空港を、誰が持ち誰が運営するか(会社管理・国管理・地方管理とコンセッション)、着陸料と旅客施設使用料の決まり方、店舗・免税店・家賃の稼ぎ方で整理します。グランドハンドリング・給油・保安検査を担う会社と、2026年4月に始まった保安検査の実施主体の移行、空港で働く会社ごとの採用区分まで、空港の求人を比べるときに確かめる点が分かる内容です。

「空港」の求人には、空港会社の総合職、ターミナルビルのテナント管理、チェックインカウンターの旅客サービス、飛行機を誘導して荷物を積み降ろすランプの仕事、保安検査、免税店の販売まで幅があります。同じ空港で働いていても、雇い主は空港会社、ターミナル会社、航空会社のグループ会社、検査会社、店舗の会社とさまざまです。

この記事では、空港法の空港について、持ち主と運営の分担、空港の会社の稼ぎ方、空港で働く会社の分担を順に確かめます。空港の会社が航空会社から受け取る着陸料と、旅客から受け取る旅客施設使用料、店舗や家賃の収入がどう分かれるかを見たうえで、グランドハンドリング(航空機と旅客・荷物の地上での取り扱い)と保安検査を、誰が誰との契約で行っているかを整理します。

運輸・物流全体の中での空港の位置と空港の数は、「運輸・物流の業界地図|人と物を、誰が運び、預かり、手配し、場所を貸すのか」で整理しています。成田国際空港の事業別の損益と、日本空港ビルデングの利益の2本柱もそちらで示したので、この記事では繰り返さず、収入の内訳を使います。

航空会社の路線・機材・運航・整備と、航空会社が払う空港使用料などの費用は「航空の業界地図」で扱います。保安検査を受託する警備会社の事業と警備業法は「警備の業界地図」、航空貨物の混載と通関は「国際物流・フォワーダーの業界地図」、空港の建設工事は「ゼネコンの業界地図」、免税店で扱う化粧品ブランドについては「化粧品の業界地図」で扱います。

空港は、誰が設置・管理し、誰が運営するかで分かれる

空港法では、空港は「公共の用に供する飛行場」です。空港を設置・管理する者(空港管理者)によって、区分が分かれます。

空港は輸送そのものに加え、運ぶ会社を支える場所や設備の役割から位置づけられます。 運輸・物流業界の地図

このほか、国が設置し自治体が管理する特定地方管理空港(旭川・帯広など)、拠点空港と地方管理空港のどちらにも当たらない「その他の空港」(但馬など)、共用空港の区分があります(国土交通省 空港一覧)。区分ごとの空港の数は全体地図で示しています。

空港の持ち主が国や自治体でも、運営を民間の会社に任せる空港があります。これをコンセッション(公共施設等運営権の設定)と呼びます。民活空港運営法では、国がPFI法にもとづいて運営権を設定した場合に限り、民間の会社が国管理空港を運営でき、運営権者(運営を任された会社)は着陸料などを自らの収入として受け取ります。地方管理空港では、管理する自治体が運営権を設定します。

国の交通政策白書(令和8年版)によると、コンセッションは2015年の但馬空港から2021年の広島空港まで、計19空港で始まりました。これとは別に、2026年4月から富山空港でも民間による運営が始まっています(国土交通省 地方管理空港等の民間委託の検討状況)。

