原油・天然ガス・LPガスが日本に届くまでを、資源開発(上流)、輸入、精製、元売・販売、SSに分け、それぞれに必要な届出・登録と備蓄の義務で整理します。INPEXと元売各社が何で利益を出しているか、燃料油の販売とSSの数がどう減ってきたか、2026年に備蓄がどう動いたか、LPガスの輸入・卸の担い手、上流・製油所・販売の仕事の違いも確かめられる内容です。

「石油」「エネルギー」と書かれた求人には、海外のガス田の開発、製油所の運転や設備の保全、ガソリンや軽油の法人営業、SSの運営まで幅があります。同じ石油の会社でも、資源を掘る側(上流)か、原油を製品にして売る側(下流)かで、相手も、利益が動く理由も、守るルールも違います。

この記事では、原油と天然ガスを掘る資源開発、原油の輸入と精製、石油製品の販売、SS(サービスステーション。ガソリンスタンド)、LPガス(液化石油ガス。プロパンガス)の輸入・卸と、石油とLPガスの備蓄を扱います。事業の区分と法律の手続き、担い手、会社がどの事業で稼いでいるか、需要の変化と備蓄、仕事の違いを順に確かめます。

電気・都市ガス・石油・水道を並べた全体像は、資源・エネルギー・公益の業界地図で確かめられます。LPガスの家庭・お店への販売と、都市ガスの事業は都市ガスの業界地図で扱います。発電の燃料としての使い方は電力の業界地図、ナフサ(石油化学の原料)から先は石油化学の業界地図で扱います。

総合商社の資源の権益と稼ぎ方は総合商社の業界地図、原油タンカーやLNG船は海運の業界地図、製油所を建てる会社はプラントエンジニアリングの業界地図で扱います。SSでの車検・整備は自動車整備の業界地図、ENEOSの子会社でなくなった金属資源の事業(JX金属)は非鉄金属の業界地図で扱います。

原油・ガスは、上流から輸入・精製・販売を通って届く

石油の事業は、資源を掘る「上流」と、原油を輸入して製品にし、売る「下流」に分けて考えると整理しやすくなります。区分ごとに、始めるための手続きが違います。手続きは、石油の備蓄の確保等に関する法律(石油備蓄法)と、揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)、国内の資源は鉱業法が決めています。

石油・天然ガスの位置づけは、資源からエネルギー利用までの全体地図で確認できます。 資源・エネルギー・公益の地図

事業の区分何をするか始めるための手続き
国内の石油・天然ガスの開発国内の油田・ガス田を探し、掘る鉱業法。石油と可燃性天然ガスは「特定鉱物」で、経済産業大臣が区域を指定し、開発する者を選ぶ(第6条の2・第38条〜)
海外の石油・天然ガスの開発海外の油田・ガス田の権益を持ち、掘る産油国・産ガス国の制度による
石油輸入業原油や石油製品を輸入する(LPガスを除く)経済産業大臣の登録(石油備蓄法第16条。石油精製業者などは除く)
石油ガス輸入業LPガスを輸入する経済産業大臣への届出(石油備蓄法第28条)
石油精製業日量150kL以上の蒸留設備などで石油製品をつくる経済産業大臣への届出(石油備蓄法第26条)
石油販売業石油製品を売る(一定の規模以下を除く)経済産業大臣への届出(石油備蓄法第27条)
揮発油販売業(SS)給油所でガソリンを売る経済産業大臣の登録(品確法第3条)。給油所ごとに品質管理者を選ぶ(第14条)

原油は、上流から輸入・精製・販売を通り、区分ごとに届出・登録が要る

上の段は原油と石油製品、下の段はLPガスの流れ。各箱の上は法律の手続き、中は中身と担い手の例。網かけの箱は、備蓄の義務がかかる段階(石油は石油備蓄法第6条、LPガスは第11条)。箱の大きさで会社や事業の大きさは表していない。

