「エネルギー」「インフラ」と書かれた求人には、発電所やLNG基地を動かす仕事、電線やガス管を守る仕事、家庭や企業に電気・ガスを売る営業、製油所やガソリンスタンドの仕事、水道の仕事まで幅があります。同じグループの中でも、どの工程を担う会社に入るかで、仕事の相手も、稼ぎ方も、守るルールも変わります。
この分野の特徴は、工程によって法律の扱いが大きく違うことです。電気を運ぶ送配電と、都市ガスを運ぶ導管は、国の許可を受けた会社が区域ごとに受け持ち、収入や料金にも国の承認・認可が要ります。一方、発電、電気・ガスの小売、石油製品の販売には、登録や届出をした多くの会社が参入して競争しています。水道は、原則として市町村が経営します。この記事では、工程と法律の区分で会社の位置を地図にし、大きさの物差し、稼ぎ方、会社どうしの重なり、変化が仕事に及ぼす影響を順に比べます。
扱う範囲は、電気・都市ガス・石油(LPガスを含む)・水道の事業と、熱供給との境界です。発電所や製油所などの建設は「プラントエンジニアリングの業界地図」、発電機や変圧器は「重電・電力機器の業界地図」、電気・ガス・水道の工事は「電気工事・空調設備工事の業界地図」、LNG船やタンカーは「海運の業界地図」、総合商社の資源の権益は「総合商社の業界地図」、ナフサから先の石油化学は「石油化学の業界地図」で扱います。廃棄物の処理は扱いません。
分野ごとの会社の比較や仕事の詳しい流れは、「電力の業界地図」「都市ガスの業界地図」「石油・天然ガスの業界地図」「上下水道の業界地図」で扱います。この記事は、次にどの地図を読むかを決めるための全体図です。
電気・ガス・石油・水道を、調達・つくる・運ぶ・売るで並べる
4つの分野の会社は、工程で分けると位置が分かります。燃料や水を「調達する」、電気・ガス・石油製品・水道水を「つくる」、送配電線・導管・船や車・水道管で「運ぶ」、利用者と契約して「売る」の4つです。工程は上流・下流の格付けではなく、会社の大きさも表しません。1つのグループが複数の工程を持つこともあります。
都市ガスは製造・導管・小売の役割と費用を分けて確認できます。 都市ガス業界の地図
原油・天然ガスの開発から精製・販売までの役割は、燃料資源の地図で追えます。 石油・天然ガス業界の地図
電気・ガス・石油・水道を、誰が調達し、つくり、運び、売っているか
JERA、電源開発、東京電力リニューアブルパワー、レノバなど
全国10社が区域ごとに受け持つ(沖縄電力と、大手電力の子会社9社)。収入の見通しは承認、託送供給等約款は認可(見通しの範囲での料金の変更は届出)。沖縄電力は送配電を分社していない
大手電力の小売会社(東京電力エナジーパートナー、中部電力ミライズなど)と新電力
LNG基地でガスをつくる
地域ごとの導管の事業者が受け持つ。託送供給約款は認可。導管網は全国ではつながっていない
都市ガス会社のほか、電力会社の小売会社なども売る
ENEOS・出光興産・コスモエネルギーの各グループなど
LPガスの輸入・卸から小売まで持つ岩谷産業のような会社もある
電気の事業は、電気事業法で発電・送配電・小売に分かれています。送配電は全国10社の一般送配電事業者が区域ごとに受け持ち、発電と小売には多くの会社が参入しています。中部電力は、2019年4月に燃料の受け入れ・貯蔵と既存の火力発電などをJERAに引き継ぎ、2020年4月に小売を中部電力ミライズ、送配電を中部電力パワーグリッドに引き継ぎました(2026年3月期 決算短信)。地域の大手電力・JERA・新電力の違いは「電力の業界地図」で扱います。
発電・送配電・小売の分担と料金の流れは、電力分野の地図で詳しく確認できます。 電力業界の地図
