「運輸」「物流」と書かれた求人は、鉄道会社の駅係員から、倉庫の現場管理、国際輸送の手配、空港の店舗運営まで幅があります。同じ業界名でも、お客様が乗客なのか荷主なのか、自分の会社が実際に運ぶのか、運ぶ会社を手配するのかで、仕事の相手も成果物も変わります。
この記事では、運輸・物流を「運ぶ」「預かる・積み降ろす」「手配する」「場所を貸す」の4つの役割と、旅客・国内貨物・国際貨物の3つの流れに分けて地図にします。そのうえで、輸送手段ごとの大きさを測る物差し、事業を始めるための法律上の区分、会社の稼ぎ方、人手不足と制度の変化が届く仕事を順に比べます。
各分野の会社比較や仕事の詳細は、分野ごとの業界地図で扱います。この記事は、どの分野の地図を次に読むかを決めるための全体図です。旅行業、輸送機器の製造、空港や港湾の建設、自社の車で自社の荷物を運ぶ自家用輸送は扱いません。
荷物を保管し、出し入れする仕事は「倉庫業の業界地図」で詳しく確認できます。荷主の物流をまとめて受託する会社の範囲と仕事は「3PLの業界地図」で確認できます。
運ぶ・預かる・手配する・場所を貸すで、求人の位置が分かる
運輸・物流の仕事は、役割で4つに分けられます。自ら車両・船・航空機を動かして運ぶ役割、荷物を保管したり船から積み降ろしたりする役割、他社の運送を使って運送を手配する役割、駅・空港・港などの施設を運営して場所を貸す役割です。1つの会社が複数の役割を持つことも多く、下の図では会社を主な位置に置いています。
運輸・物流は、4つの役割と3つの流れで地図にできる
運ぶ会社は、旅客なら鉄道・バス・タクシー・航空・旅客船、貨物ならトラック・貨物鉄道・船・航空機を動かします。国内の旅客は鉄道の比重が大きく、国内の貨物はトラックが大半を担います。国際貨物では、日本の輸出入の重さの大半を外航海運が運びます。
預かる・積み降ろす会社には、倉庫業者と港湾運送事業者がいます。倉庫業は荷物を預かって保管し、出し入れの作業で料金を受け取ります。港湾運送事業者は、港で船から荷物を降ろしたり積んだりします。そのうち一般港湾運送事業者は、荷主や船会社から委託を受け、港での受け渡しと荷役を一貫して引き受けます。港湾運送を中心とする上組では、物流事業の営業収益2,611億円のうち港湾運送が1,392億円と、約半分を占めています(2026年3月期決算短信)。

手配する役割では、荷主から運送を引き受け、実際の運送には他社の車両・船・航空機を使います。法律では貨物利用運送事業と呼びます。貨物鉄道では、利用運送事業者が荷主から荷物を集め、鉄道で運ぶ形があります。JR貨物の決算短信は主要な顧客として日本通運を挙げており、日本通運からの営業収益は372億円です(2026年3月期決算短信)。
国際輸送を手配する会社はフォワーダーと呼ばれ、通関業の許可も持って輸出入の手続きまで引き受ける会社があります。荷主の物流をまとめて請け負う3PLは、法律上の区分ではありません。運ぶ・預かる・手配するを組み合わせ、荷主の物流を包括して受託し、自ら実行もする請け方の呼び名で、図では複数の列にまたがります。

場所を貸す会社は、空港ビルや空港、港のターミナル、駅を運営し、航空会社・船会社・店舗などのテナントや利用者から使用料や賃料を受け取ります。羽田空港の旅客ターミナルを運営する日本空港ビルデングでは、施設の管理運営と、空港内の店舗での物品販売が、利益の2本柱です。空港や港の施設を誰が持ち、誰が運営するかは、空港・港ごとに異なります。
トラック輸送・宅配・郵便の詳細は、別の業界地図「トラック輸送・宅配・郵便」で扱っています。この記事では、トラックの位置を他の輸送手段と並べて確かめるだけにします。

輸送手段の大きさは、物差しを変えると割合が大きく変わる
輸送手段の大きさを比べるときは、何を数えるかで結果が変わります。旅客は「人」(何人を運んだか)と「人キロ」(人数に移動距離を掛けたもの)、貨物は「トン」(重さ)と「トンキロ」(重さに距離を掛けたもの)で測ります。
人とトン、人キロとトンキロで、輸送手段の割合が大きく変わる
令和8年版交通政策白書によると、2024年度の国内旅客(自家用車を除く)は、人の数では鉄道が82.3%を占め、航空は0.4%です。ところが人キロでは、航空が18.7%に増えます。飛行機は乗る人数が少なくても、1人あたりの移動距離が長いためです。
