)。同じ調査では、宅建士の総登録者数は2026年3月末で1,243,738人です。これは都道府県知事への登録者の累計で、いま宅建士として働いている人の数ではありません。

宅建士にしかできない仕事は、契約の大事な場面に集まっています。売買でも賃貸でも、宅建業者は契約が成立するまでに、買主・借主に対して、物件と取引の条件についての重要事項を書いた書面を交付し、宅建士に説明させなければなりません(重要事項説明。第35条第1項)。説明のときは宅建士証を示し、書面には宅建士が記名します。契約が成立した後に交付する書面(37条書面)にも、宅建士が記名します(第37条)。2022年5月18日からは、相手の承諾を得れば、これらの書面を電子データで渡せるようになりました(国土交通省の報道発表)。

媒介契約の種類で、他社への依頼とレインズへの登録の義務が変わる

仲介の仕事は、売りたい人や貸したい人から依頼を受けるところから始まります。業界では、売主・貸主から依頼を受ける側を「元付(もとづけ)」、買主・借主を見つけてくる側を「客付(きゃくづけ)」と呼びます。法律の言葉ではなく、業界の呼び方です。

仲介会社は売主と買主の間に立つ。媒介契約の形で、他社への依頼とレインズの義務が変わる

上は売買仲介の「両手」と「片手」。下は売買の媒介契約の3つの形。賃貸の媒介は、下の書面・登録・報告の義務(宅建業法第34条の2)の対象外。

両手:1社が売主と買主の両方から依頼を受ける
売主⇄仲介会社A元付と客付を兼ねる⇄買主

報酬の上限は「依頼者の一方につき」なので、売主と買主のそれぞれから上限まで受け取れる。

片手:売主側と買主側に別の会社が付く
売主⇄仲介会社A元付⇄買主
売主仲介会社B客付⇄買主

AとBの間は、レインズなどで物件の情報を共有する。

それぞれの会社は、自分の依頼者からだけ受け取る。

売買の媒介契約
一般媒介
専任媒介
専属専任媒介
ほかの会社への依頼
重ねて依頼できる
できない
できない
自分で見つけた相手との契約
できる
できる
特約で禁じる
有効期間
法律の上限の定めなし
3か月が上限
3か月が上限
レインズへの登録
義務の定めなし
7日以内に義務
5日以内に義務
処理状況の定期報告
義務の定めなし
2週間に1回以上
1週間に1回以上
読み方:「元付」「客付」は業界の呼び方で、法律の言葉ではない。媒介契約の書面の交付と、購入の申込みがあったときの報告は、3つの形のすべてで義務。登録の日数に休業日は数えない。
出典:宅地建物取引業法 第34条の2(e-Gov)、宅地建物取引業法施行規則 第15条の10(e-Gov)、国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(令和6年国土交通省告示第949号による改正後)。

売買・交換の媒介の依頼を受けたときは、宅建業者は遅滞なく媒介契約の書面を作り、依頼者に渡さなければなりません(第34条の2第1項)。この書面の義務は売買・交換の媒介だけのもので、賃貸(貸借)の媒介はこの条の対象に入っていません。

売買の媒介契約には、依頼の仕方によって3つの形があります。

  • 一般媒介:依頼者は、複数の仲介会社に重ねて依頼できる
  • 専任媒介:依頼者は、ほかの仲介会社に重ねて依頼できない。有効期間は3か月が上限(第34条の2第3項)
  • 専属専任媒介:専任媒介に、依頼者が自分で見つけた相手と直接契約することも禁じる特約を付けたもの

専任媒介と専属専任媒介では、仲介会社の義務が重くなります。契約から7日以内(専属専任は5日以内。休業日は数えない)に、物件を指定流通機構に登録しなければなりません(第34条の2第5項、施行規則第15条の10)。指定流通機構は、売り物件の情報を仲介会社どうしで共有するための仕組みで、レインズと呼ばれます。さらに、依頼者への業務の処理状況の報告が、専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上、義務になっています(第34条の2第9項)。購入の申込みがあったときは、どの形でも遅滞なく依頼者に報告します(同条第8項)。

レインズを運営する機関は、成約の件数も公表しています。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の年報マーケットウォッチ2025年では、首都圏(1都3県)の中古マンションの成約件数は2025年(暦年)に49,114件、中古戸建住宅は37,829件です。東日本レインズに成約の報告があった件数で、首都圏だけの値です。全国の件数ではありません。