都市ガスの原料は主に天然ガスで、大部分をLNG(液化天然ガス)として輸入しています。LNG基地でつくったガスを、道路の下のガス管(導管)で届けます。導管網は、電気の送配電網と違って全国ではつながっていません(日本ガス協会「都市ガス事業について」)。一方、LPガスは主にボンベなどの容器で家庭に届け、液石法の販売事業として登録を受けます。団地などで導管を使って届ける場合も、供給地点が70未満ならLPガスの販売事業の扱いです(ガス事業法 第2条、日本ガス協会「都市ガスとLPガスの違い」)。ガス会社の稼ぎ方とLPガスの販売は「都市ガスの業界地図」で扱います。
石油は、原油や天然ガスを探して生産する「上流」と、輸入した原油を製油所で精製し、ガソリンや灯油などとして売る「下流」で、担う会社が分かれます。上流はINPEXのような資源開発の会社や元売のグループの上流部門が、下流は元売と販売会社・ガソリンスタンドが担います。LPガスは、国内で使う量の約85%が輸入です(日本LPガス協会「LPガス事業の現在」)。上流・精製・元売とLPガスの輸入・卸は「石油・天然ガスの業界地図」で扱います。
熱供給は、冷水・温水・蒸気を導管で複数の建物に届ける事業です。電気事業法やガス事業法とは別の熱供給事業法で、経済産業大臣の登録を受けて営みます(第2条・第3条)。熱供給の担い手と仕事は「都市ガスの業界地図」で扱います。
事業を始める手続きは、許可・登録・届出・認可で違う
この分野では、事業ごとに、始めるための手続きが法律で決まっています。法律は、許可・登録・届出・認可という言葉を使い分けています。下の図は、主な事業ごとの手続きと根拠の条文を並べたものです。事業を続ける間に守る義務は、始めるための手続きとは分けて示しました。
どの事業に、許可・登録・届出・認可が要るか
- 石油精製業者などは、石油基準備蓄量以上の石油をいつも持っていなければならない(石油備蓄法第6条)
- 一般送配電事業者は、小売電気事業や小売向けの発電事業などを営めない(電気事業法第22条の2。特に必要な場合の認可を除く。沖縄電力は送配電を分社していない)。ガスでは、規模などが政令の要件に当たる特別一般ガス導管事業者だけが、ガス小売事業などを営めない(ガス事業法第54条の2)
- ガス小売事業者はガス機器の調査と周知(ガス事業法第159条)、LPガス販売事業者は契約先の保安業務(液石法第27条。認定を受けた保安機関への委託もできる)を行わなければならない
区域ごとに運ぶ網を受け持つ一般送配電事業と一般ガス導管事業は、許可です。参入して競争する事業は、登録か届出で始めます。登録は、小売電気事業、ガス小売事業、石油輸入業、ガソリンスタンドの揮発油販売業、LPガスの販売事業、熱供給事業です。届出は、発電事業、ガス製造事業、石油精製業、小規模なものを除く石油販売業などです(石油の備蓄の確保等に関する法律、揮発油等の品質の確保等に関する法律、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律〈液石法〉)。
水道は、水道事業と、水道事業者に水を供給する水道用水供給事業に、認可が要ります。条文では国土交通大臣の認可ですが、小規模な事業などは都道府県知事が行います(水道法第6条・第26条・第46条、水道法施行令第14条)。自治体の水道事業者が施設を運営する権利(水道施設運営権)を設定するときは、国土交通大臣の許可が要ります(第24条の4)。公共下水道は、事業者が許可や登録を受けて参入する仕組みではありません。
送配電と導管では、ほかの事業との兼業を制限する範囲が違います。一般送配電事業者は、小売電気事業や、小売向けの発電事業などを営めません(電気事業法第22条の2。特に必要な場合の認可を除く)。ただし沖縄電力は送配電を別の会社に分けておらず、10社すべてが分社しているわけではありません。ガスでは、導管の規模などが政令の要件に当たる「特別一般ガス導管事業者」だけが、ガス小売事業などを営めません(ガス事業法第54条の2)。
事業を続ける間の義務もあります。石油精製業者などは、国が決める基準の量(石油基準備蓄量)以上の石油を、いつも持っていなければなりません(石油備蓄法第6条)。ガス小売事業者にはガス機器の調査と周知の義務が、LPガス販売事業者には契約した家庭などの保安業務の義務があります。LPガスの保安業務は、認定を受けた保安機関に委託することもできます(液石法第27条)。