空港は、設置・管理する者と、運営を民間に任せたかどうかで分かれる

列は空港法の設置・管理者の区分、行は運営の形。主な空港の例と、運営やターミナルを担う会社を並べた。数は入れていない。

会社管理空港法律で定めた会社・国が指定した会社が設置・管理(空港法第4条)
国管理空港国土交通大臣が設置・管理
自治体が管理する空港地方管理空港(第5条)・特定地方管理空港など
持ち主・管理者が運営国管理空港のターミナル・貨物・給油の施設は、国が指定した会社
会社管理空港成田成田国際空港株式会社(NAA)が設置・管理し、運営する中部国土交通大臣が指定した中部国際空港株式会社が設置・管理する
国管理空港羽田滑走路は国。旅客ターミナルは日本空港ビルデング・東京国際空港ターミナル、貨物は東京国際エアカーゴターミナル、ほかに空港施設・三愛オブリ那覇那覇空港ビルディング・那覇空港貨物ターミナルなど
自治体が管理する空港この図では例を挙げていない
運営を民間に任せた(コンセッション)運営権者が着陸料などを自らの収入にする
会社管理空港関西・伊丹持ち主は新関西国際空港株式会社。運営は運営権者の関西エアポート。持ち主は運営権対価で債務を返す
国管理空港仙台・高松・福岡・熊本・広島、北海道内7空港(うち国管理は新千歳・稚内・釧路・函館)福岡は福岡国際空港が運営する
自治体が管理する空港但馬・神戸・鳥取・静岡・南紀白浜・旭川・帯広・女満別・富山旭川・帯広は特定地方管理空港、但馬はその他の空港、ほかは地方管理空港。旭川・帯広・女満別は北海道内7空港の一括運営に含まれる。富山は2026年4月に開始
読み方:交通政策白書は、コンセッションを2015年の但馬から2021年の広島までの19空港としている。富山(2026年4月)はこの19空港とは別。新潟・大分・小松の民間への聞き取りや、青森・秋田・佐賀・松本の調査は、導入が決まったものではない。このほか共用空港などの区分がある。
出典:空港法・民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律(e-Gov)、国土交通省「民間の能力を活用した国管理空港の経営」「地方管理空港等の民間委託の検討状況(R8.4時点)」「空港機能施設事業者の経営情報」「空港一覧」「中部国際空港の設置及び管理等」、中部国際空港の設置及び管理に関する法律(e-Gov)、同「令和8年版 交通政策白書」、新関西国際空港「半期報告書(第14期中)」。

国管理空港でコンセッションを導入したのは、仙台・高松・福岡・熊本・広島と、北海道内7空港のうち国管理の新千歳・稚内・釧路・函館です(国土交通省 民間の能力を活用した国管理空港の経営)。北海道内の7空港は、この国管理の4空港と、旭川・帯広(特定地方管理空港)・女満別(地方管理空港)をまとめて運営を任せています。自治体が管理する空港では、但馬(その他の空港)・神戸・鳥取・静岡・南紀白浜・旭川・帯広・女満別・富山で民間委託が始まっています。新潟・大分・小松では国が民間への聞き取りを行い、青森・秋田・佐賀・松本には導入の可能性の調査の実績がありますが、これらは導入が決まった空港ではありません。

滑走路は国、ターミナルは会社。持ち主と運営を分ける空港もある

国管理空港では、滑走路は国が管理し、旅客ターミナル・貨物ターミナル・給油施設は、国が空港ごとに指定した会社が建設・管理します。空港法はこの会社を指定空港機能施設事業者と呼びます(第15条)。羽田空港では、日本空港ビルデング、東京国際空港ターミナル、東京国際エアカーゴターミナル、空港施設、三愛オブリが、空港機能施設事業者の一覧に載っています(国土交通省 空港機能施設事業者の経営情報)。新千歳には千歳空港給油施設、那覇には那覇空港貨物ターミナルが載っており、旅客ターミナルの会社だけでなく、貨物と給油の施設の会社もこの区分に入ります。

指定空港機能施設事業者は、空港の施設の事業とそれ以外の事業の経理を分け(第18条)、事業を休止・廃止するには国の許可が要ります(第20条)。羽田のターミナル会社の売上には、滑走路の着陸料は入りません。コンセッションを導入していない国管理空港では、着陸料は国の収入です。

コンセッションを導入した空港では、持ち主と運営する会社が分かれます。関西空港と伊丹空港では、持ち主の新関西国際空港株式会社が、運営権者の関西エアポートから運営権対価(運営する権利の対価)を受け取り、関西空港の整備にかかった債務を返しています(新関西国際空港 半期報告書)。両空港の運営は関西エアポートに引き継がれ、持ち主の会社の従業員は、2025年9月30日時点で空港事業31名・鉄道事業3名の計34名です(臨時従業員を除く)。持ち主の会社は少人数で、空港の運営そのものは運営権者が担います。

空港へのアクセスを担う鉄道会社は、線路の保有や運賃、沿線事業の仕組みが空港運営と異なります。 鉄道業界の地図

運営する側の会社は、運営権の対価を費用として払います。福岡空港を運営する福岡国際空港では、2024年度上期(2024年4〜9月)に、運営権対価に係る費用のうち、販売費及び一般管理費に入る分として51億円を計上しています。2024年9月末の貸借対照表には、公共施設等運営権2,779億円と、公共施設等運営権に係る負債3,304億円が載っています(福岡国際空港 2024年度第2四半期決算説明会資料。福岡市が市議会の委員会の参考資料として掲載)。