原油・石油製品
上流(掘る)国内:鉱業法(石油・可燃性天然ガスは特定鉱物)
海外:産油国・産ガス国の制度
  • INPEX(国内O&G、イクシス、その他のプロジェクト)
  • 元売の上流:ENEOS Xplora、出光興産の資源、コスモの石油開発
  • JOGMEC:出資と債務保証で支える
→↓
輸入石油輸入業=登録(石油備蓄法第16条)
  • 原油・石油製品を輸入する(LPガスを除く)
  • 運ぶ船(タンカー)は海運の業界地図
→↓
製油所(つくる)石油精製業=届出(石油備蓄法第26条)
19か所・1日3,110,400バレル(2026年4月末、設計上の能力)
  • ガソリン・灯油・軽油・重油・ジェット燃料・ナフサなどに分ける
  • ナフサから先は石油化学の業界地図
→↓
販売・SS(売る)石油販売業=届出(石油備蓄法第27条)
揮発油販売業(SS)=登録(品確法第3条)、給油所ごとに品質管理者
  • 元売・販売会社
  • SS 26,412(2025年度末)
LPガス
輸入(約85%)・国内生産石油ガス輸入業=届出(石油備蓄法第28条)
  • 最大の輸入先は米国
  • 民間備蓄の義務(第10条・第11条)。日本LPガス協会によると輸入量の40日分(約106万トン)
  • 担い手の例:岩谷産業(輸入・卸と小売)
→↓
基地・充てん所
  • 一次基地→内航船・タンクローリー→二次基地→充てん所
→↓
家庭・お店への販売
  • 液化石油ガス販売事業(登録)
  • 都市ガスの業界地図で扱う
備蓄の義務:石油精製業者・一部の石油販売業者・石油輸入業者のうち省令で決められた会社(石油精製業者等)は、石油基準備蓄量以上の石油を常に持つ(石油備蓄法第6条。この「石油」にLPガスは入らない)。LPガスは、省令で決められた石油ガス輸入業者が石油ガス基準備蓄量以上を常に持つ(第11条)。天然ガスには備蓄の義務がない(日本LPガス協会)。
出典:石油の備蓄の確保等に関する法律、揮発油等の品質の確保等に関する法律、鉱業法、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構法(いずれもe-Gov)、石油連盟「製油所の所在地と原油処理能力(2026年4月末現在)」「給油所数(SS、セルフSS)の推移」(SS数の出所:資源エネルギー庁)、日本LPガス協会「LPガス事業の現在」、各社の決算短信。石油精製業は日量150kL以上の蒸留設備などで石油製品をつくる場合。石油輸入業の登録は、石油精製業者などを除く。

石油精製業者・一部の石油販売業者・石油輸入業者のうち、省令で決められた会社(石油精製業者等)は、決められた量(石油基準備蓄量)以上の石油を、いつも持っていなければなりません(石油備蓄法第6条)。これが民間の石油備蓄の義務です。毎月、基準備蓄量を国に届け出ます(第5条)。この「石油」にLPガスは入りません。

LPガスには別の決まりがあります。LPガスを輸入する会社のうち省令で決められた会社は、毎月、石油ガス基準備蓄量を届け出て(第10条)、それ以上のLPガスをいつも持っていなければなりません(第11条)。

SSを営む会社には、品質の義務もあります。規格に合わないガソリンを自動車の燃料として売ってはならず(品確法第13条)、給油所ごとの品質管理者に、ガソリンを分析させます(第16条)。

上流は、権益を持って掘り、産油国の制度の下で稼ぐ

上流の会社は、油田・ガス田の権益(掘って売る権利の持ち分)を持ち、探鉱(資源を探すこと)、開発、生産を行います。海外では、産油国・産ガス国の制度の下で事業をします。

資源権益や長期契約を読む際は、総合商社のトレードと事業投資を分けて見ると理解が深まります。 総合商社の業界地図

上流を専業とする会社の例がINPEXです。2025年12月期の決算短信では、事業を「国内O&G」と「海外O&G」に分け、海外O&Gをさらに「イクシス」と「その他のプロジェクト」に分けて開示しています(2025年12月期 決算短信)。