住宅を建てて売る側と、売買・賃貸の契約を仲介する側の仕事を分けて確認できます。 住宅建設業界の地図

仲介手数料は告示が決める上限。売買は両手が成り立ち、賃貸は合計で1.1か月分まで

仲介の収入は、依頼者から受け取る仲介手数料(報酬)です。宅建業法は、報酬の額を国土交通大臣が定め、その額を超えて受けてはならないとしています(第46条)。大臣が定めた報酬の告示(最終改正は2024年7月1日施行)が、手数料の上限です。上限なので、定価でも相場でもありません。宅建業者は、事務所ごとに報酬の額を掲示する義務があります。

仲介手数料は告示が決める上限。売買は依頼者の一方ごと、賃貸は双方の合計で決まる

報酬の告示(2024年7月1日施行の改正後)の主な上限。金額は消費税を含む(課税事業者の場合)。上限で、定価や相場ではない。

売買の媒介:依頼者の一方につき、代金を3つの部分に分けて計算した合計まで
200万円以下の部分:5.5%
200万円超〜400万円以下の部分:4.4%
400万円を超える部分:3.3%
計算例(本記事の計算):代金3,000万円なら、一方からの上限は105.6万円。両手なら売主と買主から合わせて最大211.2万円。代金が400万円を超えるときの速算式は、税込で「代金×3.3%+6.6万円」(消費税を含まない額では「3%+6万円」)。
帯の幅は区分を示すための模式で、金額の比率ではない。
賃貸の媒介:双方の合計で家賃の1.1か月分まで住宅は、依頼の際に承諾を得ている場合を除き、貸主・借主の一方から受け取れるのは家賃の0.55か月分まで。
計算例:家賃10万円なら、合計の上限は11万円。
代理:媒介の計算額の2倍まで相手方からも受け取るときは、合計で2倍まで。依頼者に頼まれて行った広告の料金に当たる額は別に受け取れる。それ以外に告示に定めのない報酬は受け取れない。
特例:低廉な空家等の売買代金(税抜)800万円以下の宅地・建物の売買の媒介(空き家に限らない)。媒介にかかる費用を考えて通常の計算額を超えて受け取れるが、その依頼者からは33万円まで。
計算例:代金500万円なら通常の上限は23.1万円、特例では33万円まで。
特例:長期の空家等の賃貸長い間使われていないか、今後も使われる見込みがない宅地・建物の賃貸の媒介。借主から受け取る額が通常の範囲内である場合に限り、貸主から上乗せして受け取れ、合計で家賃の2.2か月分まで。
出典:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、最終改正 令和6年国土交通省告示第949号)、宅地建物取引業法 第46条(e-Gov)。計算例は本記事で計算した。

売買の媒介では、代金(消費税を含まない額)を3つの部分に分け、200万円以下の部分は5.5%、200万円を超え400万円以下の部分は4.4%、400万円を超える部分は3.3%を掛けて足した額が上限です(消費税を含む額。課税事業者の場合)。広告などでよく見る「3%+6万円」は、代金が400万円を超えるときの計算をまとめた速算式で、消費税を含まない額です。消費税を含めると「3.3%+6.6万円」になります。たとえば代金3,000万円なら、上限は105.6万円です(本記事の計算例)。

この上限は「依頼者の一方につき」の額です。そのため、1つの仲介会社が売主と買主の両方から依頼を受けて契約をまとめれば、それぞれから上限まで受け取れます。これを業界では「両手」と呼びます。代金3,000万円なら、両手で受け取れる額は合計で最大211.2万円です(本記事の計算例)。売主側と買主側に別々の仲介会社が付き、それぞれが自分の依頼者からだけ受け取る形は「片手」です。

賃貸の媒介では、仕組みが違います。貸主と借主の双方から受け取る額の合計が、家賃の1.1か月分以内です。住宅の場合は、依頼を受けるときに承諾を得ている場合を除き、一方から受け取れるのは家賃の0.55か月分以内です。家賃10万円の部屋なら、合計の上限は11万円です(本記事の計算例)。売買と違って、両方から依頼を受けても、合計の上限は増えません。

代金の安い物件と、長く使われていない物件の仲介には、告示の特例があります。代金(消費税を含まない額)が800万円以下の宅地・建物(告示の言葉で「低廉な空家等」。空き家に限らない)の売買の媒介では、媒介にかかる費用を考えて、通常の計算額を超えて受け取れます。ただし、その依頼者から受け取れるのは33万円(30万円の1.1倍)までです。たとえば代金500万円なら通常の上限は23.1万円ですが(本記事の計算例)、この特例では33万円まで受け取れます。長い間使われていないか、今後も使われる見込みがない宅地・建物(告示の言葉で「長期の空家等」)の賃貸の媒介では、借主から受け取る額が通常の範囲内である場合に限り、貸主から上乗せして受け取れ、合計で家賃の2.2か月分までになります。