貨物でも同じことが起きます。トンではトラックが91.6%を占め、内航海運(国内の船の輸送)は7.4%です。トンキロでは、内航海運が37.9%に増え、トラックは57.4%になります。白書は、重い荷物を長い距離運ぶのに向く内航海運と鉄道は、トンキロで割合が高くなると説明しています。なお、このトラックの値は、運送会社の営業用トラックと、自社の荷物を運ぶ自家用トラックの合計です。
国際貨物では、2024年に日本を発着した貨物の重さのうち、99.7%を海上輸送が占め、航空は0.3%です(交通政策白書。港湾統計・空港管理状況調書による)。これは重さの物差しでの割合で、金額で見た割合はこの記事では確かめていません。
求人を見るときは、ニュースや会社案内の「シェア○%」がどの物差しの数字かを確かめます。都市の鉄道やバスは人の数で大きく、航空は人キロで大きく見えます。トラックはトンで大きく、内航海運はトンキロで大きく見えます。どれか1つの数字だけで、その分野の重みは決まりません。
売上の大きさを比べる場合も注意が要ります。下の表は、白書が示す事業ごとの事業者数と営業収入です。行ごとに年度と範囲が違い、トラックの営業収入には他社への委託で重なって数えた分が含まれるため、足し合わせて「運輸業界の市場規模」とすることはできません。倉庫業・貨物利用運送事業・郵便はこの表にありません。倉庫業者の全国の数は、国の集計が2020年度から行われていません。
| 事業 | 事業者数 | 営業収入 | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| 旅客鉄軌道 | 206者(2025年7月) | 7兆343億円(2023年度) | JRと私鉄・公営の合計 |
| 乗合バス | 2,452者(2024年度) | 8,951億円(2024年度) | 貸切バスは別に3,385者・4,720億円 |
| タクシー | 4万3,149者(2024年度) | 1兆4,425億円(2024年度) | 個人タクシーを含むとみられる |
| トラック | 6万2,383者(2024年度) | 20兆392億円(2023年度) | 委託で重なって数えた分を含む |
| 内航海運 | 2,939者(2025年度) | 1兆1,886億円(2023年度) | 99.7%が中小企業 |
| 外航海運 | 179者(2024年度) | 7兆8,675億円(2024年度) | 海外で得た運賃を含む |
| 港湾運送 | 842者(2024年度) | 1兆665億円(2023年度) | 白書の港湾局集計。許可の単位は事業の種類で異なる |
| 航空 | 18者(2024年度) | 4兆6,238億円(2024年度) | 主要な航空会社だけの合計 |
働く人の数では、2025年の運輸業・郵便業の就業者は345万人で、全産業の5.1%です。2021年の経済センサスでは、交通事業の従業者のうちトラックが約172万人と約半数を占め、タクシー、鉄道が続きます。
法律の区分で、始めるための条件と守るルールが変わる
運輸・物流の事業は、分野ごとに別々の法律で、始めるための手続きが決まっています。国の許可が要る事業、登録で始められる事業、届け出だけでよい事業があり、安全や労働時間の規制、違反したときの行政処分も分野で違います。
| 分野 | 主な法律 | 始めるための手続き |
|---|---|---|
| 鉄道 | 鉄道事業法 | 国の許可。自ら線路を持って運ぶ第一種、他社の線路で運ぶ第二種、線路を持って貸す第三種がある |
| バス・タクシー | 道路運送法 | 乗合(路線バス)・貸切・乗用(タクシー)ごとに国の許可 |
| トラック | 貨物自動車運送事業法 | 一般貨物自動車運送事業は国の許可 |
| 運送の手配 | 貨物利用運送事業法 | 第一種は登録。鉄道・船・航空機による利用運送と、その前後のトラックでの集荷・配達を一貫して行う第二種は許可 |
| 内航海運 | 内航海運業法 | 総トン数100トン以上か長さ30m以上の船は登録、それより小さい船は届出 |
| 旅客船・外航海運 | 海上運送法 | 一般旅客定期航路(フェリーなど)は航路ごとに許可。貨物専用の定期航路は始める前の届出、貨物専用の不定期航路は始めてから30日以内の届出 |
| 港湾運送 | 港湾運送事業法 | 国の許可。一般港湾運送・港湾荷役・はしけ・いかだは事業の種類と港ごと、検数・鑑定・検量は事業の種類ごと |
| 航空 | 航空法 | 国の許可。操縦士・整備士は国の技能証明が要る |