  • 国内O&G:南長岡ガス田や、直江津LNG基地など
  • イクシス:オーストラリアのイクシスLNGプロジェクト(短信の説明は「豪州イクシス及び周辺探鉱」)
  • その他のプロジェクト:オーストラリア・東南アジア・欧州・アブダビなどのプロジェクト

INPEXは、プロジェクトごとの利益を「親会社の所有者に帰属する当期利益」で示しています。税金を払ったあとの利益です。2025年12月期は、国内O&Gが225億円、イクシスが2,708億円、その他のプロジェクトが1,318億円でした(百万円の値を億円にして四捨五入)。イクシスは、INPEXが採用サイトなどで「イクシスLNGプロジェクト」と呼ぶ、LNG(液化天然ガス)の事業です。

輸入した天然ガスが需要家に届く流れは、都市ガスの製造・導管・小売の役割につながります。 都市ガス業界の地図

石油元売(石油製品をつくって売る会社)も、上流の事業を持っています。ENEOSホールディングスの上流は、ENEOS Xploraが担う「石油・天然ガス開発」のセグメント(事業の区分)です。2026年3月期の決算短信では、続けている事業として開示されています。同じ期に、マレーシアのSK10鉱区の生産分与契約を2038年まで延ばしました(2026年3月期 決算短信)。ENEOSのグループは、金属の事業(JX金属)の株式の一部を売り、JX金属を子会社から持分法適用会社にしました。上流の事業は、2026年3月期の時点で子会社として持ち続けています。

出光興産は「資源」のセグメントで、原油・天然ガス・石炭の探鉱・開発・生産・販売を行っています(2026年3月期 決算短信)。石炭はこのセグメントに含まれます。短信では、資源のセグメント損益331億円のうち、石油・天然ガス開発事業・地熱事業が140億円、石炭事業・その他事業が191億円と説明されています。コスモエネルギーホールディングスは「石油開発事業」のセグメントで原油の開発・生産・販売を行っています(2026年3月期 決算短信)。

国も上流を支えています。独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、海外での石油・天然ガスの探鉱や、天然ガスの液化などに必要なお金を出資したり、借入れの債務を保証したりします(JOGMEC法第11条第1項第1号・第3号)。支援を受けた個別の案件は、この記事では扱いません。

上流には、総合商社や都市ガスの会社も関わっています。東京ガスは北米のシェールガス事業を、大阪ガスは米国の上流事業を、海外のセグメントに持っています。商社の権益は総合商社の業界地図、ガス会社の稼ぎ方は都市ガスの業界地図で扱います。

下流は、製油所19か所から元売・販売会社・SSへ

輸入した原油は、製油所で蒸留され、ガソリン、灯油、軽油、重油、ジェット燃料、ナフサなどに分けられます。石油連盟の製油所の所在地と原油処理能力によると、2026年4月末時点で製油所は全国に19か所あります。原油を蒸留する装置の能力の合計は、1日あたり3,110,400バレル(約494,500kL)です。これは設計上の能力で、実際にどれだけ動かしているか(稼働率)ではありません。

製油所でつくった製品は、元売や販売会社を通って、SSや工場などの使い手に届きます。元売は、製油所を動かし、石油製品をつくって売る会社です。ENEOS、出光興産、コスモエネルギーホールディングスのグループが、精製と販売をセグメントとして開示しています。

  • ENEOSホールディングス:「石油製品ほか」。石油の精製・販売に、基礎化学品・潤滑油・ガス・水素を含む
  • 出光興産:「燃料油」。石油製品の生産・販売・輸出入・トレーディング。2025年度に、持分法の関連会社だった富士石油を追加で取得し、連結子会社にした
  • コスモエネルギーホールディングス:「石油事業」。ガソリン・ナフサ・灯油・軽油・重油・潤滑油・LPGなどの生産・販売

石油製品の卸を担う販売会社(特約店)の会社ごとの姿は、この記事では扱いません。SSの数の変化は、需要の章で確かめます。

上流は資源価格と税、下流は精製と在庫で利益が動く

上流と下流では、利益が動く理由が違います。ここでは、会社ごとに利益がどこで出ているかを見ます。会社によって決算の期(12月期か3月期か)、会計のルール(国際会計基準のIFRSか日本基準か)、セグメント利益の定義(営業利益か、経常利益か、税引き後の利益か)が違います。このため、会社どうしの大きさは比べません。