このほか、売買の代理を頼まれた場合の上限は、媒介の計算額の2倍です(相手方からも受け取るときは、合計で2倍まで)。告示に定めのない報酬は受け取れませんが、依頼者に頼まれて行った広告の料金に当たる額は例外です。

売買仲介と賃貸仲介は、取引の重さと相手が違う

同じ仲介でも、売買と賃貸では、1件の取引の重さと法律上の義務が違います。

比べる点売買仲介賃貸仲介
主な相手家や土地を売りたい人・買いたい人(個人のほか、会社や投資家もある)部屋を貸したい人(持ち主)・借りたい人
手数料の上限代金に応じた額を、依頼者の一方ごとに双方の合計で家賃の1.1か月分。住宅は承諾がなければ一方から0.55か月分
媒介契約の書面宅建業法で義務宅建業法第34条の2の対象外
レインズへの登録専任・専属専任では義務同条の義務の対象外
宅建士の仕事重要事項説明、書面への記名重要事項説明、書面への記名
入居や引渡しの後引渡しで仲介の仕事は終わる入居後の管理は、管理の仕事として別に扱う

売買仲介は、1件の金額が大きくなります。住友不動産の2026年3月期決算短信によると、グループで売買仲介を担う住友不動産ステップの取扱単価(引渡しベース)は5,160万円でした。手数料の上限も代金に応じて決まります。売買仲介の営業は、1件の契約について、査定、販売活動、条件の調整、決済・引渡しまでを受け持ちます。

賃貸仲介の手数料の上限は、家賃を基準に決まります。賃貸仲介では、部屋を探す人に物件を紹介し、案内して申込みを受け、契約の前に宅建士が重要事項を説明します。入居者を見つけるまでが仲介(宅建業の媒介)の仕事です。賃貸住宅管理業法の管理業務は、建物の点検・清掃・修繕と、それと併せて行う家賃などのお金の管理で、入居者の募集は入っていません。

ただし、賃貸の仲介と管理を同じグループで手がける会社もあります。東急不動産ホールディングスの不動産流通の区分には、賃貸住宅や学生マンションの管理運営も入っています。大東建託のグループでは、大東建託パートナーズが賃貸住宅を一括で借り上げて入居者に転貸し、大東建託リーシングが入居者の仲介を担っています。大東建託の2026年3月期の仲介事業収入は214億円です(決算短信の訂正後の全文)。入居後の管理の仕事は「不動産管理の業界地図」で扱います。

仲介会社の型:デベロッパー系・フランチャイズ・地域の会社

仲介会社は、親会社やお店の出し方によって、いくつかの型に分けられます。上場している親会社の決算短信では、仲介の数字がどの区分に入るかが会社ごとに違います。件数や取扱高も数え方が違うため、会社どうしの大きさや順位としては読めません。ここでは、それぞれの会社の開示を、その会社の数え方と一緒に読みます。

仲介会社の型によって、仲介の数字が入る区分と収入の形が違う

各社の決算短信で、仲介がどの区分に入り、何と一緒に開示されているか。件数・取扱高の数え方は会社ごとに違うため、会社どうしの大きさは比べていない。

デベロッパー系
三井不動産リアルティ三井不動産のマネジメント区分の「仲介・アセットマネジメント等」に入る資産運用の事業や新築の販売受託と一緒の区分。仲介は取扱高(物件の価格の合計)と件数を開示
住友不動産ステップ住友不動産の「ステップ」区分(売買の仲介と販売代理の受託)件数・取扱高は引渡しベース
野村不動産ソリューションズ野村不動産HDの「仲介・CRE」区分保険代理店の事業も含む。利益は会社独自の事業利益
東急リバブルなど東急不動産HDの「不動産流通」区分区分内の「仲介」に、買取再販などの不動産販売が入り、賃貸住宅の管理運営も同じ区分。売買仲介の件数はリテールとホールセールの合計。東急不動産HDは鉄道会社とは別の上場会社
フランチャイズ
And Doホールディングス(ハウスドゥ)「フランチャイズ」区分(売買仲介・賃貸仲介のフランチャイズ展開)本部の収入は加盟店から受け取るもの。加盟店の仲介手数料は加盟店の売上で、本部の売上に入らない。2026年6月期
地域の会社
上場していない会社決算短信のような開示がない宅建業者133,727のうち知事免許(事務所が1つの都道府県だけ)は130,489。分譲・買取再販の会社、個人の業者、フランチャイズの加盟店も入る数で、仲介会社や地域の会社の数ではない
読み方:会社は2026年3月期(And Doホールディングスは2026年6月期)。宅建業者数は2026年3月末。区分名が同じ「仲介」でも、入っている事業が違う。
出典:三井不動産・住友不動産・野村不動産ホールディングス・東急不動産ホールディングス「2026年3月期決算短信」、And Doホールディングス「2026年6月期決算短信」、国土交通省「令和7年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について」。