大きさは、分野ごとに違う物差しで見る
電気はkWh、石油はkL、LPガスはトンと、分野ごとに量の単位が違います。単位も数え方も違うため、足し合わせて「エネルギー業界の大きさ」を作ることも、分野どうしの大小を比べることもできません。下の図は、分野ごとの物差しを、単位と定義のまま並べたものです。
大きさは、分野ごとに違う物差しで見る。足し合わせない
全国の需要電力量(2025年度)。前の年度より0.2%減。送配電網につながる需要(系統需要)で、自家発電で自分で使う分は入らない。販売電力量とは定義が違う。
燃料油の国内の販売(2025年度)。石油化学の原料のナフサ33,458,328kLを含む。ナフサを除くと計算値で103,126,330kL。2025年度は確報値。
需要の合計(2024年度、日本LPガス協会)。家庭・業務用のほか、都市ガスの原料や化学の原料に使う分も含む。
2026年度の供給計画の取りまとめの対象。発電事業者1,299、小売電気事業者751、一般送配電事業者10など。751は国に登録された小売電気事業者の数ではない。
一般ガス導管事業者(日本ガス協会の概数)。普及エリアは国土の約6%。
2026年4月末。常圧蒸留装置の設計能力の合計は3,110,400バレル/日(稼働の量ではない)。
労働力調査の就業者(2025年平均)。全産業は6,828万人。電気だけ・ガスだけの人数はこの表にない。水道には下水道業も含む。石油の精製・販売の会社は、この産業に入らない。
数字を読むときは、定義に注意が要ります。
- 電気の需要電力量は、一般送配電事業者の送配電網につながる需要(系統需要)で、自家発電で自分で使う分は入りません。小売の会社が売った電気の量(販売電力量)とは定義が違います(電力広域的運営推進機関(OCCTO)「電力需給及び電力系統に関する概況 ‐2025年度の実績‐」)
- 電気の事業者の数は、2026年度の供給計画の取りまとめの対象になった数です。小売電気事業者の751者は、国に登録された小売電気事業者の数ではありません(OCCTO「2026年度 供給計画の取りまとめ」)
- 燃料油の販売には、石油化学の原料になるナフサが入っています。会社ごとの販売量ではありません(石油連盟「石油製品バランス」、出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」)
- LPガスの需要には、家庭や業務で使う分のほか、都市ガスの原料や化学の原料に使う分も入ります(日本LPガス協会「LPガス事業の現在(需要)」)
- 働く人の数は、労働力調査の電気・ガス・熱供給・水道業(下水道を含む)の合計です。電気だけ、ガスだけの人数はこの表にありません
都市ガスの販売量は「都市ガスの業界地図」、水道の給水人口などは「上下水道の業界地図」で扱います。求人や会社案内で大きさの数字を見たら、何の量か(使われた電気か、売った量か)、どの単位か、いつの数字か、ナフサのように別の用途を含むかを確かめます。
稼ぎ方は、規制のある部分と競争の部分で違う
4つの分野の会社の収入は、規制のある部分と、競争の部分で決まり方が違います。規制のある部分は、許可を受けた会社が区域ごとに受け持つ送配電と導管です。競争の部分は、発電、電気・ガスの小売、石油の上流・精製・販売です。水道は原則として市町村が経営する事業で、料金と経営の仕組みは「上下水道の業界地図」で扱います。
| 部分 | 主な事業 | 収入の決まり方 | 利益が動く理由の例 |
|---|---|---|---|
| 規制のある部分 | 電気の一般送配電事業 | 国が承認した収入の見通しをもとにした託送料金で、小売の会社などから受け取る。託送供給等約款は認可が基本で、見通しの範囲での変更は届出 | 物価・労務費の上昇、需給の調整にかかる費用 |