上流は税を払ったあとの利益、下流は在庫影響を見ると、稼ぎ方の違いが分かる

会社ごとのセグメント(事業の区分)の利益。区分の名前は会社の表記のまま。決算の期・会計のルール・セグメント利益の定義が会社ごとに違うため、会社どうしの大きさは比べていない。百万円の値を億円にして四捨五入。

INPEX(上流)2025年12月期・IFRS・セグメント利益=親会社の所有者に帰属する当期利益(税を払ったあと)
上流イクシス(イクシスLNGプロジェクト)2,708億円
上流その他のプロジェクト(豪州・東南アジア・欧州・アブダビなど)1,318億円
上流国内O&G(南長岡ガス田、直江津LNG基地など)225億円
ほかに「その他」(再エネ・電力、CCS・水素など)△288億円。連結の当期利益(親会社の所有者に帰属)は3,938億円。 税引前利益1兆1,735億円のうち、法人所得税費用は7,438億円(うち「その他のプロジェクト」7,030億円) 割合は連結の数字からの計算値で、産油国の税率そのものではない。残りには、親会社以外の株主に帰属する分も含まれる。
ENEOSホールディングス2026年3月期・IFRS・セグメント利益=営業損益
下流石油製品ほか(精製・販売に基礎化学品・潤滑油・ガス・水素を含む)2,924億円前期 △507億円
上流石油・天然ガス開発(ENEOS Xplora)508億円前期 874億円
在庫影響:78億円の損失(前期576億円の損失)。会社が示す在庫影響除きの営業利益相当額は3,002億円。在庫影響=総平均法・簿価切下げによる棚卸資産評価が売上原価に与える影響(会社の定義)。
コスモエネルギーホールディングス2026年3月期・日本基準・セグメント利益=経常利益ベース
下流石油事業763億円前期 618億円
上流石油開発事業653億円前期 824億円
石油事業は、在庫評価の影響を除くと928億円(会社の開示)。
出光興産2026年3月期・日本基準・セグメント利益=営業利益+持分法投資損益(2027年3月期からIFRS)
下流燃料油1,777億円前期 1,221億円
上流資源(原油・天然ガス・石炭)331億円前期 774億円
石炭は資源のセグメントに含まれる。短信の本文では、資源331億円のうち石油・天然ガス開発事業・地熱事業が140億円(前期比24.8%減)、石炭事業・その他事業が191億円。
出典:INPEX「2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年2月12日)、ENEOSホールディングス「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年5月14日)、コスモエネルギーホールディングス「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月12日)、出光興産「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月12日)。札の「上流」「下流」は、この記事の区分への当てはめ。

上流のINPEXは、2025年12月期の営業利益が1兆1,354億円、税引前利益が1兆1,735億円でした(百万円の値を四捨五入)。法人所得税費用は7,438億円で、そのうち7,030億円が「その他のプロジェクト」のセグメントで計上されています。税引前利益に対する法人所得税費用の割合は、計算すると約63.4%です。これはINPEXの連結の数字から計算した値で、産油国の税率そのものではありません。親会社の所有者に帰属する当期利益は3,938億円でした。

下流の利益を動かす要因の一つが「在庫影響」です。ENEOSは、在庫影響を「総平均法・簿価切下げによる棚卸資産評価が売上原価に与える影響」と定義しています。総平均法は、仕入れた原油などの平均の単価で原価を計算する方法です。原油の価格が動くと、手元の在庫の評価が変わり、その分だけ利益が上下します。

ENEOSの「石油製品ほか」のセグメント利益(IFRSの営業損益)は、2025年3月期が507億円の損失、2026年3月期が2,924億円の利益でした。2026年3月期の在庫影響は78億円の損失(前の期は576億円の損失)で、会社は在庫影響を除いた営業利益相当額を3,002億円としています。在庫影響を除いた値は、会社が独自に示す値です。