デベロッパー(不動産の開発会社)のグループには、仲介を担う会社があります。三井不動産のグループでは、三井不動産リアルティが仲介を担います。三井不動産の2026年3月期決算短信では、仲介はマネジメントの区分の「仲介・アセットマネジメント等」に含まれ、この区分の売上高は1,351億円、事業利益(三井不動産独自の利益の指標)は366億円です。資産運用の事業や、グループの三井不動産レジデンシャルが受託する新築の販売も入るため、仲介だけの利益ではありません。三井不動産リアルティの仲介の取扱高は2兆2,880億円、件数は36,220件(前期は38,103件)でした。取扱高は取引された物件の価格の合計で、手数料の収入ではありません。

住友不動産では、住友不動産ステップ(旧社名は住友不動産販売)が担う「ステップ」が独立した区分です。区分の定義は、不動産の売買の仲介と販売代理の受託です。2026年3月期の売上高は754億円、セグメント利益は236億円で、仲介件数(引渡しベース)は28,848件(前期は31,003件)、取扱高は1兆4,885億円でした。野村不動産ホールディングスでは、野村不動産ソリューションズが担う「仲介・CRE」が独立した区分で、売上高は644億円、事業利益(野村不動産独自の利益の指標)は190億円です(2026年3月期決算短信)。この会社は仲介とコンサルティングのほか、保険代理店の事業も行っています。

東急不動産ホールディングスのグループでは、東急リバブルが仲介を担います。東急不動産ホールディングスは東急グループの不動産会社で、鉄道会社の東急株式会社とは別の上場会社です。東急不動産ホールディングスの2026年3月期決算短信では、仲介は「不動産流通」の区分に入ります。この区分には、売買仲介のほか、中古の物件を買い取って直して売る買取再販などの不動産販売、販売代理、賃貸住宅の管理運営も入っています。連結の処理をする前の参考値では、区分の売上高3,647億円のうち「仲介」が2,574億円で、その中身は売買仲介1,063億円、不動産販売1,419億円、販売受託等92億円です。区分名は「仲介」でも、物件を自ら売る不動産販売(買取再販や開発案件の売却など)の売上が入っています。不動産販売の売上は物件の代金で、手数料の売上とは中身が違うため、区分の利益がすべて仲介手数料から生まれているわけではありません。売買仲介の取扱件数は33,922件、取扱高は2兆5,635億円で、個人向け(リテール)と法人向け(ホールセール)の合計です。

フランチャイズは、本部が看板や仕組みを提供し、加盟した事業者がそれぞれの店を営む形です。And Doホールディングスは、「ハウスドゥ」の売買仲介と賃貸仲介のフランチャイズ本部です。2026年6月期決算短信では、フランチャイズの区分の外部売上高は32億円、セグメント利益は19億円で、累計の加盟店舗数は733件、累計の開店店舗数は637店舗です。本部の収入は加盟店から受け取るもので、加盟店が受け取る仲介手数料は加盟店の売上です。本部の売上高に加盟店の手数料は入りません。同社は同じ期に、子会社の直営の売買仲介の規模を縮め、区分を「不動産売買」に移しました。

地域の会社は、上場していなければ決算短信のような開示がなく、外から事業の中身を数字で知るのは難しくなります。宅建業者の133,727のうち130,489は知事免許で、事務所を1つの都道府県の中だけに置いています(計算すると約98%)。知事免許かどうかは事務所の場所で決まり、仕事の範囲で決まるものではありません。この数には分譲や買取再販の会社、個人の業者、フランチャイズの加盟店も入るため、仲介会社や地域の会社の数ではありません。売買と賃貸のどちらが中心か、管理も受けるか、フランチャイズに加盟しているかは、会社ごとに確かめる必要があります。