| 規制のある部分 | 一般ガス導管事業 | 認可を受けた託送供給約款の料金で、ガス小売の会社から受け取る | 気温で変わる家庭用のガスの量 |
| 競争の部分 | 発電、電気・ガスの小売 | 市場や契約で決まる料金。燃料・原料の価格の変動を料金に映す仕組みがある | 燃料・原料の価格が料金に映るまでの時間差 |
| 競争の部分 | 石油の精製・販売 | 製品の市況で決まる | 原油の価格の動きによる在庫の評価の変化(在庫影響) |
| 競争の部分 | 石油・天然ガスの上流 | 資源の価格と、持っている権益で決まる | 資源の価格、生産する国の制度 |
送配電では、一般送配電事業者が、国が決める期間ごとに託送などの「収入の見通し」を算定し、経済産業大臣の承認を受けます(電気事業法第17条の2)。託送料金を定めた託送供給等約款は経済産業大臣の認可を受け、料金は承認を受けた収入の見通しを超えない額をもとに決めます(第18条)。収入の見通しの範囲で託送料金を変えるときは、認可ではなく届出です(第18条第4項・第5項)。東京電力パワーグリッドは、物価・労務費の高騰などを理由に収入の見通しの変更を申請し、2026年9月4日に承認を受けました(「託送供給等に係る収入の見通し」の承認について)。そのうえで、第18条第5項に基づいて約款の変更を届け出ています(託送供給等約款の変更届出について)。1社の例で、金額と料金への影響は「電力の業界地図」で扱います。
導管では、一般ガス導管事業者が託送供給約款を定め、経済産業大臣の認可を受けます。料金は、能率的な経営のもとでの適正な原価に、適正な利潤を加えたものとされています(ガス事業法第48条)。ただし、料金の決まり方が国の認可でも、利益が毎年同じとは限りません。東京ガスは、導管の託送を担うネットワークのセグメント(事業の区分)の損益が、気温が低く家庭用の託送の量が増えた年に改善したと説明しています(2026年3月期 決算短信)。
発電と小売では、燃料や原料の価格の変動を、あとから電気・ガスの料金に映す仕組みがあります。料金に映るまでの時間差(期ずれ)で、利益が年ごとに振れます。東京電力ホールディングスは、この「期ずれ影響」を決算で分けて示しています(2025年度決算概要)。ガス会社にも同じ仕組み(原料費調整制度)があり、詳しくは「電力の業界地図」「都市ガスの業界地図」で扱います。
石油の下流では、原油の価格の動きで在庫の評価が変わり、利益が振れます。ENEOSホールディングスは、この影響を「在庫影響」として分けて示しており、2026年3月期の石油製品ほかのセグメントでは78億円の損失でした(2026年3月期 決算短信)。上流のINPEXは、セグメントをプロジェクトごとに分けて開示しています(2025年12月期 決算短信)。会社ごとの利益の動きは「石油・天然ガスの業界地図」で扱います。
ここに挙げた会社の例は、それぞれ期・会計基準・利益の定義が違います。会社どうしの大きさは比べず、仕組みを読む例として使います。
自由化のあと、会社は互いの商品も売っている
電気とガスの小売に多くの会社が参入できるようになり、会社は自分の分野以外の商品も売っています。ガスの小売は、1995年に大口の自由化が始まり、2017年4月に家庭用を含めて全面自由化されました(日本ガス協会)。下の図は、主な会社が決算短信の報告セグメントの説明で示している商品を並べたものです。
自由化のあと、電力・ガス・石油の会社は互いの商品も売っている
| 会社(セグメント) | 電気 | 都市ガス・LNG | LPガス | 石油製品 | 熱供給 |
|---|---|---|---|---|---|
| 中部電力ミライズ(電力・ガスの販売) | 販売 | 販売 | |||
| JERA国内火力・ガス事業(国内の電力・ガスの販売など) | 発電・卸販売 | 卸販売 | |||
