「倉庫」と書かれた求人には、倉庫会社の総合職、冷蔵倉庫で冷凍機を守る技術職、物流センターの庫内管理、フォークリフトでの荷役まで幅があります。同じ倉庫でも、誰の荷物を、どんな種類の倉庫で預かるのか、会社が保管と運送と不動産のどこで利益を出しているのかで、仕事の中身も配属の可能性も変わります。
この記事では、倉庫業法の「営業倉庫」、つまり他人の荷物を預かって保管する事業を扱います。始めるための登録と倉庫の種類、倉庫の量の数え方、保管と荷役の採算、倉庫会社の稼ぎ方、冷蔵倉庫の構造、制度と人手の変化が届く仕事を順に確かめます。
運輸・物流の全体地図では、倉庫は「預かる・積み降ろす」の役割に置きました。この記事は、その役割の中を深めます。荷主の物流をまとめて請け負う3PLは、倉庫業の登録を使って倉庫を運営することも多く、倉庫と重なります。3PLの受託の範囲と会社の比較は、別の業界地図「3PL」で扱います。港湾運送の詳細、物流施設の開発・投資、自社の荷物を置く自家倉庫、個人向けトランクルームのサービス比較は扱いません。
運輸・物流全体の中で倉庫業の位置を確かめるときは、「運輸・物流の業界地図」で、預かる・積み降ろす役割とほかの輸送分野との関係を確認できます。

倉庫業は、他人の荷物を預かる事業で、国の登録が要る
倉庫業法では、倉庫業は、寄託(荷物を預かる契約)を受けた物品を倉庫で保管する事業です。他人の荷物を預かるため、国土交通大臣の登録を受けなければ営業できません。登録を受けずに営業すること、登録がないのに倉庫業者だと誤認させる表示や広告をすることは禁止されています(倉庫業登録申請の手引き)。
荷物を置く場所でも、倉庫業に当たらないものがあります。自社の荷物を置く自家倉庫、運送の契約にもとづいて運ぶ途中で一時的に置く配送センターや上屋(港などの一時置き場)、修理のために預かる場合などです。求人票の「物流センター」が、営業倉庫なのか、運送の途中の拠点なのかは、施設の位置づけで変わります。
登録の条件は、主に2つあります。1つは、倉庫の種類ごとの施設の基準を満たすことです。営業倉庫の基準は、他人の荷物を預かるため、建築基準法や消防法の一般的な基準より高く設定されています。たとえば消火器具は、消防法では床面積150㎡以上の建物にだけ義務づけられていますが、倉庫業ではすべての倉庫に必要です。もう1つは、倉庫ごとに「倉庫管理主任者」を選ぶことです。
預かる物で倉庫の種類が決まり、種類ごとの基準を満たして登録する
倉庫の種類は、倉庫業法施行規則で10に分かれます。1類倉庫は、防水・防湿・耐火・防鼠などの基準をすべて満たし、危険物と10℃以下で保管する物品以外のほとんどの物品を預かれます。2類・3類倉庫は、基準の一部が不要な代わりに、預かれる物品が狭まります。このほか、柵で囲んだ屋外の野積倉庫、サイロやタンクの貯蔵槽倉庫、危険物や高圧ガスを預かる危険品倉庫、10℃以下で保管する冷蔵倉庫、原木を水面で保管する水面倉庫、個人の荷物を預かるトランクルームなどがあります。
倉庫管理主任者は、火災の防止などの施設の管理、倉庫の管理業務の運営、労働災害の防止、現場の従業員の研修を担います。倉庫の管理業務で2年以上の指導監督の実務経験か3年以上の実務経験がある人、国が定める講習を修了した人などから選びます。倉庫会社の現場の管理職は、この役割を担うことがあります。
預かるときの約束事は、倉庫寄託約款で決めます。倉庫業者は約款を国に届け出ますが、国が定める標準倉庫寄託約款と同じ内容であれば、届け出たものとみなされます。この標準約款は2026年4月に、1959年の制定以来はじめて大きく改正されました(後の章で説明します)。
倉庫の量は、数え方で数字が変わる
営業倉庫がどれだけあるかは、国の統計と登録のリストで確かめられます。ただし、数える範囲と時点が出典ごとに違います。