| 倉庫 | 倉庫業法 | 国の登録 |
| 通関 | 通関業法 | 財務大臣の許可。通関士が手続きを担う |
許可の単位も分野で違います。鉄道は路線ごと、旅客船は航路ごと、港湾荷役などは港ごとに許可を受けます。手配の第一種と倉庫は、許可ではなく登録で始められます。どの分野の会社かによって、行政処分や監査の対象になる手続きも変わります。
自家用車での有償の送迎は原則として禁止されています。例外として、市町村やNPOなどが登録を受けて行う自家用有償旅客運送と、タクシー会社が国の許可を受け、地域の一般ドライバーと自家用車を使う「日本版ライドシェア」があります(国土交通省の事務連絡)。日本版ライドシェアでは、運行の管理はタクシー会社が担います。
運賃だけでなく、不動産・物販・出資先の利益で支える会社がある
運輸の会社は、運賃だけで稼いでいるとは限りません。鉄道・倉庫・空港では、駅ビルなどの不動産の賃貸や、空港の店舗が利益の大きな部分を占める会社があります。下の図は、各社の決算短信と決算説明資料から、利益が何から生まれているかを計算したものです。会社どうしの大きさは比べていません。
運輸の会社の利益は、運賃からだけ生まれているわけではない
JR東日本の2026年3月期は、外部の顧客への売上高の約66%が運輸事業ですが、セグメント利益(事業の区分ごとの利益)では運輸事業は約46%です。残りの多くは、商業施設・オフィス・ホテルなどの不動産・ホテル事業と、小売・飲食などの流通・サービス事業が生み、その他の事業も約7%あります(決算短信)。大手私鉄の東急では、利益の最大の柱は不動産事業で、交通事業は約27%です。
本業の輸送が赤字で、他の事業が会社を支えている例もあります。JR貨物は、鉄道ロジスティクス事業が119億円の営業損失で、不動産事業の148億円の営業利益で黒字を保っています。成田国際空港は、空港の運営を担う空港運営事業が116億円の営業損失で、空港内の店舗を運営するリテール事業が413億円の営業利益を出しています(決算説明資料)。タクシー大手の第一交通産業も、タクシー事業は約16億円のセグメント損失で、不動産の分譲・賃貸などで利益を出しています。
倉庫会社も同じ形をとることがあります。三菱倉庫では、営業収益の約13%の不動産事業が、セグメントの営業利益ではほぼ半分を占めます(決算短信)。不動産事業の収益の大半は、不動産の賃貸によるものです。
外航海運では、利益の一部が売上高の外にあります。日本郵船・商船三井・川崎汽船の3社は、コンテナ船の事業を共同出資のOcean Network Express(ONE)にまとめています。ONEの売上は3社の売上高には入らず、出資の割合に応じた利益だけが「持分法による投資利益」として経常利益に入ります。日本郵船の2026年3月期は、持分法による投資利益が850億円で、そのうちONEの分は190億円でした(決算短信)。日本郵船の定期船事業のセグメント利益は、前の期の2,743億円から498億円に減りました。前の期はその9割超が持分法による利益でした。川崎汽船でも、持分法による投資損益は前の期の2,021億円から228億円に減り、うちONEの分は150億円です。ONEの利益の増減が、出資する会社の経常利益を大きく動かします。
航空会社は、旅客と貨物の両方を運びます。ANAホールディングスの航空事業のうち、ANAブランドの収入は、旅客が国際8,789億円・国内7,380億円、貨物郵便が2,137億円です(決算説明資料)。航空事業には、このほかPeachなどの収入があります。2025年8月には、貨物専用機を運航する日本貨物航空が、日本郵船からANAホールディングスの傘下に移り、2025年度の途中からの収入1,356億円が航空事業に加わりました。
稼ぎ方の違いは、配属先の幅にも関わります。鉄道や空港の会社に入ると、運行や施設の仕事だけでなく、不動産や店舗の事業に配属される可能性があります。JR東日本・三菱倉庫・成田国際空港などは、新卒を総合職などの区分で採用しています(各社の採用ページ)。求人票の募集部門や採用区分が、会社のどの事業に属するかを確かめると、仕事の中身を読み違えにくくなります。
人手不足と制度の変化は、どの仕事に届くか
運輸・物流は、他の産業より人手不足が強い分野です。交通政策白書は、交通事業の働き手の不足感が他の産業より一貫して高いこと、乗合バスでは運転者不足による減便や路線の廃止が全国で相次いでいること、鉄道でも人手不足による減便が起きていることを挙げています。2024年からは、制度の変化も続いています。