| 東京ガスエネルギー・ソリューション(都市ガスの製造・販売、LNG販売、電力など) | 販売 | 製造・販売 | |||
| 大阪ガス国内エネルギー(都市ガス、LNG販売、LPG販売、発電・電気の販売など) | 発電・販売 | 製造・販売 | 販売 | ||
| 東邦ガスガス/LPG・その他エネルギー(LPG販売、LNG販売、熱供給事業など)/電気 | 販売 | 製造・販売 | 販売 | 熱供給事業 | |
| ENEOSホールディングス石油製品ほか/電気(発電、電力の調達・販売、都市ガスなど) | 発電・販売 | 都市ガス | 精製・販売 | ||
| 出光興産燃料油/電力・再生可能エネルギー | 電力・再エネ | 生産・販売 | |||
| コスモエネルギーホールディングス石油事業(LPGなどを含む)/再生可能エネルギー事業(風力発電) | 風力発電 | 生産・販売 | 生産・販売 | ||
| 岩谷産業総合エネルギー事業(LPガス、LNG、石油製品、電気など) | 取り扱い | LNG | 輸入・卸・小売 | 取り扱い |
空欄は、短信のセグメントの説明に書かれていないという意味で、その会社のグループが扱っていないとは限らない。印の数は事業の広さや大きさの順位ではない。太い枠は、その会社のもとの分野。中部電力の行は、子会社の中部電力ミライズを含むセグメント。JERAは中部電力と東京電力フュエル&パワーが持分を持つ会社。
電力会社の側では、中部電力の「ミライズ」セグメントが電力・ガスの販売を担い、JERAは国内の電力・ガスの卸販売を担います。ガス会社の側では、東京ガス・大阪ガス・東邦ガスが電気も売っています。東邦ガスは、短信のセグメントの説明で、LPガスと熱供給も挙げています。石油元売の側では、ENEOSホールディングスの「電気」セグメントが発電、電力の調達・販売、都市ガスなどを担い、出光興産は「電力・再生可能エネルギー」、コスモエネルギーホールディングスは風力発電の「再生可能エネルギー事業」のセグメントを持っています。岩谷産業は、LPガスのほかにLNG・石油製品・電気も扱います。
ガス会社や石油元売が売る電気は、電力の業界地図では新電力の一つとして扱います。どの会社がどの区域でどれだけ売っているかは、分野ごとの地図で確かめます。
需要・燃料価格・費用の変化は、どの仕事に影響するか
この分野では、再エネの増加、費用の上昇、需要の減少、燃料価格の変動、取引ルールの変更が、分野ごとに異なる仕事へ影響します。下の図は、主な変化と、影響を受ける仕事の領域、詳しく読む地図を並べたものです。仕事の領域は、仕事の中身で編集部が整理したもので、会社の職種名ではありません。採用数の増減は予測していません。
需要・燃料価格・費用・ルールの変化は、どの仕事に影響するか
再エネの出力抑制は、2025年度に東京のエリアでも初めて行われ、全エリアで行われたことになりました(OCCTO「電力需給及び電力系統に関する概況」)。電気の需要と供給を合わせる系統運用・需給調整の仕事に関わる変化です。
送配電の費用の上昇は、前の章の託送の仕組みを通して、送配電の設備を守る仕事に関わります。東京電力ホールディングスの第二新卒・若手キャリア採用には、「送配電事業における電力流通設備の保守管理業務」「送配電事業におけるお客さまサービス業務/用地交渉」などの募集があります。
国内の石油の需要は減っています。ENEOSホールディングスは、国内の需要が自動車の低燃費化などで構造的に減っていると短信に書いています。燃料油の販売の推移は「石油・天然ガスの業界地図」で扱います。ENEOSの採用ページには、プロセスエンジニア、メカニカルエンジニア、電気事業技術職、研究開発職、セールスエンジニア、IT企画職、事務系職種が示されています。
燃料価格の見通しも揺れています。東京電力ホールディングスは、中東情勢などで燃料価格の見通しが不透明だとして、2026年度の業績予想を未定としました。コスモエネルギーホールディングスは、期末の原油価格の急騰について、短信で中東情勢の緊迫化とホルムズ海峡の封鎖を挙げています(2026年3月期 決算短信)。燃料調達、料金設定、在庫管理に影響する変化です。