着陸料は航空会社から、旅客施設使用料は旅客から受け取る

空港の会社の収入は、航空機と航空会社に関わる航空系の収入と、店舗や家賃などの非航空系の収入に分けて考えられます。国のコンセッションは、滑走路などの航空系の事業とターミナルビルなどの非航空系の事業を、民間が一体で経営することをねらいにしています。

空港の料金を払う航空会社側では、旅客・貨物の収入と運航費用が採算を左右します。 航空業界の地図

航空系の料金には、主に2種類あります。

  • 着陸料等:滑走路などを使う航空機の使用者(航空会社)が払います。空港管理者は、あらかじめ国土交通大臣に届け出ます(空港法第13条)。運営権者も同じく届け出ます(民活空港運営法第8条)。不当な差別的な扱いがあるときなどは、大臣が変更を命じることができます。国が管理する空港(コンセッション空港を除く)では、着陸料・停留料・保安料の算定方法を国の告示で決めており、2026年3月に告示を改正し、4月から適用しています(国土交通省 空港使用料について)。
  • 旅客取扱施設利用料:旅客から受け取る、ターミナルを使う料金です。国管理空港の指定空港機能施設事業者は、料金の上限を定めて大臣の認可を受け、その範囲で料金を届け出て公表します(空港法第16条)。認可では、能率的な経営のもとでの適正な原価に適正な利潤を加えた額を超えないかが審査されます。

旅客取扱施設利用料の上限を国が認可する空港法第16条の手続きは、国管理空港のターミナル会社(指定空港機能施設事業者)が対象で、会社管理空港の成田は対象に入りません。成田にも旅客から受け取る旅客施設使用料があり、成田国際空港の収入では空港運営事業の大きな柱です。

空港の会社の収入は、施設の使用料と、店舗・家賃に大きく頼る

各社の事業や収入の内訳を、それぞれの合計を100%とした割合で示した。会社・期・開示の種類が違うため、会社どうしの大きさは比べていない。

航空会社から受け取る料金旅客施設使用料・施設利用料給油施設自社の店の売上家賃・不動産・営業料その他
成田国際空港(会社管理空港)2025年度。会社の決算説明資料(億円未満切り捨て)
空港運営事業外部営業収益の内訳空港使用料収入366億円(31.5%)、旅客施設使用料収入491億円(42.3%)、給油施設使用料収入142億円(12.2%)、その他163億円(14.0%)
リテール事業外部営業収益の内訳物販・飲食収入957億円(75.6%)、構内営業料収入136億円(10.7%)、その他173億円(13.7%)
日本空港ビルデング(羽田のターミナル会社)2026年3月期。決算短信のセグメントの内訳(日本基準)
施設管理運営業外部売上の内訳家賃収入21,958百万円(18.6%)、施設利用料収入68,374百万円(58.1%)、その他の収入27,432百万円(23.3%。ラウンジ・駐車場・外貨両替所・広告料など)
物品販売業外部売上の内訳国内線売店15,572百万円(10.1%)、国際線売店97,174百万円(63.1%)、その他41,306百万円(26.8%。他空港への卸売を含む)
福岡国際空港(国管理空港のコンセッション会社)2024年度上期(2024年4〜9月)の例。会社の決算説明会資料(福岡市議会の委員会の参考資料)
営業収益の内訳航空収入(着陸料等)60億円(21.0%)、不動産収入90億円(31.5%)、事業収入136億円のうち免税店105億円(36.7%)とそれ以外31億円(10.8%)
出典:成田国際空港「2025年度(2026年3月期)期末決算説明資料」、日本空港ビルデング「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」、福岡国際空港「2024年度(2025年3月期)第2四半期決算説明会資料」(福岡市 都市問題等調査特別委員会 参考資料)。割合は、各内訳の合計を100%として本記事で計算した(会社が示す合計とは、端数の切り捨てで1〜2ずれる)。成田の空港使用料収入は航空会社から、旅客施設使用料収入は旅客から受け取る料金。日本空港ビルデングの施設利用料収入には旅客取扱施設利用料の改定の影響が含まれる(会社の説明)が、内訳は開示されていない。