国土交通省の倉庫統計季報によると、2025年6月の1〜3類倉庫の所管面積(倉庫業者が保管に使える面積)は7,090万㎡、冷蔵倉庫の所管容積は4,084万㎥です。1〜3類倉庫の面積は、1996年の3,323万㎡から2024年の7,110万㎡へと、約30年で約2.1倍になりました。冷蔵倉庫の容積も、同じ期間に2,517万㎥から3,841万㎥へ増えています。
倉庫業者の数は、国の統計では毎年は数えられていません。全国の事業者数の集計は2020年度から行われておらず(九州運輸局の資料の注記)、倉庫統計季報にも事業者数の欄はありません。この記事では、国土交通省の登録倉庫事業者棟別リスト(2026年5月1日時点)に載る登録番号の数、7,568を事業者数の目安にします。登録番号は事業者ごとに付き、1つの番号で複数の地域の倉庫を持つこともあります。ほかの出典の数字とは、数えているものが違います。
| 出典 | 数えているもの | 値 | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| 登録倉庫事業者棟別リスト(2026年5月1日時点) | 登録番号の数 | 7,568 | この記事での集計。1〜3類か野積の倉庫を持つ番号が6,357、冷蔵倉庫を持つ番号が1,467(両方を持つ番号がある)。廃業・休業中の事業者が残っていないかは、リストからは分からない |
| 令和6年度 倉庫事業経営指標 | 調査の母集団(全体) | 普通倉庫(1〜3類と野積)5,739社、冷蔵倉庫1,264社 | 基準の時点は書かれていない。同じ表の面積は2023年3月、容積は2022年3月の季報の値と一致する。普通倉庫は、登録リストの6,357と同じ範囲の数 |
| 倉庫統計季報(2025年6月) | 所管面積・容積 | 1〜3類7,090万㎡、冷蔵4,084万㎥ | 事業者数の欄はない。倉庫の量はこの数字で見る |
| 登録リストの面積・容積の合計 | 1〜3類とトランクルームの面積、冷蔵の容積 | 約1億㎡、約5,035万㎥ | 季報より大きく、数え方が違うため、業界の規模には使わない |
登録上の倉庫面積を法人別に集計すると、営業倉庫の運営規模の目安が分かります。登録リストには倉庫専業の会社だけでなく、総合物流会社や通販会社も含まれます。登録面積には借りた倉庫も入りうるため、会社の所有資産や総合力、応募先としての優劣を示す順位には使えません。
倉庫の求人を出す会社は、倉庫会社だけではありません。運送会社や3PL会社、通販の会社も倉庫業の登録を持ち、営業倉庫を運営しています。
調査対象113社の1社平均では、保管部門は黒字、荷役部門は赤字。倉庫会社は運送や不動産でも稼ぐ
倉庫業の料金は、主に2つです。荷物を預かる期間と量に応じた保管料と、荷物の出し入れの作業に応じた荷役料です。国土交通省の令和6年度 倉庫事業経営指標は、主な倉庫業者を抽出して、この2つの部門の採算を1社平均で示しています。
調査対象113社の1社平均では、保管部門は黒字、荷役部門は赤字
普通倉庫業者113社の1社平均では、保管部門の経常収支率(費用に対する収入の割合)は115.2%で黒字ですが、荷役部門は98.8%で赤字です。保管と荷役を合わせた普通倉庫業では108.0%です。費用の中では、外部の会社に作業を任せる請負費用が28.0%、派遣費用が2.2%で、合わせて約3割になります。社員の人件費は19.0%です。費用の上では、自社の社員への支払いより、外部の会社への支払いのほうが大きくなっています。
倉庫業者の収入は、倉庫業だけではありません。同じ1社平均で、全営業収益のうち普通倉庫業は23.7%で、貨物利用運送事業23.6%、港湾運送事業11.9%、不動産賃貸業8.8%と続きます。倉庫会社は、預かった荷物の運送や輸出入の手続き、建物の賃貸も合わせて引き受けています。運送や港湾運送は、倉庫業の登録とは別の許可や登録を受けて行う事業です(運輸・物流の全体地図で整理しています)。