コスモエネルギーホールディングスの「石油事業」のセグメント利益(経常利益ベース)は、2026年3月期に763億円で、在庫評価の影響を除くと928億円でした。同社の「石油開発事業」は653億円でした。出光興産の2026年3月期のセグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、「燃料油」が1,777億円、「資源」が331億円でした。出光興産は、2027年3月期の第1四半期からIFRSを任意で適用します。前の期との比べ方が変わる点に注意が必要です。

2026年3月期は、3社とも精製・販売のセグメントの利益が前の期より増え、上流(出光興産は石炭を含む資源)のセグメントの利益は減りました。ENEOSの「石油・天然ガス開発」は874億円から508億円へ、コスモエネルギーホールディングスの「石油開発事業」は824億円から653億円へ、出光興産の「資源」は774億円から331億円へ減っています。出光興産の資源のうち、石油・天然ガス開発事業・地熱事業は140億円で、前の期より24.8%減ったと会社は説明しています。同じ会社の中で、上流と下流の利益が逆の方向に動いた年でした。

上流の減益について、各社は資源の価格を理由に挙げています。INPEXは平均の販売単価の下落で売上収益が2,693億円減ったと説明しています。ENEOSは石油・天然ガス開発の販売価格が市況を反映して下がったこと、出光興産は石油・天然ガス開発で原油の価格が下がったこと、石炭事業で石炭の市況が下がったことを挙げています。

ENEOSは、石油製品の販売数量が輸出の増加で前の年より2.7%増えたと説明しています。国内の需要は、自動車の燃費が良くなったことを主な理由に、構造的に減っているとも書いています。

国内の需要とSSは減り、2026年には備蓄の量が動いた

国内の石油製品の需要は減ってきました。石油連盟の統計資料のうち「石油製品バランス」(出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」)によると、燃料油の国内向けの販売は、2016年度の176,963,277kLから、2025年度は136,584,658kLになりました。計算すると約22.8%の減少です。

この燃料油の値には、石油化学の原料になるナフサ(2025年度33,458,328kL)が含まれます。ナフサを除くと、2025年度は103,126,330kLです(計算値)。ガソリンは、2016年度の52,508,218kLから2025年度の43,609,160kLへ、約16.9%減りました(計算値)。

燃料油の販売は2016年度から約22.8%減り、SSは最も多かった年の半分以下になった

燃料油の国内向け販売(ナフサを含む)とSSの数を、2つの時点で比べる。燃料油の内訳は2025年度の値。備蓄は2026年8月末の日数。割合はすべて計算値。

燃料油の国内向け販売(ナフサを含む) 2025年度の内訳(kL)
ガソリン 31.9%ナフサ 24.5%軽油 22.5%灯油 8.1%A重油 6.7%B・C重油 3.1%、ジェット燃料 3.1%
ナフサは石油化学の原料。ナフサを除くと2025年度は103,126,330kL。ガソリンは2016年度52,508,218kL→2025年度43,609,160kL(約16.9%減)。四捨五入のため、内訳の割合の合計は100%にならない。
SSの数(年度末) 2025年度末のセルフSSは10,969(石油情報センター。SS全体の数とは出所が違う)。製油所は19か所・1日3,110,400バレル(2026年4月末)。
石油の備蓄(2026年8月末、石油備蓄法ベース)
民間備蓄 96日国家備蓄 103日産油国共同備蓄 4日
表の合計は204日(内訳の和は203日。日数は区分ごとと合計とで別々に計算して丸めている)。国家備蓄の原油は2026年3月末4,168万kL→8月末2,890万kL。民間の義務日数は、経済産業省の発表と石油連盟の表の注記によると、2026年3月16日から70日分→55日分(石油備蓄法第7条第3項。発表時の期間は当面1か月)。
出典:石油連盟「石油製品バランス」(出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」、2026年10月9日更新)、「給油所数(SS、セルフSS)の推移」(SS数の出所:資源エネルギー庁、セルフSSの出所:石油情報センター、2026年10月16日更新)、「石油備蓄日数」(出所:資源エネルギー庁、2026年10月15日更新)、「製油所の所在地と原油処理能力(2026年4月末現在)」、経済産業省「民間備蓄義務量の引き下げ及び国家備蓄石油の放出を行います」(2026年3月16日)。棒の長さは、各段の中で古い時点を100としたもの。備蓄の帯は日数の内訳の比で描いた。