成田国際空港では、2025年度の空港運営事業の外部営業収益1,163億円のうち、旅客施設使用料収入が491億円で、航空会社から受け取る空港使用料収入の366億円より大きくなっています。給油施設使用料収入も142億円あります(2025年度期末決算説明資料)。同じ資料で、2025年度の航空旅客数は4,258万人(会社の公表値。通過客210万人を含む)で、うち国際線が3,539万人です。

日本空港ビルデングでは、2026年3月期の施設管理運営業の外部売上のうち、施設利用料収入が約684億円で、内訳の合計の約58%(計算値)を占めます。会社は、施設利用料収入が増えた理由として、旅客数の増加と、2025年4月の国内線の旅客取扱施設利用料の改定を挙げています(2026年3月期決算短信)。旅客の数と旅客取扱施設利用料の改定が、施設利用料収入を押し上げています。

成田国際空港は、2026年度の空港運営事業について、営業損失を239億円と予想しています。理由には、諸物価の高騰と、古くなった設備の修繕・更新の費用の増加を挙げています。2025年度の実績の損益は、全体地図で取り上げています。

店舗・免税店・家賃が、空港の会社の非航空系の収入になる

非航空系の稼ぎ方は、大きく2つあります。自社で店を運営して商品を売る形と、他社の店や事務所に場所を貸して家賃や営業料を受け取る形です。売上の数字の見え方が違うので、求人票の会社がどちらの形かを確かめると、仕事の中身を読み違えにくくなります。

成田国際空港のリテール事業では、2025年度の外部営業収益1,268億円のうち、物販・飲食収入が957億円、構内営業料収入が136億円です。科目名から読むと、物販・飲食収入はグループが自ら運営する店の売上、構内営業料収入は空港内で営業する他社から受け取る料金です。NAAグループでは、NAAリテイリングがFa-So-Laブランドの店舗の販売と飲食を担っています(NAAグループの採用情報)。

日本空港ビルデングは、ターミナルの家賃と施設利用料に加えて、自社で店を運営しています。2026年3月期の物品販売業の外部売上約1,541億円のうち、国際線売店が約972億円で、内訳の合計の約63%(計算値)です。国内線売店は約156億円で、残りには他空港への卸売などが入ります。施設管理運営業の家賃収入は約220億円、ラウンジ・駐車場・外貨両替所・広告料などの「その他の収入」は約274億円です。飲食業には、飲食店舗のほか、機内食の売上約79億円もあります。機内食の製造は、この記事では扱いません。

コンセッションで空港全体を運営する会社では、免税店が大きな収入になる例があります。福岡国際空港では、2024年度上期の営業収益287億円のうち、着陸料などの航空収入が60億円、不動産収入が90億円、事業収入が136億円で、事業収入のうち免税店が105億円です。上期の内訳の合計に占める割合は、航空収入が約21%、免税店が約37%です(計算値)。2024年度上期(2年前の中間期)の値なので、コンセッション会社の収入の分かれ方の一例として示します。

3社は、会社の形も、期も、開示の種類も違います。図の割合は各社の中での構成を示すもので、会社どうしの大きさは比べていません。

グランドハンドリングは、航空会社との契約で、航空会社系・系列外・自社直営の会社が担う

グランドハンドリングは、航空機の機体や旅客、貨物・燃料などの搭載物を地上で取り扱う業務の総称です(国土交通省 グランドハンドリング)。国の説明では、主に次の3つがあります。

  • 旅客ハンドリング:ターミナルビルでの搭乗手続きや手荷物の預かりなど、旅客への対応
  • ランプハンドリング:航空機の誘導(マーシャリング)、手荷物・貨物の搭降載など
  • 空港給油:航空機への燃料の給油

国の概要図には、このほか航空機の押し出し(プッシュバック)、機内清掃、機内食の搭降載、機体の除雪氷(デアイシング)、貨物の受託なども挙がっています。

国の検討会の整理では、グランドハンドリングは航空会社との契約にもとづいて行う業務で、法律にもとづいて行う保安検査とは性格が違います(空港業務の持続的発展に向けたビジョン 中間とりまとめ概要)。グランドハンドリングには、航空会社の運送事業のような航空法の事業の許可はありません。ただし、国が設置・管理する空港の中で営業する会社は、空港管理規則にもとづき、国の施設を借りるなら地方航空局長の、借りずに国の施設で営業するなら空港事務所長の承認を受け、それ以外は空港事務所長に届け出る必要があります(航空法の許可を受けた航空会社などは除かれます)。会社管理空港やコンセッションの空港での手続きは、空港によって違います。