個別の会社でも同じ形が見えます。澁澤倉庫の連結損益計算書では、営業収益797億円のうち、倉庫保管料が100億円、倉庫荷役料が76億円で、合わせて約22%です。最も大きいのは陸上運送料の365億円で、約46%を占めます(2026年3月期決算短信)。セグメント利益(事業の区分ごとの利益)では、物流事業が37億円、不動産事業が31億円で、不動産が約46%です。不動産は営業収益の1割に満たないのに、利益の半分近くを生んでいます。
三菱倉庫では、物流事業と不動産事業のセグメント営業利益が127億円と117億円で、ほぼ半々です。物流事業の営業収益の中でも、倉庫の751億円より国際運送取扱の773億円がやや大きくなっています(2026年3月期決算短信)。住友倉庫では、物流事業の営業収益のうち倉庫は約18%で、港湾運送とほぼ同じ額です(2026年3月期決算短信)。
「倉庫会社」に入っても、配属先は保管の現場とは限りません。運送の手配、国際輸送や通関、港湾運送、不動産の賃貸の部門がある会社では、そこに配属される可能性があります。三菱倉庫は新卒の仕事のフィールドとして、ロジスティクス事業・国際輸送事業・港湾運送事業・不動産事業を挙げています(採用情報)。
冷蔵倉庫の会社は、食品も売る。利益の出どころは会社で違う
冷蔵倉庫は、農畜水産物の生鮮品や冷凍食品など、10℃以下で保管するのが適当な物品を預かる倉庫です。冷蔵室を常に10℃以下に保つ設備が登録の条件で、冷凍機の運転と保守が欠かせません。経営指標の冷蔵倉庫業者79社の1社平均では、全営業収益のうち冷蔵倉庫業は30.1%で、食品事業が35.7%とそれより大きくなっています。調査に答えた冷蔵倉庫の会社は、平均すると、倉庫より食品の販売で多くの収入を得ています。
ただし、利益の出どころは会社によって違います。横浜冷凍(ヨコレイ)は、売上は食品、利益は倉庫という構造です。2025年9月期は、冷蔵倉庫事業の外部売上高が377億円で売上全体の約30%ですが、セグメント利益は74億円で、合計の約86%を占めます。外部売上高878億円の食品販売事業のセグメント利益は12億円です(2025年9月期決算短信(訂正後))。ヨコレイの決算短信は、保管料を、預かる物品ごとの単価(1か月または半月)に、保管する数量と期間を掛けて計算すると説明しています。
ニチレイでは、冷蔵倉庫を中心とする低温物流事業が売上高3,010億円・営業利益186億円で、食品事業の営業利益199億円とほぼ並びます。利益は、倉庫と食品で同じくらいです。国内の低温物流の売上高1,990億円のうち、最も大きいのは保管の704億円で、輸配送359億円、リテール651億円、3PL 276億円が続きます(2026年3月期決算説明会資料)。会社が示す営業利益の増減の要因では、最も大きいのは減価償却の方法の変更などによる24億円の増加で、ほかに適正な料金の収受などの施策で10億円の増加、庸車(他社のトラック)や倉庫内作業の外部委託のコスト増で9億円の減少があります。
冷蔵倉庫では、冷凍機の冷媒も変わり目にあります。フロン類を冷媒に使う業務用の冷凍冷蔵機器はフロン排出抑制法の対象で、機器を管理する倉庫会社などは、すべての機器を3か月に1回以上簡易点検し、出力7.5kW以上の冷凍冷蔵機器は年1回以上の定期点検を行います(環境省のリーフレット)。漏れが見つかったときは、原則として修理しないまま冷媒を補充できず、点検や修理の記録は機器を廃棄した後も3年間保存します。算定した漏えい量が年1,000t-CO₂以上の会社は、毎年国に報告します。
冷媒のHCFC-22(R22)は、日本では2020年に生産と消費が全廃されました(令和6年版 環境白書)。既存の機器を使い続けることを直ちに禁じる規定はありませんが、冷媒の転換は進められています。環境省は、冷凍冷蔵倉庫などを営む中小企業が、フロンではなくCO₂やアンモニアなどの自然冷媒を使う機器を入れる費用を補助しており、2026年度予算案は70億円、補助率は原則3分の1です(環境省 事業概要)。
約款の改正・特定倉庫業者・自動化・外国人材が、倉庫の仕事を変える