LPガスの取引のルールは、2024年4月2日に公布された液石法施行規則の改正(令和6年経済産業省令第32号)で変わりました。2024年7月2日からは、販売の契約を結ばせるために正常な商慣習を超える利益を与えないこと、販売事業者を変えにくくする条件を付けた契約を結ばないことが、販売の方法の基準に加わりました。2025年4月2日からは、料金を、使う量にかかわらずかかる費用、使う量に応じた費用、設備の貸し出しなどの費用に分けて示すことが義務になりました(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則)。賃貸住宅の入居予定者に料金表を示すことは、努力義務です。LPガス販売の営業と料金の説明にかかわる変化で、詳しくは「都市ガスの業界地図」で扱います。
LNG基地と発電所の仕事は、ガス会社にもあります。東京ガスの新卒採用の選考領域の1つ「プラントエンジニアリング」は、LNG基地・発電所の運用・高度化や、建設・維持管理の投資の判断を担います。東京ガスネットワークなどのグループ会社は、東京ガスとは別に、それぞれの会社で採用しています。
求人票では、分野・工程・規制のどちら側かを確かめる
同じ「エネルギー」の求人でも、分野と工程によって、主な相手と収入の決まり方が違います。
| 分野と工程 | 主な相手 | 収入の決まり方 | 次に読む地図 |
|---|---|---|---|
| 電気の送配電 | 送配電網を使う小売の会社など | 承認された収入の見通しにもとづく託送料金 | 電力の業界地図 |
| 電気の発電・小売 | 卸の取引先、家庭・企業 | 市場や契約で決まる料金と、燃料費の調整 | 電力の業界地図 |
| 都市ガスの導管 | 導管を使うガス小売の会社 | 認可された託送供給約款の料金 | 都市ガスの業界地図 |
| 都市ガスの製造・小売、LPガスの販売、熱供給 | 家庭・企業・ビル | 契約で決まる料金と、原料費の調整。LPガスは料金の示し方にルールがある | 都市ガスの業界地図 |
| 石油・天然ガスの上流 | 生産した原油・ガスの買い手 | 資源の価格と、持っている権益 | 石油・天然ガスの業界地図 |
| 石油の精製・販売、LPガスの輸入・卸 | 販売会社・ガソリンスタンド・企業 | 製品の市況。在庫影響で利益が振れる | 石油・天然ガスの業界地図 |
| 水道・下水道 | 住民・企業 | 原則として市町村が経営・管理する事業 | 上下水道の業界地図 |
職種の名前は、会社によって違います。この記事で挙げた職種名は、東京電力ホールディングス・東京ガス・ENEOSの採用ページに載っている名前で、会社名と一緒に読んでください。
働く人の仕事の分かれ方は、労働力調査の職業別の数で見ることができます。2025年平均の電気・ガス・熱供給・水道業の就業者33万人のうち、事務従事者が13万人、輸送・機械運転従事者が8万人、専門的・技術的職業従事者が5万人です。万人単位の値のため、内訳を足しても合計とは一致しません。
求人票では、次の4点を確かめます。
- 分野:電気・ガス・石油・水道・熱のどれか。グループの会社なら、募集する会社がどの事業を担う会社か
- 工程:調達・つくる・運ぶ・売るのどこか
- 規制か競争か:許可を受けて区域を受け持つ送配電・導管の会社か、登録・届出で参入して競争する会社か。水道なら、市町村などの水道事業者か、その仕事を受ける会社か
- 利益が動く理由:燃料・原料の価格が料金に映るまでの時間差、在庫影響、気温による需要、資源の価格のどれが効く会社か
この4点が分かったら、次はその分野の業界地図で、会社ごとの違いと仕事の流れを確かめます。
原油の精製、燃料販売から、ナフサを原料に化学品を作る工程へ進む場合は、石油化学の業界地図で確かめられます。