人手不足への対応と制度の変化は、分野ごとに違う仕事へ届く
2024年4月から、トラック・バス・タクシーの運転者に時間外労働の上限(年960時間)が適用され、1日・1か月の拘束時間や休息の基準も見直されました(バス運転者の改善基準告示)。運転者だけでなく、勤務表を組む運行管理者(運転者の点呼や勤務を管理する担当者)や、運行本数を決める企画の仕事にも届く変化です。
2026年4月からは、物流効率化法により、運送会社に一定以上の荷物を運ばせる荷主と、運転者から一定以上の荷物を受け取る・引き渡す荷主が「特定荷主」に指定され、中長期の計画づくりと、物流の責任者(物流統括管理者)の選任が義務になりました。荷主企業の物流部門の仕事が増えるとともに、荷主に荷待ちの削減や積載率の改善を提案する、3PLや倉庫会社の営業・企画の仕事にも関わります。
2026年3月に閣議決定された総合物流施策大綱(2026〜2030年度)は、対策をとらなかった場合の輸送力不足の試算(NX総合研究所)として、2024年度に約14%、2030年度に約34%を挙げ、2024年度の分は官民の取組でおおむね克服したと評価しています。そのうえで、トラックから鉄道や船へ荷物を移す「モーダルシフト」の目標として、鉄道貨物の輸送量を2024年度の164億トンキロから2030年度に221億トンキロへ増やすことを掲げています。鉄道貨物や内航海運の営業担当にとっては荷物を集める機会が、トラック会社にとっては長距離の幹線輸送を組み替える必要が生まれます。
外国人材の受け入れも広がっています。2024年3月にはバス・タクシー・トラックの運転手が特定技能(一定の技能と日本語の力を持つ外国人が働ける在留資格)の対象に加わり、2026年1月には倉庫での入出庫・保管・ピッキングなどの作業も対象になりました(国土交通省 物流倉庫分野の特定技能)。運転手を受け入れる会社には職場の認証の取得などの要件があり、日本の運転免許を取るための在留資格も設けられています。倉庫分野は、2026年10月時点で国が分野別の協議会の設置を調整している段階です。
求人票では、役割・流れ・稼ぎ方の3点を確かめる
同じ「運輸」「物流」の求人でも、役割によって主な相手と成果物が違います。
| 役割 | 主な相手 | 主な仕事の例 | 変化との関係 |
|---|---|---|---|
| 運ぶ(旅客) | 乗客、利用者 | 運転・乗務、駅や空港での案内、運行管理、ダイヤや路線の企画 | 運転者の労働時間の上限、運転者不足による減便 |
| 運ぶ(貨物) | 荷主、届け先 | 運転、配車、運行管理、営業 | 労働時間の上限、モーダルシフト |
| 預かる・積み降ろす | 荷主、船会社 | 倉庫の現場管理、荷役、在庫管理、港での荷役の計画 | 庫内作業の自動化、特定技能 |
| 手配する | 荷主、運ぶ会社 | 輸送の手配、通関、物流の提案営業 | 特定荷主の指定、物流の責任者の選任 |
| 場所を貸す | 航空会社・船会社、テナント、旅客 | 施設の管理運営、テナント営業、店舗の運営 | 訪日客の増加に合わせた空港業務の体制強化 |
求人票では、次の3点を確かめます。
- 役割:自社で運ぶのか、預かるのか、手配するのか、場所を貸すのか。1社が複数を持つ場合は、募集する部門がどれか
- 流れ:乗客を運ぶのか、国内の荷物か、輸出入の荷物か
- 稼ぎ方:会社の利益が運賃から出ているのか、不動産や店舗、出資先から出ているのか。配属の可能性がある事業はどこか
この3点が分かったら、次はその分野の業界地図で、会社ごとの違いと仕事の流れを確かめます。トラック輸送・宅配・郵便については、別の業界地図で、運び方の違い、元請と実際に運ぶ会社の関係、規制が届く仕事を詳しく整理しています。
旅客鉄道は、線路の保有・運賃・沿線事業と地方路線の運営までを分けて確認できます。 鉄道業界の地図
航空会社は、旅客と貨物、路線、運航費用、資格の必要な仕事を分けて確認できます。 航空業界の地図
バス・タクシーは、運賃・補助・配車・担い手の違いから確認できます。 バス・タクシー業界の地図
海運は、外航・内航・フェリー、船の保有と運航、長期契約と市況を分けて確認できます。 海運業界の地図
空港は、運営会社・旅客ターミナル・地上支援の収入と責任を分けて確認できます。 空港業界の地図