SSの数も減りました。石油連盟の同じ統計資料の「給油所数の推移」(出所:資源エネルギー庁)によると、SSの数は1994年度末の60,421が最も多く、2025年度末は26,412です。計算すると約56.3%の減少です。2025年度末のセルフSS(利用者が自分で給油するSS)は10,969でした。セルフSSの数は、SS全体の数と出所が違う統計(石油情報センター)です。

備蓄の量は、2026年に大きく動きました。石油連盟の統計資料の「石油備蓄日数」(出所:資源エネルギー庁)によると、2026年8月末の備蓄は、民間備蓄が96日、国家備蓄が103日、産油国共同備蓄が4日で、合計は204日分でした(石油備蓄法ベース)。内訳を足すと203日で、表の合計とは1日違います。日数は区分ごとと合計とで別々に計算して丸めているためで、ここでは表の値をそのまま示します。

2026年3月16日、経済産業省は、民間の備蓄の義務を15日分減らし、70日分から55日分にすると発表しました(民間備蓄義務量の引き下げ及び国家備蓄石油の放出を行います)。石油の供給が不足するおそれがあるときなどに、経済産業大臣が期間を決めて基準備蓄量を減らせる規定(石油備蓄法第7条第3項)に基づく措置です。発表した時点の期間は、3月16日から当面1か月でした。同じ日に、国家備蓄の石油を譲り渡す(放出する)ことも決めました(第31条)。発表は理由として、ホルムズ海峡を原油タンカーが事実上通れず、中東からの原油の輸入が大きく減る見通しであることを挙げています。

石油連盟の備蓄日数の表では、2026年10月の更新の時点でも、民間の義務日数を55日分としています。国家備蓄の原油の量は、2026年3月末の4,168万kLから、8月末の2,890万kLに減りました。コスモエネルギーホールディングスも決算短信で、期末の原油価格の急騰を「中東情勢の緊迫化及びイランによるホルムズ海峡の封鎖」によるものと書いています。

製油所の今後の閉鎖や能力の削減の予定は、この記事では扱いません。

LPガスは約85%を輸入し、輸入・卸と販売で担い手が分かれる

LPガスは、プロパンやブタンを主な成分とするガスです。日本LPガス協会によると、国内で使うLPガスの約85%は輸入で、残りは原油の精製や化学製品の生産のときに国内でつくられます。2012年ごろから米国産の輸入が大きく増え、いまは米国が最大の輸入先です。

輸入したLPガスは、一次基地から内航船やタンクローリーで二次基地へ運ばれ、充てん所でボンベなどに詰められて、家庭や工場に届きます。需要は2024年度に11,914千トンで、同協会は約4割の家庭でLPガスが使われていると説明しています。

法律で備蓄が義務づけられているのは、石油とLPガスの2つです。天然ガスには備蓄の義務がありません。LPガスの民間備蓄の義務は、石油備蓄法第10条・第11条によるもので、LPガスを輸入する会社のうち省令で決められた会社にかかります。同協会によると、民間備蓄は輸入量の40日分(約106万トン)で、国家備蓄と合わせた備蓄は約245万トン(2026年3月末)です。

LPガスの輸入・卸と小売の両方を持つ会社の例が、岩谷産業です。同社の「総合エネルギー事業」は、家庭用・業務用・工業用のLPガス、LNG、石油製品、カセットこんろ・ボンベ、電気などを扱います(2026年3月期 決算短信)。2026年3月期のセグメント利益(営業利益)は135億円で、前の期の195億円から減りました。同社は、小売部門は収益性が良くなった一方、卸売部門は数量の減少と市況の要因で減益だったと説明しています。