2026年には、料金の決め方、大手倉庫業者の義務、現場の担い手のそれぞれで、倉庫業の制度が変わりました。
2026年の制度の変化は、倉庫の営業・現場管理・設備の仕事に届く
標準倉庫寄託約款は、1959年の制定以来、大きな改正がなく、取引の適正化に支障があったとして、2026年4月に改正されました(国土交通省 改正の概要資料)。仕分けやラベル貼りは倉庫業者の本来の業務に含まれず、別に料金がかかる附帯業務と位置づけられ、急ぎの入出庫の依頼には別に費用を請求できるようになりました。受寄物(預かった荷物)の滅失・損傷以外の損害の賠償は、その荷物について発生した料金の総額が上限になります。荷主と料金を交渉する営業や、作業の範囲を決めて記録する現場管理の仕事に関わる変化です。
2026年4月に全面施行された物流効率化法では、保管量(前の年度に倉庫へ入れた貨物の重さの合計)が年70万トン以上の倉庫業者が「特定倉庫業者」に指定され、中長期計画の作成と毎年度の定期報告が義務になりました。2026年8月27日時点の指定は56社で、国が公表した名簿には、この記事で取り上げた三菱倉庫、澁澤倉庫、住友倉庫、横浜冷凍や、日本通運、センコーなども載っています(国土交通省 物流効率化法について)。倉庫業者を対象にした国の調査では、フォークリフトや人員の配置などによる荷役の効率化に取り組む倉庫業者は76%、トラックが倉庫に着く時間を予約で決めるバース予約システムを入れている倉庫業者は17%でした(国土交通省 中長期計画の記載例と注意点。回答した事業者の割合)。
外国人材では、2026年1月の閣議決定で、「物流倉庫」が特定技能と育成就労の対象分野に加わりました。対象は倉庫での入出庫・保管・ピッキング・流通加工などの作業です。特定技能1号には技能評価試験と日本語の試験(日本語能力試験N4程度)の合格が必要で、育成就労は2027年4月に始まります。2026年10月時点では、国が分野別の協議会の設置を調整している段階です(国土交通省 物流倉庫分野の特定技能)。受け入れが始まると、現場での教育などの受け入れの体制づくりが倉庫の仕事に加わります。
求人票では、倉庫の種類・稼ぎ方・3PLとの境界を確かめる
倉庫の仕事は、倉庫の種類と会社の稼ぎ方によって、相手と成果物が変わります。
| 仕事 | 主な相手・対象 | 主な仕事の例 | 変化との関係 |
|---|---|---|---|
| 倉庫の現場管理 | 庫内の作業者、荷主 | 入出庫・在庫の管理、作業者のシフトと安全、倉庫管理主任者の業務 | 自動化、特定技能、荷役の効率化 |
| 冷蔵倉庫の設備 | 冷凍機・電気の設備 | 冷凍機の運転・保守、温度管理、設備の更新 | 冷媒の転換と補助 |
| 営業 | 荷主の物流部門 | 保管・荷役の料金と作業範囲の交渉、新しい荷物の受託 | 約款の改正、荷主の物流統括管理者(CLO)の選任による荷主側の窓口の変化 |
| 総合職の各部門 | 荷主、船会社、テナント | 運送の手配、国際輸送・通関、港湾運送、不動産の賃貸 | 会社の稼ぎ方によって配属先が変わる |
求人票では、次の3点を確かめます。
- 倉庫の種類:普通倉庫か、冷蔵倉庫か、危険品倉庫か。預かる物品によって、必要な資格や設備の知識が変わる
- 稼ぎ方:会社の利益が保管から出ているのか、運送や国際輸送、不動産から出ているのか。総合職なら、配属の可能性がある部門はどこか
- 3PLとの境界:荷主の物流をまとめて請け負うセンター運営の仕事か、預かった荷物の保管と荷役が中心の仕事か
荷主の物流をまとめて引き受けるセンター運営の仕事は、倉庫業の登録を使っていても、仕事の中身は3PLに近くなります。3PLの業界地図では、受託の範囲、センター運営とトラック運送の利益率の違い、物流施設の開発で稼ぐ会社を整理しています。

荷物を保管・荷役する倉庫事業と、物流施設を開発して貸す不動産事業では、契約と収入の源泉が異なります。 デベロッパー業界の地図