担い手は、主に3つの形に分かれます。

  • 航空会社系:ANAグループは「空港地上支援」の会社として、ANAエアポートサービス、ANA成田エアポートサービス、ANA中部空港、ANA関西空港、ANA福岡空港、ANA沖縄空港など、11社を挙げています(ANAグループ 採用情報)。JALグループでは、羽田と成田でJALスカイが旅客サービス業務を、JALグランドサービスがグランドハンドリング業務と旅客サービス業務を募集しています。JALグループの空港会社は、JALグループ便だけでなく、外国の航空会社の便のハンドリングも受託しています(JALグループ空港業務特設サイト)。
  • 系列外の会社:JALの地方空港の拠点では、日本通運(女満別・旭川・釧路・帯広・秋田・花巻ほか)、新潟航空サービス、山新観光、函館エアサービスなどが「JALブランドパートナー」として旅客サービスやグランドハンドリングの業務を担っています(同)。
  • 自社直営:スカイマークは、グループ会社を作らず、地上旅客職やランプハンドリング職を含む運航に関わる職種を自社で採用していると説明しています(スカイマーク 採用情報)。

給油はグランドハンドリングの一部ですが、給油の施設は別の会社が建設・管理していることがあります。成田では、NAAグループの成田空港給油施設が航空機給油施設の保守を担い、NAAは2025年度に給油施設使用料収入142億円を計上しています。新千歳の千歳空港給油施設、福岡の福岡給油施設も、空港機能施設事業者の一覧に載っています。貨物も同じで、羽田の東京国際エアカーゴターミナルや那覇空港貨物ターミナルのような貨物ターミナルの会社があり、ANA中部空港は「貨物インサイドハンドリング業務」を募集しています。航空貨物の手配・混載・通関は「国際物流・フォワーダーの業界地図」で扱います。

国の検討会は、グランドハンドリングの課題として次の点を挙げています。

  • 職責に見合った賃金になっていないこと、長時間の労働・拘束
  • 外国の航空会社が撤退するリスクなどが、グランドハンドリング会社に集中すること
  • 処遇改善の支障になりうる多重委託(委託先がさらに別の会社へ委託する形)や、契約・雇用の慣行
  • 社内資格が航空会社ごとに細かく決まっていること。地方では、二次請けの地元の会社が、航空会社ごとに対応する人材を育てる非効率がある

取り組みとして、受託料の引き上げ、キャンセル料の設定などの受託契約の適正化、業界団体の設立、作業車両(GSE)の共用化、特定技能制度の活用が挙がっています。国は、グランドハンドリングの車両の軽油引取税の課税免除や、GSEのリースと共同使用のガイドライン(2025年7月)なども示しています。航空会社が払う地上業務の費用と、どの子会社がそれを受け持つかは、「航空の業界地図」で航空会社の側から整理しています。

保安検査は法律にもとづく検査で、実施する者が国へ移り始めた

保安検査は、航空法第131条の2の5にもとづく検査です。空港の設置者は、危険物などを持ち込めない区域を指定することができ、何人も、省令で定める者の検査を受けた後でなければ、その区域に入ったり航空機に乗ったりしてはいけません。2021年の航空法の改正で、保安検査の法律上の根拠と保安職員の権限がはっきりしました(実務者検討会議 中間とりまとめ)。

誰が検査を行うかは、航空法施行規則で決まっています。旅客の保安検査を行うのは、原則として、旅客が乗る航空機を運航する者、つまり航空会社です。旅客以外の人の検査は、航空旅客取扱施設(ターミナル)の管理者が行います。ただし、国土交通大臣が指定する場所では、空港の設置者(国の空港では国土交通大臣)が行います。預けた手荷物の検査も同じ形です。

検査を他社に委託するときは、委託する者が、委託先に体制・検査員の配置・教育訓練・手順を示し、実施の状況を確かめて是正させるなどの監督を行います(施行規則第235条の4の13)。中間とりまとめによると、現状では、保安検査の実務は航空会社や委託先の検査会社が担い、空港管理者が実務に関わっていない空港がほとんどです。大きな空港では、空港ビル会社が従業員向けの保安検査を行っています。