仲介営業の仕事の流れと、求人票で確かめること

売買仲介の営業は、売りたい人からの相談を受けてから、物件の引渡しまでを受け持ちます。宅建士でなければできない場面は、契約の前後に集まっています。

売買仲介の仕事は査定から引渡しまで。宅建士でなければできないのは契約の前後の書面と説明

売買仲介の一般的な流れの例。色の濃い段階は、宅建業法で宅建士が行うと決められた仕事を含む。

1査定売りたい人の物件の価格の見込みを示す
2媒介契約一般・専任・専属専任のどれかで契約し、書面を交付
3レインズ登録・販売活動専任は7日、専属専任は5日以内に登録。広告、依頼者への報告
4案内買いたい人を物件に案内する
5申込み・条件の調整申込みは遅滞なく売主に報告。価格や引渡しの時期を調整
6 宅建士重要事項説明契約の前に、宅建士証を示して説明し、書面に記名
7 宅建士売買契約宅建業者が交付する契約後の書面(37条書面)に、宅建士が記名
8決済・引渡し代金の支払いと物件の引渡し。仲介はここまで
宅建士が行う仕事を含む宅建業者の義務(宅建士でなくてもよい)法律で決まった手続きのない仕事
賃貸仲介では:物件の紹介、案内、申込み、重要事項説明、契約の順に進む。重要事項説明と契約後の書面への記名は、賃貸でも宅建士が行う。媒介契約の書面とレインズの登録の義務(宅建業法第34条の2)は、賃貸の媒介にはない。書面は相手の承諾を得れば電子データで渡せる。
出典:宅地建物取引業法 第34条の2・第35条・第37条(e-Gov)、宅地建物取引業法施行規則 第15条の10(e-Gov)、国土交通省「不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります。」(2022年4月27日)。流れの区切り方は本記事による。

次の表の仕事の分け方は本記事の整理で、採用の職種名ではありません。実際の職種名は会社ごとに違います。

仕事(本記事の整理)主な相手主な仕事の例宅建士が要る場面
売買仲介の営業(個人向け)家や土地を売りたい人・買いたい人査定、媒介契約、販売活動、案内、条件の調整、決済・引渡し重要事項説明、重要事項説明書・37条書面への記名
売買仲介の営業(法人向け)会社、投資家会社が持つ不動産や事業用の不動産の売買の仲介同じ。ただし相手が宅建業者なら、重要事項の説明は要らず、宅建士が記名した書面の交付だけになる(第35条第6項)
賃貸仲介の営業部屋を借りたい人、持ち主物件の紹介、案内、申込み、契約重要事項説明、書面への記名
営業の支援社内の営業担当契約書類の準備などの支援説明と記名は宅建士が行う

採用の職種名と宅建士の扱いは、会社ごとに違います。三井不動産リアルティの新卒採用の募集要項では、職種は「総合職」と「業務職」です。総合職は、リテール・住宅賃貸・ソリューション・シェアリングなどの各事業の営業、ラインスタッフ、コーポレートスタッフの業務を担い、業務職はエリアを限って営業のサポートなどを担います。宅建士には、技能手当として月額10,000円が付きます。

東急リバブルの新卒採用の職種は「総合職」「賃貸職」「一般職」です。よくある質問によると、宅建士は総合職と賃貸職では必須の資格ですが、採用の条件ではありません。取得の費用は会社が負担し、一般職では取得は任意です。総合職の最初の配属先は「売買仲介」「不動産ソリューション」「不動産開発」「新築販売受託」のいずれかで、仲介会社の総合職でも、仲介以外の部門に配属されることがあります。新築マンションの販売を受託する仕事は「不動産開発・賃貸(デベロッパー)の業界地図」で扱います。

給与の仕組みも、会社の方針で変わります。住友不動産の決算短信は、住友不動産ステップの次の期の方針として、歩合給の廃止を含む人事給与制度の改革に引き続き取り組むと書いています。一方、東急リバブルは新卒採用のよくある質問で、歩合給制や月ごとのノルマはなく、月給は固定給で、賞与が目標の達成率やお客様からの評価などで変わると説明しています。どちらも1社の方針で、仲介会社全体の給与の仕組みを示すものではありません。

求人票では、次の点を確かめます。

  • 売買か賃貸か、個人向けか法人向けか:1件の金額と、相手にする人が変わる
  • 会社の型:デベロッパー系の会社か、フランチャイズの本部か加盟店か、地域の会社か。総合職なら、仲介以外の部門に配属される可能性があるか
  • 宅建士の扱い:応募の条件か、入社後に取る資格か。取得の費用の負担や手当はあるか
  • 給与の内訳:固定の給与と、成果に応じた歩合やインセンティブ、賞与の決め方。会社の手数料収入は、告示の上限の範囲で契約の件数と金額に左右されるが、それが社員の給与にどう反映されるかは会社ごとに違う

仲介会社で関わる可能性がある周辺業務は、それぞれの業界地図で扱います。新築マンションの販売は「不動産開発・賃貸(デベロッパー)の業界地図」、入居後の管理は「不動産管理の業界地図」、投資用の不動産の運用は「不動産ファンド・REITの業界地図」です。