LPガスの家庭・お店への販売(液化石油ガス販売事業の登録や保安業務、2024〜2025年に変わった取引のルール)は、都市ガスの業界地図で扱います。岩谷産業の水素・産業ガスの事業は、化学メーカーの業界地図で扱います。

仕事は、上流・製油所・販売で分かれる

石油・天然ガスの仕事は、上流・製油所・販売のどこに入るかで、相手と働く場所が変わります。次の図の分け方は、仕事の中身で編集部が整理したもので、会社の職種名ではありません。職種名として示すのは、ENEOSの採用サイトに載っている職種名だけです。

石油・天然ガスの仕事は、上流・製油所・販売で相手が違う

仕事の分け方は、仕事の中身で編集部が整理したもので、会社の職種名ではない。職種名として示すのは、ENEOSの採用サイトの職種名だけ。

上流(資源開発)相手:油田・ガス田、産油国・産ガス国
探鉱・開発・生産、プロジェクトの管理
関わる変化:資源の価格、産油国の制度と税
輸入・製油所相手:原油、製油所の設備
製油所の運転と設備の保全、原油の調達
関わる変化:国内の需要の減少、在庫影響、輸出
販売・SS相手:販売会社、SS、法人の使い手
石油製品の営業、SSの運営と品質の管理
関わる変化:燃料油の販売とSSの数の減少
LPガスの輸入・卸相手:輸入先、基地、販売事業者
LPガスの調達と卸、基地の運営
関わる変化:輸入価格と市況、備蓄の義務
ENEOSの採用サイトの職種名:プロセスエンジニア、メカニカルエンジニア、電気事業技術職、研究開発職、セールスエンジニア、IT企画職、事務系職種。仕事の範囲と配属先は求人票で確かめる。
INPEXの採用ページ:INPEX本体の新卒・キャリア採用への案内のほか、INPEXドリリング、INPEXパイプライン、INPEXエンジニアリングなど、グループ会社の採用への案内がある。
出典:ENEOS「ENEOS RECRUITING」(2026年10月31日閲覧)、INPEX「採用情報」(2026年10月31日閲覧)、各社の決算短信、石油の備蓄の確保等に関する法律、揮発油等の品質の確保等に関する法律(e-Gov)。

ENEOSの採用サイトには、職種として、プロセスエンジニア、メカニカルエンジニア、電気事業技術職、研究開発職、セールスエンジニア、IT企画職、事務系職種が並んでいます。それぞれの仕事の範囲や配属先は、求人票で確かめます。

INPEXの採用ページには、INPEX本体の新卒・キャリア採用への案内のほか、INPEXドリリング、INPEXパイプライン、INPEXエンジニアリングなど、グループ会社の採用への案内があります。上流の会社では、グループのどの会社に入るかで、仕事の中身が変わります。

求人票では、次の3点を確かめます。

  • 上流か下流か:資源の開発か、精製・販売か。上流では、海外のプロジェクトにどう関わるか
  • どの会社に入るか:持株会社か、事業会社か、グループ会社か。元売のグループには、上流・精製販売・電気などの会社がある
  • 勤務の場所と形:製油所や国内の基地での勤務か、海外の勤務があるか。設備の運転・保全で交代制があるか

この記事で見た会社では、利益が資源の価格や在庫影響で年ごとに大きく動いています。2026年3月期のように、同じ会社の中で上流と下流の利益が逆の方向に動く年もあります。会社の決算では、セグメントごとの利益と、在庫影響を除いた値を見ると、何で稼いでいるかが分かります。

電気・ガス・石油・水道の会社の違いと重なりは、資源・エネルギー・公益の業界地図で確かめられます。

同じ会社のLPガス販売ではなく、水素・産業ガスの事業を見る場合は、化学メーカーの業界地図で確かめられます。

原油・燃料油の採掘、輸入、精製、販売から、ナフサを原料に化学品を作る工程へ進む場合は、石油化学の業界地図で確かめられます。

燃料販売に隣接する車検・修理の事業を詳しく見る場合は、自動車整備の業界地図で確かめられます。