2026年4月1日、羽田空港の国際線と宮崎空港で、保安検査の実施主体が航空会社から空港管理者(国)に移りました(国土交通省 報道発表)。羽田では第2・第3ターミナルの国際線の旅客保安検査場、インライン検査場、大型手荷物検査場など、宮崎では旅客ターミナルビルの国内線・国際線の保安検査場や空港関係者の検査場などが、指定された場所です(保安検査等の実施主体が移行する場所の一覧)。ほかの空港は、中間とりまとめが示した方針にもとづき、空港ごとの移行の道筋(ロードマップ)で移行を検討しています。

保安検査の費用は、中間とりまとめによると、基本的に航空会社と空港管理者が折半しています(空港によって異なります)。移行後も折半の考え方を保ち、旅客から透明な形で負担してもらう方法を空港ごとに検討するとしています。これは中間とりまとめの段階の考え方で、最終の方針ではありません。

国の検討会は、地方では検査会社への応募が少なく、都市部から要員を派遣する必要があることを課題に挙げています。検査会社(警備会社)の事業と警備業法、検査員の採用区分は「警備の業界地図」で扱います。

空港で働く会社は、旅客と航空機の動線ごとに分かれる

空港で働く人の雇い主は、仕事が旅客の動線にあるのか、航空機の動線にあるのか、施設を支える側にあるのかで分かれます。

空港で働く人の雇い主は、旅客の動線・航空機の動線・施設の側で分かれる

上は旅客の動線、中は航空機の動線、下は施設を支える側。各段に、その仕事を担う会社の種類を書いた。空港や航空会社によって分担は変わる。

旅客の動線
1 搭乗手続きチェックイン・手荷物の預かり航空会社、航空会社系のグランドハンドリング会社(旅客サービス)、地方では系列外の会社も
2 保安検査(法律にもとづく)旅客と手荷物の検査実施する者は原則、運航する航空会社。羽田国際線・宮崎は2026年4月から国。現場は航空会社や委託先の検査会社
3 出国審査国の機関この記事では扱わない
4 店舗・ラウンジ物販・飲食・免税店・ラウンジターミナル会社、空港会社のグループ会社、テナントの店
5 搭乗搭乗口の案内航空会社、航空会社系のグランドハンドリング会社(旅客サービス)
航空機の動線
1 到着誘導(マーシャリング)・押し出しグランドハンドリング会社(ランプ)、自社直営の航空会社
2 搭降載手荷物・貨物・機内食グランドハンドリング会社(ランプ・貨物)。貨物ターミナルの会社
3 給油航空機への給油グランドハンドリングの一部(空港給油)。給油施設は給油施設の会社が建設・管理
4 清掃・除雪氷機内清掃・デアイシンググランドハンドリング会社
5 整備機体の点検・整備航空会社の整備会社(「航空の業界地図」で扱う)
施設を支える側
空港会社のグループ土木・建築施設、ターミナルの設備、航空灯火・エネルギー、空港内のネットワーク、警備・消防・案内(NAAグループの例)
ターミナル会社テナント管理・リーシング、設備管理、館内点検、ターミナルの増改築の工事調整(日本空港ビルデングの社員紹介の例)
車両・搭乗橋の整備作業車両(GSE)とボーディングブリッジの整備(ANA成田エアポートサービスのエンジニアリングサービス業務の例)
読み方:この図の中で、検査を実施する者が法令で決まっているのは太枠の保安検査。グランドハンドリングは航空会社との契約にもとづく業務(国の検討会の整理)で、国が設置・管理する空港で営業するには空港管理規則の承認か届出が要る。点線の枠はこの記事の範囲外。グランドハンドリングの担い手は、航空会社系の会社(ANAグループの空港地上支援の会社、JALスカイ・JALグランドサービスなど)、系列外の会社(JALブランドパートナーの日本通運など)、自社直営(スカイマーク)に分かれる。
出典:国土交通省「グランドハンドリング」「空港業務の持続的発展に向けたビジョン 中間とりまとめ概要」、航空法施行規則・空港管理規則(e-Gov)、国土交通省「空港における保安検査の実施主体が変わります!」(2026年3月27日)、同「空港における旅客の保安検査の実施主体の円滑な移行に向けた実務者検討会議 中間とりまとめ」、ANAホールディングス「2027年度入社 ANAグループ新卒採用について」、JALグループ空港業務特設サイト、スカイマーク採用情報、成田国際空港・日本空港ビルデングの採用情報。

空港の会社のグループには、施設を支える会社もあります。NAAグループでは、空港の土木・建築施設の保守(エアポートメンテナンスサービス)、ターミナルの付帯・特殊設備(成田エアポートテクノ)、航空灯火・エネルギー施設(NAAファシリティーズ)、空港内のネットワーク(空港情報通信)、警備・消防・案内カウンター(NAAセーフティーサポート)、人材派遣・カート・ラウンジ(成田空港ビジネス)を、グループ会社の業務として紹介しています。成田空港には、空港内の求人の相談窓口「ナリタJOBポート」もあります。

交通政策白書によると、グランドハンドリングや保安検査の空港業務の人員は、新型コロナの影響で一時、感染拡大前の8割程度まで減りましたが、足下では感染拡大前の水準まで戻っています。白書は、2030年に訪日客6,000万人を目指すうえでボトルネックにならないよう、体制の強化が重要だとしています。国は、合同就職説明会、共用の休憩室の整備、業務資格の相互承認、業務用の資機材の共用化、特定技能外国人の受け入れ、退職自衛官の採用を進めるとしています。

機械による省力化も始まっています。2025年4月に成田空港で自動ボーディングブリッジ(旅客搭乗橋)の運用が始まり、2025年12月には羽田と成田で、空港内の車両の自動運転レベル4が実用化されました(交通政策白書)。ボーディングブリッジや作業車両の整備も、空港の仕事の1つです。

求人票では、雇い主・委託の位置・扱う便を確かめる

空港の仕事は雇い主によって、主な相手と担当業務が変わります。会社の採用ページで確かめた区分は、次のとおりです。

雇い主の種類会社の例採用ページで確かめた区分・業務主な相手
空港会社成田国際空港本体は事務系・技術系に分けて社員を紹介。グループ会社で施設の保守、給油施設の保守、警備・消防・案内、物販・飲食など航空会社、テナント、旅客、国
ターミナル会社日本空港ビルデング事業は施設管理運営業・物品販売業・飲食業の3つ。社員紹介の担当業務にテナント管理・リーシング、免税事業、設備管理、コンシェルジュなど(職種名ではない)テナント、航空会社、旅客
航空会社系のグランドハンドリング会社ANAエアポートサービス、ANA成田エアポートサービス、ANA中部空港、JALスカイ、JALグランドサービスANAエアポートサービス:旅客サービス業務/ランプサービス業務、オペレーションマネジメント業務。ANA成田エアポートサービス:旅客サービス業務、グランドハンドリング業務、オペレーションマネジメント業務、エンジニアリングサービス業務(車両整備、旅客搭乗橋整備)。ANA中部空港:旅客ハンドリング業務・グランドハンドリング業務・貨物インサイドハンドリング業務(いずれも2027年度新卒)。JALスカイ:旅客サービス業務。JALグランドサービス:グランドハンドリング業務/旅客サービス業務自社グループの航空会社、受託した外国の航空会社
自社直営の航空会社スカイマーク地上旅客職、ランプハンドリング職自社の便と旅客
系列外の会社日本通運など(JALブランドパートナー)地方空港の拠点で旅客サービス・グランドハンドリングの業務委託元の航空会社
検査会社警備会社など「警備の業界地図」で確かめる委託元の航空会社・空港管理者

ANAグループの新卒採用の一覧と各社の区分は、ANAホールディングスの2027年度入社 ANAグループ新卒採用について、日本空港ビルデングの事業と社員紹介は採用情報で確かめられます。

求人票では、次の4点を確かめます。

  • 雇い主:空港会社か、ターミナル会社か、航空会社か、航空会社系のグランドハンドリング会社か、委託を受けた会社か
  • 委託の位置:航空会社から直接受けているのか、別の会社からさらに受けているのか
  • 扱う便:自社グループの便だけか、外国の航空会社の便も受託しているのか。外国の航空会社の撤退は、受託する会社の仕事の量に響く
  • 空港の運営の形:会社管理空港か、国管理空港か、コンセッションの空港か。同じ「空港会社」でも、持ち主の会社と運営する会社では仕事が違う

航空会社の総合職・客室乗務職・パイロット・整備士の区分と、航空会社がどこで稼いでいるかは「航空の業界地図」で、港湾の持ち主と運営の分担は「港湾の業界地図」で扱います。

空港の保安検査を担う検査会社の事業、警備業法、採用区分を見る場合は、警備の業界地図で確かめられます。